1950年代後半の仏ジャズの状況
サックス好盤の聴き直しをしていて、ハードバップ期の欧州という切り口で好盤を探すと、まず、いの一番に引っ掛かってくる名前が「Barney Wilen(バルネ・ウィラン)」。フランスのサックス奏者である。マイルス・デイヴィス『Ascenseur pour l'Échafaud(死刑台のエレベーター)』での共演をはじめとして、Art Blakey や Bud Powell、John Lewis 等、米国のジャズマンが演奏旅行での渡欧の折、パリで録音する際の「ファーストコール」なサックス奏者であった。
バルネ・ウィランは、1937年生まれ。1996年に59歳で逝去している。リーダー作はそれなりに多数あるが、ビ・バップ〜ハードバップ基調の純ジャズについては、1950年代後半と、晩年の1990年代に集中している。1960年代半ばから後半にかけては、何故かロックのアルバムを録音したり、1970年代には、サイケデリック・ジャズやエスニック・ジャズに傾倒している。ジャズマンとしては異色というか、ちょっと訳の判らんところがあったサックス奏者だった。
Barney Wilen『Tilt』(写真左)。1957年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Barney Wilen (ts), Bibi Rovère (b), Jacky Cnudde (p, tracks: B1 to B4), Maurice Vander (p, tracks: A1 to A5), Al Levitt (ds, tracks: A1 to A5), Charles Saudrais (ds, tracks: B1 to B4)。フランスのメンバーで固めた、フロントがウィランのテナー1管のワンホーン・カルテット。
前半の5曲がモーリス・ヴァンデール (p)、ビビ・ロヴェール (b)、アル・レヴィット (ds) のリズム・セクションをバックにスタンダード曲とビ・バップの名曲を演奏。この前半の5曲が、この盤の聴き所となる。いずれの曲でも、バルネ・ウィランのテナーが素晴らしい。ウィランのブロウは「ビ・バップ」仕込み。本家、米国東海岸のビ・バップを良く研究し、自分のものにしているなあ、と感じる。
後半4曲は、ベースはそのままでピアノがジャック・ヌーデ、ドラムがシャルル・ソードレに交代して、セロニアス・モンクのナンバーを演奏。このモンクのナンバーの演奏については、どうにもモンクの物真似っぽく、この演奏を展開するフランスのメンバーには、自らのオリジナリティーの下でのモンク曲を扱うには、まだまだスキルと経験が不足しているようだ。しかし、真摯な演奏であり、健闘している。
本場米国のジャズに学び、それを自分のものとして、オリジナリティーを発揮していく。その発展途上の仏ジャズのレベルと状況が良く判る。この盤のメンバーは皆、健闘している。そして、ウィランのテナーはやはり頭1つ抜きん出ている印象なのだ。ウィランのテナーは、当時の米国ジャズの世界でも通用するレベル。1950年代後半の仏パリのジャズがどういう状況だったのか、それがとても良く判る内容の好盤です。
《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
★ AORの風に吹かれて 【更新しました】2020.04.29更新。
★ まだまだロックキッズ 2020.04.19更新。
★ 松和の「青春のかけら達」 2020.04.22更新。
・チューリップ 『TULIP BEST』
・チューリップ『Take Off -離陸-』
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から9年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« アート・ファーマーの総合力 | トップページ | 温故知新な現代ジャズです。 »
コメント