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2019年5月18日 (土曜日)

グラント・グリーンってブレない

何度も書いて申し訳ないが、ブルーノート・レーベルの4300番台のアルバムは、聴き易さ、ポップさを最優先にしたプロデュースが意識されていたように思う。ジャズらしい尖った要素は基本的に横に置いておいて、とにかく聴き易さ優先。この時代には、アルフレッド・ライオンが積み上げたブルーノート・レーベルとしての硬派な矜持はどこへやら、な状態であった。

Grant Green『Goin' West』(写真左)。1962年11月30日の録音。リリースは1969年。ブルーノートの4310番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Herbie Hancock (p), Reggie Workman (b), Billy Higgins (ds)。 グリーンのギター1本だけがフロントを張り、バックは、ハンコックをピアノに据えた新主流派なリズム・セクション。さぞかしジャズの先端をいく、モーダルな音世界が展開されると思いきや、この盤、タイトルからも判る通り、ブルーノート・レーベルには珍しい「企画盤」。
 
収録曲を見渡しても判る様に「米国西海岸の西部劇の世界」をイメージする曲が選曲されている。つまりは、グラント・グリーンのパッキパキのシングルトーンが個性のブルージーでファンキーなギターでC&W(カントリー&ウエスタン)系の曲をやった訳。「I Can't Stop Loving You(愛さずにはいられない)」「Red River Valley(赤い河の谷間)」、それにロリンズの『Way Out West』での名演で勇名になった「Wagon Wheels(ワゴン・ホィール)」など、耳に馴染みのある曲がズラリと並ぶ。
 
 
Goin-west  
 
 
しかしながら、グラント・グリーンって全くブレない人で、何をやらせても、結局は「パッキパキのシングルトーンが個性のブルージーでファンキーな」演奏に仕上がってしまうのだ。この盤でも、「米国西海岸の西部劇の世界」をイメージする、ポピュラーな曲が選択されているのだから、もっとポップでもっと聴き易くなっても良いのになあ、と思うのだが、これが意外と硬派な純ジャズ風な内容に仕上がっているのだから、聴きながら思わず、苦笑い、である。
 
まあ、こういう完璧職人肌のギタリストに、ポップで聴き易い演奏をやれっていうほうが野暮だ。グラントはアルバムの最初から終わりまで、一貫して、ファンクネスを湛えたパッキパキのブルージーなギターを弾きまくっている。原曲は「米国西海岸の西部劇の世界」をイメージするポップな曲ばかりなのになあ(笑)。「Red River Valley(赤い河の谷間)」なんて違和感の塊である。しかしこの「違和感」が意外と面白い。
 
1967年8月以降、プロデュースをしていないライオンが何故この盤のプロデュースをしているのか。クレジットを見て不思議に思っていたが、録音してからお蔵入りになっていたんですね。この盤のリリースはライオンの意志ではなかったのかな。確かに企画盤としての狙いは外しているが、グラントのブレの無いファンクネスを湛えたパッキパキのブルージーなギターを愛でることが出来るんだから、この盤はこの盤で存在意義があるのでは、と思います。
 
 
 
東日本大震災から8年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
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