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2019年9月の記事

2019年9月30日 (月曜日)

まだまだ現役なアルパートの魅力

Herb Alpert(ハーブ・アルパート)。ジャズ・トランペットのレジェンドである。トランペッターのみならず、コンポーザー&アレンジャーにも秀でる。A&Mレコードの創始者の一人として有名である(A&Mの"A"はアルパート(Alpert)を指す)。1935年生まれなので、今年で84歳。相当な年齢ではある。しかし、未だ現役。体力が資本のトランペッターとして、84歳で現役って凄い。

Herb Alpert『Over the Rainbow』(写真左)。今年9月20日のリリース。1曲が3〜4分と短い。全12曲。選曲を見れば、ニュー・スタンダードと呼んで良い、1970年代以降の魅力的な楽曲をフュージョン・ジャズとしてアレンジし、ライトで内容の濃い「イージーリスニング・ジャズ」的な内容。といって、アルパートのトランペットが硬派な音色をしている分、甘い雰囲気は全く無い。

そう、ハーブ・アルパートのトランペットの音色が若々しい。84歳のブロウとは思えない、少し「くすんだ」ブリリアントな音色。淀みの無い、ストレートな吹きっぷり。若い頃と比べて、音は小ぶりになったが、まだまだ現役、まだまだイケる。運指も滑らかで、ふらつきやもつれは皆無。そして、何より素晴らしいのはミストーンや掠れの無いこと。
 
 
Over-the-rainbow-herb-alpert
 
 
ビル・ウィザース「Ain't No Sunshine」、 バリー・マニロウ「Copacabana」、ビリー・プレストン「You Are So Beautiful」、アース・ウインド&ファイアー「Fantasy」など、ニュー・スタンダード曲と呼んで良い、魅力的な楽曲をカヴァーしている。いずれの曲も聴いていて楽しいフレーズが満載。弾いて楽しい、聴いて楽しいニュー・スタンダード曲を優れたアレンジで新たな魅力を引き出している。

シングル・カットされたオリジナル・ナンバーの「Skinny Dip」は、ハーブ自身がプロデュースも手掛けている。明確にアルパートらしい演奏で、トランペットの吹きっぷりや癖、アレンジの志向や決めフレーズなど、しばらく聴いていると「ああ、やっぱりこれはアルパートやなあ」と確信する楽曲である。そして、タイトル曲「Over the Rainbow」は従来の有名ジャズ・スタンダード曲。これがまた良い内容。

ニュー・スタンダード曲、オリジナル曲、従来の有名ジャズ・スタンダード曲と、なかなかの楽曲を選曲し、得意のアレンジの才を振るって、魅力的な、イージーリスニング志向のフュージョン・ジャズに仕立て上げる。コンポーザー&アレンジャーにも秀でたアルパートの面目躍如。そして、端正で説得力のあるアルパートのトランペットが、唄うが如く、気持ち良さそうに飛翔する。気軽に聴ける佳作。
 
 
 
東日本大震災から8年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年9月29日 (日曜日)

クロスオーバーなタレンタイン

さて、久し振りにCTIレコードの聴き直し。スタンリー・タレンタインである。タレンタインのテナー・サックスは「漆黒のファンキー・テナー」。どっぷりマイナー調の、思いっ切りジャジーな、中低音中心のファンキー・テナー。1960年代はブルーノート・レーベルをメインに活動。1970年に入って、CTIレコードへ移籍。クロスオーバーな聴き易いジャズに身の置き場を変えた。

Stanley Turrentine『Sugar』(写真)。CTIの6005番。1970年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Freddie Hubbard (tp), George Benson (g), Lonnie Liston Smith (el-p), Butch Cornell (org), Ron Carter (b), Billy Kaye (ds), Richard "Pablo" Landrum (congas), Hubert Laws (fl), Hank Crawford (as), Johnny "Hammond" Smith (org), Billy Cobham (ds), Airto Moreira (perc)。

パーソネルを見渡すと、ブルーノート・レーベル時代のメンバーとはガラリと変わった。ハードバップ時代からファンキー・ジャズと渡り歩いてきた「手練れ」のメンバーの顔は無い。どの顔も、これからのクロスオーバー〜フュージョン・ジャズを担っていく、若手〜中堅メンバーばかり。テクニックも優秀。高度な演奏を聴き易いジャズに仕立てて、心地良い響き。
 
 
Sugar-stanley-turrentine  
 
 
そんな若きクロスオーバーなリズム・セクションをバックに、タレンタインが「漆黒のファンキー・テナー」を朗々と吹き上げていく。プロデューサー、Creed Taylorの手腕が存分に発揮された、CTIレコード初期の傑作盤である。とにかくアレンジが優秀。冒頭のタイトル曲「Sugar」の「どっぷりファンキー度最高」な演奏だが、クロスオーバーなアレンジによって、極上のエレジャズに仕上がっている。

3曲目の「Impressions」は、ジョン・コルトレーンのモーダルでシーツ・オブ・サウンドな、思いっ切り硬派な純ジャズ曲なんだが、パーカッションとエレピの響きを全面に押しだして、8ビートでクロスオーバーな「Impressions」に変身させている。こんなファンキーでエレクトリックな「Impressions」は聴いた事が無い。しかも、これがなかなか「イケる」のだから面白い。

しかし、タレンタインのどっぷりハードバップでファンキーな「漆黒のテナー」がここまで華麗に転身するとは、実に見事である。ジャケットがちょっとエロチックで「イージーリスニングなジャズ」を彷彿とさせて、ちょっと敬遠気味になるが、中身はなかなか硬派なクロスオーバー・ジャズ。1970年初頭なので、メインストリーム・ジャズな響きをしっかり残っていて、意外と聴きものな内容になっています。
 
 
 
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2019年9月28日 (土曜日)

ECMの「イスラエル・ジャズ」盤

欧州ジャズの老舗レーベルと言えば「ECMレーベル」。1969年にマンフレート・アイヒャーが創立。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。そんな、アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」。僕はジャズを聴き始めた学生時代、大変にお世話になったレーベルである。

Avishai Cohen & Yonathan Avishai『Playing The Room』(写真左)。ECMより、つい先日リリースの新盤。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (tp), Yonathan Avishai (p)。ベーシストではない、トランペッターのアヴィシャイ・コーエンとピアニスト、ヨナタン・アヴィシャイとのデュオ盤。デュオを構成する奏法のラスト・ネームを見ると、これは「イスラエル・ジャズ」であると期待する。

ECMらしい静的でクールな、即興ベースのデュオ。限りなく静謐で豊かなエコーがそのクールさを増幅する。このジャズは「ニュー・ジャズ」と呼んで良いだろう。スイング感は皆無、ファンクネスは皆無。しかし、測距句演奏をベースとしたデュオ演奏は明らかに「ジャズ」。底を流れるリズム&ビートは堅実なオフビート。自由であるが「フリー」では無い。限りなく自由度の高い「モーダル」なデュオ演奏。
 
 
Playing-the-room
 
 
全編に渡って、典型的な「イスラエル・ジャズ」の音が詰まっている。出てくるフレーズがちょっとユニークで、北欧的でありながら、どこかエスニックでどこか中東風な響きがする。自由度が高く、エコー豊かなアコースティックな響き。そこはかとない中近東の哀愁感を帯びたトーンが見え隠れする。今までのジャズには全く無い響き。特に、この番ではそんな「イスラエル・ジャズ」の個性をシンプルなデュオ演奏が際立たせる。

このデュオを構成する二人は同じ中学に通っていたそうだ。ティーンエイジャーの頃からテル・アヴィヴでともにジャズを探求してきて、音楽的にも30年以上ずっと長い交友関係を築いてきた、そんな濃いリレーションシップが、これだけの「あうん」の呼吸を生み出し、適度な緊張感溢れる演奏を実現し、僕達を最後まで飽きさせないのだろう。

ちなみに、このアルバムの演奏については、ほとんど一発録音だったそう。そういう面でも「イスラエル・ジャズ」のレベルは高い。最近、イスラエル・ジャズに遭遇する機会が多い。イスラエル・ジャズは、老舗本国の米国、欧州について、新たなジャズの聖地になる位の勢いでメジャーな存在になってきている。もはや、イスラエル発のジャズは無視出来ない存在になってきている。
 
 
 
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2019年9月27日 (金曜日)

幻のコルトレーン・フォロワー

コルトレーンはジャズ・テナーマンの共通の指針である。コルトレーン存命中は、当然、本人がいるので、スタイルを真似ることはあまりなかったが、コルトレーンが、1967年7月に急逝した後、出てくる出てくる、コルトレーンのフォロワーが続々出てくる事態になる。とにかくコルトレーンの奏法は魅力的で、とにかくフォロワーになりたい。いわゆるジャズ界最高の「ミュージシャンズ・ミュージシャン」がコルトレーンなのだ。

猫も杓子もコルトレーン・スタイルになっていく訳だが、時代は1960年代後半から終盤、米国ではポップスやロックが台頭し、人気を獲得しつつあった。その結果、ジャズはその人気を落とし、徐々に売上も下降線。特に、コルトレーンのスタイルは硬派でストイックで自由度が高い。よって、音楽を気楽に聴いたり、なにかをしながらの「ながら聴き」には「ほぼ向かない」。

つまりは、コルトレーン・スタイルのテナー盤は売れない、という事態に陥る。逆に言うと、コルトレーンはジャズにとって良い時代に出現し、そして、ジャズ人気が大きく傾きだした頃、あの世に去って行ったことになる。当時、コルトレーン・スタイルのテナー盤は売れ行きが悪かったか、音源自体お蔵入りになったものが多かった。世知辛いものである。
 
 
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Tyrone Washington『Natural Essence』(写真左)。1967年12月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Tyrone Washington (ts), Woody Shaw (tp), James Spaulding (as, fl), Kenny Barron (p), Reggie Workman (b), Joe Chambers (ds)。タイロン・ワシントンは、当時、ブルーノート・レーベル期待の若手テナーマンだった。バックを張るメンバーも充実、満を持してのリーダー作である。

スタイルは明らかに「コルトレーン・テナー」。コルトレーンに比べると穏やかで端正な「コルトレーン・スタイル」なテナーである。圧倒的な「パワフルでフリー」なブロウ。流麗、またはアブストラクトな展開。聴き応え充分なテナーは聴き所満載。演奏曲をそれぞれ聴くと、アブストラクトでフリーな側面と、ポップで流麗で端正な側面を上手く合わせて配置している。この盤1枚でワシントンのテナーの個性をしっかりと確認することが出来る。

バックのメンバーも粒ぞろい。特に、ウッディ・ショウのトランペットとケニー・バロンのピアノが好調、好印象。そして、タイロン・ワシントンのテナーはコルトレーンの後継の一人として期待をかけても良い位の内容。しかし、ワシントンがこれだけの実力派テナー・マンであったにも関わらず、1974年に『Do Right』をリリースした後、忽然と姿を消した。聴衆の「嗜好の変化」とは残酷なものである。
 
 
 
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2019年9月26日 (木曜日)

コルトレーン・テナーへの挑戦

ジャズの世界で、テナー・サックスをやる者にとって、ジョン・コルトレーンは避けて通れない。この21世紀の世の中になっても、若手テナー・マンの中で、ジョン・コルトレーンのテナー・サックスに挑戦する者は後を絶たない。ただ、一時の様に「猫も杓子もコルトレーン」ということは無くなった。それでも、コルトレーンのテナー・サックスは大きな目標であることは確かである。

Sam Dillon『Force Field』(写真左)。2019年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Sam Dillon (ts), Theo Hill (p, fender rhodes), David Wong (b), Anwar Marshall (ds), Max Darche (tp), Andrew Gould (as), Michael Dease (tb)。ニューヨークで活躍している気鋭の若手テナーマン、サム・ディロンの好盤である。

ディロンのテナー、ヒルのピアノ、ロングのベース、マーシャルのドラムのカルテットをベースに、曲によりマックス・ダルケ(tp)、アンドリュー・グールド(as)、マイケル・ディーズ(tb)が、参加したセクステット&セプテットによる演奏を収録。バラエティに富んだ編成から、ストレート・アヘッドな「ネオ・ハードバップ」な演奏が魅力的である。
 
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サム・ディロンのテナー・サックスは「コルトレーン」ライクなもの。アブストラクトに展開するところも、ストレートに伸びるテナーのブロウも、速いパッセージでは、まるで「シーツ・オブ・サウンド」の如く、ハイ・テクニックでメカニカルな音出し。この盤の様々な演奏を聴いていると、ジャズ・テナーの王道、コルトレーン・テナーに果敢に挑んでいる様がよく判る。

選曲もなかなか「ふるっている」。さすが、現代の若手のホープの選曲である。彼のオリジナルのほか、チック・コリア、ハリー・ウィッテッカー、ラーシュ・ヤンソン、チャーリー・パーカーのナンバーを選曲している。この選曲が今までのテナー・マンと違うところ。現代の若手テナー・マンの新しい感覚を感じる。しかも、これらの目新しい曲でテナー・サックスが充分に映えるのだ。

「猫も杓子もコルトレーン」な時代もあった。テナー・マンによっては、テクニックが伴わず、歌心が不足して、コルトレーン・テナーに挑みはするのだが、全く退屈な演奏に終始する盤もあるなど、玉石混交な時代もあった。が、このサム・ディロンの様に、テクニックを伴った、気鋭の若手テナー・マンが、コルトレーン・テナーへチャレンジする様は頼もしい限り。いい音してます。
 
 
 
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2019年9月25日 (水曜日)

モダンなスイング・テナーが良い

モダン・スイング・テナーの重鎮スコット・ハミルトン(Scott Hamilton)。ロードアイランド州プロヴィデンス出身、1954年9月12日の生まれ、今年で65歳。1977年のデビュー盤『Scott Hamilton Is a Good Wind Who Is Blowing Us No Ill』を、僕は1980年に聴いている。これが当時「モダンなスイング・テナー」として、ちょっとした変わり種ジャズマンとして評価されたと記憶している。

あれから早40年。変わり種、モダンなスイング・テナーのスコット・ハミルトン(僕は「スコハミ」と呼んでいるので、この後は「スコハミ」で通します)は、ずっと元気に、スイング・テナーを吹き上げている。スコハミの素晴らしいところは、彼は演奏スタイルが全く変わらない。演奏スタイルの基本は「ハードバップ」。これが40年間、一貫して続いている。感服の至りである。

Scott Hamilton『Street of Dreams』(写真左)。今年7月のリリース。ちなみにパーソネルは、Scott Hamilton (ts), Dena Derose (p), Ignasi Gonzalez(b), Jo Krause (ds)。2017年作『Moon Mist』と同メンバーで録音されたスコハミのワンホーン・カルテット。実力派弾き語り女性ピアニスト、デナ・ディローズのピアノをフィーチャーしている。
 
 
Street-of-dreams-1
 
 
冒頭の1曲目から「If I Were A Bell」から、余裕と安心のハードバップである。有名なイントロ、キンコンカンコンというチャイムの音を模したテナーのゆったりとしたブロウ。このゆったりとしたイントロから味がある。とにかく、スコハミのテナーの音が実に良い。スッと伸びた暖かいトーンと鼻歌を唄うようなフレーズ。歌心満点のアドリブ展開には惚れ惚れする。

デナ・ディローズのピアノをメインとしたリズム・セクションが、これまた、暖かで弾力があって温和な音で良い雰囲気。絵に描いた様な「ハードバップなリズム・セクション」。良い感じだ。こんなにハードバップなリズム・セクションをバックにしているのだ。スコハミはとても気持ちよさそうに、スイング・テナーを吹きまくる。演奏される曲はどれもが、お馴染みのスタンダード・ナンバー。これがまた良い。

ハードバップの全盛期から既に半世紀以上が経っている。ハードバップを基調とするスタンダード・ナンバーの演奏。手垢が付いて聴き飽きた演奏かと思いきや、まだまだ新鮮な響きが美しく、アドリブの展開はイマージネーション豊かで、全く以て飽きが来ない。不思議なことだが、これがジャズの面白いところ。まだまだ、ハードバップな演奏は深化していくに違いない。
 
 
 
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2019年9月24日 (火曜日)

ダグラスのベースレス・トリオ

何時の時代も「ハードバップ」のニーズは絶対にある、と思っている。なんしか、ハードバップが一番ジャズらしい。ジャズをあまり知らない人でも、ハードバップ系の演奏を聴けば、「ああ、コレはジャズですね」ということになる。通常一般の方々からすると、このハードバップなジャズが、皆さんのイメージする「ジャズの音」なんだろう。

Dave Douglas『Devotion』(写真左)。2018年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Dave Douglas (tp), Uri Caine (p), Andrew Cyrille (ds, perc)。このトリオ、見ての通りベースレス・トリオである。いや〜攻めてますね〜。ピアノレスやドラムレスのトリオは時々耳にするが、トランペットがフロントのベースレス・トリオはあまり聴いた事が無い。
 
曲のベースラインは誰が押さえるのか、と思うのですが、ここでは「ピアノ」があります。この盤でも、ベースの代わりに演奏中のベースラインをしっかり押さえているのは、ケインのピアノの左手。リズム&ビートはシリルのドラムが供給するので、これまた全く問題無い。ベースが無い分、演奏全体の重心が軽くて、トランペットの軽やかな吹き回しが印象的に響く。
 
 
Devotion_dave-douglas
 
 
演奏全体の雰囲気は、現代の「ネオ・ハードバップ」。モード有り、コード有り、自由度が高いが、フリーに走ること無く、アブストラクトに展開すること無く、しっかりとスイングする演奏が好印象。即興性も高く、それぞれベテラン3人のアドリブ展開の妙が随所に聴ける。スインギーなネオ・ハードバップな演奏は、緊張感を強いられること無く、適度にリラックスして聴き耳を立てることが出来る。
 
タイトルは訳すと「献身」。この盤の解説を紐解くと、2曲目「D'Andrea」、3曲目「Francis of Anthony」はフランコ・ダンドレアに、4曲目「Miljøsang」から5曲目「False Allegiances」はカーラ・ブレイに、8曲目「Rose and Thorn」はメアリー・ルー・ウィリアムスに、9曲目「We Pray」はディジー・ガレスピー、といった具合に、本作は彼らが敬愛しているジャズメンに対して捧げられたものだそうだ。
 
ディヴ・ダグラスは、1963年3月生まれなので今年で56歳。ジャズマンとしては脂のり切った中堅的な位置づけ。我が国ではあまり人気が無いのだが、僕は彼のトランペットがお気に入り。若手であった20歳台は、ちょうど「純ジャズ復古」の時代だったので、ベテランやレジェンドに押されて、ちょっと片隅へ追いやられていたのかなあ。今回の盤もそうですが、コンスタントに好盤を出していて、今後がさらに期待出来るトランペッターの一人です。
 
 
 
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2019年9月23日 (月曜日)

桑原あいの「新ディズニー曲集」

日本人女子ジャズ・ミュージシャンの中で、最近、特に元気なのが「桑原あい」。ちょっとだけ難解なニュー・ジャズな盤でデビューしてきたので、どうかな〜と思っていたんだが、歳を重ねる毎に熟れてきて、最近はとても良い雰囲気のジャズ・ピアノを聴かせてくれている。1991年生まれだから、今年で28歳。これから中堅の域に入る、期待の有望株である。

桑原あい『My First Disney Jazz』(写真左)。そんな「桑原あい」が、ディズニー・ソングのカヴァーにチャレンジした盤。ディズニー公式カヴァー盤とのこと。ディズニー・ソングといっても、1950年代、ハードバップ全盛期からの「ジャズ・スタンダード曲」としての曲では無く、最近のディズニー・ソングを中心に選曲して、それだけでも新鮮な印象がある。

『アラジン』から「ホール・ニュー・ワールド」「フレンド・ライク・ミー」。不朽の名作『美女と野獣』のメドレー。『トイ・ストーリー2』『モンスターズ・インク』『塔の上のラプンツェル』『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』など、バラエティに富んだアレンジがなかなか優れていて、聴き応えがある。全曲聴き通しても全く飽きが来ない。
 
 
My-first-disney-jazz  
 
 
ちなみにパーソネルは、Ai Kuwabara: Piano (#1~10) / Keisuke Torigoe: Bass (#1, 5, 8, 10) / Takumi Katsuya: Electric Bass (#2, 6, 7, 9) / Akira Yamada: Drums (#1, 2, 5, 6, 7, 8, 9) / Takezo Yamada: Trumpet (#1, 7) / Yasuki Sogabe: Tenor Saxophone, RIO: Baritone Saxophone (#1) / MARU: Vocal (#1) / Akira Wada: Vocal & Chorus (#9) / Kenta Okamoto: Percussion (#2) 。これに弦楽四重奏 (#3, 8)が加わる。

基本は、桑原あいのピアノをメインとして、ドラムは曲毎に演奏フォーマットを変え、メンバーを変え、管を入れたり、ボーカルを入れたり、さらに弦楽四重奏が加わる。ドラムは山田玲が一手に引き受け、ベースはアコベが鳥越啓介、エレベを勝矢匠が担当。このピアノ・トリオをベースとして、トランペットやサックス、ボーカルなどのゲストを迎えて、それぞれの曲に相応しい音を形成している。

演奏自体の響きも、しっかりとネオ・ハードバップな響きをキープしていて、新鮮な響きがする。新しいディズニー・ソング集という面持ちで、聴いていてとても楽しい。ネオ・ハードバップな好盤として、じっくりと腰を据えて聴くも良し、メロディーが印象的なので、ながら聴きにも最適。ちょっと小難しいニュー・ジャズな音も良いが、こういうあっけらかんとしたカヴァー盤も魅力的である。
 
 
 
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2019年9月20日 (金曜日)

王様「サッチモ」は最高である

この2〜3日で一気に涼しくなった千葉県北西部地方。もう夏の猛暑が戻ってくることは無い。と感慨に耽っている間に、もう秋分の日である。確かに日が短くなってきたことを強く感じるようになった。いよいよ、物寂しい秋の夕暮れである。しかし、これだけ涼しくなると、どんな内容のジャズもOKである。

Louis Armstrong and His All-Stars『Satch Plays Fats』(写真左)。1955年4月26日、5月3日の録音。Columbia レコードからのリリース。プロデュースは「George Avakia」。1954年録音の『プレイズ・W.C.ハンディ』と1955年録音の本作が「コロンビアの傑作2枚」である。

1954年録音のハンディ集で緊迫感が心地良かったが、この1955年録音は「ファッツ・ウォーラー集」。一聴すれば直ぐ判るが、アルバムの演奏全体がリラックスした雰囲気に包まれている。これがこの盤の一番の聴きどころ。サッチモ(ルイ・アームストロングの愛称)のボーカルもホンワカ長閑で暖かく、トランペットは温かみのある「ブリリアントな音」に包まれる。
 
 
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トロンボーンのトラミー・ヤングをはじめ、クラリネットのバーニー・ビガードなど、サッチモと気心の知れた仲間の演奏がとても心地良い。そんなバックに恵まれて、サッチモはボーカルにトランペットに、実にリラックスした、溌剌としたプレイを聴かせてくれる。マイルス・デイビスいわく「ルイが悪かったときは記憶にない」。

もちろん、演奏のスタイルはハードバップやモードではない。スイング・ジャズのスタイルではあるが、極端なスタイルへの傾倒は無い。ここにあるのは、聴いて心地良い「ジャズ」である。サッチモのジャズ。4ビートが心地良く、サッチモのダミ声ボーカルが心地良く、サッチモのブリリアントなトランペットが心地良い。

僕は若かった頃、このサッチモのダミ声ボーカルが苦手で、トランペットの凄さが理解出来なかった。若気の至り。いつ頃からだろう、サッチモの良さが理解出来る様になったのは。確か40歳を過ぎた頃かな。つまりは、サッチモを理解するには年齢が必要なのかなあ。でも、歳を取ることで、若い頃よりもアドバンテージが取れるというのは、意外と嬉しいものだ。
 
 
 
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2019年9月19日 (木曜日)

三輪洋子、約2年ぶりの新盤

2019年になっても、日本人女子ジャズ奏者の快進撃は続いている。この人のピアノについてはデビュー以来、ズッと追いかけている。アメリカン・ルーツ音楽がベースの、ゴスペル風、若しくはフォーキーなフレーズが独特。特に、その独特の個性が自作曲で映える訳で、出てくるリーダー作、出てくるリーダー作、楽しみに聴いて来た。

三輪洋子『Keep Talkin'』(写真左)。今年7月のリリース。三輪洋子、約2年ぶりの新盤である。ちなみにパーソネルは、Yoko Miwa (p), Will Slater (b), Scott Goulding (ds)。三輪がお得意のピアノ・トリオ。オリジナル曲に加え、Monk, Mingus、Beatles, Joni Mitchellらの曲を取上げた、様々な表情を感じることの出来る「万華鏡」の様な作品。

しかし、冒頭のタイトル曲「Keep Talkin' 」のラテン調の演奏には、えっ、そっちに行くの、と思って、ちょっと面食らう。2曲目のモンク作「 In Walked Bud」については、スタンダード曲の演奏になるのだが、とてもお行儀の良い、原曲のイメージを絶対に損なわない優等生的な演奏で、ちょっと物足りなさが残る。この傾向は、5曲目のミンガス作「 Boogie Stop Shuffle」でも同様。
 
 
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3曲目の自作曲「Secret Rendezvous」から、いつもの三輪の個性が出始めて、演奏全体の雰囲気が「よそ行き」から「普段着」に変わっていく。4曲目の自作曲「Sunset Lane」は、タッチの確かな、耽美的な流麗なピアノ。深めのエコーが実に「欧州的」。6曲目の「Golden Slumbers / You Never Give Me Your Money」はレノン=マッカートニーのカヴァー。フォーキーな三輪のピアノが素敵である。

7曲目の自作曲「Tone Portrait」で完全復調。躍動感溢れる、明確なタッチで、跳ねるように踊るようにピアノの音が乱舞する。そして、9曲目のジョニ・ミッチェル作「Conversations」は三輪の個性全開。アメリカン・ルーツ音楽がベースの、ゴスペル風、若しくはフォーキーなフレーズにワクワクする。これこれ、この音が一番、三輪らしい。

ラテン調の曲やジャズ・スタンダード曲になると「よそ行き」な演奏になるが、純ジャズな演奏としてはレベルが高い。これはこれで、水準以上の出来ではあるので、全体の雰囲気を阻害するものでは無い。次作では、ジャズ・スタンダード曲を三輪の個性全開で自由奔放に弾き倒して欲しい。アメリカン・ルーツ音楽がベースの、ゴスペル風、若しくはフォーキーなスタンダード曲の解釈。良い感じではないか。
 
 
 
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2019年9月18日 (水曜日)

久し振りに敦賀明子のリーダー盤

現代の日本人ジャズは完全な「女性上位」。もう、かれこれ25年になるのかな。最初のマドンナは「大西順子」。デビュー盤『WOW』は大人気。今から思えば、この大西順子の登場が、現代の日本人ジャズの「女性上位」の最初の第一歩だったんやなあ。この時、女性だからといった「浮いた人気」では無く、一人のジャズマンとしての力量を認められての「本当の人気」だった。

それから、国府弘子、山中千尋、松居慶子、木住野佳子、上原ひろみ、小林香織、寺久保エレナ、纐纈歩美、市原ひかり、桑原あい、と若手ジャズ奏者が頭角を現し、気がつけば、ほとんどが「女性ばかり」(笑)。なんでこんなに女性ばかりが、と戸惑った時期もあったなあ。そして、日本人ジャズとして珍しい楽器のひとつ、オルガンを弾きこなす女性新人が出てきた。「敦賀明子」である。

日本人ジャズ・オルガニスト、敦賀明子。2004年『Harlem Dreams』でデビュー。その後、『St. Louis Blues』『Sweet and Funky』『NYC Serenade』『Oriental Express』『Sakura』と立て続けに好盤を出し続け、2015年に結婚。結婚して落ち着いたところで、2017年にこれまた佳作の『So Cute, So Bad』をリリース。
 
 
Equal-time-tsuruga
 
 
こうやって、敦賀明子のリーダー作を振り返ってみると、好盤つくし、なのが手に取るようにわかる。そして、今年リリースした最新盤がこれ。敦賀明子『Equal Time』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Akiko Tsuruga (org), Jeff Hamilton (ds), Graham Dechter (g)。ギターの入ったオーソドックスなオルガン・トリオ。敦賀のオルガンはあくまで「日本人」のジャズ・オルガンなのだ。

アルバムに収録されている、どの曲も日本人ジャズ演奏者の特有の「ファンクネスが希薄で、端正で温もりのある」音が全編に渡って「てんこ盛り」である。敦賀のオルガンを聴いて感心するのが、決して、意図的にファンキーなオルガンを弾くのでは無く、自然に弾きまわすと、結果「日本人のジャズの個性」になっているところ。ポップで聴き易い、それでいて十分にジャジーなオルガン。良い感じだ。

サイドメンの好演も光る。グラハム・デクターのギターはちょっとくすんで切れ味抜群。敦賀のオルガンの音の対極にいて、メリハリの効いたアドリブ展開には、思わず「聴き惚れる」。リズム&ビートをキープするのは、ベテラン・ドラマー、ジェフ・ハミルトン。日本人らしい「ライトなスウィングとグルーヴ」。このオルガン・ジャズ盤は「聴きもの」である。
 
 
 
東日本大震災から8年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年9月17日 (火曜日)

マイク・スターンの初リーダー作

この人のエレギの登場はセンショーナルだった。マイルス・デイヴィスの『The Man with the Horn』の冒頭の「Fat Time」。ディストーションばりばりの爆発的なエレギ。「Fat Time」という曲名は、当時太っていたギターのマイク・スターンが由来。マイルスが付けたニックネームだそうだ。可愛がっていたんだろうな。当時のマイルスの教えは「ジミヘンの様に弾け」。

そのギタリストとは「マイク・スターン(Mike Stern)」。1953年生まれだから、今年で66歳。もう「大御所」やね。マイルスが1981年にカムバックした際、マイルス・バンドのギタリストとして抜擢され、注目を浴びる。僕はそのマイルス・カムバック時のライブ盤『We Want Miles』での自由奔放なエレギが強烈な印象として残っている。そして、その後、『Star People』にも全面的に参加している。

Mike Stern『Neesh』(写真左)。邦題「ファット・タイム」。1983年8月, 9月の録音。ちなみにパーソネルは、Mike Stern (g), Hiram Bullock (g), David Sanborn (as), Tom Barney (b), Victor Lewis (ds), Buggsy Moore (per)。 マイク・スターンの初リーダー作になる。ハイラム・ブロックとのツイン・ギターが迫力。しかし、その上を行く、思いっ切り目立ったアルト・サックスはデイヴィッド・サンボーン。
 
 
Neesh-mike-stern  
 
 
全曲マイク・スターンの作曲。冒頭の「Zee Frizz」から、メカニカルなテーマがユニークでただならぬ雰囲気が漂う。そして、ソロ・パートになっていきなり出てくるのが、あろうことか、リーダーのスターンのエレギでは無く、サイドマンのサンボーンのアルト・サックス。サンボーンのメタリックで切れ味の鋭いアルト・サックスが鳴り響く。この盤って、サンボーンのリーダー作か、と間違うくらいのブリリアントで圧倒的なブロウ。

その後、スターンのエレギが入ってくる。ディストーションばりばりで浮遊感のある、ロック的ではあるがフレーズの弾き回しは「ジャズ」なエレギが圧倒的。サンボーンのアルト・サックスの印象を一掃する迫力。やはり、こうやって聴き直すと、スターンのエレギは只者では無い。ジミヘンの様に弾くが弾き回しはバップ。あくまでジャズに軸足を置いた、自由度の高いエレギ。マイルス仕込みであることは明白。

2曲目以降、ラストの「Neesh Zone」まで、リーダーのスターンとハイラム・ブロックとの「尖ったツイン・エレギ」とサンボーンの「尖ったアルト・サックス」が目立ちに目立ったエレクトリック・ジャズ。マイルスが直々に渾名を付けるくらいの「愛弟子」である。マイルス・スクールの門下生らしく、マイルスの影響が色濃い音作りが微笑ましい。好盤です。
 
 
 
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2019年9月16日 (月曜日)

ブラジリアン・クロスオーバー

マイルス・スクールの門下生のリーダー作をチョイスし、聴き直している。いずれの門下生もマイルス・スクールを卒業した後、何らかの形で、マイルスの「エレクトリック・ファンク」の影響を反映している。流石だなあ、と常々感心している訳だが、このパーカッション奏者は、マイルスの「Bitches Brew」から「Jack Johnson」などの重要作に参加し、ブラック・ファンクなビートの担い手の一人として重要な役割を果たした。

Airto Moreira『Identity』(写真左)。1975年の作品。パーソネルは、Airto Moreira (per, ds, vo), Herbie Hancock (key), Flora Purim (vo), David Amaro (g), Robertinho Silva (ds, per), Raul de Souza (tb), John Heard (b), John Williams (b), Louis Johnson (b), Ted Lo (org), Wayne Shorter (ss), Egberto Gismonti (g, key, arr)。プロデューサーはHerbie Hancock。

パーソネルを見渡せば、当時のクロスオーバー・ジャズの名うて達が大集合である。そんな「どんな志向の音でも大丈夫」なメンバーの中、ブラジル音楽の鬼才「Egberto Gismonti」の全面参加によって、ブラジル志向のブラジル人としての「アイデンティティ」を強く意識したアルバムに仕上がっている。クロスオーバー・ジャズの面目躍如である。
 
 
Identify-airto  
 
 
パーカッションの奇才、アイアート・モレイラのリーダー作だけあって、多彩な「リズム・シャワー」が見事。ブラジルのリズムが蔓延していて、躍動的でポジティブな展開。過度のブラジル・サンバ臭さがこの盤の特徴。エグベルト・ジスモンチが大活躍で、ギター、アコピ/エレピ、シンセからウッド・フルートまで吹きこなしている。やはり、このジスモンチの全面参加がこのアルバムの個性を決定付けている。

ハンコック、ショーターもブラジル・クロスオーバーの雰囲気の中で、キッチリと「キメ」ているのはさすが。ほかの目立ったメンバーとしては、デヴィッド・アマロのギターが強烈、ハウル・ジ・ソウザのトロンボーンも好演。フローラ・プリムのボーカルも効果的。参加メンバーそれぞれが、実に良い音を出していて、どの曲も、ブラジリアン・クロスオーバーな音の饗宴です。

ビリンバウ(ブラジルの伝統的な打弦楽器)がいい音を出している。タイトルは「Identity=正体」。「俺って、やっぱ、ブラジル音楽がメインなんだよね〜」というアイアート・モレイラの声が聞こえてきそうな程の、ブラジリアン・フレーバー満載なクロスオーバー・ジャズ。ここまで、徹底してブラジリアン・フレーバーを全面に押しだしていると、もはやこのアルバム、「キワモノ」一歩手前の雰囲気です(笑)。でも好盤です。
 
 
 
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2019年9月15日 (日曜日)

George Dukeのカラフルな個性

マイルス・デイヴィスのバンドには、かなりのジャズメンが参加した。マイルスは優秀な若手のスカウトが上手かった。参加して即クビになった者、そのままバンドに残ってマイルスとレコーディングをして、活動を共にした者、それぞれだったが、マイルスはまた、優秀な若手のメンバーを育てるのも上手かった。マイルスのバンドで、マイルスと演奏を共にしたメンバーは「卒業」後、皆、何らかの形で活躍した。

そんな「マイルス・スクールの門下生」の中には、このジャズマンも門下生だったのか、と意外に思う名前に出くわすことがある。例えば、僕が「へ〜」とちょっとビックリしたのが「ジョージ・デューク(George Duke)」。ポップなジャズ・ファンクの人気キーボード奏者なのだが、その「ポップで、過剰にソウルフル」なフュージョン・ファンクが得意ジャンルが故、マイルス・スクールの門下生というイメージに合わないと感じていたのだ。

George Duke『Faces in Reflection』(写真左)。1974年の作品。MPS-Recordsからのリリース。ちなみにパーソネルは、George Duke (key), John Heard (b), Leon Ndugu Chancler (ds)。シンプルなトリオ編成。しかし、出てくる音は結構重厚なクロスオーバー・ジャズな音。のっけからデュークのエレピとシンセが飛び交うハード・クロスオーバーである。
 
 
Face-in-reflection-george-duke  
 
 
アルバム全体を聴き通すと、ジャズ・ファンクから、サイケデリックなジャズ、メロウなクロスオーバーまで、カラフルな音世界。ジャズ・ファンクからサイケデリックなジャズについては、明らかに「マイルス・スクールの門下生」やなあ、という印象を受けるが、メロウな雰囲気のクロスオーバー辺りがジョージ・デュークの「個性」になる。この個性が、1970年代後半の「ポップで、過剰にソウルフル」なフュージョン・ファンクに繋がっていく。

しかし「マイルス・スクールの門下生」とは言え、実際には、1971年「俺のバンドに入れ。また後で電話する」と伝えたまま音沙汰なしの状態が続き、実際には14年後の1985年に再びマイルスはジョージ・デュークに勧誘の電話を再び入れた後、実際にジョージ・デュークはマイルス・バンドに関わっていく。恐らく、マイルスは、この盤で聴かれるジャズ・ファンクから、サイケデリックなジャズを奏でる、ジョージ・デュークの隠れた「個性」の部分に着目したのではないか、僕はと睨んでいる。

ナット・アダレイに提供した「Capricorn」のセルフカバーでのアレンジがニクい。ドラムは当然として、ベースがアコベなところも、クロスオーバー・ジャズとしてはユニーク。当時のクロスオーバー・ジャズの「常識」に囚われない、自らの個性を表現しているところが、ジョージ・デュークの隅に置けないところ。単に「フュージョン・ファンク」なジャズマンで無いところが、この盤を聴くと良く判る。
 
 
 
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2019年9月14日 (土曜日)

良好なフュージョン・ファンク

しばらく「純ジャズ」の話題が続いた。ここヴァーチャル音楽喫茶『松和』は、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズも得意分野。しばらく、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズの話題を。今日から暫く「マイルス・スクールの門下生」の好盤を聴き直していきたい。

まずは「Lonnie Liston Smith(ロニー・リストン・スミス)」。1940年12月の生まれ。米国ヴァージニア州リッチモンド出身。1970年代、独自のスピリチュアルなフュージョン・ファンクを展開した。1973年から74年にかけて「Miles Davis/マイルス・デイヴィス」のアルバム「On The Corner」「Big Fun」などに参加。しっかり「マイルス・スクール」の門下生である。

Lonnie Liston Smith & The Cosmic Echoes『Expansions』(写真)。1975年の作品。ロニー・リストン・スミス自身のグループ、コズミック・エコーズを従えての3枚目アルバム。お得意のスピリチュアルなフュージョン・ファンク。当時は「コズミック・ファンク」と形容された。浮遊感のあるエレピと随所に挿入されるキラキラした音が、星のまたたく宇宙を想起させるから、とのこと。はぁ?
 
 
Expansions  
 

 当時の「コズミック・ファンク」の形容はともかく、内容的には上質のフュージョン・ファンク。しかも、このフュージョン・ファンク、リストン・スミスのエレピ以外はアコースティックの楽器で構成されていて、後のフュージョン・ジャズに欠けていった「人間味」というか、音の「温かみ」がこの盤には残っている。マイルス仕込みの硬派なブラック・ファンクではあるが、なんとなく心も安らぐ。

リストン・スミスはエレクトリック・キーボードの扱いが上手い。出だしのタイトル曲「Expansions」のアープのストリングシンセに時代を感じるのだが、今の耳で聴いても、なかなか味のあるシンセだ。「Voodoo Woman」のグルーヴ感は半端ない。この盤が「レア・グルーヴ定番アルバム」と評価されているのも頷ける。「Peace」のソウルフルな味付けも隅に置けない。

このリストン・スミスの盤を聴いていると、やっぱり「マイルス・スクール」の門下生の音やなあ、と思う。マイルスのエレクトリック・ジャズ・ファンクに、リストン・スミスの個性を反映させて、自らのアルバムとして成立させている。浮遊感とグツーブ感濃厚なキーボード・ワーク。そして、エレクトリック・キーボードの扱いの上手さ。聴き応えのある好盤である。
  
 
 
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2019年9月13日 (金曜日)

カシオペアの40周年記念盤

我が国、日本でのフュージョン・バンドと言えば、CASIOPEA(カシオペア)とT-SQUARE(ティー・スクエア)が2大フュージョン・バンド。正統派フュージョン&バカテクのバンドであるカシオペア。ちょっとロックとイージーリスニングが入った、ポップで聴き易いT-SQUARE。この2大フュージョン・バンドは実力については甲乙付けがたく優秀。フュージョン者の中では人気は全く真っ二つに分かれていた。

そんなカシオペア、今では「Casiopea 3rd」とバンド名を変えて、現在も活動中。そして、今年、デビュー40周年記念盤をリリースした。Casiopea 3rd『PANSPERMIA』(写真左)。2019年7月の録音。ちなみにパーソネルは、野呂一生 (g), 鳴瀬喜博 (b), 大高清美 (key), 神保彰 (ds)。野呂とサポート・メンバーではあるが、ドラムの神保の2人が以前からメンバー。他の2人は1990年以降の新メンバー。

アルバムタイトル「PANSPERMIA」=「パンスペルミア」と読む。宇宙からの微生物などが物体にくっついて地球にやって来て生命の根源となったという理論。このアルバムのサブタイトルは「宇宙からの贈りもの」。う〜ん、ジャズらしからぬタイトルやなあ。『スピード・スリル・テクニック』というキャッチフレーズのままに、スペーシーな感覚満載。
 

Panspermia

 
フュージョンというよりは、ロック色が色濃くなり、ボンヤリ聴いていると「これってプログレッシブ・ロック」って思ってしまうほど。バカテクのプレグレ、という雰囲気。恐らく、大高のキーボードが、今回、さらに「キース・エマーソン」風になっているということ。成瀬と神保のリズム隊が、大高のキーボードに呼応して、ロックっぽくなっていること。それらが大きく作用している。

そこに野呂のエレギが参入すると、バンドの音の雰囲気はぐっと「フュージョン・ジャズ」に寄る。野呂のエレギは唯一無二の個性。フュージョンでもなければロックでも無い。野呂独特の個性的な音。この野呂のエレギが他のメンバーによる「プログレ色」を中和し、従来のカシオペアの音に仕立てる。そんな役割を果たしている。そう、この盤での「カシオペアらしさ」は野呂のエレギに依存している。

出てくる音はとことんポジティヴ。特に大高のキーボードの進化は特筆に値する。そこに、ナルチョのチョッパー・ベースがブンブン鳴り響き、神保の千手観音ドラミングが炸裂する。そして「決め」は野呂のエレギ。「カシオペアの音」から深化した「Casiopea 3rdの音」。この盤の評価のポイントはこの「深化」を認めるか否かにあるだろう。
 
 
 
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2019年9月12日 (木曜日)

顔の「どアップ」に好盤あり・1

ブルーノート・レーベルはジャケット・デザインにも定評がある。特に、1500番台、そして4000番台から4200番台は、優れたデザインのジャケットの宝庫。駄作が無いのが素晴らしい。特にジャズメンのポートレートの処理が素晴らしい。必要な部分をクローズアップして、不要な部分はバッサリ切り捨てる潔さ。そして、顔のどアップを「バーン」とジャケットに持ってくる大胆さ。

Bobby Hutcherson『Cirrus』(写真左)。1974年4月の録音。BN-LAシリーズの「257-G」。 ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib, marimba), Woody Shaw (tp), Emanuel Boyd, Harold Land (ts, fl), William Henderson (ac-p, el-p), Ray Drummond (b), Larry Hancock (ds), Kenneth Nash (perc)。

1970年代の録音である。知っている名前は、ヴァイブ担当でリーダーのハッチャーソンとトランペットのウッディ・ショウ、テナーのハロルド・ランドくらいである。後はほどんど馴染みが無い。どこかで見たかなあ、という程度。しかし、中身は意外としっかりしている。録音年の1974年といえば、ジャズ界はクロスオーバー・ジャズが流行。この番にどんな音が詰まっているのか、不安になる。
 

Cirrus-bobby-hutcherson

 
アルバムを聴き始めてビックリ。そんな時代に、立派な「新主流派のモーダルなジャズ」が展開されている。しかも、演奏自体が尖っておらず、マイルドで耳当たりの良いモード・ジャズ。1960年代初頭から始まったモード・ジャズ。この盤が録音された1974年、モード・ジャズは成熟の域に達していた。このアルバムに詰まっている音がその「痕跡」である。

この盤で、この成熟したモード・ジャズの中で、優れたパフォーマンスを発揮しているのが、ヴァイブ担当でリーダーのハッチャーソンとトランペットのショウ、テナーのランドの3人。ハッチャーソンとランドはハードバップ時代からの強者。ショウは新進気鋭の若手。この3人が成熟したモード・ジャズを、クールにマイルドで耳当たりの良い、それでいて、芯のあるモード・ジャズを展開している。

アルバム・ジャケットは、ハッチャーソンの顔の「どアップ」。決して不快な感じはしない、どこか爽快感漂う「どアップ」。僕がブルーノート・レーベルのアルバムを聴いてきた中で感じたこと。顔の「どアップ」のジャケットに好盤あり。
 
 
 
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2019年9月11日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・120

Riverside(リヴァーサイド)レーベルは、1952年にオリン・キープニュースとビル・グラウアーによってNYに設立された。実質的な活動期間は約10年間、1950年代から60年代前半で、ハードバップからファンキー・ジャズ、モード・ジャズ辺りをカバーする。日本ではモダン・ジャズ三大レーベルの一つと言われるらしい。
 
このリヴァーサイド・レーベル、意外とマニアックなレーベルで、カタログを紐解くと「こんなアルバムあったんや」とか「何やこのアルバム」な、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介されたことがほとんど無い「好盤」が沢山ある。どうも、リヴァーサイドというと、我が国では、モンク、エヴァンス、キャノンボール、ウェス辺りがもてはやされるばっかりで、他の「隠れ好盤」にはあまり着目することはなかったようだ。

Ben Webster and Joe Zawinul『Soulmates』(写真左)。1963年9月20日と10月14日の2回の録音を集めている。ちなみにパーソネルは、Ben Webster (ts), Joe Zawinul (p), Philly Joe Jones (ds), Thad Jones (cor) 【10月14日】, Richard Davis (b)【9月20日】, Sam Jones (b)【10月14日】。ウエブスターとザヴィヌルとフィリジョーは2つのセッション共通、ベースはリチャードDとサムJを使い分け、10月14日のセッションのみ、サド・ジョーンズのコルネットが入って2管フロントとなっている。
 
 
Soulmates-ben  
 
 
とまあ、編成の異なる2つのセッションを併せた盤ではあるが、この盤は、主役の2人のプレイが際立っている。1963年である。ベン・ウエブスターは既に54歳。それにしては、溌剌とした、いかにもテナーらしい「耳障りではない大きな音」で吹きまくっている。迫力満点である。音はまだまだ若い若い。しかも破綻無く、朗々と吹き続ける。

そして、ピアノのジョー・ザヴィヌルは、あのニュー・ジャズの伝説のバンド「Weather Report」のリーダー。このザヴィヌルのピアノが面白い。オーストリア出身のピアニストなのに、ファンクネス漂う、実に趣味の良い、典雅と形容してもよいほどの、ファンキーなピアノを聴かせてくれる。この典雅なファンキー・ピアノをバックにウェブスターが吹きまくる。この盤の「美味しいところ」である。
 
スイング時代から活躍する大ベテランのウエブスターと当時、新進気鋭なピアニストで新しい感覚のザヴィヌル。ミスマッチの様ですが、これが意外と、ベテランと若手の絶妙のコントラストが良い方向に作用して、なかなか聴き応えのある内容となっています。ウエブスターのテナーの適応力、包容力が素晴らしい、ということでしょう。お勧めの好盤です。
 
 
 
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2019年9月10日 (火曜日)

サッチモの素晴らしさを聴く

ジャズを聴き始めた頃、僕は「ルイ・アームストロング(愛称サッチモ)」の良さが良く判らなかった。もともと彼の事をボーカリストだと思っていたこともある。あの「ダミ声」がどうにも理解出来ない。また、ジャズ者初心者なので、彼のトランペットの凄さも判らない。いやはや、若気の至り、汗顔の至りである。

それでも、あのマイルス・デイヴィスをして「サッチモは偉大だ。彼が歴代での最高のトランペッターだ」とべた褒めである。というか、有名なジャズメンというジャズメンが全て、サッチモは最高だ、と言う。これには焦った。なんで僕はサッチモの良さが判らないのか。サッチモの存在は僕のコンプレックスのひとつだった。

『Louis Armstrong Plays W.C. Handy』(写真)。1954年7月12日の録音。Columbiaレコードからのリリース。プロデューサーは George Avakian。Louis Armstrong and His All-Starsの演奏になる。パーソネルを見渡しても、知っている名前はいない。演奏の雰囲気を聴いていると、皆、スイング・ジャズ時代からのメンバーであろう。これが実に良いジャジーな雰囲気を醸し出している。
 
 
Armstrong-plays-wc-handy
 
 
ジャズ者初心者の時代以降、この盤を再び聴いたのは、今から20年ほど前、年齢的に40歳を過ぎた頃である。さすがに、20年ほどジャズを聴き続けて来たことはある。サッチモの「ダミ声」ボーカルが、ダンディズム溢れる、良い雰囲気のボーカルだと感じる様になり、この魅力的な低音「ダミ声」ボーカルで、W.C. Handyの名曲を歌い、トランペットを吹き上げるのだから堪らない。

そして、サッチモのトランペットにも参った。まず音が大きく綺麗でブリリアント。トランペットはこうならして欲しい、という好例がこのサッチモのトランペットにある。そして、歌の伴奏でのサッチモの吹き回しが、これまた「素敵」だ。歌の合間に鼻歌のように入るチェイスや、間奏でのソロ・パフォーマンスは歌心とダンディズム溢れるブリリアントな吹き回しで、ボーカルの存在を一層、際立たせる。

ジャズを聴き初めて20年ほど経って、やっとサッチモの素晴らしさが理解出来た。嬉しかった。コンプレックス解消である。今では、時々、サッチモ盤を引っ張り出しては、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の昼下がりに流している。サッチモの魅力的な低音「ダミ声」ボーカルに身を委ね、ブリリアントなトランペットに耳を傾ける。全く以て「至福の時」である。
 
 
 
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2019年9月 9日 (月曜日)

おどろおどろしいジャケ・6

このジャケットも強烈である。ブルーノート・レーベルお得意の写真をアーティスティックにあしらったジャケットでは無く、なんと「イラスト」である。前知識無くこのジャケットを見れば、絶対にブルーノート・レーベルのアルバムだとは思わないだろう。というか、まず「ジャズ」のアルバムだとは思わない。

Jimmy McGriff『Black Pearl』(写真左)。ブルーノートの4374番。1971年、 New Jerseyの「the Golden Slipper Newark」でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Jimmy McGriff (org), Ronald White (tp), Joseph Morris (as), Arthur "Fats" Theus (ts), William Thorpe (bs), O'Donel "Butch" Levy (g), Willie "Saint" Jenkins (ds)。リーダーでオルガンのマクグリフ以外、知らない名前ばかりだ。

内容はと言えば、当時流行の「ソウル・ジャズ」。それも、聴かせることメインのイージーリスニングっぽいものでは無く、ちょっと硬派でカッチリとした、ハードバップのイメージが残る「ソウル・ジャズ」である。マクグリフのオルガン自体が硬派でカッチリしている。しかし、ジミー・スミスの様に豪快に弾き回すのでは無く、小粋にソウルフルに弾き回す。これが実に良い雰囲気。
 
 
Black-pearl-jimmy
 
 
オドネル・リーヴィーの思いっ切りグルーヴを感じるギター・ワークも聴き逃せない。マクグリフのオルガンとリーヴィーのギター、この二人が織りなすグルーヴは明らかに「黒い」。黒人でないと出せない、東海岸ジャズだからこそ出せる、こってこてファンキーなグルーヴ感。意外と、音のエッジがソリッドなどで、決して「緩く」ならない。

収録曲はというと、ファンキー・ジャズなチューンとして、タイトル曲の「Black Pearl」や「Ode To Billy Joe」が良い雰囲気。はたまた、渋い渋〜いブルース曲の「Groove Alley」などは聴きもの。エリントンの定番曲「C Jam Blues」のソウル・ジャズ・バージョンは聴いていて、実に楽しい。ライブならではの演奏のノリも心地良く、聴衆の反応も「グッド」。

この「おどろおどろしい」イラストのジャケット・デザインからは想像出来ない、ちょっと硬派でカッチリとした、ハードバップのイメージが残る「ソウル・ジャズ」。マクグリフのオルガンも好調。フロントのホーン隊もグルーヴ感満点。オルガンがメインの「ソウル・ジャズ」の好盤です。ジャケット・デザインには目をつぶって「聴くべし」。
 
 
 
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2019年9月 8日 (日曜日)

おどろおどろしいジャケ・5

「おどろおどろしい」ジャケット・デザインの宝庫になってしまったブルーノート・レーベルの4300番台。4300番台のアルバムの名誉の為に言っておくと、アルバムの内容的には水準以上のものが大多数。たまに「あれれ」という内容の盤もあるが、そこはさすがにブルーノート・レーベル、「腐っても鯛」(?)である。

しかし、このアルバムなどは、何故こういうジャケット・デザインになったか、全く理解に苦しむもの。この盤に出会ったのは、今から15年ほど前。この盤の内容を確認して、これはちょっと酷いなあ、と思ったことを覚えている。当時のアルバム・ジャケットのデザインを担当者に確認してみたい位だ。

Reuben Wilson『Blue Mode』(写真左)。ブルーノートの4343番。1969年12月12日の録音。ちなみにパーソネルは、 Reuben Wilson (org), John Manning (ts), Melvin Sparks (g), Tommy Derrick (ds)。ソウル・オルガンの雄、リューベン・ウィルソンのギター入りカルテット盤である。
 
 
Blue-mode-reuben-wilson   
 
 
内容的には、ソウル・ジャズというよりは、しっかりした内容のファンキー・ジャズ、意外と硬派なファンキー・オルガンを聴くことが出来る。これは恐らく、テナー・サックスのジョン・マニングの存在の影響だろう。マニングのテナーが意外と新主流派で硬派な吹きっぷりで、このモーダルな吹きっぷりに引き摺られて、バンドの演奏全体が、意外と硬派なファンキー・ジャズな雰囲気になったのかと。

パーソネルを見渡すと、知らない名前ばかりが並んではいるが、演奏のレベルそのものは水準以上。ブルーノート・レーベル4300番台には珍しく、聴き手に迎合すること無く、ファンクネスも適度に硬派なファンキー・ジャズを展開しているところは「聴きもの」かと思います。リューベン・ウィルソンの硬派なファンキー・ジャズ盤ですね。

というまずまず良い内容の盤なのに、この「おどろおどろしい」ジャケット・デザインは何なんだ。このジャケットを見て、この盤の購入を決める人って、ちょっと替わった人では無いかと。まず、レコード屋のカウンターに持って行くのに勇気が要る。まあ、今の目で見ると、かえって、この「おどろおどろしい」ジャケット・デザインが愛おしかったりするけど(笑)。
 
 
 
東日本大震災から8年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年9月 7日 (土曜日)

おどろおどろしいジャケ・4

そのジャケット・デザインのアート性が非常に高く評価されているブルーノート・レーベルではあるが、創始者&総帥のアルフレッド・ライオンがリバティ・レコードにその権利を売却してからの4300番台は、打って変わって「おどろおどろしい」ジャケット・デザインの宝庫になった。

ブルーノート・レーベルの4300番台は、1968年から1972年に渡ってリリースされたシリーズで、内容的には、当時の流行のソウル・ジャズやジャズ・ファンクの新盤、そして、過去のハードバップ盤の発掘リイシュー。収録されたジャズの種類は大きく分けて、その3つになる。で、どうしたら、そんな「おどろおどろしい」ジャケットがあしらわれるか、その動機がよく判らない。

Brother Jack McDuff『Moon Rappin'』(写真左)。ブルーノートの4334番。1969年12月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Brother Jack McDuff (org), Unknown (tp), Bill Phillips (ts, fl), Unknown (bs, ts), Jerry Byrd (g), Richard Davis (el-b), Joe Dukes (ds)。トランペットとバリトン・サックスの担当の名前が判らない。ブルーノート・レーベルにしては珍しいこと。
 

Moon-rappin

 
この辺りになると、録音スタジオもブルーノート御用達の「Van Gelder Studio」では無くなってくる。この盤はNYの「Soundview Recording Studio」での録音である。確かにちょっと録音の響きというか雰囲気が異なる。中身はライトなオルガンによるソウル・ジャズ。アーシーさと流麗さがほどよくミックスされた、聴き易いオルガン・ジャズである。
 
決して、こってこてファンキーなオルガンを期待してはいけない。時は1960年代終盤。ポップな音で聴き易いアルバムでないと売れない。ファンクネスを迫力を持って聴かせる時代では無く、ライトでアーシーで流麗なオルガン・ジャズをソウルフルに聴かせることがトレンドの時代。そういう意味で、マクダフのオルガンもライトで聴き易い。
 
演奏全体は充実していて、キメるとことはバッチリ「キメて」いて、適度なアクセントとメリハリのある演奏は決して耳触りでは無い。ながら聴きにも十分使える、ライトで聴き易いオルガン・ジャズ。しかし、そんな内容のアルバムなのに、どうしてこんなジャケット・デザインになるのか。初めて、ジャケットを手に取って見た時は、さすがに「引き」ました(笑)。
 
 
 
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2019年9月 6日 (金曜日)

パーキンスのテナーを愛でる

米国西海岸ジャズのサックス奏者は個性派揃い。加えて、皆、「お洒落な」ブロウを旨とするサックス奏者ばかり。もともと米国西海岸ジャズのジャズメンって、ほとんどがテクニック優秀、そしてクール。米国西海岸ジャズの個性である「ほどよくアレンジされた」演奏にピッタリ填まる。つまりは「聴き心地の良い」サックスなのである。

Bill Perkins Octet『On Stage』(写真左)。Pacific Jazzの1221番。録音日は1956年2月9日(side A) , 2月16日 (side B)。ちなみにパーソネルは、Bill Perkins (ts), Bud Shank (as), Jack Nimitz (bs, bc), Stu Williamson (tp, vt), Carl Fontana (tb), Red Mitchell (b), Russ Freeman (p), Mel Lewis (ds)。8人編成、いわゆる「オクテット」である。

ビル・パーキンス(Bill Perkins)は「お洒落でクールな」サックス奏者。1924年生まれ。2003年に惜しくも鬼籍に入りました。享年79歳。パーキンスは、1950年代から2000年代まで多数の録音を残しているが、我が国では全く以てマイナーな存在。パーキンスのテナーは、硬派で流麗でクール。いかにも米国西海岸ジャズらしい「お洒落な」ブロウを聴かせてくれる。
 
 
On-stege-bill-perkins
 
 
この作品は、ハリウッドの「ミュージック・ボックス・シアター」を借り切って録音されたアルバム。なかなかに雰囲気のある録音が良い。当時31歳。西海岸ジャズの中堅どころとして、お洒落で瑞々しく、そしてアーバンな雰囲気のテナー・サックスを聴かせてくれる。程良くアレンジされたバックの演奏に乗って、クールな熱気のアドリブ・フレーズがなんとも魅力的。

僅か5管のアンサンブルが醸し出す豊かなユニゾン&ハーモニーは、さすが米国西海岸ジャズを思いっ切り感じる。この端正で程良くアレンジされた瑞々しいジャズの響きは、米国東海岸では絶対に聴かれない、西海岸ジャズ独特なもの。つまり、この『On Stage』というアルバムは、徹頭徹尾、米国西海岸ジャズの音世界が詰まっている、そんな好盤である。

ラス・フリーマンのピアノ、メル・ルイスのドラム、レッド・ミッチェルのベース、いわゆる米国西海岸ジャズの代表的なリズム・セクションの演奏も洒脱で小粋。フロント5管を鼓舞しガッチリ支える。アレンジも良好で、全編聴いていて飽きることは無い。逆に、パーキンスのテナーの個性がとても良く判り、他の個々の演奏も優秀。米国西海岸ジャズのレベルの高さも感じられる好盤である。
 
 
 
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2019年9月 5日 (木曜日)

日本人によるオルガン・トリオ

最近の我が国のジャズ、「和ジャズ」のレベルがどんどん高くなっている。1960年代から、もともと純ジャズについては、内容のあるアルバムが出ていたが、如何せん数が少なかった。それからなかなか、その「数」が増えない時期が続いたのだが、1990年代後半辺りから、和ジャズの裾野が一気に拡がり始めた。最近では毎月、コンスタントに好盤がリリースされている。

鈴木央紹『Favourites』(写真左)。今年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、鈴木 央紹 (ts, ss), 宮川 純 (org), 原 大力 (ds)。シンプルなトリオ編成。我が国ではまだまだ珍しいオルガン・トリオである。収録曲を見渡せば、小粋でマニアックなスタンダード曲をメインに選曲している。これがまあ、見事なアレンジで、スタンダード曲の新しい解釈を提示している。
 
冒頭の「Where or When」を聴けば、思わず「ウェザー・リポート風か?」と思ってしまう。音の雰囲気、浮遊感がウェザー・リポートを想起させ、鈴木のテナーが「ウェイン・ショーター」風。しかし、この演奏を聴いて「上手いなあ」と感心。本家ウェザー・リポートの音より、シンプルで判り易く、テナーの音はウェインのテナーを平易にした感じの、これまた判り易いブロウ。
 
 
Favourites-suzuki
 
 
で、2曲目の「Witchcraft」に移ると、雰囲気は、シンプルで切れ味の良いコンテンポラリーな純ジャズの音世界に。オルガン(hammond b-3)とドラム、そしてテナー・サックス。テナー・サックスの音がネオ・ハードバップ風の硬派でテクニカルでシャープなブロウ。どっかで聴いた雰囲気やなあ、と思っていたら、そうそう、ジョシュア・レッドマン、サム・ヤエル、ブライアン・ブレイドの「YAYA3(ヤ・ヤ・キューブド)」を思い出した。
 
以降、この「YAYA3」風の演奏が展開される。しかし、日本のジャズが、こんなにコンテンポラリーな、ネオ・モーダルな純ジャズを展開することが出来るなんて、なんだかとても嬉しくなる。「YAYA3」風だが、ファンクネスは希薄、しっかりオフビートしていてジャジーな雰囲気は蔓延している。オルガンの音も良い意味であっさりしていて、日本人ジャズの「音の個性」がしっかり聴いて取れる。
 
適度にアグレッシブで、明らかに「攻めている」ジャズ。決して聴き手に迎合していない。そして、何回か繰り返し聴いていると、結構、難しいことをやっているのに気がつく。それがシンプルに聴こえるのだから、この盤に詰まっているジャズのレベルは高い。日本人ジャズの「進化」を強く感じる、鈴木央紹の新盤である。
 
 
 
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2019年9月 4日 (水曜日)

米国西海岸のピアノ・トリオ

米国西海岸ジャズであるが、どうもピアノの人材が手薄ではないか、と感じている。米国西海岸ジャズと聞いて、サックス奏者、ホーン奏者、ベーシスト、ドラマーと具体的なジャズマンの名前がパッと浮かぶのだが、ピアノだけは「アンドレ・プレヴィン」から思案投げ首である。プレヴィンはクラシック・ピアノがメインだから、生粋のジャズ・ピアニストとして考えると具体的な名前が挙がらない。
 
『Claude Williamson』(写真左)。邦題『クロード・ウィリアムソン・トリオ』。Bethlehemレコードからのリリース。1956年1月19日、ロサンゼルスの「Radio Recorders」での録音。ちなみにパーソネルは、Claude Williamson (p), Don Prell (b), Chuck Flores (ds)。 黒をバックに、ジャズ・ピアニストの名前と小さなグランド・ピアノのイラストだけの思いっ切りシンプルなジャケット。

米国西海岸ジャズのジャズ・ピアニストは、と考えていて、やっとこの「クロード・ウィリアムソン」の名前を思い出した。1926年11月生まれ。米国ヴァーモント州出身。クラシックを10年間学び、米国西海岸ジャズのピアニストとして数々のセッションに参加。ウィリアムソンのピアノは端正かつスインギー。アドリブ・フレーズの弾き回しは「ビ・バップ」。故に「白いパウエル」と呼ばれ、西海岸ジャズの代表的ピアニストとして高評価である。
 
 
Claude-williamson-trio
 
 
しかし、思いっ切りシンプルなジャケットである。こういうジャケットって、何か良い音が入っている予感がするから不思議。もともと、ウィリアムソンは「バド・パウエル」を敬愛している。当然、この時代の彼のピアノは「ビ・バップ」。しかし、東海岸ジャズの様な、熱くてテンションの高い弾き回しでは無く、少し余裕も持って、テンションは高いが適度、典雅にクールに弾き回す。このシンプルさと小粋なところは、明らかに「西海岸ジャズ」。 
 
ミディアムテンポ曲が多く、ウィリアムソンのバップなピアノがピッタリ填まって、良い雰囲気のピアノ・トリオ。スインギーなアドリブ・フレーズが小気味良い。適度な推進力を伴って、洒脱に小粋にピアノを弾き進めていく。「白いパウエル」と形容されるが、パウエルより余裕があり、テンションは適度。フレーズは典雅で聴き易い。逆に聴き易い分、ジャジーな雰囲気が損なわれ、ちょっとイージーリスニング・ジャズっぽく響くのが残念。
 
ベースのドン・プレルとドラムのチャック・フローレスのリズム隊は、正確で心地良いリズム&ビートを刻む。そこにウィリアムソンのピアノが絡んで、三位一体の典型的なハードバップなピアノ・トリオ演奏が展開される。しかし、その音は熱くは無い。適度なテンションの中、典雅でクールな音。なるほど、これが「米国西海岸ジャズのピアノ・トリオの音」なのか。米国西海岸ジャズを聴き進める中、このピアノ・トリオ盤は外せない。
 
 
 
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2019年9月 3日 (火曜日)

ソニー・クリスの個性を聴く

米国西海岸ジャズのアルト・サックス奏者、アート・ペッパー、そして、バド・シャンク。そう言えばもう一人いる。ソニー・クリスである。テネシー州のメンフィスに生まれ、15歳でロサンゼルスに移住。1956年にニューヨークのインペリアル・レコードと契約し、一連の好盤を録音している。1965年にはプレスティッジ・レコードと契約し、ポップなハードバップ盤をリリースし、ヒットさせている。

Sonny Criss『Jazz- U.S.A.』(写真左)。Imperialレコードからのリリース。1956年1月26日、2月24日、3月23日の3セッションからの選曲。ちなみにパーソネルは、Sonny Criss (as), Bill Woodson (b), Chuck Thomson (ds), Barney Kessel (g), Kenny Drew (p)。パーソネルを見渡すと、西海岸ジャズの中堅の優れ者達が集結している。時は1956年。一番、西海岸ジャズが充実していた頃。この盤の音は期待出来る。

ソニー・クリスのアルト・サックスはとても特徴的な音がする。アルト・サックスが目一杯、鳴っているような、強く真っ直ぐブリリアントな音。音の強弱はあまり考えずに、目一杯、アルト・サックスを吹き上げる。いかにも「アルト・サックスらしい」音。そんなポジティブで「根明」なアルト・サックス。そんなソニー・クリスの音が心ゆくまで堪能出来る。
 
 
Jazz_usa
 
 
このポジティブで「根明」なアルト・サックス。恐らく、好き嫌いが分かれるだろうなあ。陰影に乏しいところがあるんで、そこが「表現力に乏しい」と評されるのではないか、と危惧する。陰影には乏しいかもしれないが、強弱でその部分をカバーしている。ので、表現力に乏しい、という感じは全く無い。

アドリブ・フレーズも聴き応えのある展開で、この「根明」なアルト・サックス飽きるかな、と思ったが、意外と全編聴き通して飽きることが無い。バックのバーニー・ケッセルのギターを含めたリズム・セクションも、さすが名うての名手たち、手慣れた感じで、内容のあるバッキングを展開している。西海岸ジャズらしく、端正で整った演奏は安心して楽しめる。

ソニー・クリスのアルト・サックスは「あっけらかん」としている。とにかく、アルト・サックスを吹くのが楽しくて仕方が無い、という感じで、脳天気に吹きまくる。これもまた彼のアルト・サックスの魅力である。明らかに、チャーリー・パーカーの影響は受けているが、根明な音の裏に「翳りと哀愁」を感じさせる、これもまたソニー・クリスの個性である。この盤、ソニー・クリスの個性を確認するのに最適な盤だろう。好盤です。
 
 
 
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2019年9月 2日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・155

米国西海岸ジャズをいろいろ聴いていて、アルト・サックスのバド・シャンク(Bud Shank)って、西海岸ジャズのキーマンの一人だと思うのだ。我が国では、米国西海岸ジャズのサックス奏者としては、アート・ペッパーばかりがクローズアップされて、他のサックス奏者については、殆ど語られることは無い。ほんと、1980年代までの日本のジャズ・シーンって、西海岸ジャズに冷たかったんやなあ、と改めて思う次第。
 
米国西海岸ジャズのアルバムを聴き進めていて、好盤と評価されるアルバムのパーソネルを都度確認すると、結構、バド・シャンクの名前が挙がっていることに気付く。バド・シャンクは白人のアルト・サックス奏者で、少しエッジに丸みのある切れ味の良いブロウと流麗で洒落たアドリブ・ラインが個性。テクニックも優秀。僕は、このアルバムを1991年に入手して、バド・シャンクの個性に初めて触れた。

『The Bud Shank Quartet』(写真左)。Pacific Jazz 1215番。1956年1月25日、ハリウッドは「Capitol Studios」での録音。ちなみにパーソネルは、Bud Shank (as, fl), Claude Williamson (p), Don Prell (b), Chuck Flores (ds)。バド・シャンクのアルト・サックスがフロントのワンホーン・カルテット。「Featuring Claude Williamson」のサブタイトルが付いていて、ピアノのクロード・ウィリアムソンもメインに扱われている。
 
 
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西海岸ジャズらしく、アレンジも良好、しっかりとリハーサルを積んで、本録音に臨んでいる様子が、演奏を通じて良く判る。とにかく破綻が無く流麗なのだ。特に、バックのベースとドラムはリズム&ビートのキープに集中しているが、非常に正確な、とても味のあるリズム・キープを実現している。雰囲気は流麗で洒落たビ・バップなリズム&ビートである。
 
そんなリズム隊をバックに、バド・シャンクのアルト・サックスが実に雰囲気のあるブロウを聴かせてくれる。とっても趣味の良いアルト・サックスである。西海岸ジャズらしからぬ、力感溢れるブロウも披露するが、やはり洒脱で流麗。そこが東海岸ジャズと異なるところ。そして、ピアノのウィリアムソンが実にいい音を出していて、思わず聴き耳を立てる。芯があるが柔らかで流麗なタッチが実に西海岸ジャズらしい。
 
ジャケット・デザインもバド・シャンクの上半身のイラストをあしらっていて趣味が良い。リリースしたレーベルは「パシフィック・ジャズ」。ベツレヘム・レコードと並んで、米国西海岸ジャズ御用達のジャズ・レーベルである。そう、パシフィック・ジャズも米国西海岸ジャズを語る上で、絶対に外せないジャズ・レーベルである。パシフィック・ジャズについても、探求する必要がありそうだ。
 
 
 
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2019年9月 1日 (日曜日)

昆虫をテーマにしたコンセプト盤

日本のジャズについては「進化」してきたと感じている。1950年代の終わりから1990年代までは、米国のジャズ・シーンをずっと追いかけ続けて、いかに早く米国の最新トレンドを入手し、日本のジャズに反映するか、がポイントだった。21世紀に入って、米国のトレンドを追わずに、日本独自の展開や音作りがなされるようになる。そして、その時代は今も続いている。

TRIX『ECCENTRIX』(写真左)。今年8月21日のリリース。出来たてホヤホヤの新盤である。2004年の「INDEX」以降、16年連続のオリジナル盤のリリースとなるそう。フュージョン・ジャズ系のバンドとして素晴らしいことである。ちなみにパーソネルは、熊谷徳明 (ds), 須藤満 (b), AYAKI (key), 佐々木秀尚 (g)。曲名を見たら判る「昆虫」をテーマにしたコンセプト・アルバムである。

元カシオペアのドラマー熊谷徳明と元Tスクエアのベーシスト須藤満を擁した、現代の日本のフュージョン・バンドの先頭集団を走る「TRIX」。日本のフュージョンの2トップ、カシオペアとTスクエア両方のDNAを受け継いだ音作り。というか、今回の音作りは、プログレッシブ・ロックやテクノ・ポップの音の雰囲気がさらに加わって、TRIXならではの個性的な音作りに成功している。
 
 
Eccentrix_trix  
 
 
冒頭の「中国天道虫」の最初の部分を聴いた時、思わず「これってYMO?」って思ったものだ。思わずテクノ・ポップ風のフュージョン・ジャズかと思ったら、アドリフ展開の部分はまるで「プログレッシブ・ロック」。ファンクネスは皆無、オフビートも抑え気味に、キーボードとエレギのフレーズが走って行く。ジャジーな要素はその演奏の複雑なコード進行とそれぞれの楽器のハイテクニックに留まる。

しかし、2曲目以降は、その1曲目の傾向を踏襲しつつ、オフビートを駆使しつつ、流麗でスインギーな「現代のフュージョン・ジャズ」を展開する。それぞれの曲もキャッチャーなフレーズてんこ盛りで、どの曲も聴いていてとても楽しい。「第4期TRIXサウンド」がこの盤で確立されたのでは、と感じる充実度。ロック色が強くなったなあ、とは思うが、演奏のオフビートとスインギーな展開は、まだまだ「フュージョン・ジャズ」だろう。

こういう演奏が当たり前の様に出てくる様になった「我が国ジャズ・シーン」。我が国のジャズ独特の「進化」がまだ聴いて感じとれる、そんな印象を持たせてくれる好盤です。従来からのフュージョン者ベテランの方々のみならず、昔、プログレ・ファンだった方がにもお勧めです。まだまだ「エキセントリックな」TRIX。なかなかの好盤です。
 
 
 
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