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2020年7月17日 (金曜日)

梅雨に穏やかなキャノンボール

梅雨が明けない。というか、このところずっと曇り空か雨なような気がする。部屋の中の湿度は高止まりのままだし、なんだか気分も塞ぎがち。これだけテンションが落ちると、ジャズ鑑賞にも支障をきたす。気持ちをしっかり持っていないと、耽美的な、どこかクールで静的なジャズを選んでいたりする。これではいけない。テンションを上げるべく、キャノンボール・アダレイのリーダー作を物色する。

但し、キャノンボール・アダレイのリーダー作は慎重に選ばないといけない。キャノンボールのアルト・サックスは、健康優良児的なネアカのファンキー・サックス。気合いが入りすぎて躁状態のキャノンボールのアルト・サックスはただただ「五月蠅い」。耳をつんざく位のキンキンのスーッと伸びる高音が、テンションの下がった耳には「辛い」。キャノンボールのリーダー作は、キャノンボールのアルト・サックスが趣味良く、やや抑制された状態のリーダー作が一番良い。

『Cannonball Adderley and the Poll-Winners』(写真)。1961年5月の録音。ちなみにパーソネルが、Cannonball Adderley (as), Wes Montgomery (g), Victor Feldman (p, vib), Ray Brown (b), Louis Hayes (ds)。パーソネルを見た瞬間にあれっと思う。キャノンボールは東海岸中心のジャズメン、ウェス以下、他の4人は西海岸中心のジャズメン。キャノンボールが米国西海岸に巡業に来た時に、たまたま集まったメンバーがこのメンバーだったらしい。
 
 
Cannonball-adderley-and-the-pollwinners  
 
 
自分以外、全員西海岸のメンバーというのが理由なのか、この盤でのキャノンボールは「ジェントルで、程良く抑制された、男前な」アルト・サックスを披露している。健康優良児的な明るい音色だが程良く抑制されているので、キャノンボールのアルト・サックスに乗った「小粋なファンクネス」が前面に出ていて聴き心地がとても良い。尖ったところが無い、力強くジェントルな吹き回しは、キャノンボールの持つ「歌心」を増幅させている。

キャノンボール以外の西海岸ジャズのメンバー中心のリズム・セクションの存在も忘れてはならない。1961年の録音ではあるが、「西海岸ジャズ」独特のお洒落で小粋な弾き回しが演奏のそこかしこに見え隠れして、これがキャノンボールのアルト・サックスを程良く抑制しているのでは、と感じている。特にクールで清楚なフェルドマンのヴァイブがきゃノンボールのアルト・サックスと対照的な音色で、このコントラストが良いアクセントになっている。

東海岸ジャズと西海岸ジャズの邂逅。東西それぞれの個性がバランス良く反映されていて、極上のハードバップ・ジャズに仕上がっている。当時、ジャズメンの人気投票で常に一位を争うプレーヤー達の競演なので、このタイトルが付いた、とのこと。そう言えば、映画「スイング・ガールズ」で、竹中直人扮する小澤先生が、このキャノンボールのリーダー作について熱く語るシーンがあったのを思い出しました。
 
 
 

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