スタンリー・カウエルの真の個性
日本のジャズ・レーベルの全てが「イマイチ」な訳では無い。売らんが為に聴き手に迎合し、有名スタンダード曲を中心に選曲し、演奏内容は、無難なハードバップばかりを選択。リリースの後、年が経過して振り返れば、何の印象も残らない。そんな凡盤をリリースしまくった日本のジャズ・レーベルも多々あるが、そうでないレーベルも数が少ないが「ある」。
「DIW(ディウ) Records」は、1982年から1995年まで、200枚以上のジャズ盤をリリースした、知る人ぞ知る日本のレーベルである。DiWは実に硬派で骨太なレーベルで、他の日本のレーベルが陥り易い、有名スタンダード曲をメインに、日本人ジャズ者に人気のハードバップかモード・ジャズをジャズメンに何とか演奏させる、という、聴き手に、マーケットに迎合するところが全く無い。振り返ってみれば、実に立派である。
Stanley Cowell『We Three』(写真左)。December 5, 1987年12月5日の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Cowell (p), Frederick Waits (ds), Buster Williams (b)。そんな硬派で骨太な日本のレーベル「DIW Records」からのリリース。リリカルで端正な総合力が個性のスタンリー・カウエル。そして、バックに骨太ベーシスト、バスター・ウイリアムス。シャープでドライブ感あるドラムが個性のフレデリック・ウェイツ。魅力的なピアノ・トリオである。
1970年代、クールでスピリチュアルなリーダー作をリリース。いまいち、その個性がはっきり見えないピアニストだったスタンリー・カウエル。ECMレーベルの作品はそれなりに印象的だったが、カウエル自身のピアノの個性がイマイチ判らない。1980年代に入って、カウエルの名前は忘れてしまった。そして、1990年代に入って、このアルバムに出会って、カウエルの名前を思い出した。
端正で活き活きとしたタッチ。躍動感溢れるアドリブ・フレーズ。創造性豊かなモーダルな展開。どこか取り立てて目立った個性は無い。総合力で勝負するピアニストである。スタンリー・カウエルがそういうピアニストであることが、この盤を聴いて良く判った。そして、もう一つ。そんな総合力が個性のカウエルのピアノをガッチリ支える、骨太でソリッドなウィリアムスのベースが殊のほか素晴らしい。
録音年は1987年。純ジャズ復古が始まった頃。そんな時期に、こんなに創造力豊かで躍動感溢れるモード・ジャズが録音されていた。日本のジャズ・レーベルの全てが「イマイチ」な訳では無い。DiWはよくこういう演奏を録音し残してくれたと思う。録音状態も良く、日本発のジャズ盤として優秀な出来である。
東日本大震災から8年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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