現代のジャズ・ギターの好盤
ジャズ・ギタリストの中で、大のお気に入りではないのだが、どうにも隅に置けない、リーダー作に出会うと、ついつい聴き込んでしまうギタリストがいる。「Bill Frisell(ビル・フリセール)」である。この人のギターは「変わっている」。良い意味で「変態ギター」と言っても良い。ジャズトしてノーマルなフレーズが出てこない。圧倒的に個性的な「捻れた」ギターが飛び出してくる。
初めて聴いた時には、この怪しく捻れたエレギの音、そして、どう聴いてもモダン・ジャズギターとは言えない、独特なビート感とスレーズを持った弾き回しに唖然とした。あまりに個性的なので一聴すれば、フリセールのギターと判るが、その癖と個性が強烈で、そう、ピアノで言えば「セロニアス・モンク」に似たところがある。とにかく「変わった(ユニークな)」変則ジャズ・ギターである。
Bill Frisell『Valentine』(写真左)。2020年08月のリリース。ちなみにパーソネルは、Bill Frisell (g), Thomas Morgan (b), Rudy Royston (ds)。ブルーノート・レーベルからリリース。現代ジャズ・ギターの重鎮の1人、個性的な変則ギタリスト、ビル・フリゼールの最新作。フリゼールが切望してレコーディングに至ったという作品である。
ベースのトーマス・モーガンとは、昨年2019年にデュオ盤をECMレーベルからリリース、そして、同年、ビレッジ・バンガードでライヴを実施した折のドラマーのルディ・ロイストン(トーマス・モーガンもベースで参加)。そんな緊密な関係を創り上げてきた3人でのトリオ作品。フリゼールが最も信頼しているメンバーと創り上げたトリオ演奏である。
全編、コンテンポラリーなニュー・ジャズな演奏がてんこ盛り。フリゼールお得意の、従来のジャズには無いユニークなフレーズ展開の数々。そんな限りなく個性的で捻れたフリゼールのフレーズに、ベースのモーガンとドラムのロイスマンが硬軟自在、縦横無尽、緩急自在に応対する。その応対の柔軟性は、フリゼールのあまりに個性的なフレーズを阻害すること無く、逆に個性を浮き立たせ増幅させる様なサポートはお見事。
あまりに個性的で捻れたエレギなので、アブストラクトにフリーキーに展開するかと思いきや、しっかりとベースのモーガンとドラムのロイスマンがリズム&ビートをコントロールし、フリゼールのあまりに個性的なエレギをコンテンポラリーな純ジャズの範疇に帰結させる。そんな良きリズム隊を得て、フリゼールはその個性を最大限に発揮させながら、捻れたエレギを弾きまくる。フロントとバックの相乗効果が素晴らしい、現代のジャズ・ギターの好盤である。
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