バッド・プラスの2019年最新作
ジャズの深化のひとつがこのピアノ・トリオの出現だった。米国ミネソタ州ミネアポリスの出身。アコースティック・ジャズでありながら、それまでの亜アコースティック・ジャズの音の概念を覆す「轟音サウンド」で、ジャンルを超えた幅広い人気を獲得した。音楽性については、グランジ・ロック、テクノ、フリー・ジャズ等の要素を取り入れた豪快なプレイが身上。
そのピアノ・トリオは「The bad Plus(バッド・プラス)」。米国中西部の逸脱ジャズ・マンたちが2000年に結成したピアノ・トリオである。オリジナル・メンバーは、Ethan Iverson (p), Reid Anderson (b), David King (ds)。各国の音楽評論家が残した賞賛の言葉が「ロックの魂を持っているジャズトリオ」「NIRVANA以来もっとも独創的なサウンドを持つスリーピース・バンド」「ジャズ純粋主義者は彼らの音を前に怯え、前衛は彼らの音に群がる」。どれも言い得て妙である。
The bad Plus『Activate Infinity』(写真左)。そんな「バッド・プラス」の最新作。2019年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、Reid Anderson (b), Orrin Evans (p), Dave King (ds)。ピアノがイーサン・アイバーソンからオリン・エヴァンスに変わっての2枚目。本作は全曲メンバーのオリジナルで固められているが、それもそのはず、実にユニークなピアノ・トリオ演奏が展開されているのだ。
「轟音サウンド」など過去のこと、演奏は淡々と進んで行く。高速フレーズを弾き倒す訳でも無いし、8ビート基調のロック寄りのノリの良い演奏を聴かせる訳でも無い。歩くテンポをメインに淡々と演奏が進んで行くのだが、暫くすると、ピアノの奏でるフレーズがユニークなのに気がつく。黒鍵を織り交ぜて、半音上がったり半音下がったり、音程を半音上げ下げしながら、2音飛ばし3音飛ばしの捻れたフレーズを連発していく。聴いていて、思わず「悶絶」したくなるくらいの捻れ具合。
そんな捻れたピアノに追従するベースがこれまた限りなく自由度の高いモーダルなベース。ピアノの捻れなど何処吹く風、ピアノと基音を合わせるだけで、自由度の高い、伸びのある重低音ベースを駆使しつつ、モーダルな旋律でフロントのピアノをやんわりと支える。そこにポリリズミックなドラミングが演奏全体のテンションを高め、淡々としたフレーズの展開に刺激とビートを供給する。
面白い、実にユニークなピアノ・トリオの演奏である。最初はあまりに淡々としているので、これはそのうち飽きるかな、と思ったのだが、意外や意外、捻れたピアノのフレーズ、自由度の高いモーダルなベース、ポリリズミックなドラミングが有機的に結合した、新しいジャズの響きに聴き惚れている内に一枚、聴き通してしまう。一般ウケするより、玄人好みの好盤と言える。ジャズ者中級者以上向け。
東日本大震災から8年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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