ジャズ喫茶で流したい・149
こういうジャズというのが「粋な」ジャズというのだろう。こういうジャズというのが「味のある」ジャズというのだろう。まず、ジャズ盤紹介本などにその名前が挙がることは無い。よって、知る人ぞ知る、存在である。よって、ジャズ喫茶でもほとんどかかることは無い。
しかし、このジャズ盤に詰まっている音は「滋味溢れる」ジャズである。Al Cohn & Jimmy Rowles『Heavy Love』(写真左)。1977 年3月15日の録音。パーソネルは、Al Cohn (ts), Jimmy Rowles (p)。テナーとピアノのデュオである。録音年は1977年。ジャズはフュージョン・ジャズの大流行の時代。そんな時代に純ジャズ、しかも地味なデュオである。
だが、冒頭の「Them There Eyes」を聴くと、そんな印象はどっかへ吹っ飛ぶ。この盤に、このデュオに詰まっているのは、正統なモダン・ジャズであり、良質な全くジャズらしい即興演奏の連続である。ある時は寄り沿い、ある時は対峙し、ある時は前へ出て、ある時は後ろに回ってパートナーのソロを盛り立てる。絶妙なデュオ・パフォーマンス。
アル・コーンは長年ズート・シムズとコンビを組む仲。アル・コーンはズート・シムズに比べると地味で個性が弱い印象だったが、1970年代に入ると、一皮剝けた様に円熟味が加わり、歌心溢れる余裕あるプレイを繰り広げるようになる。そんなアル・コーンがこのデュオ盤に捉えられている。存分にスイングしており、この盤でのブロウはテクニック的にもかなり優秀。
片や、ピアノのジミー・ロウルズは我が国ではかなりマイナーな存在。「ジミー・ロウルズって誰?」ていう感じなんですが、そのプレイを聴けば、只者では無いことが直ぐに判ります。1918年生まれなので、この盤を録音した時は69歳。そんな年齢を全く感じさせない、味のある芯の入った温和なピアノを聴かせてくれます。いわゆる「伴奏上手」なピアノです。
ジャケットがこれまた良い。味があるモノトーンなジャケット。このデュオの温和で円熟味溢れる、それでいてしっかり芯の入った「粋」なデュオ演奏がきこえて来そうな、味のあるジャケット。Xanaduレーベルの面目躍如。こういうデュオ盤が1977年に録音されていた。そういう事実を知る日本人ジャズ者が少ないのは残念なこと。是非、ご一聴を。
東日本大震災から8年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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