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2020年9月 6日 (日曜日)

フリゼールのリーダー作の第2弾

ECMはとにかくユニークなレーベル。ECMはジャズのレーベルでもあり、現代音楽のレーベルでもある。ちなみに、ECMは「Edition of Contemporary Music」の略。

まず、コテコテの4ビートのハードバップなジャズは存在しない。1960年代後半から台頭してきた、ニュー・ジャズ、コンテンポラリー・ジャズ、フリー・ジャズなどがほとんど。フュージョン全盛時代にも、フュージョンには目もくれない。創立者はマンフレート・アイヒャーの美意識が中心の、マンフレート・アイヒャーの感性でのみ、アルバムを制作する。これって、凄いことじゃないかと思う。

今でも、コテコテ4ビートのハードバップなノリや、熱いサックスやトランペットの咆哮に魅了されるジャズ者ベテランの方々から煙たがられる、生粋のニュー・ジャズなレーベルである。そんなユニークなレーベルだからこそ、存在するユニークなジャズ・ミュージシャンが多々いる。このBill Frisell(ビル・フリーゼル)もそんなユニークなジャズ・ミュージシャンの一人。

1951年、アメリカのメリーランド州生まれ。テューバとストリング・ベース奏者の父をもち、クラリネット→サックスを経由して、最終的にギター奏者となった。が、他にバンジョーやウクレレ、ベースなども手掛けるマルチ・プレイヤーでもある。もう既にこの辺りから「変だ」(笑)。

Bill Frisell『Rambler』(写真左)。1984年8月、NYの Power Station での録音。ちなみにパーソネルは、Bill Frisell (g, gu-synth), Kenny Wheeler (tp, cor, flh), Bob Stewart (tuba), Jerome Harris (el-b), Paul Motian (ds)。そんなビル・フリゼールのリーダー作の第2弾。前作は、ソロ&デュオ演奏というシンプルなものだったが、本作は、チューバが入った変則クインテット。ECM系のミュージシャンでしっかり固めている。

ギター・シンセサイザーを駆使して、ヴィブラートとレガートが「てんこ盛り」の長く響く、ロング・トーンが特徴。それをシンセで「捻る捻る」(笑)。ウネウネ、クネクネ、キュイーンなエレクトリック・ギターでその響きは唯一無二。そのロングトーンなシンセ・ギターの音を、ECMレーベル独特のエコーが増幅する。心地良く美しいこと、この上無し。
 
 
Rambler
 
 
そして、彼の音作りは、普通のジャズでは無い。この1985年リリースのリーダー第2作目は、まるで「ブラスバンド」の響き。まるで「ディキシーランド・ジャズ」の様な音作り。参加した楽器が、一斉にドバーッと我先にとアドリブ・ソロを繰り広げる。混沌とした中に、一本筋の通った、不思議なジャズの調べ。

リズムは決して4ビートでは無い。無調和なフリーなリズムに乗って、チューバをはじめ、金管楽器が実にフリーな演奏を繰り広げる。フリーではあるが、演奏全体には不思議と秩序があり、その秩序をコントロールしているのが、ビル・フリーゼルのシンセ・ギター。アバンギャルドな演奏ではあるが、なぜか、懐かしさを感じる、米国のルーツ・ミュージックの響きを感じる、実にユニークな音作りとなっている。

面白いのは、楽器の中で一番目立っているのは、Kenny Wheelerのトランペット。実にトランペットらしい、円やかな響きが、ビル・フリーゼルのシンセ・ギターの音と相性バッチリ。Bob Stewartのチューバの音が実に良いアクセントになっている。無調和なフリーなリズムを機微良く叩き出すPaul Motianのドラムにも感心する。Jerome Harrisのベースも、このアバンギャルドな、懐かしさを感じる、郷愁を誘う古いジャズの底をしっかりと支える。

決して、4ビート、8ビートを基調とした、スタンダードなジャズでは無い。最初は「なんだこれ」と思って投げ出してしまいそうになるんだが、何回か繰り返して聴く毎に、このフリーゼルの不思議な音世界に引き込まれていく。そして、いつの間にか「病みつき」になっている。そんな不思議な魅力に溢れた「変なジャズ」である。

ジャケット・デザインにも、ECMレーベルの美意識が溢れている。良いアルバムです。今でも、その内容は古びれること無い、永遠のコンテンポラリー・ジャズな一枚である。
 
 
 

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