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2020年8月 1日 (土曜日)

不思議と紹介本でよく挙がる盤

ミシェル・サルダビー(Michel Sardaby)。我が国では、ジャズ・ピアノ盤の紹介本には必ず出てくる『Night Cap』というピアノ・トリオ盤だけで、意外と有名な存在である。恐らく、当時のジャズ評論家の方か、ジャズ喫茶のマスターが見つけて、欧州のピアノ・トリオ盤の隠れ好盤としてもてはやした結果だと思っている。サルダビーはもともと「寡作の人」で、50年余のキャリアの中で、15枚程度のリーダー作しかリリースしていない。

このサルダビーのというピアニスト、その個性について、意外としっかりと表現しているものが無くて、3日前の当ブログにも書いたソロ・ピアノ盤を含めて、5〜6枚の彼のリーダー作を一気に聴き通してみた。その結果、このサルダビーというピアニスト、ちょっとクラシックの要素も入った、端正で堅実な「正統ジャズ・ピアノ」。タッチは歯切れが良く、アドリブ・フレーズは流麗。ジャジーな雰囲気はしっかり保持している。つまりは「総合力で勝負」する類のピアニストである。

Michel Sardaby『Night Cap』(写真左)。1970年10月30日、パリでの録音。ちなみにパーソネルは、Michel Sardaby (p), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)。ピアノのサルダビーがリーダーの「トリオ編成」盤である。どういった経緯でそうなったか不思議だが、バックのリズム隊は、当時、モダン・ジャズ・カルテットのパーシー・ヒースとコニー・ケイが担当している。
 
 
Night-cap  
 
 
そのサルダビーを我が国で有名にしたピアノ・トリオ盤である。もともと彼が「マルティニーク島フォールドフランスで生まれ」というちょっと変わった出身であること、そして、このトリオ盤の出だしの「Traveling On」のピアノが、どこかエスニック風で、なんとなく中東や東欧をイメージするマイナーなフレーズを多用しているので、なんとなく怪しげな、胡散臭い印象を残すのだろう。ただ、残りの演奏含め、全編を聴き通して、サルダビーのピアノは決して怪しげでも無ければ、胡散臭さも無い。

ただ印象に残るほどの強烈な個性や弾き回しは無いので、中くらいかそのちょっと上くらいの「総合力で勝負する」ピアニストなんだな、と思ってしまう。ただし、バックのリズム隊、パーシー・ヒースのベース、コニー・ケイのドラムのパフォーマンスがなかなかに優れていて、このリズム隊含めたピアノ・トリオ全体としての演奏はなかなかのものである。確かに、この盤での3者一体となったインタープレイは「聴きもの」である。
 
今ではこの盤レベルの欧州ジャズのピアノ・トリオ盤については色々あるが、インターネットが普及する前は、特に欧州のジャズ盤については情報不足で、こういった「口コミ」による情報が貴重だったのだろう。サルダビーの個性については明確な「掴みどころ」はないが、フランス発のピアノ・トリオ盤として、欧州ジャズのピアノ・トリオ盤として、その雰囲気を楽しめる盤ではある。悪くは無い。好盤である。
 
 
 

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