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2020年3月24日 (火曜日)

奇跡の様なベース1本のソロ盤

ECMレーベルのアルバムのカタログを眺めてみると、やはりニュー・ジャズと呼ばれる即興演奏(基本はモードかフリー)をメインにジャズ的アプローチを旨とした演奏が多い。従来のハードバップや、その深化形であるファンキー・ジャズやソウル・ジャズなど、大衆向けポップ志向のジャズは全く無い。

つまりは、ECMレーベルは商業主義から離れたところにあるレーベルで、米国のジャズ・レーベルとは一線を画している。逆に、このカタログで経営的に問題が無いのかどうか、心配になる。ジャズをアートとして捉え、マンフレート・アイヒャーが選んだ「今日的」な音楽を記録し、世に問う。1969年創立なので、レーベルとしての活動はもう50年にもなるのだから、経営は大丈夫なんだろう。

Gary Peacock『December Poems』(写真)。1977年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Gary Peacock (b), Jan Garbarek (ts, ss, tracks 2 & 4) 。パーソネルを見て判るように、2曲だけ、ガルバレクのサックスが入るが、基本はベーシスト、ゲイリー・ピーコックのベース1本のソロ盤である。おおよそ、商業主義にそぐったアルバムでは無い。
 
 
December-poems
 
 
ベーシストが基本的にソロ演奏だけでアルバムを一枚、成立させるのは至難の業である。ベースは低音がメインなので、旋律を奏でる場合、テクニックがイマイチだとメロディーラインが追いにくい。リズム&ビートだってそうだ。多重録音であれ、ベースが旋律楽器を担当するので、音質がかぶる。この「かぶり」を克服する必要がある。アコースティック・ベースという楽器の性格上、よっぽどのことが無いと成立しない。

が、この盤はベース1本でアルバムが成立している。ピーコックの類い希なる超絶技巧なベースがそれを可能にしている。とにかく凄まじいばかりの目眩くテクニックの数々。まるで、アコースティック・ベースが唄っているようだ。素晴らしいのは、アコースティック・ベースそのままで、弾き出される音のバリエーションが豊かなこと。ベース1本なのに、アルバムを聴き通して、全く飽きが来ない。

アコースティック・ベースが、これだけハイ・テクニックでアーティスティックに演奏されるなんて「驚き」である。その「驚き」の記録がここにある。さすが、ECMレーベルである。ベース1本のソロ盤を通常のカタログの中で、普通に何気なくリリースする。さすが、欧州ジャズ、ニュー・ジャズの老舗レーベルである。さすが、マンフレート・アイヒャーである。奇跡の様なベース1本のソロ盤がここにある。
 
 
 

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