こんなアルバムあったんや・121
硬派なモード・ジャズや限りなくフリーに近いスピリチュアル・ジャズなど、集中して聴く必要のある「アート」としてのジャズも良いが、聴き流しが出来る、寛いで聴くことが出来る「エンタテインメント」としてのジャズも楽しい。もともとジャズって、ダンス音楽からスタートしているし、米国のポップス音楽の主流だった時代もあるのだ。
歴代のジャズ・レジェンドと呼ばれるジャズマンも、硬派でアートな盤をリリースする一方、聴いて楽しい、寛いで聴ける、エンタテインメントな企画盤を録音してたりする。何もエンタテインメントな企画盤を出すジャズマンが軟派なのでは無い。リスナーの要請として、エンタテインメントな企画盤も必要とされているのだ。決して、頭っから否定してはいけない。
George Shearing Quintet『Latin Escapade』(写真左)。1957年12月のリリース。ジョージ・シアリング(George Shearing)と言えば、イギリス生まれのジャズピアニスト。米国に渡ってクール・ジャズの第一人者として活動し、1950年代の米国東海岸のハードバップの流とは距離を置いた「洒落たアンサンブルとクールなサウンド」で人気を博した。
そんなクールなシアリングが、ラテン・ジャズに手を染めたアルバムがこの『Latin Escapade』。ジャケットもジャズらしくなく、ラテン系の妙齢の美女の写真をあしらったもの。これだけ見たら、ジャズのアルバムだとは思わないよな。ラテン音楽のムード曲集って感じ。しかし、そこはジョージ・シアリング。クールなアレンジで、モダンなラテン・ジャズに仕上げている。
もともと端正で流麗なフレーズが身上のシアリングのピアノ。それをラテン・ミュージックに応用するのだから、ちょっと俗っぽいラテン音楽が洒落た端正なジャズに変身している。ラテン音楽がもともと持っている「猥雑な」フレーズはそのままだが、アレンジがクールで耳に付かない。リズム&ビートもラテン・チックだが、しっかりジャジーな雰囲気を織り交ぜている。
クールで洗練されたムーディーなジャズに仕上がっているのだから、シアリングのアレンジ能力とピアノの表現力は抜きんでたものがある。ラテン・ジャズかあ、と最初は思うのだが、意外と聴いていて「楽しめる」。気軽に聴いて、気軽に楽しめる。こういうジャズ盤があっても良いなあ、と思うようになった。リラックスして「ながら聴き」。意外と至福の時です。
東日本大震災から8年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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