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2020年2月 4日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・77

最近、気がついたのだが、「Trio Records(トリオ・レコード)」のアルバムが相当数、リイシューされている。CDでのリイシューのみならず、音楽のサブスク・サイトにもアップされているのだから嬉しいこと、この上無し。

さて、このトリオ・レコードとは、オーディオメーカー「トリオ」のレコード部門が立ち上げたレーベルである。活動期間は1969年〜1984年。日本の歌謡曲など、バラエティーに富んだジャンルを扱っていたが、ジャズのジャンルでは、日本人ジャズの好盤を多くリリースしている。

ちょうど、僕がジャズを聴き始めた頃がトリオ・レコードの全盛期で、毎月毎月、魅力的な内容の日本人ジャズのアルバムをリリースしていたのを覚えている。大学近くの「秘密の喫茶店」のママさんから、 本田竹曠『ジス・イズ・ホンダ』を聴かせてもらったのが、トリオ・レコード盤の最初。エコーが適度にかかった、ニュー・ジャズ志向の音が実に魅力的だった。

本田竹曠トリオ『I Love You』(写真)。1973年録音。ちなみにパーソネルは、本田竹曠 (p), 鈴木良雄 (b), 渡辺文男 (ds)。ちょっと「おどろおどろしい」ジャケットに引くが、どうして、その内容は時代の先端を行く、素晴らしいモード・ジャズ。日本人ジャズのピアノ・トリオがゆえ、ファンクネスはほぼ皆無、それでいて、スインギーでダイナミックな展開は「世界レベル」。 
 
 
I-love-you-honda
 
 
トリオ・レコードは ECMレコードの先進性をいち早く見抜き、「ECMをトータルに販売展開する」ことをメインに、1973年に世界初の独占販売契約を締結している。トリオ・レコードのジャズの音作りは、このECMレコードの音作りを参考にしている様に感じる。この本田のトリオ盤を聴いていてそう思う。適度にかかった印象的なエコー。切れ味の良い音像。明確な音の輪郭。音の「間」を活かした録音志向。いわゆる「ニュー・ジャズ」な録音である。

本田のピアノは素晴らしいの一言。ピアノを本当にフルに鳴らしているなあ、と感じるし、タッチの正確さは特筆もの。ドライブ感とスイング感がほどよく共存し、モードもコードも自由自在。アドリブ・フレーズのイマージネーションは幅広く深い。この盤での本田のピアノは、キース・ジャレットと比肩するくらい、素晴らしい内容を誇っている。

日本人として、思わず「胸を張って」しまいそうな、そんな素晴らしいジャズ・ピアノ。歌心満点に高速フレーズで唄いまくる「アイ・ラヴ・ユー」「サニー」「枯葉」が爽快感満点。その指捌きに惚れ惚れする。そうそう、ゲイリー・ピーコックとジャック・デジョネットのリズム隊を端正に精緻に仕立てたような、鈴木のアコベと渡辺のドラムのリズム隊も特筆もの。

日本人ジャズが、世界レベルのピアノ・トリオをやっている。この盤を聴いた時、心から思った。そして、思わず心の中で「胸を張って」いるのだった。
 
 
 
東日本大震災から8年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

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