ジャズ喫茶で流したい・169
僕のお気に入りのトランペッターについては、絶対的存在として「マイルス・デイヴィス」。そのマイルスの次にお気に入りになったのが「リー・モーガン」。
彼のリーダー作『Candy』を聴いて、一発でお気に入りになった。ブラスが響く様に鳴るトランペット。驚異的なテクニック。そして、フレーズの途中でキュッと締める「音の絞り」、フレーズの終わりをヒュッと押し上げる「音の捻り」。フレーズの「癖」が実に鯔背(いなせ)なのだ。これにはホトホト参った。
高校時代はロックが専門だった。大学に入ってからジャズに鞍替えしたんだが、そういう背景もあって、基本的に4ビートよりは8ビートの方が好きだった。ジャズで8ビートと言えば、まず浮かぶのが「ジャズ・ロック」。1960年代半ば辺りから、ロックの台頭に呼応して、ジャズもこのロックのビート、いわゆる「8ビート」を採用し「ジャズ・ロック」という演奏トレンドを編み出した。そのジャズ・ロックを初めて体験したのが「この盤」。
Lee Morgan『The Sidewinder』(写真左)。1963年12月21日の録音。ブルーノートの4157番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Joe Henderson (ts), Barry Harris (p), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds)。リリース当時、ビルボード・チャートで最高25位を記録し、ブルーノート・レーベル空前のヒット盤となった。ジャズ史上においても、屈指のヒット盤である。
冒頭のタイトル曲「The Sidewinder」が突出して出来が良い。8ビートを取り入れた「ジャズ・ロック」の走りで、実はブルースなんだが、8ビートに乗っているので、スピード感溢れる切れの良いブルースに仕上がった。これが「小粋」で「鯔背」なのだ。シュッとしていて格好良い。イントロから格好良くて、フロント2管+ピアノのユニゾン&ハーモニー、ブレイク後のクランショウの短いベース・ソロ。「粋」である。
この盤、「いち早くロックのリズムを取り入れ、それに成功したジャズ盤」とされるが、冒頭のタイトル曲は確かに8ビートだが、2曲目以降、4ビートの曲もあるし、6拍子の曲もあって、様々なリズム・アプローチを試みたハードバップ盤の様相である。このアプローチについては全曲ほぼ成功を収めており、全編に漂うファンクネスを踏まえて、この盤は「様々なリズム・アプローチを試みたファンキー・ジャズ盤」と言える。
全編8ビートの「ジャズ・ロック」が満載だと勘違いすると、この盤は辛い。しかし、冒頭の「The Sidewinder」だけでも、この8ビート採用のジャズ・ロック曲だけでも、インパクトは絶大。しかし、この盤は「様々なリズム・アプローチを試みたファンキー・ジャズ盤」。決してコマーシャルなジャズ盤では無い。
冒頭のジャズ・ロック曲「The Sidewinder」だけで満足するのは勿体ない。全編聴き通して、意外と硬派でファンキーで純ジャズな演奏を心ゆくまで楽しんで欲しい。ハードバップの発展しきった、ハードバップの最高地点の音の1つを聴くことが出来ます。お勧めです。
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私のトップ・ツーもマスターと同じ。強いて言えば、同率2位でCベイカー。F・ハバードはテクニックではモーガンより上かもしれないけど、やんちゃなモーガンのフレーズ、クリシェの魅力には敵いませんね。
投稿: nick.k | 2020年5月18日 (月曜日) 19時54分