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2020年11月13日 (金曜日)

ベノワのメジャー・デビュー作

デイヴィッド・ベノワ(David Benoit)、1953年5月生まれ。今年で67歳。米国カリフォルニア州出身。フュージョン・ジャズ〜スムース・ジャズのジャンルで活躍するピアニストであり、コンポーザー、アレンジャー&プロデューサーでもある。デビューが1977年だが、暫くは裏方の仕事がほとんどで、1987年にGRPレーベルからアルバムをリリースして以来、メジャーな存在となった。

David Benoit『Freedom at Midnight』(写真左)。1987年のリリース。パーソネルは、曲によってメンバーを使い分けている。主だった名前をひろうと、Russ Freeman (g), John Pattitucci (b), Jeff Porcaro (ds) と、どちらかと言えば、スムース・ジャズ、AOR畑からの人選が主。よって音的には、ブルージーな雰囲気やファンキーな要素は希薄である。

ベノワはピアニストではあるが、ピアニストとしてのベノワを前面に押し出すのでは無く、作曲やアレンジ、プロデュースの才能を前面に押し出している様であり、そういう面では、先達として「ボブ・ジェームス」がいる。彼もピアニストではあるが、コンポーザー、アレンジャー&プロデューサーでもある。ボブ・ジェームスはどちらかと言えば、米国東海岸の雰囲気だが、ベノワは出身がカルフォルニアで、1970年代後半からハリウッドで活躍していたこともあり、米国西海岸の雰囲気が濃厚。
 
 
Freedom-at-midnight  
 
 
ベノワの音の重ね方、フレーズの作り方は、米国西海岸のフュージョン・ジャズの要、デイヴ・グルーシンに通じるものがある。ピアノの個性は「リリカルで耽美的」。ビル・エヴァンスを敬愛する、とあるが納得である。曲作りとアレンジを一手に引き受けることで、ベノワ自身のピアノをしっかりと印象付けている。そんな、ベノワのコンポーザー、アレンジャー&プロデューサーの能力全開のアルバムがこの『Freedom at Midnight』である。

良い曲ばかりである。そして、ベノワ独特のテンポがあって、そのテンポは「ミッド・テンポ」。速弾きは全く無い。ミッド・テンポで「リリカルで耽美的」なピアノを、硬質のタッチで、しっかりと、くっきりと響かせるので、とても印象的で心地良い。そして、フレーズに独特の「間」があって、その「間」が実に印象的。このベノワ独特な「ミッド・テンポ」と「間」に填まれば、もうベノワの音世界にドップリである。

意外に中毒性のある「ミッド・テンポ」と「間」だと感じていて、そんなベノワの個性がこのGRPレーベルからのメジャー・デビュー盤に満載。そういう意味では、ベノワの初期の代表作であり、ベノワの個性を確認するには格好の好盤。僕はベノワの紡ぎ出す、フレーズのテンポ、音の上げ下げの塩梅が大好きで1995年の頃から愛聴している。
 
 

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