基本に始まり、基本に終わる
ミュージシャンというもの、覚えて貰おうとするなら「個性を身につける」ことが大切で、他と比較して抜きんでるとしても「個性を身につける」ことが大切になる。しかし、この個性が強烈であればあるほど、その一度身につけた個性を、本人の意向に関係無く手放せなくなる。ファン(聴き手)が他の個性に走ることを許さないのだ。これはミュージシャン本人にとってはどうなんだろう。
Eddie Harris Quartet『Freedom Jazz Dance』(写真)。1994年6月18日、N.Y.の Clinton Studio “A”での録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts), Jacky Terrasson (p), George Mraz (b), Billy Hart (ds)。ヴィーナス・レコードからのリリース。Eddie Harris(エディ・ハリス)と言えば「ミスター・ファンキー・サックス」で知られる。所謂、ソウル・ジャズの代表的サックス奏者である。
大概、レス・マッキャンと組んだ『Swiss Movement』のみが代表作として挙げられる。『Swiss Movement』はソウル・ジャズの好盤である。エディ・ハリスはファンクネスたっぷりの、歌心満載、ポジティヴで陽気な「ソウルフルなサックス」が個性。このソウルフルなサックスを武器に、こってこてファンキーに吹きまくり、ラップを織り交ぜたり、ファンク風に吹いたかと思えば、コルトレーンの難曲「Giant Steps」をいとも容易く吹き上げたり、多様なスタイルを吹き分けた。
しかし、である。この『Freedom Jazz Dance』は、そんなエディ・ハリスが、ソウル・ジャズに走ること無く、硬派でスタンダードでハードバップなジャズを吹きまくる好盤。冒頭のタイトル曲「Freedom Jazz Dance」はエディ・ハリス作の名曲。ミュージシャンズ・チューンとして多くのジャズメンに演奏されている。しかし、2曲目以降の曲名を見ていくと、かなりコッテコテのスタンダード曲が並んでいる。
ソウル・ジャズのハリスが、スタンダード曲をソウル・ジャズ風に吹きまくるのかと思いきや、実に硬派にハードバップ風に吹きまくっている。これが実に良い。エディ・ハリスって、やっぱり優れたテナー・サックス奏者やったんやなあ、と感心することしきり。とにかく上手い。情感タップリにストレートに、ブラスを輝く様に震わせながら、実にテナー・サックスらしい音で吹き進めていく。
バックを固めるのは、厳選されたリズム・セクション。硬派でスタンダードでハードバップなジャズを吹きまくるエディ・ハリスをしっかりとサポートする。この盤、エディ・ハリスが残した最後のスタジオ録音盤だそうだ。ハリスはこの盤の録音の2年後、62歳で逝去する。最後のスタジオ録音の一枚が、このハードバップで、ストレート・アヘッドなブロウで固めたスタンダード集。ジャズマンとして「基本に始まり、基本に終わる」。そんな大団円な感じがとても素敵なアルバムである。
東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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