ジョー・ハイダーのピアノを知る
リーダーの出身国は「ドイツ」。しかも1936年生まれの今年83歳。大ベテランである。僕はつい最近まで全く知らなかった。そして、タイトルは「フランス語」。明らかにこの盤は欧州ジャズのアルバムだということが良く判る。こういうピアノ・トリオ盤に出会うと、ジャズって裾野の広い音楽ジャンルだな、って改めて思う。今になって出会えた幸運に感謝する。
Joe Haider Trio『Cafè des Pyrènnèes』(写真左)。1973年の作品。ちなみにパーソネルは、Joe Haider (p,elp), Isla Eckinger (b), Allen Blairman (ds)。Joe Haider=ジョー・ハイダーというピアニストの名前をこの盤で初めて知った。活動拠点は欧州、1960年代半ばにデビューして以来、メインストリーム・ジャズをメインに第一線で活躍してきた、とのこと。知らなんだ。ジャズの裾野は広い。辿り来て未だ山麓。
さて、このジョー・ハイダーのピアノが実に魅力的。知的で端正でクール。欧州ジャズのピアニストらしく、ファンクネスは皆無。それでいて明確なオフビート感が否が応にもジャジーな雰囲気を増幅させる。タッチはどこか「マッコイ・タイナー」を彷彿とさせる、鍵盤をガーンゴーンと叩く様なハンマー奏法だが、決して力ずくではなく、品格漂うハンマー奏法なところが好感度大。
冒頭の「Tante Nelly」が格好良い。アレン・ブレアマンのシンバルの高速リズムに乗って、イスラ・エッキンガーの重量級ベースがしなりを伴って絡む。そこに知的で端正でクールなジョー・ハイダーのピアノが入ってくる。弾き回すフレーズでファンクネスを醸し出しつつ、流麗なハンマー奏法で、明快で力感あふれるモーダルなアドリブ・フレーズが耳に飛び込んでくる。
2曲目の「Cafè des Pyrènnèes」のソロ・ピアノを聴けば、そんなハイダーのピアノの個性が良く判る。ハンマー奏法でありながら、印象的で耽美的なフレーズ。知的に響くところが欧州ジャズらしい。良い音、良いフレーズ。聴いていて、頭の中に爽やかな風が吹き抜けるようだ。聴き進めて行くと、ハイダーのピアノは知的で端正でクールだけでは無い。時にダイナミックにパッションに、時にフリーにも傾く、幅広な弾き回し。
実はハイダーはエレピも弾いていて、これも個性的。ハンマー打法のエレピで、エレピながら雰囲気に流されることなく、フレーズが思いっきり明快。このエレピの存在がECMレーベルの音を彷彿とさせて、ああこの盤って、やっぱり「欧州ジャズな盤」なんやなあ、と改めて納得する。いやはや、こんなピアニスト、ピアノ・トリオの演奏があったとは。ほんと、ジャズって裾野の広い音楽ジャンルである。
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