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2020年2月の記事

2020年2月29日 (土曜日)

ピート・ジョリーの代表盤の一枚

一昨日のブログ(左をクリック)で、久し振りに「Pete Jolly(ピート・ジョリー)」のピアノを聴いて、そういえば、ということで、ピート・ジョリーのリーダー作を聴き直している。ピート・ジョリーは、米国西海岸ジャズに属するジャズ・ピアニスト。1932年生まれ、2004年11月にて72歳で逝去している。ジャズ・ピアニストとしては意外と寡作で、生涯で20枚程度のリーダー作に留まっている。

特に、1970年から1990年の20年間はリーダー作はほぼ途絶えている(1980年と1985年に2枚だけリリースされている)。スタジオ・ミュージシャンとして活躍していたみたいで、1990年代に2枚ほど、21世紀に入って1枚。記憶に留めておけ、と言われるにはちょっと辛い、まさに「寡作」のジャズ・ピアニストである。彼の「聴くべきリーダー作」は、1950年代半ばから1960年代半ばに集中している。

Pete Jolly Trio & Friends『Little Bird』(写真左)。1962年11月と1963年1月、Hollywoodでの録音。ちなみにパーソネルは、Pete Jolly (p), Chuck Berghofer (b), Larry Bunker (ds), Howard Roberts (g), Kenny Hume (perc)。ピート・ジョリーのピアノ・トリオにギターとパーカッションが入ったクインテット構成。ピアノ・トリオに加えて、ギターとパーカッションがさり気なく入っているところは、優れたアレンジが特徴の米国西海岸ジャズらしい。
 
 
Little-bird
 
  
可愛い鳥のイラストが特徴のジャケットが印象的。このジャケットだけで、ぼくはこの盤の虜になりました(笑)。この盤を録音した頃のピート・ジョリーは30歳。ジャズ界ではまだまだ若手のピアニストで、溌剌とした流麗なピアノ展開が見事である。タッチは堅実なんだが、ガーンゴーンと叩くことは無い。あくまで流麗にあくまで小粋にピアノを弾き進める。実に米国西海岸ジャズらしいピアノである。
 
速弾きもバラードの様なゆったりとした弾き回しも、いずれにおいても「流麗」なピアノ。タッチも粒立ちが良く切れ味の良いもの。しかし、絶対に叩かない。あくまで、ピアノを指で「弾いている」というのが良く判るタッチ。しかもテクニックは相当に高い。選曲も、このジョリーのピアノの個性をしっかり活かせるスタンダード曲がメインで、流麗なピアノにポップな雰囲気が加味されていて、聴いている耳に実に心地良いピアノである。

誰かが「”粋”が、蝶ネクタイ姿で軽やかにピアノを弾きまくってるようなピアノ」と形容したが、実に言い得て妙。1曲目のピート・ジョリー作の「Little Bird」は、キャッチャーな曲想のボサノバ曲で格好の良い演奏で、このタイトル曲の演奏の雰囲気がこの盤に詰まっている演奏の雰囲気を代表している。明るくてスィンギー、ベースのバーフォーファー、ドラムのバンカーとの息もピッタリで、ピアノ・トリオの優秀盤としても楽しめる。ピート・ジョリーの代表盤の一枚である。
 
 
 
東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2020年2月28日 (金曜日)

基本に始まり、基本に終わる

ミュージシャンというもの、覚えて貰おうとするなら「個性を身につける」ことが大切で、他と比較して抜きんでるとしても「個性を身につける」ことが大切になる。しかし、この個性が強烈であればあるほど、その一度身につけた個性を、本人の意向に関係無く手放せなくなる。ファン(聴き手)が他の個性に走ることを許さないのだ。これはミュージシャン本人にとってはどうなんだろう。

Eddie Harris Quartet『Freedom Jazz Dance』(写真)。1994年6月18日、N.Y.の Clinton Studio “A”での録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts), Jacky Terrasson (p), George Mraz (b), Billy Hart (ds)。ヴィーナス・レコードからのリリース。Eddie Harris(エディ・ハリス)と言えば「ミスター・ファンキー・サックス」で知られる。所謂、ソウル・ジャズの代表的サックス奏者である。

大概、レス・マッキャンと組んだ『Swiss Movement』のみが代表作として挙げられる。『Swiss Movement』はソウル・ジャズの好盤である。エディ・ハリスはファンクネスたっぷりの、歌心満載、ポジティヴで陽気な「ソウルフルなサックス」が個性。このソウルフルなサックスを武器に、こってこてファンキーに吹きまくり、ラップを織り交ぜたり、ファンク風に吹いたかと思えば、コルトレーンの難曲「Giant Steps」をいとも容易く吹き上げたり、多様なスタイルを吹き分けた。
 
 
Freedom-jazz-dance-1
 
 
しかし、である。この『Freedom Jazz Dance』は、そんなエディ・ハリスが、ソウル・ジャズに走ること無く、硬派でスタンダードでハードバップなジャズを吹きまくる好盤。冒頭のタイトル曲「Freedom Jazz Dance」はエディ・ハリス作の名曲。ミュージシャンズ・チューンとして多くのジャズメンに演奏されている。しかし、2曲目以降の曲名を見ていくと、かなりコッテコテのスタンダード曲が並んでいる。

ソウル・ジャズのハリスが、スタンダード曲をソウル・ジャズ風に吹きまくるのかと思いきや、実に硬派にハードバップ風に吹きまくっている。これが実に良い。エディ・ハリスって、やっぱり優れたテナー・サックス奏者やったんやなあ、と感心することしきり。とにかく上手い。情感タップリにストレートに、ブラスを輝く様に震わせながら、実にテナー・サックスらしい音で吹き進めていく。

バックを固めるのは、厳選されたリズム・セクション。硬派でスタンダードでハードバップなジャズを吹きまくるエディ・ハリスをしっかりとサポートする。この盤、エディ・ハリスが残した最後のスタジオ録音盤だそうだ。ハリスはこの盤の録音の2年後、62歳で逝去する。最後のスタジオ録音の一枚が、このハードバップで、ストレート・アヘッドなブロウで固めたスタンダード集。ジャズマンとして「基本に始まり、基本に終わる」。そんな大団円な感じがとても素敵なアルバムである。
 
 
 
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2020年2月27日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・161

我が国では、米国西海岸ジャズの情報がまだまだ不足している。基本的に我が国のジャズは米国東海岸ジャズ偏重だったから、もともと米国西海岸ジャズの情報は不足しているのは当たり前なんだけど、資料レベルの情報がどうにもこうにも不足している。マイナーなジャズマンについては、生年月日や経歴について調べるのは大変で、まず日本語のものは無い。英語の資料が殆どで、時々、ドイツ語が混じったりする。

The Pete Jolly Trio『Yeah!』(写真左)。1995年10月10, 11日、ハリウッドのSage & Sound Studio での録音。ちなみにパーソネルは、Pete Jolly (p), Chuck Berghofer (b), Nick Martinis (ds)。Pete Jolly(ピート・ジョリー)って、1950年代以降、米国西海岸ジャズにおける代表的ピアニストの一人。1970年代より一旦、録音は途絶えたが、1993年に復活。この盤は復活後第3弾である。

ジョリーは2004年11月、72歳で逝去しているので、この盤はジョリーの晩年の好盤と言える。1993年復活以降もこの盤を含めて、4枚ほどしかリーダー作を出していないので、貴重なリーダー作でもある。バックのリズム隊の二人、ベースのチャック・バーグホファーは録音当時58歳、ドラムのニック・マルティニスは録音当時64歳、リーダーのジョリーは1932年の生まれだから、録音当時63歳。平均年齢61.6歳の高齢ピアノ・トリオである。
 
 
Yeah-pete-jolly  
 
  
高齢のピアノ・トリオ演奏なんで、聴く前の印象は「渋くて粋な、燻し銀のような」落ち着いた演奏なんだろう、と思うのだが、聴いてみてビックリ。バリバリ溌剌とした、硬派でダイナミックなインタープレイではないか。まるで若者の様な演奏。パーソネルとかジャケットとかを見ずに聴いたら、きっと今時の若手ジャズメンのネオ・ハードバップなトリオ演奏と思うだろう。

まず、リーダーのジョリーの溌剌としたピアノが素晴らしい。1950年代には、クールで小粋で明快なタッチだったが、この63歳のジョリーはそれにダイナミズムが加わっているのだ。米国西海岸ジャズらしくファンクネスは控えめ、大仰なテクニックのひけらかしは全く無いが、逆に、よくアレンジされた小粋な展開、素敵な響きのアンサンブルが個性。この盤でのジョリーのピアノは聴きものだ。

バックのリズム隊、バーグホファーのアコベは締まった低音でトリオ演奏のリズムを活性化し、マルティニスのドラムは堅実なドラミングでバンドに躍動的なビートを絶え間なく供給する。いやはや、素晴らしいピアノ・トリオである。これが平均61.6歳の高齢ピアノ・トリオの演奏だから恐れ入る。ジョリーは寡作のピアニストだったが、リリースしたリーダー作は一様に充実した内容ばかり。この『Yeah!』も、そんなジョリー盤の一枚である。
 
 
 
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2020年2月26日 (水曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・74

つい最近、僕はこの2管フロントのアルバムの存在を知った。知った瞬間「こんな組合せってアリなの」と嬉しくなった。片方のフロントが「ジョニー・ホッジス」。デューク・エリントン楽団における看板アルト・サックス奏者である。1951年から55年まで楽団を離れたが、その4年間以外、1928年から逝去する1970年まで、38年間、デューク・エリントン楽団に、花形ソロイストとして在籍した。

もう片方のフロントが「ジェリー・マリガン」。バリトン・サックス奏者のレジェンドである。1952年から1956年の間、カリフォルニア州に移り、米国西海岸ジャズの仕掛人の一人となった。特に「ピアノレス・カルテット」の組成は画期的な出来事。モダン・ジャズ黎明期からクール・ジャズ、ウェストコースト・ジャズを牽引した「プロデューサー」的存在であった。

『Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges』(写真)。1959年11月17日、Los Angelesでの録音。ちなみにパーソネルは、Gerry Mulligan (bs), Johnny Hodges (as), Claude Williamson (p), Buddy Clark (b), Mel Lewis (ds)。当時の米国西海岸ジャズの名うての人気ジャズメンを集めて、ジョニー・ホッジスを客演に迎えた、2管フロントのクインテット編成。
 
 
Gerry-mulligan-meets-johnny-hodges
 
 
音の作りは、パーソネルからも判る様に明らかに「米国西海岸ジャズ」である。しっかりとアレンジされた、破綻の無い整然とした「聴かせる」ジャズ。そんな音の作りの中で、フロントの2人、ホッジスのアルト・サックスと、マリガンのバリトン・サックスのユニゾン&ハーモニーが実に映える。美しい音色とフレーズを誇るホッジスのアルト・サックスと、魅力的な低音と粋な吹き回しで耳を奪うマリガンのバリトン・サックスとの「クールな対話」が一番の聴きどころ。

とりわけ、ホッジスのアルト・サックスが良い。ビブラートを効かせた美しい音色。長く伸びるトーン。官能的ですらある、渋く輝く様なブラスの響き。この美しいアルト・サックスのトーンが、いわゆる「聴かせる」ジャズである、米国西海岸ジャズのアレンジ、展開にバッチリ合うのだ。ほどよくアレンジされたバックの演奏とホッジスのアルト・サックスの相性は抜群である。

サックスの名手が二人寄れば、ライバル心が芽生えるが故に意外とまとまらないのでは、と危惧するが、この盤ではマリガンのホッジスに対するリスペクトの念がライバル心に勝っているようで、ホッジスとマリガンの2管のユニゾン&ハーモニーは全く破綻が無く、とても美しくとてもエモーショナルに響く。この盤の演奏を聴きながら、ジャズ喫茶の昼下がりの光景が頭に浮かんだ。そう、この盤の小粋で心地良い雰囲気、ジャズ喫茶の昼下がりにピッタリなのだ。
 
 
 
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2020年2月25日 (火曜日)

安定安心の耽美的ピアノ・トリオ

いつの頃からだろう。欧州ジャズの中核国に「イタリア」が参入したのは。21世紀になって、インターネットが発達し、欧州ジャズの情報が潤沢に入ってくるようになったのだが、イタリアン・ジャズが結構、活況になっている情報に接して、「あら〜、イタリアかあ」と戸惑ったのを覚えている。しかし、ECMレーベルを見渡せば、1970年代後半に、エンリコ・ラヴァの名前があるので、イタリアン・ジャズはかなり古くからあったということである。

Michele di Toro Trio『Play』(写真左)。2014年1月30、31日、イタリアでの録音。ちなみにパーソネルは、Michele Di Toro (p), Yuri Goloubev (b), Marco Zanoli (ds) 。マーシャル・ソラール賞やフリードリッヒ・グルダ賞に輝いた、イタリアの中堅ピアニスト、ミケーレ・ディ・トロのピアノ・トリオ盤である。1974年生まれなので、録音時は40歳。ジャズマンとして中堅に差し掛かった、充実のパフォーマンスが素晴らしい。

リリカルで耽美的なピアノ。タッチは明確だが、バップなピアノの流儀とはちょっと響きが異なる。ガーン、ゴーンとしっかりとしたタッチで弾き回すというよりは、クラシック・ピアノの様に、切れ味の良い流麗なタッチで響きを優先に弾き回す感じ、とでも形容したら良いだろうか。米国のリリカルで耽美的なピアノとは異なる、欧州的というか、イタリア的というか、独特の個性を持ったピアノの響き&調べである。
 
 
Play  
 
 
これがこの盤の最大の聴きもので、全編に渡って、ミケーレ・ディ・トロのジャズ・ピアノがとても印象的に響く。テクニックについても相当に高度で、クラシック・ピアノと比べても引けを取らない素晴らしさ。音の純度が高く、高テクニックで弾き回す分、流麗という形容がピッタリの流れる様なアドリブ・フレーズ印象的。聴き始めは「リリカルで耽美的な欧州ジャズ・ピアノかあ」と「飽き」を危惧するのだが、テンションが適度に保持されていて、決して飽きが来ない。最後まで一気に聴き切ってしまう。

加えて、ユーリ・ゴルベフのアコースティック・ベース(略して「アコベ」)が印象的だ。冒頭「Lutetia」の出だしから、トロのピアノに寄り添い、絡むように弾き進めるゴルベフのアコベは「柔軟」かつ「鋼の様なしなやか」。この鋼の様なしなやかさが実にシャープで、トロの切れ味の良い流麗なタッチとの相性が抜群である。マルコ・ザノリのドラムは地味ではあるが堅実。出るとこはしっかり出てきて、確実なリズム&ビートを供給している。

3者の豊かなイマジネーションと自由度の高いインタープレイが素晴らしい。息もピッタリ合っていて、あうんの呼吸で硬軟自在、変幻自在なアドリブ・フレーズを繰り出していく。速いテンポの演奏も「かかる」こと無く、安定した速攻フレーズを供給。バラード風のスローな展開は耽美的に溺れることなく、凛とした切れ味の良い印象的なフレーズを繰り出して、甘きに流れることは無い。一言で言うと「安定安心の耽美的ピアノ・トリオ」。好盤です。
 
 
 
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2020年2月24日 (月曜日)

コニッツのスタンダード曲の解釈

ヴィーナス・レコードのジャズ盤のジャケット・デザインは「エロい」デザインで一世を風靡した。女性のヌード&セミヌード、下着姿で、ポーズも悩殺ポーズが多い。明らかにジャズ盤のジャケットとしては異端で、硬派なジャズ者ベテランの方々からは「けしからん」とお叱りを受けている。それでも、その傾向を修正することは無く、「エロい」ジャケットはヴィーナス・レコードの代名詞になった。そういうこともあって、ヴィーナス・レコードのアルバムについては、アルバム鑑賞を控えてきた。

しかし、である。ヴィーナス・レコードのカタログを見てみると、全てのジャケットが「エロい」訳では無い。ジャズらしいデザインのジャケットもほぼ半数はあるだろうか。「ジャケットがエロすぎる」ヴィーナス・レコードであるが、私は、純ジャズとして聴き応えがあればあるほど、ジャケットの「エロ度」は下がる、と睨んでいる。ということで、最近、ヴィーナス・レコードの「エロくない」ジャケットを選んで、順に聴き始めた。

Lee Konitz Quartet『Jazz Nocturne』(写真左)。1992年10月5日の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Konitz (as, ss), Kenny Barron (p), James Genus (b), Kenny Washington (ds)。リーダーのリー・コニッツは、アルト・サックス奏者の「レジェンド」的存在。リー・コニッツは1927年10月生まれなので、今年で83歳。この盤の録音時は65歳。年齢的にはベテラン中のベテランの位置付けで、充実した内容のパフォーマンスが耳を惹く。
 
 
Jazz-nocturne-1  
 
 
レジェンド的存在であるが、硬派で先進的なブロウが個性のコニッツ。ヴィーナス・レコードの、音の艶や甘さを強調し、耳に心地良いビート音を推しだし、独特のエコーをかけつつ、選曲はスタンダード曲を中心にして「聴き心地」に重きを置く、という「アルバムの制作志向」にコニッツが乗った盤である。日本人好みのベタな選曲ばかり、と揶揄する声もあるが、ちょっと捻りを効かせたアレンジとコニッツの硬派で先進的なブロウによって、なかなか内容のある優れたスタンダード曲の解釈に耳を奪われる。「無理矢理やらされた」という声もあるが、そうだとしても、この盤のスタンダード曲の解釈は素晴らしい。

コニッツと共に、ピアノのケニー・バロンのパフォーマンスも素晴らしい。もともと「ピアニストとしての総合力」で勝負するタイプのピアニストであるが、伴奏に回った時のピアノの素晴らしさはジャズ界の中でも指折りの存在。そんな「伴奏上手」なバロンが大活躍。硬派で先進的なフレーズを繰り出すコニッツのアルト・サックスをガッチリと受け止め、コニッツの音とのバランスをしっかりと取っている。コニッツのアルト・サックスをスタンダード曲の取り回しに最適な雰囲気に落ち着かせているのが、バロンのピアノだと僕は感じている。

なにかと批判の多いヴィーナス・レコードではあるが、レジェンド、ベテラン中心に、ヴィーナス・レコードの「アルバムの制作志向」に合わせて、ここまでの「成果」をあげているのだから、やはり隅に置けないレーベルである。「エロい」デザインのアルバム・ジャケットについても、最近リリースされているヴィーナス・レコードのアルバムについては、「エロい」ジャケットの出現度は以前に比べて、明らかに低くなっている。が、とにかく、ジャズ盤の真価はやはり「内容」である。
 
 
 
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2020年2月23日 (日曜日)

まだまだ若い者には負けない盤

ジャズの世界では「レジェンド」と呼ばれる現役のジャズマンが、意外と元気である。生楽器って意外と体力を使うのだが、60歳、70歳を過ぎても、バリバリに吹きまくり、弾きまくる「レジェンド」が多いのには驚く。「レジェンド」級のジャズマンって、当然、演奏テクニックは高度なものを持っている。このテクニックが高度なほど、無駄な体力や肺活量を使わないのかもしれない。とにかく「レジェンド」級のジャズマンが元気に吹きまくる、弾きまくる盤に出会うと無条件に嬉しくなる。

George Coleman『The Quartet』。2019年5月20日、NYのSear Sound Studio C での録音。ちなみにパーソネルは、George Coleman (ts), Harold Mabern (p), John Webber (b), Joe Farnsworth (ds)。ジャズ・テナーの存命レジェンドの一人、ジョージ・コールマンがリーダーのアルバム。コールマンって、1935年3月生まれだから、録音当時は84歳。う〜ん凄い。

というのも、この盤でのコールマン、吹きまくっている。演奏の編成は、テナー・サックスがワンホーンのカルテット構成。フロント楽器がテナー・サックス1本なので、とにかく一人で吹きまくりである。84歳の高齢でこの吹きっぷり。テナー・サックスの音だけ聴けば、40歳〜50歳代の油の乗りきった、ベテランのサックス奏者が吹いていると感じるんだが、いやはや、コールマンは84歳です。
 
 
The-quartet  
 
 
しかも、この盤、選曲が面白い。冒頭は、ジャズクラブ「Smoke」のオーナー、Paul Stache に捧げたコールマンのオリジナル「Paul’s Call」から始まるのですが、続く2曲目は、シャンソン歌手、シャルル・トレネの美しいラブソング「I Wish You Love」。3曲目は、エリントンの小粋な名曲「Prelude to a Kiss」。続く4曲目は雰囲気がガラリと変わって、ハーブ・アルパート&ティファナ・ブラスの演奏でもお馴染み「Lollipops and Roses」。

他にもアート・ブレーキーの名作『モーニン』に収録されているゴルソン作「Along Came Betty」、カール・フィッシャー作の素敵なバラード曲「You’ve Changed」、はたまた、アントニオ・カルロス・ジョビンのボサノバ曲「Triste」等々、様々なスタイル、様々な志向の楽曲が並んでいる。ベテランになれば、自分の得意とするスタイルや志向の曲を固めて、演奏の負担を軽減したくなるのだが、この盤での「レジェンド」コールマンには頭が下がる思いだ。

今年85歳、モダンジャズ・テナーの至宝ジョージ・コールマンの最新作。バラエティにとんだ選曲が素晴らしく、これを全て、演奏仕切ってしまうコールマンも素晴らしい。バックを支えるリズム・セクションのピアノには、レジェンドの盟友ピアニスト、ハロルド・メイバーンが座る。このメイバーンのバッキングも見事。とにかく、この盤、二人のレジェンドのパフォーマンスが聴きもの。まだまだ若いもんには負けへんで、です。
  
  
 
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2020年2月22日 (土曜日)

ながら聴きのジャズも良い・38

ジャズは「お洒落な音楽」とされることがある。私の経験では、今までジャズを聴くのが好きだ、とすると「ジャズは難しい音楽」と言われることがあっても、「お洒落な音楽」と言われると、なんだか違和感がある。お洒落なカフェやレストラン、雑貨店などは積極的にジャズを流しているんで、そういう点から、「お洒落な音楽」とされるのだろう。
 
では、何故「お洒落なカフェやレストラン、雑貨店では積極的にジャズを流す」のか。私もこのブログで「ながら聴きのジャズも良い」というカテゴリーを設定している位なので、ジャズの演奏の中に「ながら聴きするに心地良い」ものがある。どんなジャズでも「お洒落に聴き流せる」かといえばそうでは無い。ジャズには「主張する」ものと「主張しすぎない」ものとがある。
 
「主張する」ジャズは、演奏するジャズマンのテクニックや演奏方法、演奏スタイルに重きを置いて、それをメインに聴いて貰おうとするもので、「主張しすぎない」ジャズは、アレンジや演奏コンセプトに重きを置いて、演奏する音楽そのものを聴かせる、聴いて貰おうとするもので、双方、演奏する狙いが異なる。「ながら聴きするに心地良い」ジャズは、この「主張しすぎない」ジャズなのだろう。
 
ヴィーナス・レコードというジャズ・レーベルがある。1992年、ジャズ混迷期に立ち上げられたレーベルなのだが、このレーベルのコンセプトが実にはっきりしている。「聴き心地」に重きを置いて、音の艶や甘さを強調し、耳に心地良いビート音を推しだし、独特のエコーをかける。
 
 
Love-is-a-manysplendored-thing-1
 
 
いわゆる「聴く為のジャズ」を徹底的に追求したレーベルだと感じている。ジャケットは、美しい女性をジャケットに配する点で統一されているが、一方で「ジャケットがエロすぎる」というマイナス評価もある(笑)。
 
Roma Trio『Love Is A Many-Splendored Thing』(写真左)。邦題『慕情』。ちなみにパーソネルは、Luca Mannutza (p), Gianluca Renzi (b), Nicola Angelucci (ds)。2006年7月2 & 3日、イタリアでの録音。とても心地良いピアノ・トリオの演奏で、その録音はいかにも「ヴィーナス・レコード」の音である。演奏内容自体も立派なもので、現代の新しいピアノ・トリオの音がする。
 
メロディックに展開するアドリブが魅力。クラシカルな技法もさりげなく取り込んで、耳に付くことも無く、逆に「アレンジの妙」として良い効果を上げている。もちろん、ジャズとして、その基本であるグルーブ感やジャジーな雰囲気はしっかり維持されている。いわゆる「主張しすぎない」ジャズであり、「演奏する音楽そのものを聴かせる、聴いて貰おうとする」ジャズである。
 
「ジャケットがエロすぎる」ヴィーナス・レコードであるが、私は、純ジャズとして聴き応えがあればあるほど、ジャケットの「エロ度」は下がる、と睨んでいる。このRoma Trio盤のジャケットもちょっとお洒落が過ぎる感があるが「エロ度」は低い。純ジャズとしての「聴き応え」度は高い。
 
 
 
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2020年2月20日 (木曜日)

教科書的なピアノ・トリオ盤です

ジャズ批評 2020年1月号(No.213)の特集が「ピアノ・トリオ最前線2020」。宣伝文句が「大御所の新作から期待の若手まで、ピアノ・トリオにこだわった120枚を一挙紹介」。ざっと読んでみて、やっぱり、ピアノ・トリオは面白い、奥が深いなあ、と改めて感心する。ピアノ・ベース・ドラムの3楽器の演奏形態なんだが、これだけのバリエーションがあるのだ。ピアノという楽器は恐ろしい。
 
捻りを効かした演奏も良いし、モーダルで自由度の限りなく高い演奏も良い。フリーキーな演奏も時には良いし、バップなピアノ演奏も聴いていて楽しい。そんな中で、時々「端正で明確なタッチで、アドリブ展開が流麗な」ハードバップで教科書的なピアノ・トリオの演奏に立ち返りたくなる。ピアノは流麗にアドリブ展開し、アコベは重低音をブンブン鳴らしながらビートを刻み、ドラムは躍動的なリズムを供給しつつ、他の楽器を鼓舞する。

Ray Brown Trio『Soular Energy』(写真左)。1984年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Ray Brown (b), Gerryck King (ds), Gene Harris (p)。正確なタイトルは、"Soular Energy" の次に "The Ray Brown Trio Featuring Gene Harris" と入っている。この盤は、ブルーノートの『スリー・サウンズ』というグループのリーダー=ピアニスト、ジーン・ハリスの復帰作でもある。
 
 
Soular-energy  
 
 
実に端正なピアノ・トリオである。演奏全体の雰囲気は、ハードバップ〜ファンキー・ジャズの中間。適度なファンクネスとやや少なめの音数。激しく燃え上がる演奏とは全く無縁な、ゆったりとした、適度な「間」を活かした余裕度の高い演奏。明確なタッチと繊細な表現が共存する、趣味の良い、癖の無い、小粋なジャズ・ピアノ。もう少し音数が少なければ「カクテル・ピアノ」化するところをブルージーなアドリブ展開で、しっかりとジャズに留めている。
 
リーダーはベーシストのレジェンド、レイ・ブラウンなので、彼のアコベがとても良い音で録られている。かつ、レイ・ブラウン自身がノリノリのアコベを弾きまくっている。しかも、この盤ではその弾きまくるアコベが耳に付かない。レイ・ブラウンがしっかりと音を選んで、ジーン・ハリスに合ったベースラインを弾き込んでる。レイ・ブラウンの職人気質の面目躍如である。この盤のレイ・ブラウンのアコベは聴きものだ。
 
ゲリック・キングのドラムも音数が適度で堅実。ジーン・ハリスのピアノとレイ・ブラウンのアコベのフレーズを決して邪魔しないところはまさに「職人技」である。端正で明確なタッチで、アドリブ展開が流麗、ブルージーでジャジーな音の響きは「安心、安定のハードバップ」なピアノ・トリオ。「Cry Me A River」「That's All」等のバラードの演奏も良い。良い意味で「教科書的な」ピアノ・トリオ盤である。
 
 
 
東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2020年2月19日 (水曜日)

ミュージカル曲限定のプレヴィン

昨日、アンドレ・プレヴィン(André Previn)のピアノ・トリオ盤をご紹介した。プレヴィンは「作曲家、編曲家、映画音楽、ジャズ・ピアニスト、クラシック・ピアニスト、指揮者」と多彩な才能の持ち主だが、実はミュージカルの音楽監督も多数経験している。「マイ・フェア・レディ」などでアカデミー賞を受賞している位だ。そうそう、この「マイ・フェア・レディ」の楽曲をジャズにアレンジして、シェリー・マン、レロイ・ビネガーとのトリオ盤をリリースしている。

プレヴィンのジャズ・ピアノは、流麗で爽快感あふれる弾きっぷりで、「ソフィストケイトされた」タッチや限りなく端正で全く破綻の無い、高テクニックなもの。このプレヴィンのぴあのは、印象的なメロディや流麗なフレーズを持つ楽曲、例えば、ジャズ・スタンダード曲との相性が抜群。実は、ジャズ・スタンダード曲は、1920年代から40年代のミュージカル曲が多い。そういう意味で、プレヴィンのジャズ・ピアノは、ミュージカル曲をアレンジして演奏するのに向いている。

André Previn『Give My Regards to Broadway』(写真左)。1960年5月31日、Los Angelesでの録音。ちなみにパーソネルは、André Previn (p), Red Mitchell (b), Frank Capp (ds)。なんか出来レースみたいな話だが、この盤、ミュージカルの音楽監督として活躍したアンドレ・プレヴィンがミュージカルの有名曲を集めて、アレンジして、ピアノ・トリオで演奏したアルバムなのだ。
 
  
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収録曲は以下のとおり。括弧の中が、曲を引用されたミュージカル名である。実を言うと、4曲目の「The Sound Of Music」以外、他のミュージカルの名前を知らない。この盤の録音は1960年なので、その頃には結構有名なミュージカルだったのだろう。
 

1. Give My Regards To Broadway (Little Johnny Jones)
2. Take Me Along (Take Me Long)
3. Almost Like Being In Love (Brigadoon)
4. The Sound Of Music (The Sound Of Music)
5. Put On A Happy Face (Bye Bye Birdie)
6. Too Close For Comfort (Mr. Wonderful)
7. When I'm Not Near The Girl I Love (Finian's Rainbow)
8. Everything's Coming Up Roses (Gypsy)
9. Diamonds are a girl's best friend (Gentlemen prefer blondes)
10. Too Darn Hot (Kiss Me Kate)
 
 
今の時代からすると、あまり馴染みの無いミュージカルからの楽曲であるが、さすがにどれもミュージカルで演奏された楽曲で、印象的なメロディや流麗なフレーズを持つ楽曲ばかり。プレヴィン独特の爽快感あふれるスインギーなフレーズがフィットし、「ソフィストケイトされた」タッチや限りなく端正で全く破綻の無い、高テクニックなピアノが際立つ。速いテンポの演奏もスローなバラード曲も、明確なタッチが、それぞれの楽曲の持つ、美しいフレーズを浮き立たせる。

ほとんど、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介されることを見たことの無い企画盤であるが、内容は充実している。さすが、ミュージカルの音楽監督も担当していたプレヴィンである。その才能を活かして、なかなかに良い曲ばかりをそれぞれのミュージカルからピックアップしている。アレンジもライトなハードバップ・ジャズ的雰囲気を楽しく聴かせてくれるもので、その出来映えに感心する。プレヴィンの代表盤の一枚に加えて良い内容の好盤である。
 
 
 
東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2020年2月18日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・80

ピアニストのスキル。ジャズとクラシックで、比較されることがたまにある。まあ比較しても仕方の無いテーマだと思うんだが、クラシック側からすると「ジャズ・ピアノは無手勝流で基礎がなっていない」だし、ジャズ側からすると「譜面通り弾くだけで、スイングもせず、面白く無く、肩が凝る」である。ジャズ側からすると「クラシックのピアニストにジャズは出来ない」だし、クラシック側からすると「ジャズのピアニストにクラシックは無理」となる。

しかし、である。クラシック側の「ジャズのピアニストにクラシックは無理」については、キース・ジャレットがクラシックにチャレンジし、相応の評価を得ているし、ハービー・ハンコックは高校時代までは、優秀なクラシック・ピアニストで、11歳でシカゴ交響楽団と共演を果たしている。ジャズ側の「クラシックのピアニストにジャズは出来ない」については、クラシック・ピアニスト兼指揮者のアンドレ・プレヴィンがいる。西海岸ジャズの中で、飛び切り優れたハードバップ・ピアノを聴かせてくれる。

André Previn『King Size!』(写真左)。1958年11月26日のロサンゼルスでの録音。ちなみにパーソネルは、André Previn (p), Red Mitchell (b), Frankie Capp (ds)。西海岸ジャズらしい、しっかりアレンジされた、端正で破綻の無い、聴き心地を優先したピアノ・トリオ演奏である。流麗で爽快感あふれる弾きっぷりはなかなか堂に入っている。ビッグサイズのライオンのイラストがあしらわれたジャケットも印象的。
 
 
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改めて、アンドレ・プレヴィンは、作曲家、編曲家、映画音楽、ジャズ・ピアニスト、クラシック・ピアニスト、指揮者。どちらかと言えば、クラシックに軸足がある。昨年2月に惜しくも89歳。我が国への関わりは、2009年から3年間、NHK交響楽団の首席客演指揮者として活躍した。そんなクラシックな演奏家が、こんな洒落た小粋なハードバップ・ジャズをピアノ・トリオでやるなんて。彼の経歴をライナーノーツで読んだ時、とにかく驚いたことを覚えている。

ディブ・ブルーベックと並んで黒人にはほとんど人気のない白人ピアニスト。しかし、黒人のピアニストには稀少な「ソフィストケイトな」タッチや限りなく端正で全く破綻の無い、高テクニックなピアノは、やはり聴きもの。ピアノをクラシック・ピアノらしく鳴らしながら、ジャズを聴かせるユニークな存在。この『King Size!』でも、しっかり計算されたアドリブ展開と、しっかりとしたアレンジで、ファンキーさ、ジャジーさを醸し出していて、なかなかに聴き応えがある。

まあ、この「計算された」や「アレンジされた」部分に「作られたジャズ」を感じるという向きもあるが、僕はこれは「米国西海岸ジャズ」の個性の1つと解釈しているので、僕はこの「計算された」や「アレンジされた」部分を高く評価している。それがプレヴィン・ジャズの個性でもあるのだ。プレヴィン独特の爽快感あふれるスインギーなフレーズは特筆に値する。「アレンジされた」ファンクネスと併せて、もっと評価されて良いピアニストである。
 
 
 
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2020年2月17日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・125

ジャズは良い意味で「何でもアリ」な音楽ジャンルである。そういう意味で自由度の高い、融通の利く音楽ジャンル、と言える。クラシックともポップスとも違う。もちろん、ロックとも違う。クラシックは極力、譜面通りに演奏するのが基本だし、ポップスやロックは「繰り返し」の音楽だ。ジャズは、必要最低限の決め事の下での即興が基本で、ベースとなるフォーマットやビートは自由。つまりは「やったもん勝ち」という志向が強い。

Monty Alexander『Wareika Hill Rastamonk Vibrations』(社員左)。2019年の作品。セロニアス・モンクの楽曲にスカやレゲエなどのジャマイカのテイストを加えた作品。タイトルの「Wareika Hill」とは、ラスタファリアンの聖なる山のこと。モンティの本気度が窺い知れる。しかし、あのジャズの中でも、とびきりユニークな楽曲の作り手、セロニアス・モンクの楽曲をスカやレゲエのリズム&ビートでジャズるとは。これは実にユニーク。

さて、リーダーのピアニスト、モンティ・アレキサンダーは、1944年6月6日、ジャマイカのキングストン生まれ。クラシック・ピアノを学び、ハイスクール入学後はポピュラー系もこなしつつ、ニューヨークへ進出。演奏スタイルはラテン的フレーズを宿しつつ、パワフルでハッピー。とにかく多弁、弾き倒すスタイルで音符が多い。ジャズ者によっては「五月蠅い」と敬遠する向きもあるくらいである。しかし、そんなフレーズは品格が漂い、決して俗っぽくない。
 
 
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モンクの楽曲は「間とタイミング」を活かした楽曲が多く、そんな楽曲に2拍子のレゲエ・ビートを当てて、ピアノを弾きまくるのだが、面白いのは、とにかく多弁、弾き倒すスタイルで音符が多いモンティ・アレキサンダーのピアノが、2拍子に当てるが故に、適度に音が散って、適度に音が間引かれて、モンクの楽曲のユニークなフレーズがくっきりと浮かび上がるのだ。これは面白い。

モンクの楽曲をレゲエ・ビートでアレンジするなんて発想が凄い。もともとモンティ・アレキサンダーはジャマイカのキングストン生まれ。もちろん、レゲエは子供の頃から親しんだビートだろうし、ボブ・マーリーはヒーローだろう。しかし、ボブ・マーリーの楽曲をジャズにするのでは無く、モンクの楽曲をレゲエ・ビートでジャズるなんて。モンティの品格漂うパワフルなピアノ・タッチと相まって、ツービートに乗って、明るく陽気に唄うモンクス・ミュージック。

モンクス・ミュージックとレゲエ、絶対合わない様な感じがするんだが、こうやってアレンジしてみると、しっかりと融合してジャズになるのだから、ジャズの懐の深さ、融通度の高さに改めて感じ入るばかりである。レゲエのビートに乗って、パワフルでハッピー、多弁で陽気なモンティのピアノがポジティヴに印象的に響き渡る。この盤、モンティのピアノを愛でるのにも良い好盤である。いや〜、今回は面白いチャレンジを聴かせて貰った。
 
 
 
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2020年2月16日 (日曜日)

異色のモーガンを聴くには面白い

録音当時、何故かお蔵入りになった音源ばかりを発掘してリリースしたシリーズの「Blue Note Classic LT series」。当時、何故かお蔵入りになった音源については、やはり当時のブルーノート・レーベルの専属ジャズマン、御用達ジャズマンのリーダー音源は多い。つまり、御用達の人気ジャズマンについては録音回数も多くなるので、お蔵入り音源になる確率も高くなるのだろう。

Lee Morgan『Taru』(写真)。LT-1031番。1980年、ジャズ音源の「発掘男」マイケル・カスクーナによる発掘リリース。実際には1968年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Bennie Maupin (ts), John Hicks (p), George Benson (g), Reggie Workman (b), Billy Higgins (ds)。リーダーは、当時30歳、キャリアとしては既にベテランの域に入った、トランペット担当のリー・モーガンである。

脇を固めるサイドマンの面子が物々しい。テナーのベニー・モウピン、ピアノのジョン・ヒックス、ベースのレジー・ワークマン、ドラムのビリー・ヒギンス。いずれも若手の「新主流派」の面子である。いわゆる「モード・ジャズ」の担い手ばかり。そこに、後のソフト&メロウの「歌って弾きまくる」フュージョン・ギタリストであるジョージ・ベンソンが参加している。
 
 
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当時のブルーノート・レーベルとしては、尖ったパーソネルによる演奏なので、さぞかし、硬派でビターな「モード・ジャズ」が展開されるのか、と予想する。そこにモーガンが割って入って弾きまくるのか。で聴き始めると、アップ・テンポのキャッチーな曲、バラッド、ジャズ・ロック調のナンバーで構成されているのに気が付く。今までの「硬派で鯔背なモーガン」とはちょっと異質の雰囲気。

お得意のファンキー・チューン「Get Youself Together」、流麗でポップなジャズ・バラードのタイトル曲「Taru」、モーガンには珍しい、3拍子ジャズの「Haeschen」、ポップで鯔背なモーガンが格好良い。しかしながら、この「ポップな」モーガンは、どうにもらしくない。面白いのは、サイドマンの中では、ギターのベンソンだけが、この「ポップな」音作りにマッチした弾きっぷりなのだ。

他の「新主流派」の猛者たちはちょっと不完全燃焼の面持ちである。この盤、このパーソネルからすると、ちょっと「ポップに過ぎる」感じがする。聴き流すには良いが、スピーカーと対峙して聴き込むにはちょっと「お尻がこそばゆい」。異色のモーガンを聴くには面白い内容だが、硬派で鯔背なハードバッパー、モーガンとしてはちょっと異質。その辺が、録音当時、お蔵入りになった理由かなあ。でも客観的に聴くと内容は良い。モーガンの本質に合わないと感じるだけ。
 
 
 
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2020年2月15日 (土曜日)

聴き易いアンドリュー・ヒル

ブルーノートの未発表音源シリーズが「Blue Note Classic LT series」。略称は「BNLT」。録音当時、何故かお蔵入りになった音源ばかりを発掘してリリースしたシリーズで、1950年代後半から1960年代のお蔵入り音源なのだが、基本的に内容は折り紙付き。この不思議な音源をカタログ番号順に聴き直している。

このシリーズ、何故かお蔵入りになった音源ばかりなのだが、時々、聴いていて「ああ、これは恐らく、この辺が問題になったんだろうなあ」とふと感じる盤が幾枚かある。演奏自体には全く問題無い。どころか熱演、好演ばかり。つまりはプロデュース側の立場から見た時に「何か気になる点」があったんでしょうね。ブルーノート・レーベルの凄いところは、このお蔵入りセッションについても、しっかりギャラを払っているところ。

Andrew Hill『Dance With Death』(写真)。LT-1030番。1980年、ジャズ音源の「発掘男」マイケル・カスクーナによる発掘リリース。1968年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Andrew Hill (p), Charles Tolliver (tp), Joe Farrell (ss, ts), Victor Sproles (b), Billy Higgins (ds)。パーソネルを見ても、録音時期を見ても、これはバリバリ硬派なモード・ジャズだろうな、と当たりをつける。
 
 
Dance-with-death  
 
 
さて、聴いてみると「あれっ」と思う。聴き易いアンドリュー・ヒル。結構、良いメロディーの曲が並ぶ。良いメロディーが印象的なので、スタンダード曲なんだろうな、と思って資料を見ると、これがまあ、全曲、アンドリュー・ヒルのオリジナル曲なのだ。へ〜、あのアンドリュー・ヒルがこんなに良いメロディー満載のオリジナル曲を作るのか。意外と言えば意外である。

アンドリュー・ヒルのピアノは、一言でいうと「新時代のセロニアス・モンク」。判り易いモンクという感じの、予測可能な範囲で飛んだり跳ねたりするピアノ。「癖の強いピアノ」という表現がまずまずフィットする感じ。加えて、幾何学模様的にスイングするような「捻れ」が個性なのだが、この盤ではその個性が、良いメロディー満載のオリジナル曲によって、中和されているのが気になると言えば、気になる。

この盤のタイトル、日本のキング盤での黒が基調の怪しげなジャケット(写真右)、ヒルのピアノの個性、を頭の中に入れながらこの盤の音を聴くと、基本的に「戸惑う」。やはり、ヒルには「尖った限りなく自由度の高いモード・ジャズ」が良く似合う。ヒルという名を聴いて頭の中に浮かぶイメージとこの盤に詰まっている「良いメロディーの曲」とのギャップが、確かに引っ掛かる。そういう意味では敢えてリリースする必要が無い盤(お蔵入り盤)なのかなあ、と思うのだ。
 
 
 
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2020年2月14日 (金曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・79

最近、トリオ・レコードのジャズ音源を追いかけている。トリオ・レコードとは、オーディオメーカー「トリオ」のレコード部門が立ち上げたレーベル。活動期間は1969年〜1984年。バラエティーに富んだジャンルを扱っていたが、ジャズのジャンルでは、特に日本人ジャズの好盤を多くリリースしていて無視出来ない存在である。僕が本格的にジャズを聴き始めた頃、リアルタイムで活動していた日本のレーベルなので、とりわけ親近感がある。

世良譲トリオ『Bacchus Swing』(写真左)。1973年9月の録音。ちなみにパーソネルは、世良譲 (p), 栗田八郎 (b), 原田イサム (ds)。純日本メンバーのトリオ構成。帯紙のキャッチがふるっている。「うたごころ、そしてスイングまたスイング。ジョーが久々に放つ、くつろぎに満ちた快作」。まさにこのキャッチ通りの内容。スイングしまくる、硬質タッチの「唄うような」ピアノが素晴らしい。

世良譲のピアノの雰囲気、どこかで聴いたことがある、というのがファースト・インプレッション。資料を見れば、世良譲はエロール・ガーナーを師と仰いでいた、とのこと。なるほど、であるが、ガーナーの右手よりタッチは軽妙。軽妙ではあるが音に芯がシッカリ入っていて、スタンダード曲の印象的なフレーズがクッキリと浮かび上がる。この唄うように、よく回る右手は、そう「レッド・ガーランド」を彷彿とさせる。
 
 
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左手はブロック・コードでは無いので、レッド・ガーランドそっくりにはならない。右手がレッド・ガーランド風のイメージ、左手がビハインド・ビートでは無いが、伴奏として左手の入り方、リズム&ビート担当の左手の硬質なタッチはエロール・ガーナー風のイメージ。しかし、そこに世良譲の独特のスイング感が被さって、トータルで個性的なジャズ・ピアノを創出している。

日本人ジャズらしく、ファンクネスが相当に希薄なのも、欧米の他のジャズ・ピアニストには無い個性。栗田のベース、原田のドラムの「リズム隊」も堅実でレベルの高いもの。揺らぎ、乱れは全く無い。切れ味の良いリズム隊は、フロントでアドリブ・フレーズを弾きまくる世良のピアノをがっちりとサポートし、がっつりと鼓舞する。そうすると世良のピアノはそのスイング感を増幅して、逆にバックの「リズム隊」を煽る。理想的なピアノ・トリオ。

ちなみに、雑誌等で、ジャズ界の元祖「ちょいワルおやじ」と形容される世良譲。酒・煙草・女性をこよなく愛した、絵に描いた様な、伝説のジャズ・ピアノの名手である。世良は深夜の名物テレビ番組であった「11PM」にレギュラー出演し、深夜のテレビ番組の中で、ムード濃厚なジャズ・ピアノを聴かせていたことを覚えている。そんな「ちょいワルおやじ」が、こんなに素敵な、スインギーなピアノ・トリオ盤を創出した。酒の神「バッカス」のスイング。良いアルバムタイトルである。
 
 
 
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2020年2月13日 (木曜日)

ネオ・ハードバップなアルト合戦

ハードバップ時代には、大人数のジャム・セッションや、同じ楽器が複数本、フロントで凌ぎを削るバトル・セッションなどの「聴いて楽しい企画盤」が結構あったやに記憶している。録音してアルバムにする方としても、ジャズメンを多く集めて、打合せをして「せーの」で演奏させて「ハイ上がり」という手っ取り早さもある。

1980年代後半の純ジャズ復古以降、そういった「大人数のジャム・セッション」や「フロントで凌ぎを削るバトル・セッション」をメインとした企画盤を見なくなった。ジャズの演奏技術が進歩して、様々な演奏フォーマットで演奏することが可能になったことと、演奏する側も録音してアルバム化する側も、アルバムを作るということに真摯に向き合うようになったこととが併せ持ってそうなったのだと思っている。

Vincent Herring, Bobby Watson & Gary Bartz『Bird at 100』(写真左)。2019年8月30, 31日 & 9月1日、NYの「SMOKE Jazz Club」でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Gary Bartz (as), Vincent Herring (as), Bobby Watson (as), David Kikoski (p), Yasushi Nakamura (b), Carl Allen (ds)。アルト・サックスが3本フロント+ピアノ・トリオのリズム・セクション。
 
 
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『Bird at 100』のタイトルを見て、Bird=Charlie Parkerで、この盤は「チャーリー・パーカー」のトリビュート盤かな、と当たりを付ける。収録された曲名を見て、その「当たり」が確信に変わる。収録曲9曲中、チャーリー・パーカーの作品が3曲、パーカーが好んで演奏した曲が3曲で「3分の2」を占める。フロントの3人はアルト・サックス奏者。3者共通の憧れであり目標である「チャーリー・パーカー」。

3人のアルト・サックス奏者のパフォーマンスを聴いていると、3人ともチャーリー・パーカーに対する敬愛の情について相当なものがあると感じる。伝説の巨人「チャーリー・パーカー」と真っ直ぐに対峙して、3者3様、個性を発揮して、しっかりとパフォーマンスしている。バックのリズム・セクションもしっかりとハードバップな響きを宿していて素晴らしい。

1940年代後半から1950年代前半のビ・バップ〜ハードバップ時代の音世界の雰囲気をしっかりと押さえつつ、演奏内容はストレートな21世紀の「ネオ・ハードバップ」。3人のアルト・サックスのバトルを聴くことが出来る、ジャッキー・マクリーン作の「Bird Lives」など、手に汗握る名演である。良い内容の企画盤である。
 
 
 
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2020年2月12日 (水曜日)

追悼「ライル・メイズ」です。

パット・メセニー・グループ(PMG)の重鎮キーボード奏者、ライル・メイズ(Lyle Mays)が再発性疾患との長い戦いの末に亡くなった。昨晩、Twitterからの情報から、パット・メセニーのオフィシャル・サイトでその詳細を知った。ライル・メイズは米国ウィスコンシン州出身。1953年11月生まれなので、享年66歳。早過ぎる逝去である。

僕がライル・メイズの名前を知ったのは、Pat Methenyの『Watercolors』というアルバムだった。まだ、パット・メセニー・グループ(PMG)が存在しない時代、パット・メセニーのソロ盤で、耽美的で透明感抜群なピアノと印象的なエコーと伸びのシンセの音に耳が釘付けになった。そのピアノとシンセが「ライル・メイズ」であった。そう、あれは1978年の秋だったと記憶している。以来40年以上、PMG共々、ライル・メイズのキーボードを聴き続けてきた。

Lyle Mays『Fictionary』(写真左)。1992年4月23日ニューヨーク、パワーステーションでの録音。ちなみにパーソネルは、Lyle Mays (p), Marc Johnson (b), Jack DeJohnette (ds) のトリオ編成。このパーソネルを見ただけで、このトリオ演奏はその内容が保証されたようなもの。耽美的で透明感抜群、クリアで硬質なタッチでモーダルに弾きまくるメイズにとっては、最高のリズム隊である。
 
 
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このトリオ盤、ライル・メイズのピアノ&キーボードの個性を知るには格好の盤である。冒頭の「Bill Evans」を聴くと、メイズのアコースティック・ピアノの個性が手に取るように判る。耽美的ではあるが、そのタッチは硬質でクリア。ファンクネスは皆無。透明感が強く流麗なフレーズ。耽美的なジャズ・ピアノ、いわゆる「エヴァンス派」にいそうでいない、唯一無二の耽美的ピアノの個性である。

そして、2曲目の「Fictionary」から3曲目の「Sienna」を聴くと、PMGのキーボード・ワーク、キーボード・フレーズの音作りは、ライル・メイズ主導であることが良く判る。このトリオ演奏に、パットのギター・シンセが絡んだら「PMG」そのものである。適度なエコーがかかった、透明度が強く流麗なフレーズが乱舞する。ライル・メイズのピアノとは「これ」である。

ライル・メイズは生涯で、数枚のソロ・アルバムしかリリースしなかった。メイズの活動の大凡は「PMG」。しかし、今回のソロ・セカンド盤『Fictionary』とソロのファースト盤『Lyle Mays』(2010年6月27日のブログ参照)は、メイズを知る上で必聴のソロ・アルバムである。このソロ・アルバム2枚でライズ単体の音の個性を掴みつつ、PMGの一連の好盤を聴く。これが「ライル・メイズ」の楽しみ方である。ご冥福をお祈りしたい。
 
 
 
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2020年2月11日 (火曜日)

摩訶不思議な響きのハードバップ

ブルーノートの未発表音源シリーズが「Blue Note Classic LT series」。略称は「BNLT」。録音当時、何故かお蔵入りになった音源ばかりを発掘してリリースしたシリーズ、と評価されてはいるが、中には「まあ、これはお蔵入りの理由が何となく判るなあ」という音源もある。といっても、演奏レベルに問題がある訳では無い。プロデューサーの視点での「お蔵入り」の判断である。

Lou Donaldson『Midnight Sun』(写真)。LT-1028番。1960年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Horace Parlan (p), George Tucker (b), Al Harewood (ds), Ray Barretto (congas, tracks 1 & 3-7)。1980年の発掘リリース。〈発掘男〉マイケル・カスクーナの監修&解説。録音した時期は、ハードバップが枝分かれして、それぞれの進化を始めた時期。

ハードバップは、大衆化志向では「ファンキー・ジャズ〜ソウル・ジャズ」、アート志向では「モード・ジャズ」そして「フリー・ジャズ」と、多様化というキーワードの基で、それぞれに進化していった訳だが、この盤では「モード・ジャズ」である。パーソネルを見渡せば、パーラン=タッカー=ヘアウッドのリズム・セクションは、明らかに「新進気鋭のモード・ジャズの担い手」である。
 
 
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さて、これだけバックに「モード・ジャズ」を配して、古参のバップなアルト・サックス奏者、ルー・ドナルドソン、愛称ルーさんはどんなパフォーマンスを聴かせてくれるのか。ちょっとドキドキするのだ。で、聴いてみると。一言で演奏の印象は「モーダルな演奏が得意な若手ピアノ・トリオをバックに、ルーさんが我が道を行く」。バックがモード・ジャズ志向であっても、ルーさんのアルト・サックスは変わらない。

ルーさんのアルト・サックスは、相変わらずご機嫌でポジティヴな、バップなフレーズを吹き上げている。モードなど何処吹く風。あろうことか、バレットのコンガが入ってファンキーな雰囲気が漂ったりする。モードにコンガ、モードにバップなアルト・サックス。異種格闘技的な独特な雰囲気が漂う。ハードバップ、ファンキー・ジャズ、モード・ジャズのチャンポン。但し、融合までは至っておらず、特別な化学反応は起こっていないようだ。

モードはモードで優れた演奏を繰り広げ、ルーさんはルーさんでバップな優れたブロウを披露、バレットのコンガは殊の外ファンキー。それぞれの個性がしっかり主張していて、摩訶不思議な雰囲気が漂う「異種格闘技ジャズ」。ルーさんのアルト・サックスをメインとして考えた時、バックは敢えて「モード・ジャズ」である必要は無い。そういう観点で「お蔵入り」になったのではないか。しかし、演奏内容は充実している。不思議な響きを宿したハードバップである。
 
 
 
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2020年2月10日 (月曜日)

ECM流フュージョン・ジャズ

先週の後半から、いきなり冷え込んだ。というか、凄く寒い。今年の冬は暖冬傾向だっただけに、この寒さは体に悪い。と思っていたら、いきなり体調を崩した。7年前に大病をして大手術の末、生還した訳だが、その時の後遺症が久々に出た。今日になってやっと回復した。それでもまだ寒い。これだけ寒い時のジャズは「ECMレコード」盤と決めている。

西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。凛とした無調のフレーズ。いわゆる「ニュー・ジャズ」である。ファンクネスは皆無、即興演奏という面が、ECMレコードのアルバムを「ジャズ」というジャンルに留めている。ECMの音のモットーは「the most beautiful sound next to silence」=「沈黙に次いで最も美しい音」。

Collin Walcott『Grazing Dreams』(写真左)。1977年2月、ノルウェーはオスロのTalent Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Collin Walcott (sitar, tabla), Don Cherry (tp, wood-fl, doussn' gouni), John Abercrombie (g, el-mandolin), Palle Danielsson (b), Dom Um Romão (perc, tambourine, berimbau)。
 
 
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リーダーのコリン・ウォルコットは「シタール、タブラ」奏者。シタールはインドの伝統弦楽器、タブラはインドの伝統打楽器。これがリーダーの楽器である。それでジャズをやるのだ。いや〜ビックリである。ニュー・ジャズの旗手、ECMレコードの面目躍如。そして、周りを固めるのが、フリージャズ・トランペッターのドン・チェリー、捻れエレギのジョンアバ、北欧のベースの雄ダニエルソン、そして、ドラムは、ブラジルのドラマー、ドン・ウン・ホマォン。

インドど真ん中のウォルコット、東洋志向に転身しつつあったドン・チェリー、バリバリの西欧志向のアバークロンビーが絡み合う、無国籍の幻想的な浮遊感溢れるフレーズ。ホマォンのドラムとダニエルソンのベースがしっかりビートを刻む中、ウォルコットのシタールとタブラが独特の、唯一無二な音空間を創り出している。東洋志向に傾くフレーズをジョンアバの西洋志向のエレギが中和する。

いわゆる「異種格闘技」的ジャズ・セッション。ECM流の「フュージョン・ジャズ」。欧州ジャズのフュージョン(融合)の音世界。摩訶不思議な即興演奏。ECMレコードならでは、というか、ECMレコードでしか為し得ない「ニュー・ジャズ」。実験色が強い内容であるが、しっかりジャズしているから素晴らしい。
 
 
 
東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2020年2月 8日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・78

ジャズ盤蒐集〜リスニングの楽しみ。過去の好盤のリイシューも楽しいが、やはり、今の新しいジャズ盤に耳を傾けるのも楽しい。今の新しいジャズに耳を傾けるということは「ジャズの今」を感じること。新盤で今を感じて、リイシューで過去を感じて、ジャズという音楽ジャンルの奥深さと歴史を理解する。ジャズ者の我々とっては、とても大切なことだと思っている。

Marc Copland Trio『And I Love Her』(写真左)。昨年10月のリリース。ちなみに、トリオを構成するのは、Marc Copland (p), Drew Gress (b), Joey Baron (ds)。リーダーのピアニスト、マーク・コープランドは、米国フィラデルフィア出身、1948年生まれなので、録音当時で71歳。大ベテランのジャズ・ピアニスト。

大ベテランのジャズ・ピアニストであり、リーダー作も1988年の初リーダー作以来、毎年1枚以上のペースで相当数を数える。いわゆる人気ピアニストであり、年齢的にもレジェンド・クラスであるにも関わらず、日本ではあまり名は知られていない。恐らく、日本のレコード会社にとって、あまり馴染みの無い海外レーベルからのリリースに偏っていたからでは無いか、と思っている。それにしても、そのキャリアに比して、あまりに日本では馴染みの無いピアニストである。
 
 
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マーク・コープランドのピアノと言えば「過剰なくらいに繊細でクール、耽美的表現の極致」が特徴。バップやファンキー、ソウルとは全く無縁。ファンクネスもほとんど感じ無い。例えば、ビル・エヴァンスの耽美的表現をさらに推し進めた、耽美的でクールで静的なピアノ。ダイナミックな展開は全く無い。まるで「カラフルで深遠な」墨絵を見る様な音世界。

冒頭の「Afro Blue」から、この「カラフルで深遠な」墨絵を見るような音世界が全開である。グレスのベースとバロンのドラムも、そんなコープランドのピアノにぴったりと寄り添うような、絶妙なサポートを聴かせてくれる。そして、タイトル曲、レノン&マッカートニーの「And I Love Her」が絶品。コープランドの耽美的なピアノがぴったりと填まる。原曲のフレーズの美しさを耽美的なピアノで、より明確に深遠に聴かせてくれる。

コープランドのピアノの音世界は、この「過剰なくらいに繊細でクール、耽美的表現の極致」に徹底されている。これが素晴らしい。時には、バップやファンキーに展開して欲しくもなるのだが、ここまで徹底していると、これはこれで「このままでもありやなあ」と思うから面白い。他のピアニストには無い「独創的な音世界」。これもジャズ・ピアノである。
 
 
 
東日本大震災から8年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2020年2月 7日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・160

昨日、八城一夫さんのリーダー作『Side by Side』をご紹介した。あれは、ピアノの名器「ベーゼンドルファー」と「スタインウェイ」との聴き比べの企画盤。A面をベーゼンドルファー、B面をスタインウェイで収録、名器と呼ばれるピアノの違いによる聴き較べが出来るという趣向。そういう意味では、企画盤では無い、通常のリーダー作を聴いてみたくなる。

八城一夫『Drivin'』(写真)。1973年の作品。ちなみにパーソネルは、八城一夫 (p), 松本英彦 (ts), 原田政長 (b), 五十嵐武要 (ds), 清水潤 (ds)。テナーがフロントのカルテット構成だが、ピアノのソロ演奏あり、ピアノ・トリオ演奏あり、テナーの入ったカルテット演奏あり、でバラエティに富んだ演奏形態それぞれで、八城一夫のピアノが心ゆくまで堪能出来る寸法。

八城一夫のピアノは、明確で硬質なタッチ、端正で素性の良いピアノの音が特徴で、ピュアで自然な音でスイングする。しかも指捌きが正確。とっても良く響くピアノで、アドリブ・フレーズがクッキリと浮かび上がる。本当に素敵なピアノである。小野満、白木秀雄、渡辺貞夫などと共演、戦後の日本のジャズ界をリードしてきた「リトル・ジャイアント」、という触れ込みは伊達ではない。
 
  
Drivin  
 
 
八城のピアノはバックに回っても素晴らしい。松本英彦のテナー・サックスのバックに回った時のコンピングの素晴らしさ。フロントのスリーピー松本のテナーをしっかりと惹き立てている。フロントの松本もとても気持ちよさそうにテナーを吹き上げている。決してテナーのフレーズを邪魔しない、それでいて、良いタイミングで「ポロンポロン」と小気味の良いフレーズを差し入れてくる。良い感じだ。

2曲目の「Fantastic That's You」がヤバい。八城の清涼感溢れる硬質なタッチの伴奏が流れてくると、思わず耳をそばだてる。前半は八城のピアノ・トリオの演奏が絶品。本当に上質のバラード演奏。思わず「鳥肌、チキン肌」である。そして、演奏半ばで松本のテナーがスッと入ってくる。力強くも優しい柔らかい、それでいて芯のしっかり入ったテナー。これが日本人ジャズなのか。ビックリするやら誇らしいやら。

名エンジニア菅野沖彦さんが始めたトリオの「モダンジャズ・シリーズ」、隅に置けないアルバムばかりだが、この八城一夫の『Drivin'』は、僕にとって特別な一枚だ。日本人ジャズが、ここまでスタンダード曲を演奏し切るのか、それも「日本人ジャズ」らしい演奏で、だ。加えて、イラスト基調のジャケットも良い味を出している(写真左のオリジナル盤)。この盤、謹んで「ジャズ喫茶で流したい」。
 
 
 
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2020年2月 6日 (木曜日)

真摯な演奏、真摯な録音です。

最近、昔聴いた懐かしい盤がリイシューされていて楽しい。日本人ジャズの往年の好盤がリイシューされている。僕がジャズを本格的に聴き始めた頃、1970年代後半の日本人ジャズ盤が懐かしい。こうやって聴き直してみると、良い盤が多かったんやなあ、と感心する。1970年代後半と言えば、フュージョン・ジャズ全盛の時代。そんな時代に、硬派で真摯な純ジャズの好盤が多々リリースされていたとは、日本のジャズ・レーベルも捨てたもんじゃない。

八城一夫『SIDE by SIDE』(写真左)。1974年2月20日、1974年3月8日の録音。ちなみにパーソネルは、八城一夫 (p), 潮先 郁男 (g), 原田 政長 (b), 五十嵐武要 (ds)。ピアノの名器「ベーゼンドルファー」と「スタインウェイ」との聴き比べの企画盤。A面をベーゼンドルファー、B面をスタインウェイで収録されている。名器と呼ばれるピアノの違いによる聴き較べが出来るという趣向。

懐かしいなあ。僕はこの盤を1980年、大学近くの例の「秘密の喫茶店」で聴かせて貰った。「ベーゼンドルファー」と「スタインウェイ」の音の違いが明確に分かるので、とにかく面白くて、何度もリクエストしたことを覚えている。自分でもピアノは弾くので、ピアノによって音が違うのは理解していたが、名器と呼ばれるピアノでもこんなにも音が違うんだ、とちょっとビックリした。
 
 
Side-by-side
 
 
さて、ピアニストの八城一夫は、明確で硬質なタッチが清々しい。日本人ジャズであるが故の、ファンクネスが希薄、端正で素性の良いピアノの音が特徴で、ピュアで自然な音でスイングする。日本人ジャズ・ピアニストに共通の個性が既にこの時代に現れていたことに、ちょっと驚く。1974年の録音であることを知らなければ、現代の、今の時代の日本人ジャズ・ピアニストのリーダー盤と紹介されても、すんなり納得する様な音である。

選曲もジャズ者にとって楽しいものになっている。取り上げられているのはどれもスタンダードの名曲。ムーディーな雰囲気が素敵な「Stardust」「Manhattan」、スイング感が心地良い「St. Thomas」「Stella by Starlight」、雰囲気のある「Love Letters」「Come Rain Come Shine」等々、スタンダードの名曲が良い雰囲気でアレンジされて、聴き応えがある。聴いていて、思わず口元が緩む。

1970年代、高級オーディオ評論家、菅野沖彦氏が録音された作品。40年ぶりくらいで聴き直した盤であるが、とにかく音が良い。スッキリとシンプルな音が素敵な録音である。楽器の音が素直にすんなり良く判る。変に音に個性が着いていないところが僕は気に入った。純ジャズには良い録音で、こういう音もありやな、と説得力のある録音である。
 
 
 
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2020年2月 5日 (水曜日)

他と遜色ない尖ったモード演奏

ジャズについては、どんどん深化していると感じているので、新盤を聴くのがとても楽しい今日この頃。最近の新盤はニュー・ジャズ系、いわゆる、ネオ・ハードバップ、ネオ・モード、ネオ・スピリチュアルなど、時代の先端を行く新しい音のジャズが花盛り。こんな新盤ばっかり聴いていると、ふと、昔のこってこてのハードバップやこってこてのモード・ジャズが無性に聴きたくなる。

そんな時、最近、お世話になるのが、ブルーノートの未発表音源シリーズが「Blue Note Classic LT series」。略称は「BNLT」。録音当時、何故かお蔵入りになった音源ばかりを発掘してリリースしたシリーズで、1950年代後半から1960年代のお蔵入り音源なのだが、基本的に内容は折り紙付き。この不思議な音源をカタログ番号順に聴き直している。

Bobby Hutcherson『Spiral』(写真)。1968年11月11日の録音。Blue NoteのLT 996番。ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib, marimba), Harold Land (sax), Stanley Cowell (p), Reggie Johnson (b), Joe Chambers (ds)。6曲目の「Jasper」、これだけが何故か1965年4月3日の録音。この6曲目だけ異質なので、ここではコメント対象から割愛する。
 
 
Spiral  

 
1979年、ジャズ音源の「発掘男」マイケル・カスクーナによる発掘リリース。1968年のヴァイブの改革者、ボビー・ハッチャーソンのお蔵入り音源。ハッチャーソンは、1967年から1969年の間に、この未発表盤も合わせて、6枚ものアルバムを作成している。どの番もポスト・バップ〜モーダル〜スピリチュアルな演奏の数々。同一傾向のアルバムが続くのを懸念したのだろうか。

この未発表盤、その内容については、とても優れたポスト・バップ〜モーダル〜スピリチュアルな演奏の数々。今の耳で聴いても、当時、どうしてお蔵入りになったのか、理解に苦しむ。ヴァイブの伸びのある音を上手く活かしたモーダルな演奏がハッチャーソンの真骨頂。ハロルド・ランドとの双頭クインテットのセッションで、ピアノのスタンリー・カウエル共々、一癖あって、正統派ではあるが、かなり尖ったモード・ジャズを展開している。

振り返れば、Stanley Cowellがピアノを弾いた「Patterns」「Spiral」「Medina」の3セッションはすべてお蔵入り。何か気になることがあったんでしょうね。しかし、このお蔵入り音源についても、他のリリース音源と全く遜色ない、限りなく自由度の高い、モーダルでスピリチュアルな演奏が展開されていて聴き応えがある。
 
 
 
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2020年2月 4日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・77

最近、気がついたのだが、「Trio Records(トリオ・レコード)」のアルバムが相当数、リイシューされている。CDでのリイシューのみならず、音楽のサブスク・サイトにもアップされているのだから嬉しいこと、この上無し。

さて、このトリオ・レコードとは、オーディオメーカー「トリオ」のレコード部門が立ち上げたレーベルである。活動期間は1969年〜1984年。日本の歌謡曲など、バラエティーに富んだジャンルを扱っていたが、ジャズのジャンルでは、日本人ジャズの好盤を多くリリースしている。

ちょうど、僕がジャズを聴き始めた頃がトリオ・レコードの全盛期で、毎月毎月、魅力的な内容の日本人ジャズのアルバムをリリースしていたのを覚えている。大学近くの「秘密の喫茶店」のママさんから、 本田竹曠『ジス・イズ・ホンダ』を聴かせてもらったのが、トリオ・レコード盤の最初。エコーが適度にかかった、ニュー・ジャズ志向の音が実に魅力的だった。

本田竹曠トリオ『I Love You』(写真)。1973年録音。ちなみにパーソネルは、本田竹曠 (p), 鈴木良雄 (b), 渡辺文男 (ds)。ちょっと「おどろおどろしい」ジャケットに引くが、どうして、その内容は時代の先端を行く、素晴らしいモード・ジャズ。日本人ジャズのピアノ・トリオがゆえ、ファンクネスはほぼ皆無、それでいて、スインギーでダイナミックな展開は「世界レベル」。 
 
 
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トリオ・レコードは ECMレコードの先進性をいち早く見抜き、「ECMをトータルに販売展開する」ことをメインに、1973年に世界初の独占販売契約を締結している。トリオ・レコードのジャズの音作りは、このECMレコードの音作りを参考にしている様に感じる。この本田のトリオ盤を聴いていてそう思う。適度にかかった印象的なエコー。切れ味の良い音像。明確な音の輪郭。音の「間」を活かした録音志向。いわゆる「ニュー・ジャズ」な録音である。

本田のピアノは素晴らしいの一言。ピアノを本当にフルに鳴らしているなあ、と感じるし、タッチの正確さは特筆もの。ドライブ感とスイング感がほどよく共存し、モードもコードも自由自在。アドリブ・フレーズのイマージネーションは幅広く深い。この盤での本田のピアノは、キース・ジャレットと比肩するくらい、素晴らしい内容を誇っている。

日本人として、思わず「胸を張って」しまいそうな、そんな素晴らしいジャズ・ピアノ。歌心満点に高速フレーズで唄いまくる「アイ・ラヴ・ユー」「サニー」「枯葉」が爽快感満点。その指捌きに惚れ惚れする。そうそう、ゲイリー・ピーコックとジャック・デジョネットのリズム隊を端正に精緻に仕立てたような、鈴木のアコベと渡辺のドラムのリズム隊も特筆もの。

日本人ジャズが、世界レベルのピアノ・トリオをやっている。この盤を聴いた時、心から思った。そして、思わず心の中で「胸を張って」いるのだった。
 
 
 
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2020年2月 3日 (月曜日)

ながら聴きのジャズも良い・37

ジャズやロックのアルバムにとってジャケット・デザインは大切だと思っている。優れたジャケット・デザインからは、そのアルバムの中に詰まっている音の雰囲気、そのアルバムのリーダーの面影、そんなアルバムにまつわる様々なイメージが伝わってくる。ジャズの世界では、ほとんどのレーベルが、優れたジャケット・デザインを採用している。が、時々、これは何だ、と驚くような「チープなデザイン」「理解に苦しむデザイン」のジャケットもある。

Tommy Flanagan & Rodney Jones『My Funny Valentine』(写真左)。1981年12月21日、NYは、M&I Recording Studiosでの録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p), Rodney Jones (g), Major Holley (b), Jesse Hameen (ds)。ギターのロドニー・ジョーンズの名前が珍しい。名盤請負人、トミー・フラナガン(トミフラ)がピアノを担当。これまた、その燻し銀なピアノ・プレイが楽しみ。

ロドニー・ジョーンズは、1956年コネチカット出身。録音当時は弱冠25歳。若手も若手のギタリストであるが、そのプレイは堂々としたもの。雰囲的には、ウェス・モンゴメリー直系のハードバップなジャズ・ギター。テクニックも確かでフレーズも流麗。音は適度に丸くて太く、ピッキングは正確。25歳とは思えない成熟なバップ・ギターを聴かせてくれる。
 
 
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5曲目の「D Natural Blues」では、ウェスばりのオクターヴ奏法を披露して、その実力を遺憾なく発揮している。レノン=マッカートニーの「Yesterday」やラストのタイトルナンバーの「My Funny Valentine」では、耽美的なフレーズを流麗に弾きこなして、繊細な面もしっかりと聴かせてくれる。躍動感と耽美的な面が同居した、優れたバップ・ギターである。

バックのリズム・セクションのトミフラのピアノも聴きものだ。適度な太さで明確なタッチ。トミフラお得意のバップ・ピアノが炸裂する。メジャー・ホリーの唄うようなベース・ラインと、しなるような弦の響きも良好。それぞれの楽器のアドリブ・フレーズを邪魔すること無く、さり気なく繊細にサポートするジェシー・ハミーンのドラミングが実に洒脱。聴き込むにも、ながら聴きにも最適な、ギター・カルテットの演奏である。

しかし、唯一、ジャケット・デザインが玉に瑕。アルバム・タイトルから連想される「バレンタイン・デー」にあやかったのか、この「砂の上に書いた弓で射られるハート」の写真はあまりにチープで俗っぽいジャケット・デザインでいただけない。他にもあと2種類ほど、デザイン違いのジャケットがあるが、どれも全く「イマイチ」。思うにこのアルバム、ジャケット・デザインに恵まれない盤なのだ。
 
 
 
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2020年2月 2日 (日曜日)

水墨画を見るような素敵なデュオ

以前に比べて、最近、ジャズの演奏フォーマットで「デュオ」が多くなったように感じる。デュオは楽器の組合せをよくよく考えなければならないこと、そして、デュオの演奏については、双方の演奏のテクニックが高くなければならないこと、そして、一番大切なのは、デュオのパートナーである演奏相手との相性である。

この3つの要素を充足するには、ジャズの充実度合いが鍵になる。1980年代に純ジャズ復古がなり、フュージョン〜スムース・ジャズの成熟度合いが高まり、21世紀に入って、ネオ・ハードバップが定着し、クールで耽美的な、新しいスピリチュアル・ジャズが現れ出でた。21世紀に入ってからのジャズの充実度合いは順調に高まっている。

Bill Frisell & Thomas Morgan『Epistrophy』(写真左)。ECM 2626番。2016年3月、NYヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ録音。改めてパーソネルは、 Bill Frisell (g), Thomas Morgan (b)。ビル・フリゼールは1951年生まれ。今年69歳の「変則ねじれギターのレジェンド」。トーマス・モーガンは1981年生まれ。今年39歳の中堅ペーシスト。菊地雅章との共演で僕はこのベーシストの名前を知った。
 
 
Epistrophy  
 
 
世代が異なりながらも(実際30歳の年齢差がある)、双方、盟友と任じている、ビル・フリゼールとトーマス・モーガン。ジャズの「音の志向」が合っていないとデュオ演奏は成立しない。この30歳という年齢差で「音の志向」が合うのか、という不安を感じるこの二人であるが、フリゼールが以前より、尖った自由度の高い、新しい響きのモード・ジャズを志向してきたので問題無い。

淡々としているが、音に深みと味わいがある。水墨画を見るような演奏。調性のフレーズと無調のフレーズが、有機的に結合し、硬軟自在、緩急自在のデュオ演奏が繰り広げられる。演奏のイメージが多岐に広がるので飽きがくることは無い。モーガンのスピリチュアルなベースに鼓舞されて、フリゼール独特の耽美的なモーダルな自由度の高いフレーズが美しく乱舞する。

2人の愛する米国ネイティヴな歌集「All in Fun」「Red River Valley」「ラストダンスは私に」、モンクの「Epistrophy」「Pannonica」など、癖のある選曲は実にユニーク。そして、ジョン・バリーの「ジェームズ・ボンドは二度死ぬ(ou Only Live Twice)」には思わず口元が緩む。カラフルなジャケットが、アルバムの音楽を的確にイメージしている。好盤です。
 
 
 
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2020年2月 1日 (土曜日)

テナー・サックス+弦楽四重奏

ジャズは様々なジャンルの音楽と融合する。他のジャンルの音楽はある特定の音楽ジャンルと融合することはあっても、ジャズの様に複数の音楽ジャンルと何の違和感も無く融合する音楽ジャンルは他に無い。ジャズと他の音楽ジャンルとの融合の歴史を振り返ると、まず1950年代にジャズとクラシック音楽との融合の流行があった。ジャズの融合の歴史の中で、一番歴史があるのは「クラシックとの融合」であろう。

Joshua Redman & Brooklyn Rider『Sun on Sand』(写真左)。ちなみにパーソネルは、ジャズのカルテットとして、Joshua Redman (ts), Scott Colley (b), Satoshi Takeishi 武石 聡 (ds)。弦楽四重奏の名前は「Brooklyn Rider」。弦楽四重奏のメンバーとして、Colin Jacobsen, Johnny Gandelsman (violin), Nicholas Cords (viola), Eric Jacobsen (cello)。2015年4月29,30日,5月1日NYCのSear Sound録音。

パーソネルを見渡して、この盤、異色の企画盤になる。ジャズとクラシック(弦楽四重奏)が織りなす融合音楽。アルバム全体の雰囲気として、ジャズらしいノリ・スリルと現代クラシックらしい荘厳さとがバランスよく融和している。パトリック・ジマーリのアレンジが実に効いている。ストリングスの一糸乱れぬ精緻なアンサンブルをバックに、メインストリーム・ジャズな、即興&自由度の高いカルテット演奏が展開される。この「一糸乱れぬ精緻」と「即興&自由度の高い」の対比がこの盤の「肝」である。
 
 
Sun-on-sand  
 
 
ジョシュア・レッドマンのテナーについては、正統派で端正で品行方正。ジャズ・テナーのモデルにしても良い位の「品行方正」さで、メインストリーム・ジャズの中で演奏すると、余りの端正さが故に、余りに優等生的なテナーで、ちょっと面白く無い雰囲気が漂うことがある。逆に、今回の「ジャズとクラシック(弦楽四重奏)が織りなす融合音楽」の様に、異種格闘技風セッションにおいて、ジョシュアのテナーがその個性を最大限に発揮する傾向にある。

この盤でのジョシュアのテナー・サックスは良く鳴り、流麗にアドリブ・フレーズを吹き上げる。ジョシュアのテナー・サックスの一番良いところが、この盤で溢れている。この盤の一番の注目ポイントは、このジョシュアのテナーの伸び伸びとしたブロウ。このジョシュアの即興&自由度の高い「ジャズらしいサテナー」を、一糸乱れぬ精緻なアンサンブルで弦楽四重奏がガッチリと受け止めている。

とにかく、ジョシュアのテナーが良い意味で「目立つ」。そして、弦楽四重奏の演奏が「耳につかない」。というのも、弦楽四重奏が一糸乱れぬ精緻なアンサンブルでありながら、リズミカルなビートに乗せたジャジーなフレーズを連発しているのだ。そんなジャジーな弦楽四重奏のお陰で、ジョシュアのテナーの良いところが「目立つ」。この企画盤、実は、ジョシュアのテナー・サックスを愛でるのに最適なアルバムである。
 
 
 
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