異色のモーガンを聴くには面白い
録音当時、何故かお蔵入りになった音源ばかりを発掘してリリースしたシリーズの「Blue Note Classic LT series」。当時、何故かお蔵入りになった音源については、やはり当時のブルーノート・レーベルの専属ジャズマン、御用達ジャズマンのリーダー音源は多い。つまり、御用達の人気ジャズマンについては録音回数も多くなるので、お蔵入り音源になる確率も高くなるのだろう。
Lee Morgan『Taru』(写真)。LT-1031番。1980年、ジャズ音源の「発掘男」マイケル・カスクーナによる発掘リリース。実際には1968年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Bennie Maupin (ts), John Hicks (p), George Benson (g), Reggie Workman (b), Billy Higgins (ds)。リーダーは、当時30歳、キャリアとしては既にベテランの域に入った、トランペット担当のリー・モーガンである。
脇を固めるサイドマンの面子が物々しい。テナーのベニー・モウピン、ピアノのジョン・ヒックス、ベースのレジー・ワークマン、ドラムのビリー・ヒギンス。いずれも若手の「新主流派」の面子である。いわゆる「モード・ジャズ」の担い手ばかり。そこに、後のソフト&メロウの「歌って弾きまくる」フュージョン・ギタリストであるジョージ・ベンソンが参加している。
当時のブルーノート・レーベルとしては、尖ったパーソネルによる演奏なので、さぞかし、硬派でビターな「モード・ジャズ」が展開されるのか、と予想する。そこにモーガンが割って入って弾きまくるのか。で聴き始めると、アップ・テンポのキャッチーな曲、バラッド、ジャズ・ロック調のナンバーで構成されているのに気が付く。今までの「硬派で鯔背なモーガン」とはちょっと異質の雰囲気。
お得意のファンキー・チューン「Get Youself Together」、流麗でポップなジャズ・バラードのタイトル曲「Taru」、モーガンには珍しい、3拍子ジャズの「Haeschen」、ポップで鯔背なモーガンが格好良い。しかしながら、この「ポップな」モーガンは、どうにもらしくない。面白いのは、サイドマンの中では、ギターのベンソンだけが、この「ポップな」音作りにマッチした弾きっぷりなのだ。
他の「新主流派」の猛者たちはちょっと不完全燃焼の面持ちである。この盤、このパーソネルからすると、ちょっと「ポップに過ぎる」感じがする。聴き流すには良いが、スピーカーと対峙して聴き込むにはちょっと「お尻がこそばゆい」。異色のモーガンを聴くには面白い内容だが、硬派で鯔背なハードバッパー、モーガンとしてはちょっと異質。その辺が、録音当時、お蔵入りになった理由かなあ。でも客観的に聴くと内容は良い。モーガンの本質に合わないと感じるだけ。
東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« 聴き易いアンドリュー・ヒル | トップページ | こんなアルバムあったんや・125 »
コメント