ジャズ喫茶で流したい・176
ジャズ・トランペットについては、意外とバリエーションが狭い。ジャズの歴史において、著名なトランペッターとしては、ビ・バップの祖の一人「ディジー・ガレスピー」、早逝の天才「クリフォード・ブラウン」、そして、ジャズの帝王「マイルス・ディヴィス」。この3人の名が挙がった後、しばらく間が空く感じなのだ。確かに、ジャズ・トランペットとしては、まずこの3人を押さえないと話にならない。
『Bird And Diz : The Genius Of Charlie Parker #4』(写真左)。ビ・バップ晩期、1949ー50年の録音。ビ・バップの祖、Charlie Parker (as), Dizzy Gillespie (tp) の共演盤。ビ・バップの祖であるパーカーとガレスピー、意外と共演盤は少ない。あっても時代が時代だけに音が悪かったりするが、この盤は音も良く、いずれの演奏も水準以上。ビ・バップの完成形を見る想いのする好盤。加えて、ガレスピーのトランペットを理解するのに最適な盤でもある。
この盤に詰まっている演奏は「典型的なビ・バップ」。ビ・バップの教科書の様な演奏がギッシリ詰まっている。アバンギャルドで躁状態の尖った演奏が主で、ビ・バップが流行した頃、一般の音楽マニアからは「うるさくて、騒々しい、ジャズのどんちゃん騒ぎ」に感じたことが良く判る。今の耳には、メリハリの効いた、テクニック優秀な、切れ味抜群な即興演奏で、アレンジだけ見直せば、現代でも充分に通用するポテンシャルの高い演奏である。
この盤の「ビ・バップ」は聴き易い。パーカーのアルト・サックスも、ガレスピーのトランペットも、即興演奏のパフォーマンスについては「安定」しているのだ。ビ・バップなので、アクロバティックにオーバードライブ気味に即興演奏をかましがちなのだが、この盤では、抑え気味に流麗な吹き回しを心がけている様に感じる。これがまあ、見事なアドリブ・パフォーマンスなのだ。特に、ガレスピーのトランペットが判り易い。聴き手を意識した時のガレスピーのトランペットは絶品だ。
クインテットのピアノはセロニアス・モンク。モンクのピアノはご存じの様にタイム感覚と音の重ね方が独特で、通常のビ・バップなピアノでは無い。そして、ドラマーのバディ・リッチも、典型的バップ・ドラムでは無い。リッチ独特のスインギーなドラミングだが、後のハードバップに繋がる、聴かせるドラミング。このモンクとリッチの存在が、パーカーとガレスピー、フロント管の演奏に適度なテンションとスリルを与えている。
ビ・バップとは何か、パーカーのアルト・サックスとは何か、ガレスピーのトランペットとは何か、これらの問いにズバリ答えるような内容の好盤である。パーカーとガレスピーの顔写真、またはイラストをあしらったジャケットにはちょっと「ひく」が、内容はピカイチ。ビ・バップの教科書の様な内容がギッシリ詰まっています。ジャズ者初心者の方々には是非一度は聴いて頂きたい盤でもあります。
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