ビル・フリゼールの音の個性
ビル・フリゼールのリーダー作を、初リーダー作から、リリース順に聴き直している。デビュー盤から、良い意味での「変態捻れギター」全開。どこか米国ルーツ・ミュージックの要素を踏襲したフレーズが出てきたり、いきなりアブストラクトにフリーに展開したり、とにかく「やりたい放題」の、良い意味での「変態ギター」である。
Bill Frisell『Lookout for Hope』(写真左)。1987年3月、NYの Power Stationの録音。ECMの1350番。ちなみにパーソネルは、Bill Frisell (g,banjo), Hank Roberts (cello, voice), Kermit Driscoll (b), Joey Baron (ds)。ECMレーベルらしい、個性的なメンバーが集まっていて、明らかに、コンテンポラリーなニュー・ジャズ志向の音が聴こえてきそうだ。
冒頭のタイトル曲「Lookout for Hope」を聴くと、この盤の音の方向性が良く判る。妖しく激しいイメージのギター、ほの暗く哀愁感漂う、ちょっと浮遊感のあるフレーズ。1987年当時、実に新しいイメージの「ニュー・ジャズ」。自由度の高いモーダルな、そして、コンテンションな、それぞれの楽器のせめぎ合い。そこに一気に捻れて突き抜けるフリゼールのエレギ。硬派なストイックなニュー・ジャズ。
2曲目の「Little Brother Bobby」は、どこかほのぼのとした、フォーキーな音世界。フリゼールのギターは捻れてはいるが、印象的で哀愁感漂う切れ味の良いフレーズには思わず耳を奪われてしまう。3曲目の「Hangdog」は、いきなりバンジョーの音色にビックリ。チェロも参加して、古き良き時代の米国のルーツ・ミュージックを聴く様な、そんなユニークな演奏。
ほの暗く捻れた米国ルーツ・ミュージックの要素を活かした「コンテンポラリーな純ジャズ」な展開かと思いきや、4曲目の「Remedios the Beauty」は、ほとんどフリー・ジャズ。無調のインタープレイが繰り広げられる。それぞれのアドリブ・フレーズを聴くと、マイナーではあるがフォーキーな旋律が見え隠れするところが「ミソ」。アルバム全体を覆うコンセプトは外してはいない。
フリゼールのアコギは、米国ルーツ・ミュージックの雰囲気を踏襲した耽美的でソリッドな響き。この盤でのフリゼールのギターは、お得意の「浮遊感」はあまり出てこない。耽美的でソリッドな音がメインなのだが、6曲目の「Melody for Jack」では、しっかりと浮遊感溢れるエレギを弾きまくっている。それでも、そのフレーズの中に見え隠れする「米国ルーツ・ミュージックの要素」。フリゼールの個性は、この「米国ルーツ・ミュージックの要素」を織り込んだ音世界であることが、この盤を聴くと良く判る。
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