ワーデル・グレイを聴きかえす。
ビ・バップ。1940年代初頭に成立したジャズの演奏スタイル。現代のジャズに通ずる「モダン・ジャズ」のベースである。即興演奏が好きなジャズマン達が店の閉店後などに、ジャム・セッションをしていて、そこから生まれ成熟したとされる。最初に決まったテーマ部分を演奏した後、コード進行に沿った形で、自由な即興演奏を順番に行う形式が主。ジャズが大衆音楽から芸術音楽に昇華した、最初のスタイルである。
このビ・バップを牽引したのが、まず、アルト・サックスのチャーリー・パーカー。トランペットのディジー・ガレスピー。ドラムのマックス・ローチ。ベースのチャーリー・ミンガス。ピアノのバド・パウエル。この辺りが有名な「ビ・バップ」の祖とされるジャズマンである。こうやって、「祖」と呼ばれるジャズマンを俯瞰すると、テナー・サックスについては「祖」の存在が曖昧である。
いろいろといたはずなんだが、恐らく、オーバードーズで逝去したり、アルト・サックスのチャーリー・パーカーがあまりに凄かったので、テナー・サックスの存在自体が希薄だったのだろう。それでも、歴史を検証するように、あの頃、ビ・バップ時代に遡って、テナーマンを探してみると幾人か、「祖」の候補を見出すことが出来る。
Wardell Gray『Wardell Gray Memorial Vol.1』(写真左)。1949年11月、1950年4月、1953年2月の3つのセッションの録音。ちなみにパーソネルは、Frank Morgan (as), Dick Nivison, Johnny Richardson, Tommy Potter (b), Art Mardigan, Larry Marable, Roy Haynes (ds), Al Haig, Phil Hill, Sonny Clark (p), Wardell Gray (ts), Teddy Charles (vib)。半分以上のジャズマンがその後に繋がっていない。
一言で言うと「素晴らしいテナー・サックス」である。演奏スタイルは明らかに「ビ・バップ」。テナーは良い音で鳴っているし、ピッチも乱れは無い。アドリブは判り易くシンプル。自然とフレーズが湧いて来るイメージで、演奏自体に「作為」が全く感じられない。鼻歌を唄うが如く、判り易いシンプルなフレーズが自然と湧いて来る様なイメージ。
存命であれば、テナー・サックスの「祖」と呼ばれていたかもしれないワーデル・グレイ。1955年5月25日、34歳で急逝した。1950年代に入って仕事が激減。麻薬の影響である。「撲殺」された、とのことだが、恐らくオーバードーズだろう。これだけ力量のあるテナーマンである。1950年代に入って以降、しっかりリーダー作を残しておれば、と思う。惜しい逝去であった。
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テナーをその切り口で見れば、確かに祖はグレイかデクスター・ゴードン、てことになりそうですが、他楽器の祖達に比べると、この時代には突出者がいなかったんでしょうね。良く言えば群雄割拠。結局、テナーのモダン化の完成は、ロリンズを待たねばならなかった、という事でしょうか。
投稿: nick.k | 2020年6月28日 (日曜日) 09時01分