貞夫さんの躍動感が半端ない
渡辺貞夫と呼ぶよりは「貞夫さん」。日本ジャズ界が世界に誇るアルト・サックス奏者である。今までのジャズの様々な成果を鑑みると、日本ジャズ界でダントツの存在である。1933年生まれなので今年で86歳。未だ第一線の先頭に立って、日本ジャズ界を牽引している様は「素晴らしい」の一言。
僕は貞夫さんを聴き続けて40年余。気合いを入れて聴き始めたのは、例のフュージョンの好盤『California Shower』からである。とにかく僕は貞夫さんのアルト・サックスの音が大好きだ。スッと伸びた明るくブリリアントな響き。流麗ではあるが芯がしっかり入ったフレーズ。ビ・バップ仕込みの光速テクニック。しかし、一番の魅力はフレーズに溢れる「歌心」。
そんな貞夫さんの最新作が『Re-Bop the Night』(写真左)。昨年の日本ツアーから8か所のベスト・テイク12曲。ちなみにパーソネルは、渡辺貞夫 (as), Russell Ferrante (p), Ben Williams (b), Kendrick Scott (ds)。イエロージャケッツのオリジナルメンバーであるベテラン、フェランテのピアノを核に、新世代ジャズシーンを担うベースとドラムがバックを支える。
今年で86歳なんて嘘だろう、と思う。貞夫さんのアルト・サックスは絶好調。特に、この盤、ライブ録音盤だけに、貞夫さんのアルトの躍動感が半端ない。力の入れ具合も塩梅良く、力感溢れるバップなフレーズから、優しさを湛えたバラードなフレーズまで、硬軟自在、変幻自在、質実剛健なアルト・サックスが素晴らしい。
貞夫さんのアルトの素晴らしさの次に、しっかりと耳に残るのが、フェランテのピアノの良い響き。ファンクネスが殆ど感じられない、自然や空間を想起するネイチャー・ジャズの側面と、現代の新主流派と呼んで良いほどの、静的でスピリチュアルなモード・ジャズの側面の両方を上手くハイブリッドした様なピアノは聴きものである。
このライブ盤での貞夫さんのアルト・サックスの躍動感が実に心地良い。バックのフェランテがメインのリズム・セクションも隅に置けない素晴らしさ。実に聴いていて楽しく、聴き応えのあるメインストリーム・ジャズ。それぞれの楽器の音も良好。万人にお勧めの「貞夫流ネオ・ハードバップ」な演奏に感心することしきり、である。
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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