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2020年5月29日 (金曜日)

ファンキーな和ピアノ・トリオ

和ジャズの特集週間になっている。いろいろ、資料を漁っていて、これも聴きたい、あれも聴きたい、とアルバムを集めていったら、かなりの数に上ってきた。これはイカン、ということで、徹底的に和ジャズのアルバムを聴き進めて行くことにした。和ジャズといっても、最近のアルバムが中心となる。昔の好盤についてはリイシューのタイミングを捉えての聴き直しになる。

西直樹『My Little Suede Shoes』(写真左)。1980年2月19日の録音。録音エンジニアは菅野沖彦、トリオ・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、西直樹(p), 山口和与(b), 猪俣猛(ds)。スイング・ジャーナル主催の第14回(1980年度)ジャズ・ディスク大賞の最優秀録音賞(国内録音)を受賞している。つまり、内容も良好、音が良い盤である。

いきなり、昔の好盤のリイシューのタイミングを捉えた聴き直し盤のご紹介である。まだ、CDなど無い、LPの時代。しかも、録音年の1980年はフュージョン・ジャズの大ブームの後半。まだまだ、フォー・ビートなジャズは片隅に追いやられていた時代。

LPの帯紙のキャッチが「フォー・ビートは俺に任せろ!! スタンダード・ナンバーをとり上げて、新鮮で瑞々しい感覚、力強いタッチ、スピード感、よどみなく流れるアドリブ、乗りの良いスイング感で、今後のジャズ界を背負って立つにふさわしい、西直樹の個性を充分に捉えたデビュー・アルバム」とある。なかなか、この盤の特徴を捉えた、優れたキャッチ文句である。
 
 
My-little-suede-shoes_20200529205401  
 
 
冒頭の「Jubilation」から、今までの和ジャズの雰囲気とは異なる。コール・アンド・レスポンスの前奏から、乾いたファンキーな弾き回し。こういった「乾いたファンクネス」丸出しのピアノ・トリオは、それまでの和ジャズにはあまりなかったもの。モードはアーティスティックなのでやるが、ファンキーは俗っぽいからやらない、という当時の和ジャズの傾向に風穴を開けた印象のピアノ・トリオ盤である。

西のピアノのテクニックが凄い。速いフレーズの弾き回しは破綻が無く、乱れが無い。しかも、鍵盤の端から端まで使ったかの様なスケールの広い弾き回し。ダイナミックで幅の広い弾き回しは、まるで、オスカー・ピーターソンのピアノを聴いているみたいだ。アドリブ・フレーズもユニークなもの。バップなピアノであるが、誰かのフォロワーの音では無い、西直樹独特の個性的な音である。

実はこの西直樹、この初リーダー作の後、破竹の勢いで2年間に4枚のリーダー作をトリオ・レコードに残すが、その後は今までに4〜5枚のリーダー作のリリースに留まり、LPの帯紙通り「今後のジャズ界を背負った」とは言い難い。今では、ジャズ・ピアノの教育に力を入れておられるみたいです。

が、この初リーダー作は、非常に内容のあるピアノ・トリオ盤である。ジャケットもなかなか粋なイラスト調で良い感じ。我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、今でも時々かかる「息の長い」ヘビロテ盤である。
 
 
 

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