「今時のジャズ」の良いところ
このところ、ビンテージな純ジャズばかりを漁っていた。ビンテージな純ジャズ盤の音源探索は、どこか考古学の遺跡発掘の趣きがあって、やり始めたら、かなり面白い。ネットを漁って、お目当ての音源を探し当てれば嬉しいし、どう探しても見つからない場合は、なんとなく腹立たしい。どちらにしろ、楽しいのには変わりが無い。ビンテージな純ジャズ万歳である。
しかし、古い音源ばかり聴いていると耳に偏りが出てきそうで、必ず、新盤も聴くように心がけている。歳を取って「今時のジャズはなあ」なんて、したり顔で揶揄し出したらお終いだ、と思っているので、しっかりと「今時の新盤」にも耳を傾ける様にしている。意外と新盤のリスニングも面白くて、ジャズの深化とジャズの継続性が感じられて、まだまだジャズも捨てたもんじゃ無い、と思うのだ。
Joe Martin『Étoilée』(写真左)。2018年2月、ニューヨークのシアー・サウンドでの録音。ちなみにパーソネルは、Joe Martin (b), Mark Turner (ts, ss), Kevin Hays (p, Rhodes), Nasheet Waits (ds)。マーク・ターナーのサックスがフロント1管の「ワンホーン・カルテット」編成である。日本ではあまりメジャーな存在では無いが、この20年余り、所謂「ファースト・コール」なベーシストである、ジョー・マーティンのリーダー作になる。
この盤を聴けば、所謂「今時のジャズ」の良いところを実体験することが出来る。クールでスピリチュアルで思索的でハイテクニックな「コンテンポラリーな純ジャズ」が展開されている。今時のジャズマンは家庭的なのか、作品名はマーティンの愛娘の名前、2曲目の題名は妻の名前と2人の息子の名前を織り交ぜるなど、家族への思いを込めた8つのオリジナル曲で構成されている。思わず「へ〜」である。
冒頭「A World Beyond」は、ターナーのベースが、フロントのサックスのバックで、踊るが如く漂うが如く響き渡る「A World Beyond」。綿密な4人の連携が実にモダンでセンスが良い。クールで拡がりのある演奏なんだが、しっかりと音の芯は通っていて、その響きはスピリチュアル。これは確かに「今時のジャズ」の音世界である。次の「Malida」は冒頭の知的なベース・ソロに思わず耳をそばだてる。
冒頭の2曲だけで、ターナーのベースは只者では無いことが良く判る。タイトル曲「Étoile」はターナーのソプラノが叙情的、ヘインズのピアノはどこかエキゾチックば響き。大向こう張るキャッチャーな曲は無いが、どの曲も密度が濃く、適度な浮遊感が心地良く、クールでスピリチュアルな雰囲気に満ちている。飽きの来ないアレンジと音作りで、地味なジャケットが玉に瑕だが、なかなかの好盤と思う。
東日本大震災から8年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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