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2020年6月22日 (月曜日)

ビル・エヴァンス『Crosscurrents』

ジャズ・ピアノの最大のレジェンド、ビル・エヴァンスであるが、トリオ編成が全て、と偏った評価をされている傾向が強いのか、トリオ編成以外の、特に管入りのクインテットやカルテットの編成については、評判は芳しく無い。

エヴァンスは伴奏上手なピアニストなので、管入りのクインテットやカルテット編成のバッキングについても、エヴァンスの持ち味、実力を遺憾なく発揮することは間違い無いのだが、どうしたことか、管入りのクインテットやカルテットの編成については手厳しい評価を見ることがある。

Bill Evans with Lee Konitz, Warne Marsh『Crosscurrents』(写真)。1977年2月28日、3月1ー2日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Lee Konitz (as), Warne Marsh (ts), Eddie Gómez (b), Eliot Zigmund (ds)。アルバムのリリースが1978年なので、録音後、内容チェックして「エヴァンスからもOKが出て」、リリースされたものになる。決して「お蔵入り盤」では無い。

もともと、エヴァンスは「レニー・トリスターノ」のクール・ピアノの影響を受けているところがあって、そういう意味では「トリスターノ派」の代表格、アルト・サックスのリー・コニッツ、テナー・サックスのウォーン・マーシュとの共演は望むところだったのでは無いか。エヴァンスが逝去するまで残り3年。この共演は生前にやっておきたかったのではないか、と想像している。
 
 
Crosscurrents  
 
 
さて、その内容であるが、そんなにケチョンケチョンにこき下ろすほど、内容は悪く無い。エヴァンスのピアノは歯切れ良く、ポジティヴだし、弾き回しも揺るぎが無い。彼の個性のひとつである「バップなピアノ」が前面に押し出されていて、かつ、ピアノ・トリオでのパートナーである、ゴメスのベースも、ジグモンドのドラムもいつも通り好調であり、良い感じのパフォーマンスを発揮している。

コニッツとマーシュのサックスについても、ピッチが合って無いだの、イマージネーションに欠けるだの、フニャフニャだの、一部では「ケチョンケチョン」な評価なのだが、今の耳で聴いてみると、そんなに悪く無いと思う。両者とも「トリスターノ派」として活躍していた1950年代前半から半ばのパフォーマンスに立ち返っている様でもあり、内容的にはちょっと「古い」が、決して内容的に劣る、というブロウでは無い。

当時のジャズとして「新しい何か」があるか、と言えば「無い」のだが、トリスターノ派のクール・ジャズの1970年代版として、聴き易く、ソフト&メロウにまとめた、と捉えれば、そんなにおかしい内容では無いだろう。少なくとも、エヴァンス、コニッツ、マーシュ、それぞれがそれぞれの持ち味を活かした、リラックスしたセッションである。

この盤は、評論家筋と一般のジャズ者の方々との評価が大きく分かれる「エヴァンス盤」ではある。まずは自らの耳で聴いて評価することをお勧めする。他人の悪評を鵜呑みにして遠ざけるには惜しい内容のエヴァンス盤だと僕は思う。
 
 
 

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