テナー・サックス+弦楽四重奏
ジャズは様々なジャンルの音楽と融合する。他のジャンルの音楽はある特定の音楽ジャンルと融合することはあっても、ジャズの様に複数の音楽ジャンルと何の違和感も無く融合する音楽ジャンルは他に無い。ジャズと他の音楽ジャンルとの融合の歴史を振り返ると、まず1950年代にジャズとクラシック音楽との融合の流行があった。ジャズの融合の歴史の中で、一番歴史があるのは「クラシックとの融合」であろう。
Joshua Redman & Brooklyn Rider『Sun on Sand』(写真左)。ちなみにパーソネルは、ジャズのカルテットとして、Joshua Redman (ts), Scott Colley (b), Satoshi Takeishi 武石 聡 (ds)。弦楽四重奏の名前は「Brooklyn Rider」。弦楽四重奏のメンバーとして、Colin Jacobsen, Johnny Gandelsman (violin), Nicholas Cords (viola), Eric Jacobsen (cello)。2015年4月29,30日,5月1日NYCのSear Sound録音。
パーソネルを見渡して、この盤、異色の企画盤になる。ジャズとクラシック(弦楽四重奏)が織りなす融合音楽。アルバム全体の雰囲気として、ジャズらしいノリ・スリルと現代クラシックらしい荘厳さとがバランスよく融和している。パトリック・ジマーリのアレンジが実に効いている。ストリングスの一糸乱れぬ精緻なアンサンブルをバックに、メインストリーム・ジャズな、即興&自由度の高いカルテット演奏が展開される。この「一糸乱れぬ精緻」と「即興&自由度の高い」の対比がこの盤の「肝」である。
ジョシュア・レッドマンのテナーについては、正統派で端正で品行方正。ジャズ・テナーのモデルにしても良い位の「品行方正」さで、メインストリーム・ジャズの中で演奏すると、余りの端正さが故に、余りに優等生的なテナーで、ちょっと面白く無い雰囲気が漂うことがある。逆に、今回の「ジャズとクラシック(弦楽四重奏)が織りなす融合音楽」の様に、異種格闘技風セッションにおいて、ジョシュアのテナーがその個性を最大限に発揮する傾向にある。
この盤でのジョシュアのテナー・サックスは良く鳴り、流麗にアドリブ・フレーズを吹き上げる。ジョシュアのテナー・サックスの一番良いところが、この盤で溢れている。この盤の一番の注目ポイントは、このジョシュアのテナーの伸び伸びとしたブロウ。このジョシュアの即興&自由度の高い「ジャズらしいサテナー」を、一糸乱れぬ精緻なアンサンブルで弦楽四重奏がガッチリと受け止めている。
とにかく、ジョシュアのテナーが良い意味で「目立つ」。そして、弦楽四重奏の演奏が「耳につかない」。というのも、弦楽四重奏が一糸乱れぬ精緻なアンサンブルでありながら、リズミカルなビートに乗せたジャジーなフレーズを連発しているのだ。そんなジャジーな弦楽四重奏のお陰で、ジョシュアのテナーの良いところが「目立つ」。この企画盤、実は、ジョシュアのテナー・サックスを愛でるのに最適なアルバムである。
東日本大震災から8年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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