ネオ・ハードバップなアルト合戦
ハードバップ時代には、大人数のジャム・セッションや、同じ楽器が複数本、フロントで凌ぎを削るバトル・セッションなどの「聴いて楽しい企画盤」が結構あったやに記憶している。録音してアルバムにする方としても、ジャズメンを多く集めて、打合せをして「せーの」で演奏させて「ハイ上がり」という手っ取り早さもある。
1980年代後半の純ジャズ復古以降、そういった「大人数のジャム・セッション」や「フロントで凌ぎを削るバトル・セッション」をメインとした企画盤を見なくなった。ジャズの演奏技術が進歩して、様々な演奏フォーマットで演奏することが可能になったことと、演奏する側も録音してアルバム化する側も、アルバムを作るということに真摯に向き合うようになったこととが併せ持ってそうなったのだと思っている。
Vincent Herring, Bobby Watson & Gary Bartz『Bird at 100』(写真左)。2019年8月30, 31日 & 9月1日、NYの「SMOKE Jazz Club」でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Gary Bartz (as), Vincent Herring (as), Bobby Watson (as), David Kikoski (p), Yasushi Nakamura (b), Carl Allen (ds)。アルト・サックスが3本フロント+ピアノ・トリオのリズム・セクション。
『Bird at 100』のタイトルを見て、Bird=Charlie Parkerで、この盤は「チャーリー・パーカー」のトリビュート盤かな、と当たりを付ける。収録された曲名を見て、その「当たり」が確信に変わる。収録曲9曲中、チャーリー・パーカーの作品が3曲、パーカーが好んで演奏した曲が3曲で「3分の2」を占める。フロントの3人はアルト・サックス奏者。3者共通の憧れであり目標である「チャーリー・パーカー」。
3人のアルト・サックス奏者のパフォーマンスを聴いていると、3人ともチャーリー・パーカーに対する敬愛の情について相当なものがあると感じる。伝説の巨人「チャーリー・パーカー」と真っ直ぐに対峙して、3者3様、個性を発揮して、しっかりとパフォーマンスしている。バックのリズム・セクションもしっかりとハードバップな響きを宿していて素晴らしい。
1940年代後半から1950年代前半のビ・バップ〜ハードバップ時代の音世界の雰囲気をしっかりと押さえつつ、演奏内容はストレートな21世紀の「ネオ・ハードバップ」。3人のアルト・サックスのバトルを聴くことが出来る、ジャッキー・マクリーン作の「Bird Lives」など、手に汗握る名演である。良い内容の企画盤である。
東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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