日本人による「エレ・マイルス」
今を去ること40年以上前、FMでマイルス・デイヴィスの日本公演の実況録音を聴いた瞬間から、エレクトリック・ジャズがお気に入りである。今から振り返ると、あの実況録音の音源って、後の『アガルタ』だった。当時、一番尖った最先端のエレクトリック・ジャズを僕は耳にしたことになる。これは幸運なことであった。
Selim Slive Elementz『VOICE』(写真左)。先日、この盤の音を聴いた時、これは、と感じた。音のベースはエレ・マイルス。しかも、周到に準備され、優れたアレンジが施されたエレ・マイルス。洗練された、流麗な、それでいてインパクトのあるエレ・マイルス。それが、このSelim Slive Elementzというバンドの音である。では、この「Selim Slive Elementz」とは何か?
「Selim Slive Elementz」は、マイルス・デイヴィスと交流のあった音楽ジャーナリスト 小川隆夫が、quasimodeのリーダー平戸祐介と手を組み、マイルス・ミュージックの遺伝子を受け継いだ精鋭プレイヤーたちで結成したスーパー・ジャム・バンド(宣伝より)。ちなみにパーソネルは、小川 隆夫 (g), 平戸 祐介 (key), 元晴 (as, ss), 栗原 健 (ts), 小泉P克人 (elb), コスガ ツヨシ (g), 大竹 重寿 (ds), 西岡 ヒデロー (perc)。
「2サックス、2ギター、4リズムが織りなす21世紀のエレクトリック・マイルス・サウンド」がキャッチ・フレーズ。確かにその通りで、この盤に詰まっている音は、確実に「エレ・マイルス」である。が、エッセンスは踏襲しているが、エレ・マイルスのコピー、カヴァーに全くなっていないところが良い。出てくる音は確実に個々のメンバーのオリジナリティー溢れるもの。
しかし、演奏として感じるのは「エレ・マイルス」。エレ・マイルスの音世界もこういう風に継承されていく時代になったんだなあ、と感慨深いものを感じる。そして音の傾向は「日本人」。エレ・マイルスの肝は「ファンクネス」なんだが、このファンクネスが乾いている。この乾いたファンクネスって日本人独特なものと僕は感じている。その乾いた「ファンクネス」がこの盤に詰まっている。
実はこの「エレ・マイルス」のエッセンスを踏襲した新盤、メンバーの中に「トランペット」がいない。トランペットを入れると、あまりにエレ・マイルスしてしまうのを避けた、とのこと。しかし、トランペットが不在で、これだけ「エレ・マイルス」のエッセンスを踏襲して、かつオリジナリティを最大限に発揮し表現できるとは。Selim Slive Elementzというバンド、末恐ろしいほどのポテンシャルを秘めていると見た。
東日本大震災から8年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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