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2020年3月15日 (日曜日)

現代のネオ・ハードバップの起点

ウィントン・マルサリスは希有なトランペッターである。ジャズ・トランペッターとしては、私見ではあるが、クリフォード・ブラウン、マイルス・ディヴィス、リー・モーガンに次ぐ、ジャズ界最高のトランペッターの一人、と思っている。まず、テクニックが凄い。余芸でクラシック・トランペットのアルバムを出して、クラシック界で一定の評価を得ている位だ。加えて「歌心」がある。

しかし、ジャズに対して、非常に「生真面目」で、ビ・バップからハード・バップこそが「真のジャズ」であり、他のエレ・ジャズ、フュージョンやクロスオーバー・ジャズ、フリー・ジャズ、ファンキー・ジャズなどは、本来のジャズでは無い、堕落したジャズだ、と言い切る。これが、ウィントンに対する「好き嫌い」を分ける大きな要因になっている。全く、そんなこと言うから誤解され、色眼鏡で見られるんだよなあ。悪気は無い。ただ「生真面目」なだけ、なんですけどね。

Wynton Marsalis『Black Codes (From the Underground)』(写真左)。1985年リリース。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Branford Marsalis (ts, ss), Kenny Kirkland (p), Charnett Moffett (b), Jeff "Tain" Watts (ds)。ウィントン+ブランフォードの「マルサリス兄弟」の2管、バックに、カークランドのピアノがメインの、モフェットのベース、ワッツのドラムのリズム・セクションが控えるクインテット構成。
 
  
Black-codes
 
 
パーソネルを見ただけで、出てくる音が想像出来るが、僕はこの盤の音が好きだ。この優秀なサイドメンに恵まれて、ウィントンがそのトランペットの「個性と想い」を100%出し切った好盤といえる。冒頭のタイトル曲「Black Codes」から、ラストの「Blues」まで、この盤に収録されている演奏は全て「充実」の一言。緩んだところなど微塵も無い。優れた演奏テクニックをベースに、モード・ジャズがベースのコンテンポラリーな純ジャズが展開される。

リリース当時は、テクニックをひけらかし過ぎる、スリルに乏しい、堅苦しく生真面目、などと揶揄する向きもあったが、いずれも「的外れ」な評価だなあ、と今になって思う。当時の高いレベルの演奏テクニックは、今やほぼ当たり前の状況になったし、テクニックが優秀なので「破綻しそうな」スリルは当然無いし、生真面目で何が悪い。この盤にあるのは、生真面目で高度なモード・ジャズである。ここまで理路整然と洗練されたモード・ジャズとなると、これは「アート」である。

現代のネオ・ハードバップの起点となるイメージの演奏の数々。そんな象徴的な演奏がこの盤に詰まっている。この盤の収録曲を見渡すと、全7曲中、6曲がウィントンのオリジナル。前クインテット作『Think of One』にも増して、何の気兼ねも無く、テクニックの限りを尽くして吹きまくるウィントン。そんなウィントンの生真面目さ、ひたむきさが良い方向に出た好盤だと思う。この盤には「例の蘊蓄」を垂れるウィントンはいない。
 
 
 
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Never_giveup_4
 

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