« ジャズ喫茶で流したい・171 | トップページ | ジャズ喫茶で流したい・173 »

2020年6月 5日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・172

ジャズ・ギターについては、この5年位で世代交代が進んでいる感が強い。もともと、メインストリーム系のジャズ・ギターの中核メンバーが「ジョン・スコフィールド」と「パット・メセニー」。両者とも21世紀に入って、コンテンポラリーな純ジャズ基調のアルバムをリリースするようになった。その内容たるや、素晴らしいもので、この2人は、ジャズ・ギター界を背負って立つ「推しも押されぬ」存在となった。

しかし、この5年前くらいから、この「ジョンスコ」もしくは「メセニー」のフォロワー・イメージの「次世代を担う中堅ギタリスト」が頭角を現してきた。昨日、ご紹介した「カート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)」然り、今日ご紹介する「ウォルフガング・ムースピール(Wolfgang Muthspiel)」然り。そうそう、ちょっと年齢が高いが「ケヴィン・ユーバンクス(Kevin Eubanks)」もいる。

Wolfgang Muthspiel, Scott Colley & Brian Blade『Angular Blues』(写真左)。2018年8月、東京での録音。パーソネルは、Wolfgang Muthspiel (g), Scott Colley (b), Brian Blade (ds)。ギター・トリオである。ECMレーベルからのリリースだが、東京での録音。エンジニアの日本人。これは珍しい。プロデューサーは「マンフレッド・アイヒャー」。これは当然か。2018年の録音だがリリースは今年に入ってから。何故、暫く寝かされていたのかは判らない。

ウォルフガング・ムースピールはオーストリア出身。この盤を包む音の雰囲気は「欧州ジャズ」。特にアコギ(ガット・ギター)の音が心地良い。ECMレーベル独特のエコーに乗って、耽美的で躍動的なアコギの音が鳴り響く。
 
 
Angular-blues-1
 
 
この辺りは「ECMお抱えギタリスト」のラルフ・タウナーを彷彿とさせるが、タウナーの様な「クラシックの様な透明感」は感じ無い。躍動感が印象に残るところから、アコギのイメージは、欧州ジャズの「アール・クルー」かな。エレギの雰囲気は、どこか「パット・メセニー」の雰囲気が見え隠れする。それでもメセニーの様に「ギターシンセ」を使っていないので、メセニーのギターをシンプルにオーソドックスにしたイメージ。

スコット・コリーは現代のファーストコール・ベーシストの1人だが我が国ではあまり名が知られていない。しかし、そのプレイは「勇壮、堅実、柔軟」。曲の雰囲気毎の適応力が抜きんでている。ブライアン・ブレイドは現代のジャズドラマーの第一人者。その「硬軟自在、緩急自在」なドラミングは聴いていて惚れ惚れするし、一聴するだけでブレイドと判る個性的なもの。このリズム隊のパフォーマンスにも目を見張るものがある。

この盤の演奏内容としては、明らかにECMレーベルのギター・トリオの音。ネオ・ハードバップには拘らない、現代のニュー・ジャズの柔軟性の高いインタープレイと思索的なアドリブ展開が満載。2曲だけ(6曲目の「Everything I Love」、9曲目の「I’ll Remember April」)、ジャズ・スタンダードが選曲されているが、この演奏も従来のジャズには無い、禁欲的でユニークなアレンジに乗って、意欲的なインプロビゼーションが展開される。

適度なテンションと透明感。ECMレーベルならではの音作りの中に、ムースピールの個性溢れるジャズ・ギターが鳴り響く。現代のジャズ・ギターをリードする音の1つがここにある。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて      2020.05.11更新。

  ・『Another Page』 1983

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.05.24更新。

  ・Led Zeppelin Ⅱ (1969)

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
Matsuwa_billboard  

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から9年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 

 

« ジャズ喫茶で流したい・171 | トップページ | ジャズ喫茶で流したい・173 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« ジャズ喫茶で流したい・171 | トップページ | ジャズ喫茶で流したい・173 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2023年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

カテゴリー