« 2019年3月 | トップページ | 2019年5月 »

2019年4月の記事

2019年4月29日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・146

ジャズは難しいとか、古いとか、おじん臭いとか言われて久しいが、まだまだ音楽の主要なジャンルとしての地位を維持している。しかも、ネット社会が拡がったおかげだろう、ジャズ・ミュージシャンの出身国も多岐に渡るようになった。ジャズはまだまだ、新しい才能を発掘し続けている。

今回、ご紹介するのは、ハンガリーの俊英ピアニストAron Talas(アーロン・タラス)。ブダペストの生まれ。フランツ・リスト音楽アカデミーで学び、2013年、ハンガリーの国内コンペで「最優秀ジャズ・コンボ賞」、2015年、モントルー・ジャズ・ピアノ・コンペのファイナリストの一人。東欧出身の新進気鋭のピアニストである。

2015年に録音された前作『Floating Island』が好評で、今回のこの盤が待望の新作ピアノ・トリオ作品。Aron Talas Trio『Little Beggar』(写真左)。2017年8月の録音。2018年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Aron Talas (p), Jozsef Barcza Horvath (b), Attila Gyarfas (ds)。ベーシストもドラマーもブタペスト出身、オール・ハンガリーなピアノ・トリオである。
 
 
Little-beggar-aron-talas
 
 
聴いた瞬間「これは」と思った。明らかに正統派、メインストリーム系のピアノ・トリオ。といって、米国ジャズの様なファンクネスは皆無。欧州ジャズらしい、クラシック・ピアノに通じる様な、流麗で洗練されたタッチ。クリスタルな抒情性。加えて、東欧ジャズの特質になるであろう、ちょっとくすんだ様なアーシー感が癖になる。
 
「東欧のビル・エヴァンス」とでも形容したくなるようなリリシズム。卓越したテクニックと表現力で聴き応え抜群のアドリブ・フレーズ。そこに堅実重厚な、これまた正統派アコベのヨーゼフが続き、自由度の高い、ポリリズミックなアッティラのドラムが堅実、確実なリズム&ビートを供給する。実にハイレベルなピアノ・トリオの演奏に思わず聴き入ってしまう。
 
アーロンは20歳台後半、将来を嘱望されつつあるアーロンが、持てる力をフルに発揮。最先端をいく静的な「モーダルでスピリチュアル」な響きを前面に押し出しつつ、その演奏の底にある伝統的なスイング感とのバランスが良好。欧州ならでは、東欧ならではの響きが芳しい。今から次作が期待出来る好盤です。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月28日 (日曜日)

意外とモード・ジャズの好盤です

ブルーノート・レーベルでのエルヴィン・ジョーンズとマッコイ・タイナーの録音を聴いていると、インパルス・レーベルに移籍したばかりの頃のコルトレーン・カルテットの音世界が一番良かったと思っていたのではないか。あの頃の演奏が、一番やりたかった演奏ではないのか、と思う。

Elvin Jones『The Ultimate』(写真左)。1968年9月6日の録音。ブルノートの4305番。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Joe Farrell (ts, ss, fl), Jimmy Garrison (b)。サックスがフロントのピアノレスの変則トリオ編成。サックスは、当時、新進気鋭のジョー・ファレルが担当している。

この盤ではピアノレスで録音している。この盤の演奏を聴けば判るが、この盤の演奏にピッタリ合ったピアノは、当時唯一、マッコイ・タイナーのピアノだけだったと思うのだが、タイナーを採用すると、明らかにコルトレーン・カルテットの音世界に酷似する可能性がある。であれば、ピアノをオミットしたのは正解だろう。
 
 
The-ultimate-elvin-jones
 
 
エルヴィンはビートが効いた、ポリリズムの化身の様なドラミングが身上。ピアノは無くても、ベースのウォーキング・ラインさえあれば、十分にフロントの楽器を支え、鼓舞することが出来る。この盤に詰まった演奏は、一言でいうと「インパルス・レーベルに移籍したばかりの頃の、モーダルで自由度の高いコルトレーン・カルテット」の音である。上質のモード・ジャズ。
 
ギャリソンのベースは、モード・ジャズを支える上で、打って付けのウォーキング・ラインを弾き進める。明らかに「モーダル・コルトレーン」仕込みのベース・ライン。フロントのサックスに限りなく自由度を与えながら、しっかりと演奏の底をしっかりと支えている。聴けば、フロントのファレルがとても気持ち良いサックスを吹いている様に感じる。
 
当時31歳のファレルは若々しくエモーショナルなサックスを吹き上げる。限りなく自由奔放に吹きまくるファレル。コルトレーンをちょっとジェントルに、ちょっと柔和にした様なモーダルなサックスが、エルヴィンのポリリズムとギャリソンのゴリゴリベースに見守られながら、限りなく自由度高く乱舞する。モード・ジャズの好盤である。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月27日 (土曜日)

メインのオルガンが控えめに響く

ブルーノート・レーベルの4300番台は、1968年〜1972年の間のリリースなので、ジャズのポップス化の影響をモロに受けた時代だと思う。アルバムの内容についても、演奏スタイルとしてはハードバップがメインなのだが、雰囲気がポップなものが散見される。ということで、内容的にちょっと俗っぽくなっている。

John Patton『Understanding』(写真左)。ブルーノートの4306番。October 25, 1968年10月25日の録音。ちなみにパーソネルは、Harold Alexander (ts, fl), John Patton (org), Hugh Walker (ds)。ジョン・パットンがオルガンとベースを担当した、典型的なオルガン・トリオの演奏である。ちなみに、ジョン・パットン以外の2人については僕はあまり良く知らない。
 
ジョン・パットンは1935年生まれ。このアルバムを録音した時は33歳。ジャズ界ではまだ若手レベル。オルガンの演奏の若々しい。アーシーなグルーヴ感が適度に織り込まれていて、ファンクネスの度合いも適度。アドリブ・フレーズにはモーダルな展開が見え隠れして、ジャズ・オルガンとしては新しい類の響きがする。
 
 
Understanding-john-patton  
 
 
リーダーのジョン・パットンはモーダルなフレーズをメインに、時々フリーキーな面を見せつつ、比較的オーソドックスにプレイに終始している。オーソドックスなプレイもどこかポップに迎合した様な、判り易くポップな演奏が時々顔を出す。軽音楽的なイージーリスニングに陥り易い、危ういポップなアレンジが施されている。

そんなアレンジに中でも、パットンのオルガンのフレーズは惑うことが無い。紡ぎ出されるフレーズの力強さと繊細さの両立が実に頼もしい。パットンのオルガンとヒュー・ウォーカーのドラムとの相性が良い。ウォーカーのドラミングが、ソウルフルなオルガン・ジャズの躍動感を増幅している。
 
リーダーのオルガンがやや控えめに響く、ポップに傾いたモーダルなオルガン・ジャズ。ギリギリ純ジャズの印象を留めているので、決して飽きは来ない。但し、ファンクネスはその分、控えめになっており聴き易い。ジャケットのデザインだけが平凡で実に惜しい。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月26日 (金曜日)

難解ではなく「癖の強いピアノ」

いきなり寒くなりました。困ったもんです。昨日は夏日に近く、家に帰り着いても暑くて、家の中では半袖で過ごして丁度良かったのですが、今朝からは一転「寒い」。最低気温は8度位低く、昼間の気温に至っては10度以上も低い。真冬に逆戻りである。冬服をしまわなくて良かった。

急に寒さが戻っても、ジャズを聴く日々は変わらない。今日は、ブルーノート・レーベル4300番台の聴き直し。4303番のAndrew Hill『Grass Roots』(写真左)である。1968年8月5日の録音。ちなみにパーソネルは、Andrew Hill (p), Ron Carter (b), Freddie Waits (ds), Booker Ervin (ts), Lee Morgan (tp)。
 
アンドリュー・ヒルのピアノについては、ジャズを聴き始めた頃、さっぱり判らなかった。かのブルーノート・レーベルの総帥、アルフレッド・ライオンは、アンドリュー・ヒルの才能に惚れ込み、推しに推したが、道半ばでライオンが引退してしまった。1980年代にブルーノート・レーベルが復活した時にも、ライオンがまず始めたことはアンドリュー・ヒルを再び売り出すことだったという。
 

Grass-roots-andrew-hill

 
ジャズを聴き初めて、20年ほど経って、やっとアンドリュー・ヒルのピアノの個性が理解出来る様になった。一言でいうと「新時代のセロニアス・モンク」。判り易いモンクという感じの、予測可能な範囲で飛んだり跳ねたりするピアノ。この『Grass Roots』というアルバムについても、そのヒルの「判り易いモンク」という部分を強調するようなプロデュースを施している様に感じる。
 
「難解なピアノ」という表現はちょっと違う様な気がする。「癖の強いピアノ」という表現がまずまずフィットする感じかな。ある程度、モンクのピアノに親しむことが出来る位になって、ヒルのピアノの「予想できる範囲の中で飛んだり跳ねたりする」個性が何となく判る様になる。そして、ヒルの幾何学模様的にスイングするような「捻れ」が心地良く耳に響く様になる。
 
この『Grass Roots』の中にも、このモンクのピアノより聴き易く慣れ易い、幾何学模様的にスイングするような「捻れ」が前面に押し出されていて、ヒルの個性が凄く確認し易い内容になっている。ただ、往年のブルーノート・レーベルらしからぬジャケット・デザインの平凡さだけが「玉に瑕」である。子供のじゃれ合う写真とヒルの癖の強いピアノ。イメージが明らかにアンマッチである(笑)。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月25日 (木曜日)

貞夫さんの躍動感が半端ない

渡辺貞夫と呼ぶよりは「貞夫さん」。日本ジャズ界が世界に誇るアルト・サックス奏者である。今までのジャズの様々な成果を鑑みると、日本ジャズ界でダントツの存在である。1933年生まれなので今年で86歳。未だ第一線の先頭に立って、日本ジャズ界を牽引している様は「素晴らしい」の一言。
 
僕は貞夫さんを聴き続けて40年余。気合いを入れて聴き始めたのは、例のフュージョンの好盤『California Shower』からである。とにかく僕は貞夫さんのアルト・サックスの音が大好きだ。スッと伸びた明るくブリリアントな響き。流麗ではあるが芯がしっかり入ったフレーズ。ビ・バップ仕込みの光速テクニック。しかし、一番の魅力はフレーズに溢れる「歌心」。
 
そんな貞夫さんの最新作が『Re-Bop the Night』(写真左)。昨年の日本ツアーから8か所のベスト・テイク12曲。ちなみにパーソネルは、渡辺貞夫 (as), Russell Ferrante (p), Ben Williams (b), Kendrick Scott (ds)。イエロージャケッツのオリジナルメンバーであるベテラン、フェランテのピアノを核に、新世代ジャズシーンを担うベースとドラムがバックを支える。
 
 
Rebop-the-night-sadao  
 
 
今年で86歳なんて嘘だろう、と思う。貞夫さんのアルト・サックスは絶好調。特に、この盤、ライブ録音盤だけに、貞夫さんのアルトの躍動感が半端ない。力の入れ具合も塩梅良く、力感溢れるバップなフレーズから、優しさを湛えたバラードなフレーズまで、硬軟自在、変幻自在、質実剛健なアルト・サックスが素晴らしい。
 
貞夫さんのアルトの素晴らしさの次に、しっかりと耳に残るのが、フェランテのピアノの良い響き。ファンクネスが殆ど感じられない、自然や空間を想起するネイチャー・ジャズの側面と、現代の新主流派と呼んで良いほどの、静的でスピリチュアルなモード・ジャズの側面の両方を上手くハイブリッドした様なピアノは聴きものである。
 
このライブ盤での貞夫さんのアルト・サックスの躍動感が実に心地良い。バックのフェランテがメインのリズム・セクションも隅に置けない素晴らしさ。実に聴いていて楽しく、聴き応えのあるメインストリーム・ジャズ。それぞれの楽器の音も良好。万人にお勧めの「貞夫流ネオ・ハードバップ」な演奏に感心することしきり、である。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月24日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・145

僕はこのドラマーの音が、このドラマーが創造する音が好きだ。初めて聴いた時からズッとだ。そのドラマーの名前は「ブライアン・ブレイド(Brian Blade)。1970年7月、米国ルイジアナ州生まれ。現時点で48歳。脂ののりきった中堅ジャズマン。こんなにユニークなドラミングが聴けるとは思ってもみなかった。
 
硬軟自在、変幻自在、緩急自在、音の音色の豊かさ。変な喩えなんだが「パーカッションらしいドラミング」。従来のジャズ・ドラミングに無い、メロディアスなドラミング、とでも表現しようか。とにかく良い意味でユニークなドラミングなのだ。聴いているだけで、これだけ「面白い」ドラミングなのだ。一緒に共演して演奏したら、どれほど楽しいのだろうか。今では「ファースト・コール」ドラマーの一人である。
 
Brian Blade Fellowship『Perceptual』(写真左)。1999年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Brian Blade (ac-g, ds, vo), Kurt Rosenwinkel (ac-g, el-g), Christopher Thomas (b, vo), Myron Walden (b-cl, as), Melvin Butler (ts, ss), Jon Cowherd (p, key), Dave Easley (steel-g), Daniel Lanois (ac-guitar, steel-g), Joni Mitchell – vocals ("Steadfast")。錚々たる同世代がメインのメンバー「Fellowship」。
 
 
Perceptual-brian-blade  
 
 
この『Perceptual』はフェローシップとしての作品の第2弾になる。米国の広々とした自然や空間を想起する、僕が勝手に呼んでいるのだが「ネイチャー・ジャズ」。パット・メセニーの音世界に近いものがある。これが僕にとっては「大好物」なのだ。美しい、とても印象的な演奏。メロディアスではあるが、決してイージーに陥らない。
 
メロディアスで耽美的な「スピリチュアル・ジャズ」と形容して良いくらい、充実した、クールに「熱い」演奏。勿論、ブレイドのドラミングは個性的で素晴らしいのだが、同じくらいに印象に残る音が、カート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)のギター。特にエレギが印象的。ちょっとくすんだ伸びの良い、ちょっと捻れた、ちょっと尖ったエレギ。パットのギターのフォロワー的印象。
 
これ見よがしに変拍子、転拍子を見せつけてるようなところは見えない、フェローシップ全員、気合いの入った自然体な演奏。結構、難しいことをやっているんだが、決して難解には聴こえない。逆に自然にシンプルに聴くこえるから面白い。1970年代、ECMレーベルに展開された「ニュー・ジャズ」。この「ニュー・ジャズ」がジャズ界でもポピュラーな存在になったきた様です。このフェローシップの音を聴くと改めてそう思います。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月23日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・113

ジャズはこの約100年間、絶え間なく進化・深化してきた。しかし、進化・深化するだけがジャズでは無い。ある時代の演奏トレンドに戻って、現代でそれを再現するというアプローチもある。ある時代のトレンド、例えば「ハードバップ」時代の演奏の雰囲気を現代の環境で再現する、という企画型アプローチもあるのだ。
 
これはこれで意味のあることで、現代の現時点でのジャズを踏まえてハードバップをやるので、当然、1950年代のハードバップとは全く違った音世界になる。それでも、音の底には1950年代のハードバップのエッセンスがしっかり宿っている。いわゆる「温故知新」なジャズ演奏である。
 
リーダーのジェームス・サッグスは変わったキャリアを持っている。16歳からプロとして活動し、グレン・ミラーやトミー・ドーシーのオーケストラで活躍。その後、アルゼンチンのブエノスアイレスへ渡り、同地で8年間プレイ。現在は米国に舞い戻ってフロリダ州St. Petersburgにて活動しているという。とにかく、我が国ではほとんど無名のトランペッターである。
 
 
Youre-gonna-hear-from-me-james-suggs

 
James Suggs『You're Gonna Hear from Me』(写真左)。2018年12月のリリース。ちなみにパーソネルは、James Suggs (tp), Houston Person (ts), Lafaette Harris (p), Peter Washington (b), Lewis Nash (ds) 。パーソネルを見ると、大御所テナーのヒューストン・パーソンを迎えた2管フロントのクインテット。ベテランの味のあるドラマー、ルイス・ナッシュもいる。
 
まず、ジェームス・サッグスのトランペットの音が凄く良い。すぅ〜っと伸びた淀みの無いブリリアントな音。揺らぎの無い、破綻の無い、ちょっとレトロな雰囲気(これが粋なのだ)の節回し。ハードバップなトランペットである。そして、バックの演奏も明らかに惑うこと無い「ハードバップ」。それぞれの楽器の音が、どらもがハードバップな音を出している。硬派でバップな演奏がズラリと12曲が並ぶ。
 
1950年代の明快で明るいハードバップがここにある。バップな吹きっぷりの中に、出てくるアドリブ・フレーズは仄かにブルージーであり仄かにジャジー。これが実に粋な雰囲気なのだ。今の時代にこんな徹頭徹尾、ハードバップな演奏がてんこ盛りのアルバムがリリースされようとは。ジャズって面白い。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月22日 (月曜日)

ながら聴きのジャズも良い・36

ブルーノート・レーベルの4300番台を順番に聴き直し始めた。4300番台は1968年の録音から始まる。ジャズ界はコルトレーンが他界し、混沌とした時期。エモーショナルなフリー・ジャズが幅を利かし、エレクトリック・ジャズが台頭し始める。ロックやポップスが台頭し、売らんが為の豊作として、イージーリスニング・ジャズなどが企てられた。
 
『Introducing Kenny Cox and the Contemporary Jazz Quintet』(写真左)。そんな時期にこのアルバム、ブルーノートの4302番。コンテンポラリーなジャズ・クインテットとタイトルにあるので、意外と先進的な、ニュー・ジャズ志向の演奏と想像する。1968年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Cox (p), Charles Moore (tp), Leon Henderson (ts), Ron Brooks (b), Danny Spencer (ds)。
 
ケニー・コックス(Kenny Cox)とはどんなピアニストか。1940年11月生まれ、米国デトロイト出身。2008年逝去。1960年代後半に、デトロイトで自分のクインテットを作り、ブルーノート・レーベルにこの盤含め、2枚のアルバムを録音しています。リーダー作はこの2枚。サイドマンとして、3〜4枚のアルバムに参加しただけ。
 
 
Introducing-kenny-cox  
 
 
白人ピアニストのケニー・コックス率いるクインテットの演奏を聴けば「ん〜?」。思わず、録音年を再確認。1968年だよな。この盤に詰まっている音は、1950年代後半のハードバップど真ん中な演奏と1960年代前半のモーダルなハードバップ演奏。どう聴いても、1960年代終盤のトレンドを捉えたジャズとは全く言えない。メンバーはほとんど無名。しかし、出てくる音は素性が確かなもの。
 
しかし、当時のブルーノート・レーベル、何を思ってこの盤をリリースしたのかなあ。明らかに時代遅れである。モーダルなハードバップは先進的とは言え、温和で流麗で判り易い演奏。尖ったり捻れたりしたところは全く無い、とにかく理路整然とした由緒正しきハードバップな演奏で、内容的には真摯ではあるが、ちょっと物足りない雰囲気が濃厚に漂う。ジャケ写も明らかにファッション的に時代遅れの服装。でもロゴタイプはちょっとサイケデリックがかっていて、このアンバランスなデザインについても、これがブルーノート盤なのか、とちょっと戸惑います。
 
素性確かなハードバップ演奏には好感が持てます。あまり対峙する思いで聴き込むこと無く、何気なくさり気なく、じゃず喫茶の昼下がりに流すというシチュエーションに良く合った、ながら聴きに最適なモード・ジャズな演奏だと思います。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月21日 (日曜日)

ブルーノートの4301番である。

ブルーノート・レーベルはジャズ・レーベルの老舗。ブルーノートの音を聴けば、ジャズの歴史、ジャズのトレンドがたちどころに判る。それだけの内容のある、由緒あるレーベルである。有名なラインナップとしては、1500番台、4000番台、4100番台、4200番台、4300番台、BN-LAシリーズ、Classic LTシリーズがある。
 
この中で、僕は4300番台が手薄である。4300番台のスタートは1969年。ジャズがポップスとロックに押され、コルトレーンという精神的支柱の大きな柱の一本を失い、エモーショナルなフリー・ジャズが台頭し、本来の純ジャズがマイナーな存在に押しやられた時代。しかし、まずは売れなければならない。イージーリスニング志向に舵を切って、大衆に受けようとするアプローチがひとつのトレンドだった。
 
Gene Harris & The Three Sounds『Elegant Soul』(写真左)。1968年9月19日の録音。ブルーノートの4301番。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Carl Burnett (ds)。このジーン・ハリス率いるピアノ・トリオが「スリー・サウンズ」。そこにストリングスが絡む。
 
 
Elegant-soul-4301  
 
 
いやはや、4300番台最初にして、ストリングス絡みの「イージーリスニング・ジャズ」である。冒頭の「Elegant Soul」を聴けばそう思う。しかし、である。曲が進むにつれて、ライトではあるが、ジャズ・ファンクな演奏に徐々に染まっていく。これが当時、大衆に受けたかどうかは定かでは無いが、2曲目以降に「こってこてファンキーな」ジャズ・ファンクが詰まっている。
 
3曲目の「Sittin' Duck」はライトでポジティブなジャズ・ファンク。続く「(Sock It To Me) Harper Valley P.T.A.」は女性ボーカルの絡みが思い切りソウルフル。8曲目は「Book Of Slim」、ストリングス込みのジャズ・ファンク。いやはや、冒頭の「Elegant Soul」に騙されるところだった。
 
しかし、このライトで耳当たりの良いジャズ・ファンクは大衆に受けたのだろうか。今の耳で聴けば、レトロな響きのするジャズ・ファンクで、これはこれで味がある。純ジャズ至上主義の硬派なジャズ者の方々からすると眉をひそめそうなジャズ・ファンクだが、このライトでコッテコテのファンクネスは聴き応え満点である。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月20日 (土曜日)

仏ジャズを代表するトリオ盤

ジャズという演奏フォーマットは「即興演奏」が最大の特徴。演奏者個々の力量がそのまま演奏にダイレクトに出る。そして、個性の強い演奏者が入ると、その個性に引き摺られて、演奏全体の雰囲気がガラッと変わったりする。この辺が譜面通りに演奏することをメインとしたクラシックと「真逆」なところ。
 
このクラシックと「真逆」のところが面白くて、ずっと40年以上もジャズを聴いている訳だが、この「個性の強い演奏者が入ると、その個性に引き摺られて、演奏全体の雰囲気がガラッと変わる」というアルバムについては、ジャズの世界ではちょくちょく出くわす。それほど、ジャズマンは「個性の塊」の人が多くいる。というか「個性の塊」でないとジャズマンは勤まらない、と言った方が良いのか。
 
このアルバムを初めて聴いた時、全く硬派で整ったハードバップ・ジャズだと感じた。絵に描いた様なハードバップな演奏。新しい要素もいろいろ入ってはいる。モーダルな展開もあれば、スピリチュアルな展開もある。ジャズ・サンバもある。それでも基本は「ハードバップ」。よくよく聴くと、そんな雰囲気を決定付けているのは「アコースティック・ベース」の存在。
 
 
Easy-does-it-marc-hemmeler  
 
 
そのアルバムとは、Marc Hemmeler『Easy Does It』(写真左)。仏リヨン出身のジャズ・ピアニスト、マーク・エムラーの1981年リリース作品。ちなみにパーソネルは、Marc Hemmler (p), Ray Brown (b), Daniel Humair (ds), Stephane Grappelli (vln)。エムラーのピアノ・トリオに、ジャズ・バイオリンの名手、グラッペリが1曲だけ客演した構図。エムラーのピアノ・トリオがメインである。
 
ジャズ・ベースのレジェンドの一人、レイ・ブラウンのベースの存在感が半端無い。ブンブン唸るようにアコベの胴鳴り。鋼が鳴るような弦の爪弾き。このブラウンのベースが演奏全体の雰囲気を決定付けている。躍動感溢れ端正なアドリブ展開、ノリ良くスインギーなフレーズ。ブラウンのベースがこの上質なハードバップ演奏の雰囲気をグイグイとリードする。
 
もちろん、リーダーのエムラーのピアノも欧州ジャズのピアノらしく、ファンクネス希薄で端正で流麗。タッチも明確で聴き心地は良好。フランスを代表する名手、ドラムのユメールの好サポートも見逃せない。しかし、そこにブラウンのベースが入ったからこそ、内容の高い、高いレベルの仏ジャズを代表するピアノ・トリオ盤に仕上がった、と僕は感じている。
 
「個性の強い演奏者が入ると、その個性に引き摺られて、演奏全体の雰囲気がガラッと変わる」。ジャズって面白いなあ。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月19日 (金曜日)

純ジャズの深化を確実に感じる

最近、ドラマーがリーダーのアルバムがなかなか優れている。昔でいうと「アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ」。ジャズ・ドラマーのレジェンド、アート・ブレイキーが座長を務める「ジャズ道場」の様なバンドだった。ドラマーはバンドのバックに控えて、しっかりとリズム&ビートを司る役割。バンド演奏のバランスや機微をコントロールする役割、つまりリーダーとして最適な楽器なのでは、と思うのだ。
 
Mark Guiliana Jazz Quartet『Jersey』(写真左)。2017年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Mark Guiliana (ds), Jason Rigby (ts), Fabian Amazon (p), Chris Morrissey (b)。テナーがフロント1管のカルテット構成。ブラッド・メルドー、デヴィッド・ボウイ、アヴィシャイ・コーエンなどのグループで活躍してきた現代最高峰のドラマーの一人、マーク・ジュリアナのリーダー作。
 
現代最先端の「ネオ・ハードバップ」な演奏。正統な純ジャズといった内容。モーダルな浮遊感溢れる展開あり、端正ではあるが、ややスピリチュアルな響きが芳しい展開あり、正統な純ジャズの伝統を継承した様な、昔からジャズを長年聴き続けて来た耳にも違和感の無い、正統なジャズの雰囲気。
 
 
Jersey-mark-guiliana  
 
 
そんな中、ラテン・フレイヴァーをまとった演奏もある。3曲目の「Our Lady」。1960年代のソウル・ジャズの雰囲気もふっと感じたり、音の雰囲気はレトロなんですが、演奏の切れ味やアドリブのフレーズの響きなどは全く新しい現代のジャズの音。いわゆる「温故知新」的な演奏が聴き応え満点。レトロなアレンジの中に、キラリと光る現代ジャズの響き。良い感じだ。
 
4曲目の「BP」は不思議な雰囲気のする演奏。この不思議な雰囲気は何が原因なのか。バスドラ、なんですね。どうも、リーダーでドラマーのジュリアナがバスドラをずっと踏みながらドラムを叩いているんですよね。これって結構難しいテクニックだと思うんですが、ジュリアナって、ドラムのテクニックも抜群ですね。
 
ジャズの伝統に根ざした現代の純ジャズ。ちょっと聴いただけだと「これって昔のモード・ジャズやん」となるんですが、しっかり聴くとそうじゃないことが直ぐに判る。この盤の音の響きに織り込まれた音のトレンド音のジャンルが、1960年代に比べて格段に多い。純ジャズの深化を確実に感じることが出来る好盤です。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月18日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・112

フィル・ウッズのアルト・サックスは爽快である。切れ味の良い、ストレートな吹きっぷり。唄うが如く、伸びやかに吹き回すアドリブ・フレーズ。ファンクネスはそこそこに抑えられ、オフビートの躍動感とジャジーな雰囲気を前面に押し出した音色。フィル・ウッズも個性派プレイヤーの一人である。
 
そんなフィル・ウッズも2015年9月に鬼籍に入ってしまった。既に3年が経過している。それでもまだ未発表集やリイシュー盤が出てくるのだから、ウッズってやっぱり人気のアルト・サックス奏者やったんやなあ、と改めて感心する。そんなリイシュー盤の一枚が、Phil Woods『I Remember』(写真左)。1978年3月の録音。
 
僕はこの盤を知らなかった。ジャズ雑誌の新盤紹介を読んで初めて知った。で、早速入手して聴いてみた。冒頭は、キャノンボール・アダレイ作の「Julian」。ビッグバンドをバックにウッズが吹きまくる。エレピが印象的なゴスペル調のファンキーな演奏だ。うむむ、格好良いでは無いか。ビッグバンドのバックがちょっと甘さを感じさせるが、ウッズのアルトがグッと引き締める。
 
 
I-remember-phil-woods  
 
 
以降、収録曲を眺めてみると、ウッズが敬愛する8人のミュージシャンを追悼したものであることが判る。しかも、これらの曲をオリジナルとは全く別の、ウッズ・オリジナルのアレンジを施してカヴァーしているのだ。このアレンジがどれも良く出来ている。バックにオーケストラ付きの演奏もあるが、決して陳腐になっていない。ぎりジャズとして成立しているアレンジが見事。
 
どの演奏でも、やはりウッズのアルト・サックスの音色が印象的だ。どこで吹いてもしっかりと爽やかに目立っている。思わず、ビリー・ジョエルの「素顔のままで(Just the Way You Are)」での、あの伝説のソロ・パフォーマンスを想起する、ウッズ独特の唄うが如く伸びやかな、切れ味の良い、ストレートな吹きっぷり。聴き応え十分である。
 
ウッズのアルト・サックスをとことん愛でることが出来る、加えて、ウッズのアレンジの才を確認出来る好盤です。盤全体の雰囲気は、アコースティックがメインの演奏ではあるが、ソフト&メロウ、そしてソウルを追求したフュージョン・ジャズっぽい雰囲気が僕は大変気に入りました。早速、今月のヘビロテ盤の仲間入りをしています。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月17日 (水曜日)

ルーさん・ウィズ・ストリングス

このジャケットも「もはやジャズでは無い」感じがして、初めて見た時は正直「ひいた」。ジャケットを見た時点では、この盤、初めて見た時点では、ブルーノート・レーベルからのリリースとは思わないだろう。しかも、ブルーノート・レーベル専属のベテランが吹いているのだから、2度ビックリ。
 
Lou Donaldson『Sophisticated Lou』(写真左)。1972年12月の録音。BN-LA024-F。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Eugene Bianco (harp), Joe Venuto (vib), Derek Smith (p,el-p), Jay Berliner (g, 12-string g), Richard Davis (b), Grady Tate (ds), Omar Clay (perc) をメインに、ストリングスがオーバーダビングされている。
 
ルー・ドナルドソン(以降、ルーさんと呼ぶ)は、1926年生まれ。この盤を録音した時点で46歳。既にベテランである。ビ・バップ時代から活躍しており、基本的にブルーノート・レーベルからのリーダー作が多い。ブルーノート・レーベルのお抱えアルト・サックス奏者と言っても良いだろう。そんなルーさんのリーダー作である『Sophisticated Lou』。
 
 
Sophisticated-lou-donaldson_5
 
 
ストリングスをオーバーダビングしているところから、音の雰囲気は「ルー・ドナルドソン・ウィズ・ストリングス」という趣き。ブルーノート・レーベルの製作盤なので、音の作りはしっかりしている。よって、ストリングスの甘きに流された凡盤にはなっていないところが流石である。イージーリスニング・ジャズとして踏みとどまっている。
 
ストリングスのアレンジは1970年代前半の古いイメージのものなので、ストリングスだけ聴くと「ああ、これはイージーリスニング・ミュージックになってしまっているかなあ」と不安になるのだが、ルーさんのアルト・サックスが出てくると、そんな不安は一掃される。ストリングスの存在など全く感じさせず、ルーさんはいつもの「バップなアルト」を吹き上げていく。
 
このルーさんの潔い「バップなアルト」が、この盤をイージーリスニング・ジャズとして踏みとどまらせているのだ。硬派な純ジャズでは無いので、ベテラン・ジャズ者の方々からは眉をひそめられそうな内容ではあるが、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズの先駆けとして聴けば、あまり違和感は無い。BN-LA シリーズの盤らしい内容である。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月16日 (火曜日)

エルヴィンの理想の純ジャズ

このジャケットには参った。こういう変態ジャケットがところどころ存在するところも、BN-LAシリーズがイマイチ信頼されない所以なんだろう。ただでさえ、BN-LAシリーズはブルーノート・レーベルを電化〜フュージョン化して、純ジャズの世界をポップスに身売りしたと軽視されがちなシリーズなのに、だ。しかし、この首無しイラストに何か意味があったのかなあ(笑)。
 
Elvin Jones『Mr. Jones』(写真左)。BN-LA110-F。1972年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Dave Liebman (ts, ss, fl), Steve Grossman (ts, ss), Jan Hammer (p), Gene Perla (b), Carlos "Patato" Valdes (congas), Frank Ippolito (perc), Pepper Adams (bs), Thad Jones (flh), Albert Duffy (timpani)。当時、ポスト・コルトレーンと目された、リーブマンとグロスマンがサックスを担当している。
 
パーソネルを見渡すと、リーブマンとグロスマンというポスト・コルトレーンのサックス新鋭二人とベテラン・バリサクのペッパー・アダムス、そして、サド・ジョーンズのフリューゲルホーンの4管フロントが超弩級の布陣である。ピアノは後の「捻れシンセの使い手」ヤン・ハマーで、テクニカルでモーダルな演奏が意外と目立つ。ドラムは当然、エルヴィン・ジョーンズ。その脇をコンガ、パーカッション、ティンパニが固める。
 
 
Mr-jones
 
 
この「首無しジャケット」で強い印象を与えてくれる盤だが、これ、ポリリズムの達人ドラマー、エルヴィン・ジョーンズのリーダー作である。中の演奏は徹頭徹尾、モーダルなジャズ。リーブマンとグロスマンがコルトレーン・ライクなテナーを聴かせるが、コルトレーンよりもスッキリ&ライトである。このテナー2管にアダムスのバリサクが絡んで「重厚感抜群」。コルトレーン・ライクであるが決して、アブストラクトに、フリーにならない。
 
この盤の演奏を聴いていると、エルヴィン・ジョーンズが気合い十分ながら、実に気分良く叩いている様に聴こえる。この盤に詰まっているモーダルなジャズは、コルトレーンがフリーに走る直前の、限りなく自由ではあるが統制の取れたモード・ジャズを彷彿とさせる。エルヴィンはあの頃のモード・ジャズが理想のジャズだったのかもしれないなあ、とこの盤を聴く度に思うのだ。
 
1972年と言えば、クロスオーバー・ジャズやジャズ・ロックが流行っていた頃。そんな時期に、こんなに硬派で素敵なモード・ジャズを録音していたなんて、意外とBN-LAシリーズは隅に置けない。録音も良く、モード・ジャズとして一流の内容。確実に斜陽の時代だったが、さすがはブルーノート・レーベルである。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月15日 (月曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・68

ハードバップ時代の終わり、成熟したハードバップという演奏フォーマットで、かなり渋い内容の演奏が埋もれている。特に、中堅どころの職人的ジャズマンのリーダー作に、渋い内容の成熟したハードバップ演奏が詰まっていたりする。そんなリーダー作を探し、ピックアップし、ジャズ喫茶でかける。ジャズを聴いていて良かった、と思う瞬間である。
 
Gigi Gryce『The Rat Race Blues』(写真左)。1960年6月7日の録音。Prestige RecordsのNew Jazz Label からのリリース。ちなみにパーソネルは、Gigi Gryce (as), Richard Williams (tp), Richard Wyands (p), Julian Euell (b), Mickey Roker (ds)。1960年という録音年から、次のハードバップ時代を担うだろうメンバーが集結している。
 
渋い内容の成熟したハードバップ演奏が詰まっている盤が結構転がっているレーベルが「Prestige RecordsのNew Jazz Label」。このジジ・グライスのリーダー作もそのレーベルからのリリース。いやはや、渋い渋い内容のジャズ演奏がズラリ。決して派手派手しくないし、テクニック的にも中庸を行くもの。しかし、出てくるインプロビゼーションは粋で渋い。ジャジーで味わい深いハードバップ。
 
 
Rat-race-blues-gigi-gryce  
 
 
もともとジジ・グライスのアルト・サックスは渋い。決して大向こうを張るものでは無いし、ハッとするハイ・テクニックで驚かせるものでも無い。どちらかと言えば、リラックスした飄々としたライトなフレーズを吹きながら、ジャジーでファンキーなフレーズを織り込んでいく様な、聴けば聴くほどに味が出てくるような、スルメの様なアルト・サックス。
 
もう一人のフロント楽器、トランペットのリチャード・ウィリアムスが元気溌剌。ハイ・テクニックで歌心を込めつつ、トランペットの真鍮を輝くが如く震わせながら、ブリリアントに吹き上げる。グライスのアルトとは正反対の雰囲気の躍動感溢れる、圧倒的にポジティブなトランペット。グライスとウィリアムス、味わい深いフロント2管である。
 
それまでのハードバップの演奏の成果を踏まえた、味わい深い、小粋な展開に思わずニンマリする。成熟したハードバップだからこそ出来る、ジャズ職人達の素晴らしき「職人芸」。ジャズ喫茶の昼下がり、ノンビリした時間が流れる中、こういう盤の演奏が流れると、その小粋な演奏を、小粋な技を愛でるだけで、「至福の時」が味わえる。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月14日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・145

自分の主な趣味として、音楽全般、アルバム蒐集〜鑑賞などは高校時代からなので、約45年のキャリアであるが、もう一つ、長年細々と続けている趣味として「天文」がある。私設天文台を構えて、天体写真などをバリバリ撮りまくるなどという、ヘビーな天文ファンでは無いが、主な天文現象は押さえつつ、四季折々、機会を得ては星を眺めてきた。約50年のキャリアになる。
 
このグループの名前が気になって聴いたら、これがなかなか素晴らしい内容でビックリした。そのグループ名とは「The Comet Is Coming」。和訳すると「彗星がやって来た」。天文が趣味の僕としては「これは何や」、ということで思わず入手したって感じです(笑)。しかし、ジャズの世界らしからぬグループ名ですね。
 
改めて、アルバムの紹介を。The Comet Is Coming『Trust In The Lifeforce Of The Deep Mystery』(写真左)。今年3月のリリース。米国インパルスからメジャー・デビュー盤。現行UKジャズ・シーンの中心人物、サックス奏者シャバカ・ハッチングスの大本命ユニットがこの「The Comet Is Coming」。
 
 
Trust-in-the-lifeforce-of-the-deep-myste  
 
 
メンバーは、King Shabaka (ts,bcl), Danalogue (key,synth), Betamax (ds,perc,programming)。サックス+キーボード+ドラムの変則トリオ・ユニットである。英国は不思議な国で、1970年代からジャズとロックの境界線が曖昧。このThe Comet Is Comingの音も現代の最先端のクロスオーバー・ミュージックという面持ち。
 
サイケデリックでスペーシーでプログレッシブな音。リズム&ビートは明らかにジャジーでダンサフル。キーボードはシンセがメインで、エレクトロニカの要素が強く出ている。新しいスピリチュアルなプログレッシブ・ジャズという雰囲気。僕達、1970年代の「プログレ小僧」からすると、懐かしさすら感じる、耳慣れた音世界。
 
ハッチングスのバスクラが効果的。このエレクトリックなクロスオーバーな伴奏の中で、怪しげに鳴り響くバスクラは、マイルスの「ビッチェズ・ブリュー」を彷彿とさせる。エレ・ジャズの伝統をも踏まえた、素晴らしいクロスオーバー・ミュージック。マイルスのエレ・ジャズから着々と進化した、現代の最先端のエレ・ジャズの1つがこの盤に凝縮されている。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月13日 (土曜日)

フランス・ジャズの魅力的トリオ

フランスという国も昔からジャズが盛んである。古くはサックスの「バルネ・ウィラン」、1980年代から90年代にかけてはピアノの「ミシェル・ペトルチアーニ」とパッと浮かぶ人気ジャズ奏者がいつの時代にもいる。フランスはもともと芸術を尊ぶ国。米国で生まれたジャズについても「即興の芸術」として長く扱われている。
 
EYM Trio『Genesi』(写真左)。2013年のリリース。ちなみにパーソネルは、Elie Dufour (p), Yann Phayphet (b), Marc Michel (ds)。ブルガリア人の血を引くピアニストのエリー・デュフールを中心に、ベーシストのヤン・ファイフェット、ドラマーのマーク・ミシェルという3人がリヨンの音楽院で出会い、結成したピアノ・トリオが「EYM Trio」。そのデビューは2011年。タイトルの「Genesi」はイタリア語で「創世記」の意。彼らの記念すべきデビュー盤である。
 
演奏の音を聴けば、明らかに米国ジャズにおけるピアノ・トリオとは全く異なった雰囲気であることが良く判る。まず、リズム&ビートにファンクネスが希薄。陰影のある奥深い響きのオフビートがユニーク。演奏の根幹に「ブルージー」な響きがほとんど感じられない。欧州ジャズはクラシック音楽の響きをメインにしており、EYM Trioも例外では無い。
 
 
Genesi-eym-trio  
 
 
テクニックは高いレベル。演奏に破綻は全く無く、走りすぎたり遅速に陥ることも無い。テクニックの高いレベルでのインタープレイはスリリング。この「スリル」が適度なテンションを産んで、このトリオの音を詰め込まない、即興の「のり代」を残したアドリブ・フレーズは不思議な落ち着きを生み出す。アドリブ・フレーズから感じる「哀愁感」が独特。
 
東ヨーロッパには中東風ともヨーロッパ風ともいえない不思議なメロディーやリズムが存在するが、EYM Trioはその東ヨーロッパのメロディーやリズムに影響を受けた響きが存在するように感じる。アドリブ・フレーズから感じる、この「哀愁感」は恐らくは東ヨーロッパのメロディーやリズムからの影響と推察する。この他の欧州ジャズのピアノ・トリオとはちょっと違う「哀愁感」という響きの個性。填まると癖になる。この見え隠れする不思議なメロディーとリズムが聴いていて心地良い。
 
アルバムのジャケットのデザインもユニークでアーティスティック。哀愁とスリルに満ちた楽曲がてんこ盛り。耽美的でアーシーで堅実な現代のピアノ・トリオ。こういうピアノ・トリオを生み出すフランス・ジャズ。現代のジャズ・シーンの中でも隅に置けない存在、隅に置けない国あることは間違い無い。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月12日 (金曜日)

ロシア出身のジャズ・ピアニスト

欧州ジャズのことを熟々と考えていて、第一にイタリア、そして英国、ドイツのジャズ、最近ではイスラエル、そしてポーランドのジャズが流行になってきている、と書いたが、そうそうロシアを忘れていた、と思った。ロシア出身のジャズメンも実は沢山いるんですね。忘れてました。そうそう、ロシアって、欧州で元々ジャズが盛んな国のひとつでした。
 
Eugene Maslov『When I Need to Smile』(写真左)。 1999年のリリース。ちなみにパーソネルは、Eugene Maslov (p), Eddie Gomez (b), Omar Hakim (ds)。ユージン・マスロフ(Eugene Maslov)。ロシアのサンクトペテルブルク出身のジャズ・ピアニストである。バックにジャズ・ベーシストのレジェンド、エディ・ゴメスとポリリズミックなドラマー、オマー・ハキムが控えています。
 
ユージン・マスロフは1959年生まれ。今年で満60歳、還暦になるベテラン・ピアニスト。「ムソルグスキー音楽カレッジ」でクラシック・ピアノを学んでいる。が、後にジャズ・ピアノに転身。1989年には米国に移住。現在ではマサチューセッツ州ボストンを拠点に活動している、ということである。ロシア出身の米国在住のジャズ・ピアニストである。
 
 
When-i-need-to-smile-eugene  
 
 
出てくる音は明確に欧州ジャズの音。バックにゴメス、ハキムという米国ジャズのベテラン・ジャズメンを起用しているにも拘わらず、出てくることは「欧州ジャズ」。つまり、マスロフのピアノが明らかに欧州ジャズの特質を多く保有しており、バックの米国ジャズの二人は、二人の持つ高テクニックを駆使して、欧州ジャズの雰囲気に忠実に追従しているからだ、と認識している。
 
耽美的で「クールな熱さ」が第一の個性。透明感とダイナミズムに溢れ、幽玄な音の広がりとクラシック仕込みの明確で硬質なタッチが「欧州ジャズ」の雰囲気を増幅する。紡ぎ出されるフレーズは流麗。演奏全体の雰囲気は「ネオ・ハードバップ」。クールな熱気溢れるジャズ・ピアノがバップ風に飛翔し、バップ調のアドリブ・フレーズを繰り出している。
 
マスロフのオリジナル曲はポジティブなバップ調で、聴いていて思わず活き活きとしてくる。スタンダード曲はそれぞれ、実にユニークなアレンジが施されており、ネオ・ハードバップのお手本の様な音世界が展開されている。「The Man I Love」から「Dindi」〜「Milestones」の流れには惚れ惚れします。好盤です。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月11日 (木曜日)

クロスオーバー・ジャズの名演

クロスオーバー・ジャズが面白くて、昔からよく聴く。クロスオーバー・ジャズは1960年代の終わりから1970年代前半に流行ったジャズの演奏スタイルで、特に1970年代前半に優れたアルバムが集中している。基本はジャズとロックの融合。ロックから8ビートと電気楽器を拝借して、それまでの純ジャズに応用したスタイル。
 
8ビートは今の耳で聴くと単純な均一ビートがメインなので、ちょっと古さを感じるが、それでも、それまで4ビートがメインだったモダン・ジャズが8ビートに乗せると、新しい響きのジャズが聴こえてくる。ビートが細かい分、4ビートに比べて「おかず」が入れ難い。しかし、均一ビートで攻めてくるので、ダンサフルな印象が強くなって、実にノリの良い演奏に仕上がる。
 
電気楽器はエレギとエレピがメイン。エレギはワウワウやファズなど、今から思うと実に単純なエフェクトをかけただけだが、これはこれでユニーク。エレピは従来のハモンド・オルガンと新しく出てきたフェンダー・ローズが代表的楽器。ピアノに無い響きとエレピならではのエフェクトが個性。ついでにベースもエレベがメイン。重低音感が増幅されて、演奏の重心が更に低くなる。
 
 
Leaving-this-planet-earland  
 
 
Charles Earland『Leaving This Planet』(写真左)。1973年12月の録音。タイトルを和訳すると「この惑星よ、さらば」となる。ジャズの世界で「惑星」が出てくるとはユニーク。アーランドの宇宙指向が爆発したジャズ・ファンク盤である。疾走感と飛翔感、そしてコズミックな浮遊感。クールでアーバンなグルーヴで始まり、徐々に熱くダイナミックになっていくアーランドのキーボードが素敵。
 
切れ味鋭くハイテクニックなフレディ・ハバードのトランペットとウネウネと幽玄でモーダルで自由度の高いジョー・ヘンダーソンのテナーが効果的。演奏全体にコズミックな雰囲気を増幅させている。そして、この盤の演奏の肝は、ハーヴィー・メイソンのドラム。細分化されたビートとちょっとラフなドラミングが意外とファンキーで、当時として斬新な響きを感じさせてくれる。ベースだけが、しょぼいオルガン・ベースで代用しているところが玉に瑕。
 
CTIでのヒット曲、ハバード作の『Red Clay』が明らかにクロスオーバー・ジャズっぽい。キャッチャーな旋律と疾走感溢れるファンクネスが心地良い。チック・コリアほど尖った切れ味の良さは無く、ハービー・ハンコックほど洗練されたファンクネスでは無く、ちょっと垢抜けない俗っぽさが漂うが、意外とそういう中途半端さがこのアルバムの良さ。音的にはクロスオーバー・ジャズのサンプルの様な音で、8ビートと電気楽器が大活躍のジャズ。良い雰囲気です。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

2019年4月10日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・144

欧州ジャズは、ECM、Steeplechase、Enjaの三大レーベルがメインで発展した来た様に思う。他の欧州のマイナー・レーベルの貢献もあろうかと思うが、米国、そして日本という欧州以外のリージョンについては、やはりこの三大レーベルを介して、欧州ジャズを体験していった様に思う。

地域的にはコペンハーゲンを中心とする北欧ジャズと欧州に移り住んだ米国ジャズメン達のジャズが大半だったという思い出が強い。しかし、この10年間のうちに欧州ジャズの出身地が急速に拡がってきている。第一にイタリア、そして英国、ドイツのジャズが我が国にもやってきて、最近ではイスラエル、そしてポーランドのジャズが流行になってきている。

Simple Acoustic Trio『Habanera』(写真左)。2000年のリリース。ちなみにパーソネルは、Marcin Wasilewski (p), Sławomir Kurkiewicz (b), Michał Miśkiewicz (ds)。Simple Acoustic Trioとは、ポーランド・ジャズ界を代表するピアニスト、マルチン・ボシレフスキを中心とする、純ポーランドなピアノ・トリオである。
 
 
Habanera-simple-acoustic-trio  
 
 
ベタなトリオ名からして、大スタンダード曲中心のカクテル・ピアノっぽいトリオ演奏かしら、と訝しく思いながら、聴き始めると「あらビックリ」。俗っぽさなど微塵も無い。欧州ジャズらしい流麗なメロディ、透明感溢れるサウンド。北欧ジャズとの違いは哀愁感溢れるマイナーでエコーたっぷりな響きが希薄なところ。意外と質実剛健なところが見え隠れする、ロマンチックなピアノ・トリオ演奏。
 
欧州ジャズの共通項としてロマンティックではある。が、意外と硬派で質実剛健なところを加味した音が、ポーランド・ジャズの個性だろうと感じている。最初はロマンに流されるか、と心配になるが、そこにコーンとドラムが入り、ブンブンとベースが引き締めれば、グッと硬派なエッジの立った、上質で流麗な、明確で一本筋の通ったタッチが清々しいピアノの響きが現れる。
 
静的なフレーズが全体を覆うのだが、適度なテンションを保ったインタープレイとニュー・ジャズ特有のファンクネス希薄で自由度の高いビートが意外とホットで、飽きるどころか、聴けば聴くほどに奥の深い演奏に思わず聴き入ってしまう。ジャケットも思いっきり欧州ジャズ風で趣味の良いもの。これは絶対にジャズ喫茶でかけたい盤である。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月 9日 (火曜日)

ジョシュアの個性を理解する

現代のジャズ。歴代のサックス奏者が長年受け継いできた系譜をしっかりと継ぐ者が何人かいる。その一人に「ジョシュア・レッドマン」がいる。1969年2月、米国はカリフォルニア州バークレー生まれ。スピリチュアル・ジャズを代表するサックス奏者、デューイ・レッドマンを父に持つ。
 
1991年にハーヴァード大学を卒業後、出場したセロニアス・モンク・コンペティションで優勝、ジャズ・シーンに身を投じることになる。以来、およそ四半世紀にわたってジャズ・シーンを牽引している。そんなジョシュア・レッドマンの初リーダー作、いわゆるデビュー盤を改めて聴いてみる。
 
『Joshua Redman』(写真左)。1992年の録音。ジョシュア・レッドマンの初リーダー作。ちなみにパーソネルは、Joshua Redman (ts), Kevin Hays (p), Christian McBride (b), Gregory Hutchinson (ds) がメイン。あと幾人かのゲスト・ミュージシャンが参加している。ベースのクリスチャン・マクブライドの参加がポイント。音全体の纏まりに大きく貢献している。
 
 
Joshua-redman-album  
 
 
当時 「テナー界に驚異の新人現る」 とされた一枚。収録曲を見渡すと、オリジナル曲はあるにはあるが、その他を聴けば、ブルース曲、モンク曲、モーダル曲、スタンダード曲等々、スローバラードあり、ファンクあり、バップあり、とごった煮の内容。なんでもござれの内容だが、どの演奏もクオリティ高く、新人のレベルとしては抜きんでている。ごった煮ではあるが、ジョシュアの優れたテクニックが故に、アルバム全体のトーンはブレることは無い。
 
ジョシュアのテナーのテクニックは素晴らしく、その高テクニックで演奏される楽曲のレベルは高く、ほぼ完璧な内容。これが新人のデビュー盤か、これが新人のテナーなのか、と思わずビックリしたことを覚えている。マクブライドのベースを牽引役にしたリズム・セクションの存在と演奏それぞれのアレンジとが、傍らでアルバムの統一感をしっかりと支えている。
 
ジョシュアのテナーの特徴は「キメのフレーズ」の格好良さ。アドリブ・フレーズが実に格好良く展開し、実に格好良く集結する。これって才能なんだ、と思う。ジョシュアのこのデビュー盤で、既にジョシュアのテナーの個性の全てを表現して、聴き手に聴かせた。これだけ全てをさらけ出して、次はどうするのかという不安すら覚えたデビュー盤。ジョシュアの個性を理解するにはまずこの盤を聴くこと。必須です。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月 8日 (月曜日)

幾つかの頂点の1つを捉えた好盤

1983年リリースの『Jive Jive』から、米国マーケット狙いに舵を切ったカシオペア。「日本人の、日本人による、日本人の為の」フュージョン・バンドだったカシオペアである。その音の傾向の変化に少し戸惑いながらも、何とか付いていっていた。個人的には、社会人になって、LPを買う資金はあって、LPは買うのだが、中々聴く時間がとれなくて、イライラしていた時期である。
 
Casiopea『HALLE』(写真左)。1985年9月のリリース。「HALLE」とは、当時話題となったハレー彗星に因んだタイトルだそうだ。といって、なにかハレー彗星に因んだ曲が散りばめられているのか、と言えば、そうじゃないので、今となっては良く判らないタイトルである。
 
2作ほど前から、米国マーケット狙いに音の路線を定めたカシオペアであるが、この『HALLE』でほぼその路線について成熟した感がある。ファンキー・ビートをメインとして、秀逸なテクニック最優先の演奏。凄まじい緊張感の中でのバカテクを前面の押しだした、超絶技巧なアドリブ・パフォーマンス。これがカシオペアの音だ、と信じている「カシオペア者」には圧倒的に受ける音世界である。
 
 
Halle-casiopea
 
  
確かに、テクニックをメインに聴くならば、これほどまでにバカテクのフュージョン・バンドは世界にそうそう無い。エレギもアタッチメントなどを含めて最新鋭のものだし、キーボードも特にシンセについては、当時の最先端の機材を駆使している。テクニック命のフュージョン小僧からすると、この胸の空くようなバカテク・バンドの音は憧れの的だっただろう。
 
ただ、1983年リリースの『Jive Jive』から数えて3作目の「米国マーケット狙い」路線の音世界については、ちょっと手練感が漂いだしたのも事実。この時点で米国マーケットへは切り込むことは出来ていなかった。しかし、カシオペアの演奏力という面から聴くと、この『HALLE』については、ほぼ頂点に達したように感じた。今もその感覚は変わらない。
 

 
この『HALLE』だけ「米国マーケット狙い」路線のアルバムの中で、ジャケット・デザインがふるっている。このジャケットは、白い大きな布が爽やかな風に乗って、心地良くたなびいているイメージ。そんなイメージが、このアルバムの中のカシオペアの音に重なる。バカテクだけど爽やかで明るい切れ味の良いフュージョン・ジャズ。カシオペアの幾つかの頂点の1つを捉えた好盤だと思う。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

 

2019年4月 7日 (日曜日)

カシオペアの米国マーケット狙い

カシオペアは日本発のフュージョン・バンドとして、1970年代後半にデビューし、主に日本でブレイクした。1980年に入った頃が最初の人気のピークで、その人気は凄まじいものだった。フュージョン・ジャズのバンドが、こんなにも日本の中で人気を獲得するとは夢にも思わなかった。
 
今から思えば、日本人の、日本人による、日本人の為のフュージョン・バンドだった訳で、我が国の中で人気を獲得するのは、基本的には当たり前のことであった。が、である。1980年代に入って、国内での人気絶頂の頃に、カシオペアは米国マーケットへの参入を目指すようになる。いわゆる「日本人ならでは」のフュージョン・バンドが米国マーケットへ切り込むのである。
 
当然、当時のバンドの音楽性を変化せざるを得なくなる。当時の米国はフュージョン・ブーム末期。今から思えば、その参入のタイミングは遅かったのではなかったか。R&Bの要素をふんだんに取り入れた、ボーカル入りのフュージョンが横行し、ファンクネスを司るビートは「録音におけるデジタル化」により、ペラペラになっていた。
 
 
Down-upbeat  
 
 
Casiopea『Down Upbeat』(写真左)。1984年10月のリリース。カシオペアの12枚目のアルバム。ニューヨークのシークレットサウンドスタジオにおいて、わずか10日間のうちに録られたもので、この作品は「一発録り」で当時話題になった。飛び出してくるのはなんだか日本人離れしたファンキー・ビート。良くも悪くも米国マーケット狙いの音作りになっていた。
 
ファンキー・ビートをメインとして、秀逸なテクニック最優先の演奏。神業的でアクロバティックな演奏がてんこ盛りで、アルバム全てを聴き通した後はちょっと疲れる。この米国マーケット狙いの音世界は、当時のカシオペア人気の後押しの中で基本的に支持された。しかし、当時、僕としては、この路線はちょっと時機を逸しているのでは、という思いが強かったことを今でも覚えている。
 
米国マーケットのトレンドである、適度なファンクネスを包まれた、ソフト&メロウなフュージョン・ミュージックに対して、凄まじい緊張感の中でのバカテクを前面の押しだした、超絶技巧なアドリブ・パフォーマンス。マニアの方々には受けるんだが、一般人に対してはどうなんだろう。この後、このカシオペアの「米国マーケット狙い路線」については、バンドに対して様々な波紋を投げかけることになる。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

2019年4月 6日 (土曜日)

今の時代にジャストに響く音

今も昔も、ブルーノート・レーベルの先取性は変わらない。1950年代は、後にジャズ界の中心人物となるジャズマンの若い頃、その才能にいち早く着目して、リーダー作を吹き込ませていた。今から遡るこの10年の間は、コンテンポラリーな純ジャズや他のジャンルとクロスオーバーした現代のフュージョン・ミュージックなど、旧来のジャンルに囚われない、新しい響きのアルバムを多くリリースしている。
 
このアルバムもそんな先取性溢れるアルバムである。Trombone Shorty『Parking Lot Symphony』(写真左)。2017年4月のリリース。ニューオーリンズ出身のトロンボーン奏者&シンガー・ソングライターである「トロンボーン・ショーティ」のブルーノート・レーベル移籍第1弾アルバムである。トロンボーン奏者と一言でいうが、クラプトンなど、ロック界の大御所達のアルバムやツアーに参加するなど、異種格闘技的な活動が目を惹く若手有望株である。
 
この最新作もその内容は只者では無い。ブルーノート・レーベルからのリリースだからといって、純ジャズが展開される訳では無い。様々なジャンルの音楽的要素がごった煮の様に散りばめられているが、洗練されたアレンジによって効果的に融合され、新しい響きのフュージョン・ミュージックに仕上がっていることに驚く。特にブラス・セクションの音の重ね方に個性があって、洗練されたファンクネスの響きが芳しい仕上がりになっている。
 
 
Parking-lot-symphony-trombone-shorty  
 
 
ボーカルものを聴くとR&Bからブラコンな音かとも思うが、そのファンクネスが洗練されシンプルに表現されている分、ライトでお洒落な印象にアレンジされて、耳にスッと入ってくる。ショーティのトロボーンが鳴り響き、アドリブ展開するところなどは、現代の先端のコンテンポラリーな純ジャズな雰囲気が蔓延して心地良い。効果的に電気楽器を使用するところはフュージョン・ジャズの深化形の雰囲気が芳しく、楽器の分厚いユニゾン&ハーモニーはドラマチックで、どこかプログレッシブ・ロックな雰囲気を醸し出す。
 
この盤のどこがジャズなのか、と言われることが多いが、確かにこの盤の音世界はジャズという単独ジャンルに留まっているものでは無い。ジャズを基本にしてはいるが、そこに様々な音楽要素を融合して、今までに無い、新しい響きの音世界を獲得している。個々のどこがどう、という類の盤では無く、演奏全体として、トータルな融合音楽として、この盤に蔓延している旧来のジャンルに囚われない新しい響きについて、十分に評価に値するアルバムであると僕は思う。
 
ファンキーでありソウルフルであるが、決して、旧来のファンキー・ジャズでも無ければ、旧来のソウル・ジャズでも無い。「今」のフュージョン・ミュージックがこの盤に詰まっている。ジャズか否か、という議論はこの盤の前では不毛な議論だろう。僕はこの盤は「良い音楽」だと認識している。さすがブルーノート・レーベルで、ジャケットも素敵。意外とヘビロテになってます。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月 5日 (金曜日)

ボボ・ステンソンの新トリオ盤

ECMレーベルには、素敵な内容のピアノ・トリオ盤が多く存在する。恐らく、ECMレーベルの、西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置き、電化サウンドを排除し、アコースティックな表現を基本とし、限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音がジャズ・ピアノにフィットするんだろう。特に、ファンクネス希薄な欧州のニュー・ジャズ系のピアノがとりわけフィットする。
 
ECMレーベルの「お抱えピアニスト」の一人に、Bobo Stenson(ボボ・ステンソン)がいる。ステンソンは、1944年、スウェーデン出身。10 代の時から演奏活動を始め、ソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツ、ドン・チェリーなどとセッションを重ねていたそう。1970年代には盟友ヤン・ガルバレクと共に活動を開始し、ECMレーベル中心に好盤をリリース。現在では、ベースのアンデルス・ヨルミンとドラムのヨン・フェルトとトリオで活動を続けている。
 
そんなステンソンの最近の好盤の一枚がこれ。Bobo Stenson Trio『Contra la Indecisión』(写真左)。2017年5月の録音。ちなみにパーソネルは、 Bobo Stenson (p), Anders Jormin (b), Jon Fält (ds)。現在、好調に好盤をリリースしているトリオでの新盤である。選曲がふるっている。バルトーク、サティが採用され、キューバのシルヴィオ・ロドリゲスの哀愁溢れるアフロ・キューバンな佳曲が彩りを添えている。
 
 
Contra-la-indecision-bobo  
 
 
ボボ・ステンソンのピアノがとても美しい。キースのピアノから尖ったところ、アブストラクトなところをそぎ落として、しっかりした明確なタッチでの、硬派で耽美的なフレーズが特徴。ピアノの音のエッジが適度に丸く、耳に優しく馴染む。流麗で耽美的なフレーズを駆使する曲では、限りなく美しく、暖かくてクールなピアノが響き渡る。ヨルミンのベースは唄うが如く、ベースラインを抑え、フェルトのドラムは自由自在にリズム&ビートを紡ぎ出す。
 
フリーな演奏では切れ味の良い、煌めきの様なフレーズが続くが、どこか優しく丸い。それはピアノだけでは無い。ヨルミンのベースも自由度高く、弾ける様なうねるようなフレーズを連発するが、どこか優しくしなやか。フェルトのドラムはポリリズミックで閃き抜群。様々な表情のフレーズを繰り出し、素晴らしく高度なテクニックで最上の表現力を発揮する。意外とこのフリーな演奏の部分が聴きものだったりする。
 
このトリオの演奏には北欧の自然をイメージする、クリアでクールでアーシーな音がぎっしりと詰まっている。紡ぎ出すフレーズも現代音楽っぽい幾何学的で耽美的で印象的なフレーズがてんこ盛り。北欧では、キース・ジャレットと双璧をなすジャズ・ピアノのレジェンドとして評価されているそうだが、それも納得できるこの新盤の内容。ECM好きには堪らない好盤である。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

2019年4月 4日 (木曜日)

現代の「ECMの考えるジャズ」

欧州の正統派ジャズ、ニュー・ジャズの老舗レーベルである「ECM」。コンスタントに新盤をリリースし続けている。出てくる音は、あくまで「ECMの音」。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考えるジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。この「ECMの音」については、今も昔も変わらない。
 
ECMレーベルは北欧ジャズが得意ジャンル。もともとECMレーベルのメイン・スタジオがノルウェーのオスロにある「レインボー・スタジオ」なんで、やはり北欧ジャズには造詣が深い。ECMレーベルの専属ジャズメンを眺めてみても、北欧出身のジャズメンが多く名を連ねている。北欧ジャズがECMレーベルの音の個性にフィットするんだろう。
 
Tord Gustavsen Trio『The Other Side』(写真左)。2018年1月、オスロのレインボー・スタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、Tord Gustavsen (p, electronics), Sigurd Hole (b), Jarle Vespestad (ds)。 リーダーのトルド・グスタフセン、ドラマーのジャール・ヴェスペスタッド、ベーシストのスィッガード・ホール、いずれも皆がノルウェー出身。「Norwegian Trio」と名付けても良い位だ。
 
 
The-other-side-ecm  
 
 
グスタフセンのピアノは耽美的で硬質で暖かい。ミッドテンポの柔らかいタッチで印象的なフレーズを紡いでいく。北欧ジャズ独特の哀愁感も深く濃く漂っている。ヴェスペスタッドのベースがソリッドで重心が低い。中高音のソロ・フレーズが明らかに耽美的で、グスタフセンのピアノを有効にサポートする。ホールのドラムは柔軟でバリエーション豊か。緩急自在なポリリズムがグスタフセンのピアノに有効に絡んでいる。
 
柔らかく暖かくクリアなキース・ジャレット的な趣きなんだが、キースよりもシンプルで判り易い。ECM録音の特徴である、豊かなエコーが乗ったスピリチュアルなフレーズがグスタフセンの個性だろう。途中、突然、初期のキースみたいな、ゴスペルっぽいアーシーなフレーズが出てくるんだが、これにはビックリする。そういう意味では、グスタフセンはキースのフォロワーと面が強いのかもしれない。
 
最近、我が国ではECMレーベルの人気は以前に比べて下火に感じるが、どうして、本家本元の「ECMレーベル」は今でもコンスタントに「ECMの考えるジャズ」をリリースし続けている。今回のグスタフセンの新盤もそんな一枚。ジャケットも明らかに「ECMレーベル」していて、ECM者の我々からすると、もうワクワクドキドキである。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月 3日 (水曜日)

スピリチュアルなオルガン・ジャズ

オルガン・ジャズが好きである。もともと子供の頃から、オルガンの音、いわゆる「ハモンド・オルガン」の切れ味良く、ちょっとノイジーでくぐもった様な音が好きで、そんなハモンド・オルガンの音さえ聴こえていたら、それだけで心地良い。オルガン・ジャズの場合、そんなハモンド・オルガンの音が、基本4ビートに乗って、アドリブ・フレーズを展開するのだ。これは僕にとっては堪らない。
 
今年の新盤を眺めていたら、Joey Defrancesco(ジョーイ・デフランチェスコ)の新盤が目についた。ジョーイは1971年生まれなので、今年で48歳。ジャズ界でいけば、まだまだ若い。バリバリの中堅である。風貌から僕はとっくに50歳は過ぎていたと思っていたので、今回、ジョーイのバイオグラフィーを押さえていて、ちょっとビックリした。マイルス晩年のバンドにも一時期参加していたほどで、ジョーイのオルガン・プレイはアグレッシブでテクニック優秀。
 
Joey Defrancesco『In the Key of the Universe』(写真左)。今年3月のリリース。出来たてホヤホヤである。ちなみにパーソネルは、Joey Defrancesco (org,key,tp), Pharoah Sanders (ts,vo), Troy Roberts (sax,b), Billy Hart (ds), Sammy Figueoa (per)。オルガンはベースのラインを担当することが出来るので、この盤ではベースがいない。オルガン、ドラムにフロントがテナーという、オルガン・ジャズの基本的構成である。そうそう、この盤ではジョーイはマルチ奏者ぶりを発揮していて、オルガンの他にシンセ、トランペットも担当している。
 
 
In-the-key-of-universe
 
 
ジョーイのオルガンは相変わらず、アグレッシブでテクニック優秀。弾き過ぎず、テクニックに頼ること無く、余裕を持った大らかなオルガンをこの盤でも弾きまくっている。聴いていて「あ〜良い感じ。これって、ジョーイだよね」と思う。で、この盤ではリーダーのジョーイのオルガンよりも、テナーの音の方が目立っている。ぐいぐい主張する力感溢れるテナー。誰だ、と思ってパーソネルを見たら、なんと「ファラオ・サンダース」。
 
そう言えばこの盤、冒頭の「Inner Being」から、スピリチュアル・ジャズの雰囲気は色濃く漂っている。それも今、ジャズ界で流行っている「穏やかでメロディアスな耳当たりの良い」スピリチュアル・ジャズの印象である。ファラオのテナーは「元祖スピリチュアル・ジャズ」なテナー。この盤でもその存在は大きく、ファラオのテナーがこの盤のスピリチュアル・ジャズっぽさを決定付けている。新しい今様のジャズの響きが心地良い。
 
スピリチュアルなオルガン、テナーを支え、リズム&ビートをコントロールする、ビリー・ハートのドラムの存在も見逃すことは出来ない。趣味の良い、チェンジ・オブ・ペース的なドラミングは柔軟度抜群。演奏全体の音のフレームをグッと締めている。「ジャズの今」を感じる、コンテンポラリーな純ジャズ盤として、なかなかの内容だと思います。好盤です。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月 2日 (火曜日)

60年代末期ならではの純ジャズ

ニュー・ジャズを聴いていて、新しい響きのジャズを感じていると、その反動でジャズの本流、旧来の典型的なジャズと言われる「ハードバップ」が聴きたくなる。といって、1950年代のハードバップ時代ど真ん中にドップリと浸かるにはちょっと反動が過ぎる。ということで、ニュー・ジャズの雰囲気を少しだけ宿した、1960年代後半から1970年代のハードバップが良い。
 
Dexter Gordon『A Day in Copenhagen』(写真左)。1969年3月10日、デンマークはコペンハーゲンの「Metronome スタジオ」での録音。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Slide Hampton (tb), Dizzy Reece (tp), Kenny Drew (p), Niels-Henning Orsted Pedersen (b), Art Taylor (ds)。米英+北欧の混成セクステット。
 
デックスは1960年初頭に、ハンプトンは1968年に、ドリューは1961年に、テイラーは1963年に渡欧している。いわゆる米国東海岸のハードバップ・ミュージシャンの渡欧組で、4人ともコペンハーゲンを活動の拠点の1つにしていた。リースはジャマイカ出身で、1960年代の大半は米国東海岸で活動したが結果が伴わず、以前の活動拠点のパリに戻ったはずなのだが、たまたまコペンハーゲンに来ていたのかなあ。ペデルセンはデンマーク出身でコペンハーゲンが活動拠点。
 
 
In-copenhagen  
 
 
ベースのペデルセン以外、他の5人は米国東海岸の本場「ハードバップ」を体験してきた強者ども。ジャズを芸術と理解して、しっかりと聴いて評価してくれる欧州の地で、バリバリ魅力的なハードバップな演奏を展開している。時代は1960年代の末期、当時の先端のジャズのトレンドを踏まえつつ、1950年代のハードバップとは一味違う、欧州仕様のモーダルなハードバップな演奏を繰り広げている。
 
主役のデックスのテナーは全く変わらない。朗々と大らかで悠然としたブロウは「我が道を往く」雰囲気である。テナー、トロンボーン、トランペットのフロント3管のうち、ハンプトンのトロンボーンが良い味を出している。フレーズと音色が先進的で、ハンプトンのモーダルなトロンボーンの存在がこの盤をユニークな存在にしている。そして、全く欧州風のペデルセンの骨太ソリッドなアコベが効いている。ペデルセンのベースが鳴ると、欧州ジャズの雰囲気が一気に濃厚になる。
 
ジャケットは何故かサイケデリック調で「あんまりやなあ」と思うのですが、この盤、由緒正しきレーベルからのリリース。ジャケットのマークを見たら「MPSレーベル」のアルバムなんですね。欧州ハードバップの専門レーベル「MPS」。なかなかにユニークなメンバー編成で、1960年代末期ならではの「モーダルな純ジャズ」を記録してくれていたとは、MPSレーベルもなかなかやるなあ。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2019年4月 1日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・111

1960年代以降、ジャズ・テナーの世界で「コルトレーン」は絶対的存在だった。とにかく、ジャズ界はサックスを持つ者、猫も杓子も「コルトレーン・スタイル」を追いかけた。す〜ッと伸びたストレートなブロウ、アドリブではコルトレーン・スタイルの代名詞「シーツ・オブ・サウンド」を駆使、嘶くようなフリーキーなブロウ。サックス奏者であれば、当時は皆がそうだった。
 
John Handy『New View!』(写真左)。1967年6月28日、NYのVillage Gateでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、John Handy (as), Bobby Hutcherson (vib), Pat Martino (g), Albert Stinson (b), Doug Sides (ds)。アルト・サックスがフロントのクインテットだが、ハッチャーソンのヴァイブ、マルティーノのギターが入っている。定番のピアノが入っていない。ちょっと「変則な」クインテットである。
 
リーダーのジョン・ハンディは1933年生まれ。今年で25歳の頃から、チャールス・ミンガスのグループで演奏。1959年に自己のグループを結成以来、1996年辺りまでリーダー作をコンスタントにリリース、ジャズ・アルトサックスの中堅として活躍してきた。しかし、我が国では全く以てメジャーな存在では無い。僕はこの『New View!』というリーダー作でしか、彼の名前を覚えていないくらいだ。逆にこの『New View!』というアルバムはとても良い内容のライブ盤なので、今でもたまに聴いている。
 
 
New-view  
 
 
ジョン・ハンディは1965年のモンタレー・ジャズ・フェスティバルで話題を一人占めした、とある。確かにこの人のアルト・サックスは音が良い。明らかにコルトレーンのフォロワーなんだが、コルトレーンよりも流麗でシュッと伸びた、濁りの無いブロウが個性。アルト・サックスならではの「音の明るさ」も良い方向に作用している。このライブ盤でも、このジョン・ハンディのアルト・サックスの個性的な音が満載で聴き応えがある。
 
「Naima」と「A Little Quiet」「Tears of Ole Miss」の3曲のみの収録曲だが、後者2曲が明らかに「コルトレーン・スタイル」のフォロワーな演奏なんだが、冒頭の「Naima」だけが静的で耽美的。ブロウもコルトレーンのフォローな雰囲気はあまり感じられず、このバラード演奏の吹きっぷりにこそ、ハンディならではの個性を強く感じるのは僕だけだろうか。ハッチャーソンの耽美的なヴァイブとフロントを分け合って、美しい響きのバラード演奏についつい惹き込まれる。
 
特に、LP時代のB面の全てを占める長編の「Tears of Ole Miss」は、コルトレーン派の面目躍如的なブロウで、ライブならではの白熱のプレイを聴くことが出来ます。ジャケ写真の穏やかに微笑むハンディもタイポグラフィーと相まって良好。ジョン・ハンディのこのライブ盤を聴き直して、ハンディの他のリーダー作も聴いてみたくなりました。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

« 2019年3月 | トップページ | 2019年5月 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、 ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で、不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 青春のかけら達(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでのジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で、不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。         
2019年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

カテゴリー