再びフェンダー・ローズを愛でる
いや〜、この盤を聴いた時、久し振りに「やられたなあ」と思った。久し振りに、フェンダー・ローズだけで演奏するジャズ盤に出会った。なかなか無い、というか、最近、少しずつ、メインストリーム系のジャズの中でもフェンダー・ローズが使われることが増えてきたので、もしや、とは思っていたのだが、今回、やっとそんな「フェンダー・ローズだけで演奏するジャズ盤」に出会った。
フェンダー・ローズとは、もともとは、ローズ・ピアノ(Rhodes Piano)と呼ばれ、1940年代にハロルド・ローズ(Harold Rhodes)によって発明された鍵盤楽器。エレクトリック・ピアノの一種。その中で、楽器メーカーの「フェンダー社」が出しているものを、フェンダー・ローズと呼んでいる。
これが、それはそれは、エレピ系の独特の音がする。鋭い打撃音と長く伸びる減衰音から鳴る独特の音色を発するのが特徴。生の音は、特徴ある澄んだ、アタックの強い音がするが、ピアノに内蔵のトーンコントロールの調整や、アンプをオーバードライブ気味に歪ませた時の低音のうなるような力強い音は独特。
ピアニストにとって、エレピ、特にこのローズは扱い難い楽器みたいで、アコースティック・ピアノが主体の1960年代、後半にマイルスが電気楽器を全面的に採用して、いわゆる「エレ・ジャズ」をやるんだが、ここでこのエレピ、フェンダー・ローズがクローズアップされる。しかし、ほとんどのピアニストは拒否反応を示す。当時、フェンダー・ローズを弾きこなしていたのは、チック・コリアとキース・ジャレットくらいかなあ(ちなみに、当時、ハービー・ハンコックは強烈な拒絶反応)。
Benny Green『Benny's Crib』(写真左)。今年6月のリリース。Benny Green (el-p, ac-p), David Wong (b), Aaron Kimmel (ds), Anne Drummond (fl), Veronica Swift (vo), Josh Jones (congas)。ベニー・グリーンのピアノがリーダーのトリオがベースで、そこにフルート、ボーカル、コンガが客演する編成。特に、この盤の特徴は、ベニー・グリーンが全編エレクトリック・ピアノのフェ ンダー・ローズを使用していること。
それほどアコースティック・ピアノ出身のジャズ・ピアニストからすると、扱い難い楽器であるフェンダー・ローズ。そのフェンダー・ローズをベニー・グリーンは違和感無く、アコピの如く流麗に弾き回している。フェンダー・ローズの特性を良く理解した弾き回しは見事。鋭角に尖った音の特性を抑えて、エッジの丸い柔らかなタッチと少しの揺らぎと伸びのあるトーンを上手く活かして、グリーンはフェンダー・ローズを弾きまくる。
特に、スタンダード曲の中でもミュージシャンズ・チューンズ、「Tivoli (Dexter Gordon)」「Coral Keys (Walter Bishop Jr.)」「Something In Common (Cedar Walton)」「For Tomorrow (McCoy Tyner)」のフェンダー・ローズによる解釈がとてもユニークで面白い。フェンダー・ローズは何もフュージョンやスムース・ジャズだけに使用される「パチもん楽器」では無い。純ジャズに十分に対応するメイン楽器であることがよく判る。
昔、このブログで「フェンダー・ローズを弾きこなすコツって、もしかしたら、爽快感と疾走感溢れるファンキーなピアノが弾けることが最低条件なのかもしれない」と書いたが、意外と言い得て妙かもしれない。ベニー・グリーンもアコピを弾かせたら、爽快感と疾走感溢れるファンキーなピアノを弾く人だったよなあ。
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