ザヴィヌルのトリビュート盤
最近の新盤を眺めていて、トリビュート盤が結構出ているのに気がついた。その中でもこのトリビュート盤を見つけた時は思わず「おおっ」と思った。ウェザー・リポートやザヴィヌル・シンジゲートでの活動、マイルス・デイヴィス『イン・ア・サイレント・ウェイ』『ビッチズ・ブリュー』といった作品に参加〜貢献、エレクトリック・ジャズのキーボード奏者でありレジェンドである「ジョー・ザヴィヌル」のトリビュート作である。
Scott Kinsey『We Speak Luniwaz : The Music of Joe Zawinul』(写真左)。今年10月25日のリリース。冒頭の「The Harvest」のキーボード・ワークを聴くだけで、「ザヴィヌル者(ザヴィヌルのファン)」であれば思わず「むふふふ」と思う。ザヴィヌルのキーボード・ワークを忠実に再現しているのだ。音色、音の重ね方、フレーズ展開の手癖。どれをとっても「お見事」なのだ。
このザヴィヌルのトリビュート盤、長年ザヴィヌルとスタジオで同じ時間を過ごした愛弟子スコット・キンゼイのリーダー作。そりゃ〜、ザヴィヌルのキーボード・ワークの再現性の正確さ、当たり前か〜、と思わず感心する。音のエッジのラウンドさ、重ねた音のくすんだ感、そして、独特の乾いた無機質でオフビートなグルーヴ感。聴いていて、とにかくワクワクする。
選曲もなかなか良く練られたもので、ザヴィヌルのキーボード・ワークの個性がハッキリ出るザヴィヌルの自作曲を厳選している。「Cucumber Slumber」や「Black Market」「Fast City」「Port Of Entry」など、何度聴いても痺れまくるザヴィヌルの自作曲ばかり。ただし、ザヴィヌルの音世界を再現するばかりではない。インド、エスニック、エレクトロニック・ミュージックなどでアレンジし、ザヴィヌル曲に新しい魅力を与えている。
もともとザヴィヌルのキーボード・ワークは無国籍で辺境的な響きを宿したもので、従来のジャズ、いわゆるアフリカン・アメリカンのネイティヴな響きとは一線を画するもの。この個性をインド、エスニック、エレクトロニック・ミュージックなどでアレンジすることで、現代のジャズのトレンドのひとつである「クールでスピリチュアルな」エレ・ジャズを現出している。
ジャコ・パストリアスの再来とも称されるアドリアン・フェロウ、イエロージャケッツのオリジナルメンバーであったジミー・ハスリップ、ウエザー・リポートのオリジナルメンバーのロバート・トーマス・ジュニアなども参加していて、ザヴィヌルのトリビュート作としての「再現性」や「既聴感」に貢献している。とにかく、このトリビュート盤、ザヴィヌル者、WR(ウエザー・リポート)者にとっては必聴アイテムである。
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