今時の日本人ジャズは「良い」
さて、今日も日本人ジャズの新盤を。僕はこのサックス奏者のデビュー盤からずっと見守ってきた。アルバム・デビューは2010年6月の『NORTH BIRD』。デビュー当時は現役の女子高生。雑誌やネットでの紹介文の触れ込みとしては「山下洋輔、渡辺貞夫、日野皓正など、数々の巨匠との共演を誇る話題の天才少女」。僕の印象は「器用で上手い」。ただ「上手い」。これからどう成長していくのか、楽しみに思った。
しかし、それからレコード会社の思惑に乗って、何枚かアルバムを出して、そのまま何処かに行ってしまうかなあ、と不安に思っていたが、彼女はそうでは無かった。2011年、日本人初のプレジデント・フルスカラーシップ(授業料、寮費免除)を獲得し、アメリカのバークリー音楽大学に留学。2015年に同音大を卒業し、活動の拠点をNYに移す。それまで、2枚ほどアルバムを出すが、単身、NYで活動を続け、アルト・サックスについて研鑽を重ねる。
寺久保エレナ『Absolutely Live!』(写真左)。今年4月のリリース。2019年1月14日、新宿ピットインでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、寺久保エレナ (as), 片倉真由子 (p), 金森もとい (b), 高橋信之介 (ds)。純日本人カルテット。最新アルバム『リトル・ガール・パワー』収録曲を中心に、彼女のオリジナル曲からスタンダード・ナンバーまで、彼女の「今」を感じるに十分な内容である。
このライブ盤を聴けば、彼女がデビュー当時から米国に渡って、NYで活動するに至るまで、アルト・サックスについて、ジャズについて、研鑽に研鑽を重ねてきたことがとても良く判る。「器用で上手い」アルト・サックスは、ジャジーで個性溢れる、プロフェッショナルなアルト・サックスに変わっていた。このライブ盤を聴き進めるにつけ、嬉しさがこみ上げてくる。個性もしっかり確立され、明らかにジャズなアルト・サックスが鳴り響く。
モーダルな展開も、フリーキーな咆哮も、メロディアスで耽美的なバラードも、いずれもしっかりとした、地に足着いたブロウを展開する。いや〜大きくなったなあ。もう立派なプロのジャズ・ウーマンだ。頼もしい寺久保エレナがこのライブ盤にいる。そうそう、バックのリズム・セクション(レギュラー・カルテット)も実に良い音を出している。特にピアノの片倉真由子。ちょっと線の細かったピアニストが、なかなかに骨太で歌心溢れるバップ・ピアニストに変身している。
デビュー当時から、自らの才能に浮かれること無く、日々研鑽を重ねて、個性をしっかりと確立して、ジャズのプロフェッショナルとして地に足着いたパフォーマンスを繰り広げる寺久保エレナと片倉真由子。この二人の成長とジャズ・ウーマンとしての個性の確立を確認出来る、素晴らしい内容のライブ盤である。選曲も今を活躍する若手らしいものでこれも十分楽しめる。好盤です。今時の日本人ジャズ、なかなかやるなあ。
東日本大震災から8年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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