タイナーの「アレンジの才」
マッコイ・タイナー逝去の悲しみは癒えない。今日は朝から「マッコイ・タイナー祭り」。初期のリーダー作、特に、ブルーノート・レーベルに残した諸作を順に聴き返しては溜息をついている。やはり、ジャズを聴き始めた頃からずっと40年以上、折に付け聴いてきたレジェンドが亡くなると精神的に堪える。自分にとっても、そろそろ身近な問題だけに辛いものがある。
Mccoy Tyner『Tender Moments』(写真左)。1967年12月1日の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Herbie Lewis (b), Joe Chambers (ds), Lee Morgan (tp), Julian Priester (tb), Bob Northern (french horn), Howard Johnson (tuba), James Spaulding (as), Bennie Maupin (ts)。タイナーがメインのピアノ・トリオに、フロントがトランペット、トロンボーン、アルト、テナーの4管、そこにフレンチ・ホルンとチューバが加わる「ノネット(9人編成)」。
この盤はタイナーを理解する上で重要な盤の一枚。コルトレーンのモード・ジャズを継承しつつ、タイナーならではの解釈を交えて「タイナー・ミュージック」とでも形容すべき、タイナーならではの個性的な音世界を確立している。そして、そのタイナーならではの音世界を確立させているのが、タイナーの「アレンジの才」である。
まず、この盤はノネット(9人編成)での演奏になる。ピアノ・トリオのリズム・セクションにフロントが4管、そこにホルンとチューバが加わる。この9人編成の音を以て、タイナーのアレンジの才により、独特な「タイナー・ミュージック」を実現している。コルトレーン・ミュージックをベースとしながらも、フリーに走らず、モード・ジャズをより高度に洗練した響きは独特なもの。
このノネットを統率して、モーダルな響きを心地良く響かせ、フロント楽器のソロ展開をしっかりと浮き立たせ、かつ、自らのピアノによるインプロビゼーションを際立たせるアレンジには思わず唸る。コルトレーンの下、『Africa/Brass』でドルフィーとアレンジの才をふるった実績はあるが、マッコイ・タイナーの「アレンジの才」が確立された感のある『Tender Moments』である。
録音年は1967年。12月の録音なので、コルトレーン逝去後、5ヶ月が経った頃の録音。まだまだコルトレーンを失った悲しみは癒えない時期ではあっただろう。しかし、そんな悲しみの中で、この盤にじゃ「コルトレーンの音楽と精神は自分が継承していく」という明快な決意めいたものを感じる。この盤は、タイナーの優れた「アレンジの才」を心から愛でることの出来る好盤である。
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