仏ジャズを代表するトリオ盤
ジャズという演奏フォーマットは「即興演奏」が最大の特徴。演奏者個々の力量がそのまま演奏にダイレクトに出る。そして、個性の強い演奏者が入ると、その個性に引き摺られて、演奏全体の雰囲気がガラッと変わったりする。この辺が譜面通りに演奏することをメインとしたクラシックと「真逆」なところ。
このクラシックと「真逆」のところが面白くて、ずっと40年以上もジャズを聴いている訳だが、この「個性の強い演奏者が入ると、その個性に引き摺られて、演奏全体の雰囲気がガラッと変わる」というアルバムについては、ジャズの世界ではちょくちょく出くわす。それほど、ジャズマンは「個性の塊」の人が多くいる。というか「個性の塊」でないとジャズマンは勤まらない、と言った方が良いのか。
このアルバムを初めて聴いた時、全く硬派で整ったハードバップ・ジャズだと感じた。絵に描いた様なハードバップな演奏。新しい要素もいろいろ入ってはいる。モーダルな展開もあれば、スピリチュアルな展開もある。ジャズ・サンバもある。それでも基本は「ハードバップ」。よくよく聴くと、そんな雰囲気を決定付けているのは「アコースティック・ベース」の存在。
そのアルバムとは、Marc Hemmeler『Easy Does It』(写真左)。仏リヨン出身のジャズ・ピアニスト、マーク・エムラーの1981年リリース作品。ちなみにパーソネルは、Marc Hemmler (p), Ray Brown (b), Daniel Humair (ds), Stephane Grappelli (vln)。エムラーのピアノ・トリオに、ジャズ・バイオリンの名手、グラッペリが1曲だけ客演した構図。エムラーのピアノ・トリオがメインである。
ジャズ・ベースのレジェンドの一人、レイ・ブラウンのベースの存在感が半端無い。ブンブン唸るようにアコベの胴鳴り。鋼が鳴るような弦の爪弾き。このブラウンのベースが演奏全体の雰囲気を決定付けている。躍動感溢れ端正なアドリブ展開、ノリ良くスインギーなフレーズ。ブラウンのベースがこの上質なハードバップ演奏の雰囲気をグイグイとリードする。
もちろん、リーダーのエムラーのピアノも欧州ジャズのピアノらしく、ファンクネス希薄で端正で流麗。タッチも明確で聴き心地は良好。フランスを代表する名手、ドラムのユメールの好サポートも見逃せない。しかし、そこにブラウンのベースが入ったからこそ、内容の高い、高いレベルの仏ジャズを代表するピアノ・トリオ盤に仕上がった、と僕は感じている。
「個性の強い演奏者が入ると、その個性に引き摺られて、演奏全体の雰囲気がガラッと変わる」。ジャズって面白いなあ。
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« 純ジャズの深化を確実に感じる | トップページ | ブルーノートの4301番である。 »
コメント