ニュー・ジャズ志向の新進ギター
昨日、テリエ・リピダルのギターについて語った折、このリピダルの様な、幽玄で浮遊感のある、かつ切れ味良く、適度に捻れたフレーズを多用した「ニュー・ジャズ」志向の音が特徴の、次世代を担う若手のジャズ系ギタリストはいるのか、と思い立った。端正なネオ・ハードバップ志向の若手ギタリストは何人かの名前が浮かぶのだが、どうなんだろう。
Nir Felder『Ⅱ』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Nir Felder (g), Matt Penman (b), Jimmy MacBride (ds)。シンプルなギター・トリオ編成になる。エレギをフロントに据えてはいるが、アコースティックギターやバンジョー、シンセサイザーなどが多重録音されて、アルバムに詰まっている音は意外に分厚い。加えて、録音後のポストプロダクションに時間をかけている分、音の完成度はかなり高い。
このリーダーのギタリスト、ニア・フェルダー(Nir Felder)は、1982年生まれ。今年で38歳、まだまだ若手である。米国ニューヨーク州出身、2005年にバークリー音楽大学を卒業、数多くのネオ・ハードバップ、ニュー・ジャズ系のミュージシャンとの共演を重ね、ロック・ミュージックから多大な影響を受けた、かなり独創的なギタープレイで徐々にその名を売っている。
使用ギターは、ジャズとしては珍しいフェンダーのストラトキャスター。逆にストラトでないと出せない音、幽玄で浮遊感のある、かつ切れ味良く、適度に捻れたフレーズを個性とする若手ギタリストである。リピダルなど、先達の「ニュー・ジャズ」志向のギタリストと異なるのは、リズム&ビートへの乗りが明確で、浮遊感のある音でも空間を漂う様な音では無い。
しっかりと、リズム&ビートに乗った、ロックっぽいところがファルダー独特の個性と言える。古き良き米国の景色に誘い込むようなギターのアルペジオ、エレクトロニクスを多用したロック・テイストなフレーズ、ディストーション溢れる音で浮遊感と捻れを孕みつつ切れ味の良い、エレ・ジャズ志向の即興パフォーマンス。
新しい感覚の、ニュー・ジャズ志向のギター・トリオ・サウンドがこの盤に詰まっている。2014年にリリースしたファースト盤『Golden Agen』から6年の歳月を経て完成した新盤であるが、フェルダーのギタリストとしての個性の確立を確認出来、次の展開を大いに期待させてくれる好盤に仕上がっている。ポストロックの如き先鋭性とジャズの即興の融合。フェルダーの次作が待ち遠しい。
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