こんなアルバムあったんや・125
ジャズは良い意味で「何でもアリ」な音楽ジャンルである。そういう意味で自由度の高い、融通の利く音楽ジャンル、と言える。クラシックともポップスとも違う。もちろん、ロックとも違う。クラシックは極力、譜面通りに演奏するのが基本だし、ポップスやロックは「繰り返し」の音楽だ。ジャズは、必要最低限の決め事の下での即興が基本で、ベースとなるフォーマットやビートは自由。つまりは「やったもん勝ち」という志向が強い。
Monty Alexander『Wareika Hill Rastamonk Vibrations』(社員左)。2019年の作品。セロニアス・モンクの楽曲にスカやレゲエなどのジャマイカのテイストを加えた作品。タイトルの「Wareika Hill」とは、ラスタファリアンの聖なる山のこと。モンティの本気度が窺い知れる。しかし、あのジャズの中でも、とびきりユニークな楽曲の作り手、セロニアス・モンクの楽曲をスカやレゲエのリズム&ビートでジャズるとは。これは実にユニーク。
さて、リーダーのピアニスト、モンティ・アレキサンダーは、1944年6月6日、ジャマイカのキングストン生まれ。クラシック・ピアノを学び、ハイスクール入学後はポピュラー系もこなしつつ、ニューヨークへ進出。演奏スタイルはラテン的フレーズを宿しつつ、パワフルでハッピー。とにかく多弁、弾き倒すスタイルで音符が多い。ジャズ者によっては「五月蠅い」と敬遠する向きもあるくらいである。しかし、そんなフレーズは品格が漂い、決して俗っぽくない。
モンクの楽曲は「間とタイミング」を活かした楽曲が多く、そんな楽曲に2拍子のレゲエ・ビートを当てて、ピアノを弾きまくるのだが、面白いのは、とにかく多弁、弾き倒すスタイルで音符が多いモンティ・アレキサンダーのピアノが、2拍子に当てるが故に、適度に音が散って、適度に音が間引かれて、モンクの楽曲のユニークなフレーズがくっきりと浮かび上がるのだ。これは面白い。
モンクの楽曲をレゲエ・ビートでアレンジするなんて発想が凄い。もともとモンティ・アレキサンダーはジャマイカのキングストン生まれ。もちろん、レゲエは子供の頃から親しんだビートだろうし、ボブ・マーリーはヒーローだろう。しかし、ボブ・マーリーの楽曲をジャズにするのでは無く、モンクの楽曲をレゲエ・ビートでジャズるなんて。モンティの品格漂うパワフルなピアノ・タッチと相まって、ツービートに乗って、明るく陽気に唄うモンクス・ミュージック。
モンクス・ミュージックとレゲエ、絶対合わない様な感じがするんだが、こうやってアレンジしてみると、しっかりと融合してジャズになるのだから、ジャズの懐の深さ、融通度の高さに改めて感じ入るばかりである。レゲエのビートに乗って、パワフルでハッピー、多弁で陽気なモンティのピアノがポジティヴに印象的に響き渡る。この盤、モンティのピアノを愛でるのにも良い好盤である。いや〜、今回は面白いチャレンジを聴かせて貰った。
東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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