マッキンタイヤーの個性と実力
SteepleChaseレーベルは「北欧のブルーノート・レーベル」と呼ばれるだけあって、カタログを眺めていると、こんなジャズマンのリーダー作を録音しているんやなあ、と感心することがしばしば。1960年代後半より、米国から欧州に移住してきたジャズマンや米国在住のジャズマンが、北欧はデンマークのコペンハーゲンに演奏ツアーに来た時にピックアップして録音しているのだ。これがカタログの充実に大いに貢献している。
Ken McIntyre『Hindsight』(写真左)。SteepleChaseレーベルのSCS1014番。 1974年1月13日、デンマークはコペンハーゲンのRosenberg Studioでの録音になる。ちなみにパーソネルは、Ken McIntyre (as, fl ,bassoon, b-cl), Kenny Drew (p), Bo Stief (b), Alex Riel (ds)。SteepleChaseレーベルのお抱えピアニスト、ケニー・ドリューと、地元のコペンハーゲンのジャズマン2人のリズム・セクションがバックについている。
この盤を聴けば判るが、実に良い内容のハードバップ盤である。リーダーのアルト・サックス奏者、ケン・マッキンタイヤーの優れた演奏がしっかりと記録されている。ノーマルに旋律を悠然と吹く様子や、時にフリーキーに時にアブストラクトに演奏を展開したり、激情の赴くままに吹きあげる様や、ほど良く抑制されコントロールされた吹きっぷりなど、マッキンタイヤーの演奏の全てを記録している。選曲も良い。しっかりとスタンダード曲が選ばれている。
2曲目の「Lush Life」、4曲目の「Body and Soul」、7曲目の「'Round About Midnight」。いずれも良い演奏だ。フリーにアブストラクトに、ブロウに様々な色づけをしつつ、従来のスタンダード曲に新しいイメージを与えている。フリー&アブストラクトに傾くのはほんの少しなので、フリー嫌いのジャズ者の耳にも十分に鑑賞に耐えると思料。ミュージシャンズチューンも選曲していて、コルトレーンの「Naima」はオーボエのみに情緒豊かに吹き上げていく。ロリンズの「Sunnymoon for Two」は本業のアルト・サックスで、マッキンタイヤー節全開で吹きまくる。
バックのリズム・セクションもマッキンタイヤーの好演をしっかりとサポートしている。もともとドリューのピアノって、バップなピアノなので、メリハリが効いた、明快なタッチが持ち味。当然、フロント楽器の演奏のサポートも、供給されるリズム&ビートは明確そのもので気持ちの良いもの。地元出身のベースとドラムも優れたパフォーマンスを供給していて、このマッキンタイヤーのリーダー作を更に内容の濃いものにしている。
米国のレーベルに残したNew Jazzでの2枚とUnited Artistsでの2枚は、マッキンタイヤーの活動初期のものしか無い。ジャズマンとして充実してきた40歳代の記録は、SteepleChaseレーベルに集中している。ケン・マッキンタイヤーというアルト・サックス奏者の実力と個性を理解するには、SteepleChaseレーベルの諸作は欠かせない。そう言う意味でも、SteepleChaseレーベルって、あって良かったなあ、と思うのだ。
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