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2020年5月31日 (日曜日)

1980年代半ばの和ジャズ好盤

1980年代はバブル景気の時代。我が国では1980年代半ばに差し掛かる頃から、バブル景気に乗って、ジャズはお洒落な音楽として捉えられる様になる。イージーリスニング・ジャズ風の毒にも薬にもならない、聴き心地の良さだけを追求した、流行を過ぎたフュージョン・ジャズが横行した。それでも、1980年半ばからの「純ジャズ復古」の動きに乗って、硬派な純ジャズが復活してきた。

大森明『Back to The Wood』(写真左)。1986年8月9日の録音。DENONレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Akira Ohmori (as), Ray Bryant (p), Yoshio Suzuki (b), Yoshiyuki Ohtsuka (ds)。ファンキー・ピアノの雄、レイ・ブライアントが参加しているのが目を引く。ベースに鈴木良雄、ドラムに大塚義之 といった、当時の和ジャズの中堅どころが座る。今回、改めての「聴き直し」である。

日本人アルト・サックス奏者である大森明が渡米生活を終えて帰国、1987年に録音したリーダー作第2弾。大森明は1949年生まれ。録音当時は37歳(今年で71歳になる)。ジャズマンとしてちょうど中堅に差し掛かる充実した年齢。バークリー音楽院に学び、在学中からソロイストとして活躍。卒業後8年間、ニューヨークにて活動。印象に残っているのは、ミンガスの晩年のリーダー作『Me Myself An Eye』と『Somethin’ Like A Bird』に参加している。
 
 
Back-to-the-wood
 
 
この大森の『Back to The Wood』、ジャケットこそ、お洒落なイラスト・イメージの「バブリーな」ものだが、中身はしっかりとしたメインストリーム・ジャズである。大森のアルト・サックスは爽快でブリリアント。躍動感があって端正この上無い。疾走感もあるし、スイング感も申し分無い。このちょっと優等生的なアルト・サックスを、ファンキー・ジャズ・ピアノの雄、レイ・ブライアントは支え鼓舞し、ファンクネスを注入している。

大森のアルト・サックスとブライアントのピアノの組合せが見事。適度なファンクネスが加味されて、それまでの日本人の純ジャズにはあまり聴かれなかった、ファンキーなネオ・ハードバップ調のカルテット演奏になっている。とにかく、伴奏上手と言われたブライアントのバッキングが見事。大森の爽快でブリリアントなアルト・サックスの個性を損なうこと無く、いつになく爽快でブリリアントなバッキングに終始して、大森のアルト・サックスを効果的に引き立てている。

バブリーなお洒落なイラストに惑わされるなかれ。ファンキー・ピアノの雄、ブライアント+日本人中堅リズム隊のピアノ・トリオのバッキングも見事、大森のアルト・サックスは、純ジャズの王道を行く「爽快でブリリアント、躍動感があって端正」。意外とこの盤には、当時のメインストリーム・ジャズの「良いところ」がギュッと詰まっている。1980年代の和ジャズにおける「純ジャズ」の好盤である。
 
 
 

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