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2019年7月14日 (日曜日)

ショウの素晴らしい未発表音源

我が国においてのジャズ盤の評価は絶対では無い。それは米国でも欧州のジャズ先進国でも言えることで、それぞれの国で好みが大きく分かれるジャズメンがいる。米国で評価の高いジャズメンが日本ではそれでも無かったり、日本で評価が高いのに欧州ではそうでも無かったり、国によって、リージョンによって好みが分かれることがある。

例えば「Woody Shaw(ウッディ・ショウ)」。ハード・バップからアバンギャルドまで一歩進んだ演奏スタイルで、1960年代後半以降から70年代にかけてフレディ・ハバードと並ぶ実力派のトランペッターとして注目された。ところが日本ではショウの人気はイマイチだった。ハバードの後に出てきたトランペットのテクニシャンだったからかなあ。ハバードの二番煎じという評価だったとしたら、それは違うだろう。

Woody Shaw『Basel 1980』(写真左)。ウディ・ショウの未発表演奏集。1980年1月、スイスのベイゼルと、ボーナストラックの1曲だけ、1981年6月、オーストリアのルステナウでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Woody Shaw (tp, flh), Carter Jefferson (ts, ss), Larry Willis (p), Stafford James (b), Victor Lewis (ds)。サックスのカーター・ジェファーソンとショウは、70年代前半にアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズで同僚だった間柄。
 
 
Live-at-vasel
 
 
未発表音源だといって侮ってはならない。冒頭の「Invitation」から、テクニック抜群、歌心抜群、緩急自在、変幻自在のトラペットが鳴り響く。この「Invitation」という曲、曲が長く、同じコードが続いたり、転調が多かったりの難曲である。この難曲をいとも容易く、吹き上げていくショウのトランペット。誤解を恐れず言うと、ハバードの先進性はハードバップ寄り、ショウの先進性はニュー・ジャズ寄り。ショウのトランペットの方が先を行っていた、と感じている。
 
Disc2の1曲目「Love Dance」と2曲目の「‘Round Midnight」も白眉の出来。ショウの凄さはスローテンポの吹きっぷりにある。スローテンポなフレーズの中に漲る異様なテンションと、テクニックの高い者だけが出来る安定のブレの無い流麗なフレーズの吹き回し。収録されたどの曲でも聴くことが出来るが、過去のどの演奏にも聴くことが出来ないショウの独創的なフレーズ。 
 
以前から、我が国でのショウの評価の低さが理解出来なかった。活躍を始めた時代が1970年代という、米国&日本で純ジャズの影が薄かった時代であったこと、ショウが「充実の中堅」の領域の入りつつあった、純ジャズ復古の成った1980年代の終わり、1989年にこの世を去ったこと。この2点が、我が国でのショウの適正な評価を阻害したのかもしれない。ショウのリーダー作を聴き直せば良く判る。ショウのトランペットは素晴らしい。
 
 
 
東日本大震災から8年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
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