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2020年10月 6日 (火曜日)

デヴィッド・サンボーンの異色盤

秋である。気温も秋らしくなり、色々な種類のジャズが聴ける季節になった。今年の夏は「酷暑」。酷暑の夏はハードなジャズを聴くのが辛い。フリーなんて以ての外。耳当たりの良いボサノバ・ジャズやフュージョン・ジャズに走る。しかし、季節が良くなると放しは別。そんな季節になって、デヴィッド・サンボーンが聴きたくなった。聴き直しを進めていたのだが、2017年4月の『Close-Up』から中断していた。今日、再開である。

David Sanborn『Another Hand』(写真)。1991年の録音。ちなみにパーソネルは、と言いたいところだが、曲毎にパーソネルが異なるので、ここで挙げだしたら切りが無い。ただパーソネルを眺めて判ることは、Charlie Haden (b), Jack DeJohnette (ds), Bill Frisell (g), Don Alias (perc) など、メインストリーム・ジャズ、若しくは、ニュー・ジャズ畑のジャズマンが名を連ねている。

冒頭の「First Song」。素晴らしく流麗で哀愁漂うバラード演奏から始まる。この曲のパーソネルは、David Sanborn (as), Art Baron (tb), Lenny Pickett (ts), Bill Frisell (g), Charlie Haden (b), Joey Baron (ds), Don Alias (perc)。バラード演奏だが、音の雰囲気が今までとは違う。コンテンポラリーな純ジャズなテイスト。ヘイデンのベースがバラード演奏をグッと締める。フリゼールのギターが印象的に感傷的に響く。そして、泣きのサンボーンのアルト・サックスが哀愁のメロディーを紡ぎ上げる。
 
 
Another-hand  
 
 
この盤、それまで、フュージョン・ジャズの代表的アルト・サックス、泣きのサンボーンとして有名を馳せていたデヴィッドが「メインストリーム・ジャズ」な演奏で固めた「異色盤」である。コンテンポラリーな純ジャズな演奏が、かえってサンボーンの「泣きのアルト・サックス」を際立たせているのだから、この盤のコンセプトは「面白い」。

バラードあり、ニュー・ジャズ志向あり、若干フリーな展開あり。このパーソネルで役割分担して、メインストリーム・ジャズをやると、実に硬派でユニークなものになる。ビル・フリゼールのギターとジョーイ・バロンのドラム、チャーリー・ヘイデンのベースが「キーマン」である。この3人のメインストリーム志向のインプロビゼーションが、このアルバム全体の雰囲気を決定付けている。

しかし、メインストリーム・ジャズな志向の中で、やはり目立っているのは、サンボーンのアルト・サックス。特にサンボーンの個性である「泣き」のアルト・サックスが際立つ。優れたジャズマンは、どんなフォーマット、どんな奏法をやらしても大丈夫。サンボーンは純ジャズをやらしても「超一流」。サンボーンが単なる「フュージョン野郎」で無いことがこの盤で証明された。天晴れである。
 
 
 

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