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2020年3月14日 (土曜日)

「素のジャズマン」のウィントン

ウィントン・マルサリスは誤解されることが多い(その殆どが並外れた彼の才能へのやっかみが原因なんだが)。彼が提唱し推進する伝統的ジャズの再評価と復刻・保存・発展についても、とやかく言われることが多い。まあ、ストイックなスイング、ビ・バップからハード・バップが「伝統的なメインストリーム・ジャズ」であり、エレクトリック・ジャズ、フュージョン・ジャズ、フリー・ジャズ、ファンキー・ジャズなどは、本来のジャズでは無い、という旨の、偏った発言をしたこともあり、誤解されても仕方がないんだけれど ・・・。

そんなウィントン、「Standard Timeシリーズ」なるスタンダード集を第1集〜第6集まで出している。これがまあ、有名スタンダード曲から、マニアックな知る人ぞ知る的なスタンダード曲まで、様々なスタンダード曲をカヴァーしている。これがなかなかの内容で聴き応え十分。さすがウィントンと思うんだが、トラペッターとしてウィントンは、スタンダードの焼き直しより、オリジナル曲による演奏の方が僕は好きだ。スタンダード曲集は伝統的ジャズの範疇なので、ウィントンはかなり生真面目に演奏していて、ちょっと固くて、ジャズ的な面白さが半減している。

Wynton Marsalis『Think of One』(写真左)。1983年のリリース。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Branford Marsalis (ss, ts), Kenny Kirkland (p), Phil Bowler (b), Ray Drummond (b), Jeff "Tain" Watts (ds)。マルサリス兄弟がフロント2管のクインテット編成が基本。ちなみにウィントンの兄はサックス奏者のブランフォード・マルサリス、弟にトロンボーン奏者のデルフィーヨ・マルサリス、ドラム奏者のジェイソン・マルサリス。4兄弟でジャズ・ミュージシャンという珍しい存在。
 
 
Think-of-one  
 
 
さて、アルバムの話を。この盤、ウィントン22歳の完璧な演奏である。この盤のリリース当時、即ゲットして聴いたのだが、ジャズにおいて、これだけ格調高く、アーティスティックに演奏することが出来るとは思わなかった。収録された8曲の内訳として、3曲がスタンダード、3曲がウィントンのオリジナル、あと2曲はバンド・メンバーのオリジナル、となっている。この盤では、特にこのウィントンとバンド・メンバー(カークランドとドラモンド)のオリジナルでの演奏が充実している。

オリジナル曲なので、何の気兼ねも無く、テクニックの限りを尽くして吹きまくっているウィントンが頼もしい。バックのメンバーの演奏も同様で、清々しいまでの、技術の限りを尽くして、吹き倒し、弾き倒すこの盤の内容は「聴きもの」である。曲毎のアレンジも洒落ていて、間を活かした余裕ある演奏傾向も含めて、この盤については「テクニックの高さ」が耳に付かない。逆に爽快感すら感じるテクニックの高さ。アレンジと、それぞれのミュージシャンの持つ「歌心」の賜である。

テクニックの限りを尽くして、良きアレンジの下、トランペットを吹きまくるウィントンのひたむきさ、真摯さが良い方向に出た好盤である。ジャズにポップな要素を求める向きにはちょっと聴き疲れするかもしれないが、現代ジャズの、特に80年代ネオ・ハードバップの1つの基準となる位の高いレベルの内容で、ジャズを聴く上では避けて通れない盤だと僕は思う。この盤のウィントンは、例の理屈っぽいウィントンでは無い。素のジャズマンとしてのウィントンがこの盤には存在している。
 
 
 

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