注目の「日本発エレ・ジャズ」
リーダーの名前を見て、どっかで見た名前だな、と思った。思わずググってみたら「2018年公開の映画「坂道のアポロン」におけるディーン・フジオカ演じる純兄(じゅんにい)の実際に流れる音のプレイ、及び5年前公開の同作アニメ版でのプレイ。星野源が昨年秋リリースした<さらしもの>でのトランペットソロでのフィーチャー等、ここ数年で評価がうなぎ上りのトランペッター」とある。そうか、どこかで見た名前だと思った。
類家心平『RS5pb』(写真左)。2019年11月23日、12月6日の録音。ちなみにパーソネルは、類家[るいけ]心平 (tp), 田中 “tak” 拓也 (g), 中嶋錠二 (p, key, Rhodes), 鉄井孝司 (b), 吉岡大輔 (ds)。ゲストとして、後関好宏 (ts, bs), 橋本歩 (cello), 高橋暁 (vln), 田中景子 (viola) がクレジットされている。先の「ここ数年で評価がうなぎ上りのトランペッター」、類家心平のリーダー作である。
実際に聴く前に、この盤の評を確認すると「スウィング、R&B、ロック、アバンギャルド、フリー、その他、あらゆる音楽的要素を包含しつつRS5pbと言うバンドにより昇華され繰り広げられる音世界」「更なる進化を遂げた鋭くもスペイシーでスケールの大きなバンド・サウンド」とある。何だか具体的イメージが湧かない評価で、これはもう実際に聴いて体感するしかない。
で、聴いてみたら、な〜んだ、と思う。エレクトリック・マイルス(エレ・マイルス)な音世界ではないか。音作りの根幹は明らかに「エレ・マイルス」で、エレ・マイルスでも、1970年代中盤、隠遁時代直前の『Dark Magus』から『Agharta』『Pangaea』の音世界から、黒いファンキーでダークな要素をそぎ落とし、硬派でシャープ、ソリッドで切れ味の良い音をマイルドにポップに変換し、とても聴き易い「エレ・マイルス」風の音世界を構築している。
類家心平の吹くトランペットもどこか「マイルス」を想起させる音であり、フレーズであり、エレ・マイルス者の僕として、聴いていて楽しい限り。エレクトリック・ジャズというのは、リズム&ビートの「キメ」が大変重要なんだが、このバンドのリズム&ビートについては、ブレ無く破綻無く、そして、淀みが無い、明快に「キメ」が効いている。重量感もあり、スピード感もあり、演奏全体にソリッドな躍動感を提供していて気持ちが良い。
オリジナルの新曲以外に、ローリング・ストーンズのバラード曲「Lady Jane」をカヴァーしており、こういうところも、現代のコンテンポラリー・ジャズの王道を踏襲していて、日本発のエレ・ジャズとして、コンテンポラリー・ジャズとして、心強い限りである。内容的にも十分にグローバル・レベルのレベルを維持していて立派だ。エレ・ジャズの好盤として注目の一枚である。
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