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2019年3月の記事

2019年3月31日 (日曜日)

今までに聴いたことの無いジャズ

クリス・チーク(Chris Cheek)というサックス奏者がいる。いわゆるブルックリン派の代表格のサックス奏者。1968年生まれなので、今年で51歳になる。1990年代、ポール・モチアンのエレクトリック・ビバップ・バンドでその名をアピール、NYのブルックリンを中心としたシーンの中核を担うメンバーに成長、同じサックス奏者のマーク・ターナーと共に、新しいサックスのサウンドを生み出し、深化させている。
 
チークのサックスは、今までのジャズに無い雰囲気である。サックスであれば、それまでは必ず、コルトレーンの影響を受けていたし、コルトレーンの奏法のどこかを反映したフレーズが必ず見え隠れした。が、チークの(ターナーも同様なのだが)サックスは違った。それまでの「ジャズ・サックス」の概念を一掃し、全く新しい「ジャズ・サックス」を世に出した。
 
まずもって、4ビートなどどこにも無い。いわゆる1970年代以降の「ニュー・ジャズ」である。加えて、バップ・フレーズの欠片も無い。サックスは絶対に熱く吹かれることは無い。どこまでもクールに淡々と情感を内に秘めつつ、淡々と音を紡いでいく。そんな音世界である。そんな音世界を支えるアレンジも、今までに無い斬新なアレンジ。つまりは今までに聴いたことの無いジャズがこの盤に詰まっていた。
 
 
Vine  
 
 
Chris Cheek『Vine』(写真左)。1999年、NYでの録音。Chris Cheek (ts,ss,comp), Brad Mehldau (p,fender rhodes), Kurt Rosenwinkel (g), Matt Penman (b), Jorge Rossy (ds) 。今の目で見ると、錚々たるメンバーである。現代ジャズ・ピアノの代表格の一人、ブラッド・メルドー、これまた現代ジャズ・ギターの中堅、クルト・ローゼンウィンケル。この二人の名前だけでも「おお〜っ」となる。
 
計8曲すべてチーク自身のオリジナル。これがまた、新しい響きを宿している。4ビート無し、バップ・フレーズ無し、どこまでもクールに淡々と情感を内に秘めつつ、淡々と音を紡ぐテナー。演奏の形式はしっかりと旧来のジャズの通り押さえられているので、フリー・ジャズを聴く様な苦行は無いが、曲のフィーリングは旧来のジャズとは全く異なるものなので、ジャズ者の中でもはっきりと「好き嫌い」が分かれるだろう。
 
といって、この新しい感覚のニュー・ジャズを理解出来ないと駄目だ、とは思わない。これもジャズ。旧来のジャズもジャズ。ジャズは懐深く、裾野の広い音楽ジャンル。だからこそ面白い。でも、このチークのニュー・ジャズって、我が国のジャズ者の間で広く認知され、相応の人気を獲得するには、まだまだ時間がかかる様な気がしている。旧来のジャズにも強烈な魅力があるからなあ。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年3月30日 (土曜日)

新しい「エレジャズ・ロック」

欧州ニュー・ジャズの老舗レーベル「ECM」。このレーベル、ジャズの演奏形態やトレンドにはかなり寛容で、というか、かなり懐が深くて、メインストリーム系のジャズの中ではモードからフリー、アブストラクト、スピリチュアルまで守備範囲は広く、エレクトリック系ではロックでいうところの「プログレッシブ・ロック」の要素を吸収したジャズ・ロックなどにも柔軟に対応している。
 
Barre Phillips『Mountainscapes』(写真左)。1976年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Barre Phillips (b), John Surman (ss,bs,b-cl,syn), Dieter Feichtner (syn), Stu Martin (ds, syn), John Abercrombie (g・track8のみ)。リーダーのバーレ・フィリップスはベーシスト。カルフォルニア生まれ。キャリアの初期はアメリカ。1960年代後半に欧州に渡って、その後は欧州で活動。そんな流れの中でのECMでの録音だったのだろう。
 
アルバムの冒頭から数分聴いているだけで、思わず「ニンマリ」。これってプログレッシブ・ロック(略して「プログレ」)やん。基本はバーレのベースとサーマンのサックス、マーチンのドラムのトリオ。そこに、フィヒトナーのシンセが入ってくる。ビートは明らかに8ビートがメインで、整然としたリズム&ビートをベースとした演奏パートはメインの旋律も整然としていて、演奏全体の雰囲気は明らかに「プログレ」。
 
 
Mountainscapes-1  
 
 
そして、その整然とした8ビートが変則ビートに変化すると、演奏全体の雰囲気はフリーなエレクトリック・ジャズにガラッと変わる。モード奏法の様な柔軟度の高いフレーズがメインになる。メインの旋律のスペース感溢れる浮遊感が半端ない。モーダルな浮遊感のある旋律となると演奏全体の雰囲気は「プログレ」では無くなり、演奏の雰囲気は「モーダルなジャズロック」に切り替わる。
 
ラストの「MountainscapesⅧ」では、ECMのお抱えギタリスト、ジョンアバが参加。捻れに捻れた浮遊感のあるエレギで、フリーキーなフレーズを連発する。アルバムに散りばめられている演奏形態は「プログレ」「モーダルなジャズロック」「フリーキーなジャズ」という3つの要素をクロスオーバーした、即興演奏を織り込んだニュー・ジャズである。
 
この盤の雰囲気を一言で言うと、プログレッシブ・ロックな要素を取り込んだ、新しい「エレジャズ・ロック」。ジャズの演奏形態やトレンドに寛容で懐の深いECMレーベルならではの音世界である。面白いのは、演奏メンバーが皆、基本的にジャズ畑のミュージシャンなので、演奏がプログレ寄りになっても、どっぷりプログレにはならない。あくまで、この盤の音世界は「即興がメインのジャズ」。
 
 
 

東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年3月29日 (金曜日)

「ファンキー・ジャズ」の完成形

今を去ること40年余。ジャズを聴き始めた頃から、ホレス・シルヴァーのピアノが好きである。ファンクネスだだ漏れのスッと切れ味の良いピアノ。加えて、シルヴァーの書く曲がこれまたファンキーで良い。とにかく、シルヴァーのピアノは判り易い。どこから聴いても「ファンキー・ジャズ」なのだ。
 
そんなホレス・シルヴァー、ブルーノート・レーベルの「ハウス・ピアニスト」として、25年の間、契約を維持した。1956年以降、リーダーとして毎年アルバムをブルーノートで吹き込みながら、シルヴァーのポップなオリジナル曲は数々のヒット作となり、ブルーノート・レーベルを経営難から救っている。
 
そんなファンキー・ジャズの雄、ホレス・シルヴァーの「ファンキー・ジャズ」の完成形のひとつがこの盤であると思っている。Horace Silver『In Pursuit of the 27th Man』(写真左)。1972年10月6日、11月10日の録音。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Randy Brecker (tp, flh), Michael Brecker (ts), David Friedman (vib), Bob Cranshaw (el-b), Mickey Roker (ds)。
 
 
In-pursuit-of-the-27th-man-horace-silver
 
 
シルヴァーのピアノ、クランショウのエレベ、ローカーのドラムをベースに、1つのセッションは、ブレッカー兄弟のフロントで、もう1つのセッションは、フリードマンのヴァイブをフロントに、シルヴァーのファンキー・ジャズが繰り広げられる。今から振り返ると、凄いメンバーが揃っている。特に、若きマイケル&ランディのブレッカー・ブラザースが溌剌とファンキーテナー&トランペットを吹きまくっている。
 
バイオレンス感の漂うファンキー・バップなタイトル曲「In Pursuit Of The 27th Man」、Moacir Santos作のアーバンでアダルトなジャズ・ナンバー「Kathy」、Weldon Irvine作のラテン・タッチの「Liberated Brother」など、スピリチュアル・ジャズな要素が楽しい演奏も興味を惹く。そんなスピリチュアルな音世界の中でも、シルヴァーのピアノはとりわけファンキーに響いている。
 
シルヴァーのピアノが躍動している。演奏全体の雰囲気が明るくてポップでハッピー。聴いて楽しい、独特のフレーズと音色を持ったシルヴァーのピアノ。ホント、躍動感が溢れ、活き活きとしたファンキー・ジャズである。演奏の内容もテクニックも上々で、しっかりまとまっている。安心して繰り返し聴ける「ファンキー・ジャズ」の完成形である。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年3月28日 (木曜日)

ECMの「お抱えトランペッター」

欧州ジャズの雄、ニュー・ジャズのショーケース的レーベル「ECM」。楽器別に見てみると、意外や意外、トランペットが手薄なのに気がつく。何の資料も見ずに、いきなり「ECMレーベルのトランペッターは?」と問われたら、ケニー・ホイーラーがまず浮かんで、エンリコ・ラバ、う〜ん、それまで。って感じ。調べたらもっといるんだろうけど、どうも僕の印象は「ECMレーベルはトランペッターが手薄」なのである。本当のところ、どうなんだろう?
 
さて、ECMレーベルのトランペッターといえば、まず浮かぶのが「ケニー・ホイーラー」。そのホイーラーの初期の好盤がこれ、Kenny Wheeler『Gnu High』(写真左)。1975年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Wheeler (flh), Keith Jarrett (p), Dave Holland (b), Jack DeJohnette (ds)。リーダー、ケニー・ホイーラーの、この盤ではフリューゲルホーンのワンホーン・カルテット。
 
ケニー・ホイーラーはカナダ出身、英国を活動拠点とするトランペッターである。2014年9月、惜しくも84歳で鬼籍に入った。生涯のキャリアの中で、ECMレーベルにかなりの数のリーダー作をはじめ、演奏参加した多数の作品があって、ECMレーベルの「お抱えトランペッター」と言って良いだろう。
 
そして、バックに控えるリズム・セクションが凄いメンバー。ピアノにキース・ジャレット、ベースにデイブ・ホランド、ドラムにジャック・ディジョネット。ECMレーベルだからこそ出来る、思いっきり贅沢なワンホーン・カルテットである。「これ、ホイーラー、名前負けしないのか」と思わず心配になる位のリズム・セクションである。ECMの総帥マンフレート・アイヒャーだからこそ出来たブッキングである。
 
 
Gnu-high-1
 
 
で、その内容であるが、基本は「ECMのニュー・ジャズ」。ファンクネス皆無、限りなく自由度の高い、即興中心の演奏形態。この盤ではモード・ジャズから入るが、途中から軽いフリー・ジャズに突入。アブストラクトでは無いが、相当に自由度の高いフリー・ジャズ。それぞれの楽器が必要最小限のルールを守りながら、思い思いに即興演奏を繰り広げる、インタープレイ中心のフリー・ジャズ。ホイーラーのフリューゲルホーン、大健闘である。
 
面白いのは、キース・ジャレット。キースが他の誰かのバックを務めることは希である。この盤では、どういう経緯でバックを務めるようになったかは知らないが、聴けば確かにキースは誰かのリーダー作のバッキングには向かないと感じる。この『Gnu High』でも、リーダーのホイーラーのフリューゲルホーンを全く気にせず、自分の個性を思いっきり前面に押し出した即興ピアノを延々と弾き続けている。
 
キースのピアノだけピックアップしたら、キースのピアノのソロアルバムが出来るのでは、と思う位だ。恐らく、そんなキースの「我が道を行く」雰囲気が、ECMのマンフレート・アイヒャーをもってしても、以降、キースをバックのリズム・セクションにほとんど採用しなかった大きな理由である様な気がしている。
 
欧州ジャズのフリー・ジャズのひとつのサンプルがこの盤に詰まっている。アブストラクトに偏らず、エモーショナルに溺れず、聴き易いライト感覚で端正な欧州のフリー・ジャズ。そんな雰囲気の色濃いこの盤の中で、やはりリーダーのホイーラーのフリューゲルホーンが一番目立っている。キースの参加ばかりが取り立たされるアルバムではあるが、実際には、ホイーラーのフリューゲルホーン(トランペット)を体験するに良い盤と言える。
 
 
 
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2019年3月27日 (水曜日)

ブルーノート流ボサノバ・ジャズ

ブルーノート・レーベルは「1500番台と4000〜4300番台」と呼ばれる有名なシリーズの他に、その後を継ぐ、幾つかのカタログが存在する。BN-LAシリーズもその1つで、1967年、経営不振からリバティにレーベルを売却、総帥アルフレッド・ライオンが引退し、後を継いだフランシス・ウルフが1971年に亡くなった後、ジョージ・バトラーが拠点をロス(LA)に移し、ブルーノートの再起を図ったシリーズである。
 
このシリーズ、ブルーノート・レーベルを電化〜フュージョン化して、純ジャズの世界をポップスに身売りしたと軽視されがちなシリーズであり、ベテラン・ジャズ者の方々からは、鬼っ子のように忌み嫌われてるシリーズでもある。我が国の場合、ブルーノート・レーベルの「1500番台と4000〜4300番台」をあまりに高く評価し過ぎな傾向になって、それ意外は「聴く価値なし」と評価する、ベテラン・ジャズ者の方々も多いと聞く。
 
しかし、聴いてみると判るんだが、意外と真っ当メインストリーム・ジャズなアルバムが多い。ほぼ1970年代を網羅しているシリーズであるが、その時代ならではのアルバムが多くを占めており、それらは全てブルーノート色を色濃く保持しているところが実にニクい。ジャズロックやクロスオーバー、フュージョンなジャズが嫌いな人は仕方ないが、そうでなければ、このBN-LAシリーズは是非とも聴いて欲しいシリーズである。
 
It-could-only-happen-with-you-duke-pears  
 
Duke Pearson『It Could Only Happen With You』(写真左)。1970年の2月と4月の録音。1974年のリリース。ちなみに、Duke Pearson (ac-p, el-p), Burt Collins, Joe Shepley (tp), Kenny Rupp (tb), Hermeto Pascoal (f, g, b), Jerry Dodgion, Al Gibbons (as, alto-flute), Frank Foster (ts), Lew Tabackin (ts, fl), Bob Cranshaw, Ron Carter (b), Mickey Roker (ds), Flora Purim (vo)。新旧混成のメンバー編成。
 
しかし、そんな取り留めの無いメンバー編成ではあるが、アルバムの中身は「上質でライト感覚なボサノバ盤」という印象が強い。特にピアソンのエレピが端正で軽快、フローラ・ピュリムのボーカルが清々しく爽やかだ。フロントのテナーやトランペット、トロンボーンの音は意外と旧来のハードバップを踏襲していて、演奏の全体的な雰囲気は、ライトで軽妙なボサノバ・ジャズなんだが、フロントのテナーやトランペットについては意外と硬派で、ソフト&メロウ面はほどんと聴くこと出来ない。
 
意外と硬派なボサノバ・ジャズな内容で、リーダーのピアソンについては、特にエレピの弾きっぷりが見事。ボサノバ・ジャズという新しくかつ俗っぽいジャズの演奏の中で、大いに目立っている。硬派なボサノバ・ジャズとして、この盤は完成されており、内容は意外と濃い。適度なテンションも心地良く、この盤で聴かれる「ブルーノート流ボサノバ・ジャズの在り方」に関して、実に興味深い内容となっている。
 
 
 
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2019年3月26日 (火曜日)

最近のお気に入りエレギもう一人

最近のジャズ・ギター。ギラッド・ヘクセルマン、カート・ローゼンウィンケルが、僕の最近のお気に入りギタリストと書いた。う〜ん、もう一人、誰か忘れているなあ、と思いつつ、最近の新リリース盤を眺めていたら、そうそう、この人の名前を忘れていた。「ジュリアン・レイジ(Julian Lage)」である。
 
1987年生まれで、子供の頃から「神童」と騒がれ、アーティストとしての育ての親ともいうべきゲイリー・バートンに見出されて頭角を現したレイジも今年32歳。充実と進化の若手の時代を通り過ぎ、ジャズの中堅的存在の「筆頭の一人」として、これからの活躍が楽しみである。そんなレイジが新作をリリースした。Julian Lage『Love Hurts』(写真左)である。今年2月のリリースである。
 
ちなみにパーソネルは、Julian Lage (g), Dave King (ds), Jorge Roeder (b)。キーボードレスのギター・トリオな編成。今回の新盤については、収録曲に注目。ジュリアン・ラージ本人のお気に入りの楽曲なんだが、今回は1960〜1970年代の楽曲がメイン。ネオ・スタンダードな雰囲気が色濃く漂う。そして、新たなドラマーの参入も興味深い。今回はドラマーに、“バッド・プラス”のドラマー、デイヴ・キングを迎えている。
 
 
Love-hurts-julian-lage
 
 
タイトル曲「Love Hurts」については、エヴァリー・ブラザーズによって初録音され、ナザレスのカバーによってヒットし、数々のアーティストによってカバーされてきた名曲。ラストの「Crying」は、ロイ・オーヴィソンのメローなナンバー。それぞれの曲の演奏の中に、米国ルーツ音楽の要素、例えばカントリーやソウル、そして、70年代のロックなどの音楽の要素が織り込まれていて、どこか新しく、どこか懐かしい響きがする。
 
そして、僕はジュリアン・レイジのエレギの音が大好きだ。アタッチメントを駆使したくすんだ伸びのあるフレーズ。音の芯がしっかりしていて、紡ぎ出すフレーズに揺るぎは無い。速弾きなどのテクニックに頼らず、ミッドテンポで、それぞれの収録曲の持つ美しい旋律を浮かび出させるように、ゆったりと堅実に弾き進めていく。これが聴き味抜群、思わず身を乗り出して聴き入ってしまう。
 
2曲目には、オーネット・コールマンの「Tomorrow Is The Question」を採り上げていて、レイジのエレギとしては少し意外な、アブストラクトでスピリチュアルな「隠れた側面」も披露してくれる。アルバム全体を通して、レイジのエレギの音世界は大らかで心地良い拡がりのあるもの。それは明らかに「唯一無二」な個性で、聴いていて楽しく、聴いていて頼もしい。良いジャズ・エレギです。
 
 
 
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2019年3月25日 (月曜日)

エヴァンスのソロ・ピアノの普遍性

今や、ジャズの世界でソロ・ピアノと言えば「キース・ジャレット」。ソロ・ピアノは簡単そうに見えて、意外に厄介なフォーマットだ。即興演奏が基本なので、イマージネーションの豊かさと長時間の演奏に耐えうる体力とテクニックが十分なほど必要になる。確かに、ジャズ・ピアニストの中で、ソロ・ピアノに手を染め、ソロ・ピアノを弾き続ける者は少ない。
 
そう言えば、ビル・エヴァンスもソロ・ピアノの名手だった。というか、ソロ・ピアノというフォーマットが、ジャズとして成立することを教えてくれたのが彼だったと思う。世間的には、ソロ・ピアノのスタンダードは「キース・ジャレット」なんだが、僕は今でも「純ジャズのソロ・ピアノ」のスタンダードは、ビル・エヴァンスではないか、と思うのだ。
 
キースは、クラシックや米国ルーツなどの様々な音楽の要素を取り込みながら、ジャズの要素を即興演奏という形態の中で、前面に押し出すことが多い、という印象のソロ・ピアノ。基本的に完全即興を前提としたオリジナルな演奏、というか再現性は希薄な「一期一会な演奏」が基本。旧来のジャズのスタイルに囚われない、限りない創造性と長時間に渡る、ダイナミックな即興演奏の展開と構築力が魅力である。
 
エヴァンスのソロ・ピアノの根幹にあるのは、あくまで「旧来の純ジャズ」である。エヴァンス流のソロ・ピアノでは、とりわけ、スタンダード曲が映える。キースのソロ・ピアノとは全く正反対にあるエヴァンスのソロ・ピアノ。どちらも甲乙付けがたい。
 
 
Alone-again
 
 
Bill Evans『Alone (Again)』(写真左)。1975年12月16日-18日での録音。ビル・エヴァンスのソロ・ピアノ集。正式盤としては、この前にVerveレーベルから『Alone』というソロ・ピアノ盤を出している。その続編という意味で、タイトルに「 (Again)」が付いている。収録された曲は全てスタンダード曲で占められている。キースの様に、インスピレーション溢れる、完全即興のオリジナル演奏では全く無い。
 
このソロ・ピアノの演奏は、オーソドックスなジャズという音楽ジャンルの基本をしっかりと踏まえた「ジャズ一色のソロ・ピアノの演奏」と言える。ピアノという楽器は「旋律楽器」としての側面と「リズム楽器」としての側面を併せ持ち、一人ジャズバンド、一人ジャズ・オーケストラが演奏出来る変わった楽器である。
 
その変わった楽器の特性を最大限活かして、ジャズとしてのソロ・ピアノを展開しているところが見事。エヴァンスのソロ・ピアノは、ジャズとしてのリズム&ビートを左手中心に叩き出し、その中でベース・ラインもしっかりと押し出す。右手中心に旋律をしっかりと響かせて、その延長線上にアドリブ展開としての即興演奏を展開。
 
キースのソロ・ピアノは「キースの唯一無二」なもの。エヴァンスのソロ・ピアノの根幹は「旧来のジャズ」であり、再現性もある。面白いのは、今の耳で聴いていると、エヴァンスのソロ・ピアノには普遍性があるのではないか、と感じること。エヴァンスが亡くなって、既に38年。エヴァンスのソロ・ピアノは「ジャズの歴史」の一部になっているように感じた。



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2019年3月24日 (日曜日)

適度な泣きのマクリーンを聴く

1970年代以降のニュー・ジャズや現代のネオ・ハードバップやネオ・スピリチュアルなジャズを最近良く聴く。その演奏の創造性の高さや演奏テクニックの素晴らしさを愛でる訳だが、さすがに同じ傾向のジャズを聴き続けると耳が疲れる。そうするとふと聴きたくなるのがハードバップ。それも1950年代の「純正ハードバップ」な演奏にドップリ浸かりたくなる。
 
Jackie Mclean『A Long Drink of the Blues』(写真左)。1957年8月30日の録音 (#1-2)と同年2月15日の録音 (#3-5)とに分かれる。録音時期が違うので、当然、パーソネルを2つに分かれる。リーダーの Jackie Mclean (as, ts) は変わらないが、8月30日の録音は、Webster Young (tp), Curtis Fuller (tb), Gil Coggins (p), Paul Chambers (b), Louis Hayes (ds)、2月15日の演奏は、Mal Waldron (p), Arthur Phipps (b), Art Taylor (ds)。
 
こういうアルバム曲の編成って「プレスティッジ・レーベル」の仕業と睨んで間違い無い。LP時代のA面、1曲目と2曲目のタイトル曲「A Long Drink of the Blues」はマクリーンのオリジナル曲。1曲目は「false start(出だしの失敗)」で2曲目がやり直しテイクで、フロント3管のセクステット構成。マクリーンは珍しくテナーも吹いている。LP時代のB面、3曲目から5曲目についてはスタンダード曲で、マクリーンのアルト・サックスがフロント1管のカルテット構成。
 
  
A-long-drink-of-the-blues
 
 
演奏の編成が異なる演奏が2種類、分かれているのだが、この盤については意外にそれが気にならない。というか気がつかない。マクリーンのアルト・サックスの音色と演奏が実に目立っていて印象的で、このマクリーンのアルト・サックスが、2種類に分かれる編成の演奏に「統一感」を持たせているのだ。確かに、マクリーンのアルト・サックスは個性的すぎるほど個性的。
 
クラシックではありえないであろう、ピッチが少しフラットした音色。フレーズのほぼ8割がピッチがフラットしているので、聴けば「これはマクリーン」と直ぐに判る。そんな超個性的なマクリーンのアルト・サックスを心ゆくまで愛でることの出来るアルバムの一枚がこの『A Long Drink of the Blues』である。適度にリラックスした雰囲気の中で、朗々とややピッチがずれたアルト・サックスで「鼻歌を唄うように」アドリブ・フレーズを繰り出していく。
 
特に3曲目から5曲目の3曲についてはいずれも有名なバラードで、情感がこもった適度な「泣き」のマクリーンの片鱗を聴くことが出来る。確かにマクリーンはバラード演奏が上手い。この「泣き」のマクリーンが堪らなく良いのだ。アルバム・ジャケットは「やっつけ風」で損をしているが、ハードバップ好きには堪らない内容だと思います。好盤です。


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2019年3月23日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・143

久し振りに良い雰囲気のジャズ・ギターを聴いた気がする。Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)。ヘクセルマンはイスラエル出身のジャズギタリスト。今、NYで最も注目される若手ギタリストの一人。情緒豊かでネイチャー風、少し捻れていてエキゾチック。今までの米国のジャズ・ギターには無い個性である。
  
現代のNYのジャズのトレンドの1つに「イスラエル出身のジャズ・ミュージシャンの台頭」がある。アヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)、オマー・アヴィタル(Omer Avital)、エリ・デジブリ(Eli Degibri)、オズ・ノイ(Oz Noy)、サム・ヤエル(Sam Yahel)等々、優れた新しい個性のジャズメンがどんどん出てきた。今回のギラッド・ヘクセルマンもそんな中の一人である。
  
Gilad Hekselman『Ask for Chaos』(写真左)。昨年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Gilad Hekselman (g)をメインに、Rick Rosato (b), Jonathan Pinson (ds) ="gHex Trio"と、Aaron Parks (p,keys), Kush Abadeyb (ds, pads)="ZuperOctave" の2つのユニットを曲によって使い分けている。
  
 
Ask-for-chaos-1

  
ヘクセルマンが自分のレーベルを立ち上げ、リリースした意欲作、3年振り、6作目のリーダー盤である。この最新盤は自らのレーベルからのリリースである。自分の表現したいジャズを存分に展開している様に感じる。彼のエレギの音を聴いての印象は「パット・メセニーとジョンスコを足して2で割った様な」個性に、端正なアドリブ・フレーズとほんのり明るく「くすんだ」トーン。
  
2つのユニットの使い分けが功を奏している。"gHex Trio"の演奏はシンプルで瑞々しく豊かな色彩感と情緒豊かでネイチャー風。心地良い透明感溢れる演奏は明らかに新しいイメージ。"ZuperOctave"での演奏は先鋭的な、現代ジャズの最先端な切れ味の良い演奏が展開される。ヘクセルマンは切れ味良く、少し捻れた浮遊感溢れるギターを弾きまくる。しかし、この2つの全く異なる個性的な演奏をヘクセルマンのギターがしっかりと統括する。 
 
2つのユニットの混在でありながら、アルバム全体に溢れる統一感。ECMレーベルの音世界に通じるものはあるが、欧州ジャズのウェット感は皆無で、乾いたクリスタルなトーンは新しい米国のコンテンポラリー・ジャズの音世界を感じる。ヘクセルマンのお陰で、久し振りに新しいジャズ・ギターに出会った気分。現在、僕がカート・ローゼンウィンケルと併せて、興味を持って聴いている、お気に入りのギタリストです。
 
 
 
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2019年3月18日 (月曜日)

現代のエレ・ジャズの先端を聴く

マイルス・デイヴィスが「エレクトリック・ジャズ」を世の中に提示して、もう50年になる。1970年代には、チック・コリアのハービー・ハンコックが牽引し、1980年代にはジャズの1つのスタイルとして定着した。今では「エレクトリック・ジャズはジャズでは無い」というジャズ者はいないだろう。

昨年の注目のジャズ盤という記事を見ていて、このアルバムが気になった。BIGYUKI『Reaching For Chiron』(写真左)。聴けば判るが、徹頭徹尾「エレクトリック・ジャズ」の音世界。シンセサイザーの音も時代の最先端をいく音。適度なテンションと包み込まれる様な浮遊感。幽玄な墨絵の様な音世界。なんだか、日本を感じるエレクトリック・ジャズやなあ、と思ったら、リーダーの「BIGYUKI」って日本人でした。

BIGYUKI(ビッグユキ)、本名は平野雅之。バークリー音楽大学の出身で、卒業後、以降ボストンのセッション・プレイヤーとして活動。 その後ニューヨークに活動の場を移す。2015年にアメリカのJAZZ TIMES誌が行った読者投票のベスト・シンセサイザー奏者部門では、ハービー・ハンコック、チック・コリア、ロバート・グラスパーに次いで4位を獲得。錚々たる実績ではないか。
 

Reaching_for_chiron

 
「さらにぶっ飛んだものを作りたい」という思いを胸に、当アルバムはリリースされた。現代の最先端のシンセサイザーの音。テクノ、ユーロビート、ヒップホップ、ハウス、エレクトロニカ等々、電子音楽のジャンルの全てを融合して、独特の音世界を創造している。密度の濃い、創造力豊かなシンセサイザーのインプロビゼーション。今までに聴いたことのない音世界。確かに「ぶっ飛んで」いる。

テイラー・マクファーリンやビラルといった気鋭のミュージシャンも参加していて、BIGYUKIの音世界に更なる彩りを添える。これはドラマチックだけど淡々とした面も織り交ぜた、自由度の高い「ジャズ」である。この盤を聴いたジャズ者の方の中には「これがジャズなのか」と疑問感じる方もいるだろう。しかし、リズム&ビートは効いている。シンセサイザーをメインとしたキーボードの演奏は明らかに創造性豊かなインプロビゼーション。

この音世界は繰り返しの音楽でも無く、定型の音楽でも無い。であれば、これは「ジャズ」だろう。いや「ジャズ」で無くても良い。この音楽は確かに「良い音楽」だ。この盤を聴いて、エレクトリック・ジャズの最先端を聴いた感じがした。これは良いものを聴いた。BIGYUKIのデビュー盤。もう次作が楽しみだ。

 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2019年3月17日 (日曜日)

ECMを感じるに絶好の一枚

欧州ジャズの老舗レーベルであるECM。ECMには独特の音の傾向がある。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。極力、電化サウンドを排除し、アコースティックな表現を基本とし、限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。

米国のブルーノート・レーベルの「統一感」に勝るとも劣らない、芸術という観点でのレーベル運営をECMに感じることが出来る。アイヒャーの監修・判断による、アイヒャー独裁による強烈な「美意識」。"The Most Beautiful Sound Next to Silence" この「沈黙に次いで最も美しい音」を基本とするECMレーベルの「音の統一感」は、"Produced by Manfred Eicher" のクレジットの下に徹底されている。

そんなECMレーベルには、専属、もしくは専属に近いミュージシャンが多くいる。例えば、ヴァイブのゲイリー・バートン(Gary Burton)などは、ECMの「お抱えミュージシャン」の代表格。当然、ECM時代のバートンの数々のリーダー作の音は、典型的なECMレーベルの音世界で充満している。
 

Dreams_so_real  

 
Gary Burton『Dreams So Real - Music of Carla Bley』(写真)。1975年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Mick Goodrick (g), Pat Metheny (g), Steve Swallow (b), Bob Moses (ds)。ギターは若き日のパット・メセニーとバークリーの師匠格のグッドリックとが、曲によって弾き分けている。副題を見れば「カーラ・ブレイの作品集」であることが判る。

典型的なECMの音世界である。バートンの革新的な4本マレット・ヴァイブが効いている。硬質で透明度の高いクリスタルな響き。転がる様に流麗なアドリブ・フレーズ。若き日のパット・メセニーのエレクトリック12弦ギターも良い。ファンクネスは皆無、切れ味の良い、西洋クラシックの香りのするストローク・プレイ。「静謐な熱気」を伴った、適度なテンションが心地良いインプロビゼーションの数々。

この盤、どの収録曲についても演奏のレベルが高い。1曲たりとも「緩演」や「駄演」が無い。「静謐な熱気」と「適度なテンション」を伴ったグループの個性とメロディアスなカーラの曲とのマッチングが絶妙。現代芸術的なECMオリジナルの統一感を強く感じるアルバム・ジャケットのアートワークも良好。ECMの音世界を感じるに絶好の好盤です。

 
 
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2019年3月16日 (土曜日)

ECMの中では異質な内容だけど

ECMレーベルは、欧州ジャズを代表する老舗レーベル。レーベルの音の傾向は基本的に「ニュー・ジャズ」。米国で発展した「ビ・バップ〜ハードバップ」のトレンドを踏襲すること無く、ハードバップ以降のモード・ジャズやフリー・ジャズ、スピリチュアル・ジャズに取り組むのだが、それらに「欧州ジャズ」の個性を反映させて「ニュー・ジャズ」に仕立て上げている。

Tomasz Stańko『Balladyna』(写真左)。1975年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Tomasz Stańko (tp), Tomasz Szukalski (ts, ss), Dave Holland (b), Edward Vesala (ds)。リーダーのトーマス・スタンコはポーランド出身のトランペッター。サイドマンのサックスのトーマス・シュカルスキーもポーランド出身。ドラマーのエドワード・ヴェサラはフィンランド出身。そして、ベースのディブ・ホランドはイングランド出身。オール欧州のピアノレス・カルテットである。

ECMレーベルでは珍しいのだが、出てくる音はハードバップ系の音。モーダルなハードバップである。ただし、欧州ジャズの老舗、ECMレーベルのモーダルなハードバップである。まず、ファンクネスは皆無。出てくる音はシャープで切れ味が良い。ECM独特のエコーが効いて透明度の高い音。ジャズをイメージする「汗と煙」については全く無縁。米国のモーダルなハードバップとは正反対の雰囲気。
 

Balladyna  

 
「クールな熱気」と表現したら良いのか、この盤の演奏についてはいずれも「クールな熱気」溢れる、ダイナミズム溢れる演奏が清々しい。実に真摯な音世界にポーランド・ジャズの矜持を感じる。ジャズをアートと捉えて、演奏する側も聴く側も出てくる音にしっかりと相対する。特に冒頭の1曲目の「First Song」については、そのハードで創造的な演奏に度肝を抜かれる。

2曲目の「Tale」はサックス抜きのトランペット+ベース+ドラムの変則トリオ。静的な演奏なんだが切れ味の良い、結構テンションの高い演奏で、欧州ジャズの真髄に触れた気分になる。基本はモードなんだが、ところどころでフリーな演奏やスピリチュアルな演奏を織り交ぜて、ECMの十八番である「ニュー・ジャズ」がしっかり展開されている。

欧州ジャズ仕込みのハードバップな演奏であるが、聴いていてしっかりと印象に残るのは、ホランドのベース。重低音が練り歩く様な、骨太でしなやかな粘りとソリッドな弦の響きが印象的。この盤のどの演奏にもホランドのベースがしっかりとビートの根元を押さえています。ECMレーベルの中では異質な内容ではあるが、音の雰囲気は明らかにECMレーベルのモーダルなハードバップ。好盤です。

 
 
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2019年3月15日 (金曜日)

ブルーノートの「純ジャズ復古」

ブルーノート・レーベルは、ジャズ界最大のジャズ・レーベル。ブルーノートのカタログには幾つかのシリーズがある。一番有名なのが、1500番台、4000番台など、カタログ番号を基本としたシリーズ。それから、カタログの分類記号を基本としたシリーズ。例えば「BN-LA」シリーズや「LT」シリーズがそれに当たる。どれもが好盤のオンパレードで、どのシリーズを聴いても、ジャズの醍醐味が味わえるところがブルーノート・レーベルの凄いところである。

そんなブルーノート・レーベルのシリーズの中で「85100」シリーズというのがある。1985年から1987年まで、僅か3年のシリーズで41枚の短期間のシリーズであった。しかし、このシリーズ、ちょうど1980年代半ばからの「純ジャズ復古」のムーヴメントの時代にリリースされたシリーズなのだ。どのアルバムも「純ジャズ復古」や「初期ネオ・ハードバップ」な雰囲気の演奏が詰まっていて、実は意外となかなか面白いシリーズなのだ。

Kenny Burrell & Grover Washington Jr.『Togethering』(写真左)。1984年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr. (ts, ss), Kenny Burrell (g), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds)。Blue Note 85100シリーズの BT 85106番。ワシントンJr.はこの録音の2年前に、アルバム『Winelight』でヒットを飛ばしている。
 

Togethering

 
ワシントンJr.のアルバム『Winelight』は、典型的なフュージョン・ジャズの好盤。ソフト&メロウな雰囲気と電気楽器を活用した8ビート主体の演奏は当時、受けに受けた。そんなフュージョン・ジャズのサックス奏者のワシントンJr.がフロントを担当するこのアルバム、僕は最初、フュージョン・ジャズのアルバムだと思った。が、聴いてみたら、新しい雰囲気のする、ライトなハードバップな演奏がギッシリ詰まっているではないか。

ロンのベースは往年のモードライクなベース。デジョネットのドラムは新しい感覚のポリリズム(この頃、デジョネットはキースと「スタンダーズ」を結成している)。ギターのバレルは明らかに新しい感覚のハードバップなギター。旧来のハードバップのギターをフュージョン・ジャズの手法で焼き直した雰囲気が聴いていて実に新しい。そして、ワシントンJr.のサックスも、聴き易いフュージョン・テナーの良い部分を踏襲した新しい感覚のハードバップなサックス。

全編に渡って、なかなか聴き応えのあるネオ・ハードバップな演奏です。これが1984年の録音。フュージョン・ジャズが衰退を始めて、純ジャズが見直され始めた頃。そんな微妙な時期に「純ジャズ復古」を先取りした様な、新しい感覚のハードバップな演奏。さすがブルーノート・レーベルだな、と感心することしきり。

 
 
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2019年3月14日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・142

ピアノ・トリオはいつ聴いても楽しい。簡単そうに見えて、結構、弾きこなすに難しい、打楽器と旋律楽器の両方の性質を持つ楽器のピアノ。この難物楽器のピアノがメインに、これまた、リズム楽器と旋律楽器の両方の性質を持つベースが絡み、究極の打楽器のドラムがリズム&ビートを担う。いわゆる「職人集団」のパフォーマンス。これが聴いていて楽しい理由。

Jason Lindner, Giulia Valle, Marc Ayza『1,2,3, Etc.』(写真左)。2001年12月3&4日、バルセロナでの録音。ちなみにパーソネルは、Jason Lindner (p), Giulia Valle (b), Marc Ayza (ds)。ピアノのジェイソン・リンドナー、どこかで聴いた名だなあ、と調べてみたら、デヴィッド・ボウイ『★(ブラックスター)』に参加した気鋭の鍵盤奏者でした。

まず、そのジェイソン・リンドナーのピアノが印象深い。耽美的ではあるが力感溢れる明快なタッチ。ハンマー打法を彷彿とさせるパーカッシヴな左手。強弱、抑揚、明暗と複雑な表現をシンプルに弾きこなす右手。躍動感溢れ、逆に暖かな繊細さとの対比が見事。久々に注目のピアニストやなあ、と当時感心したものです。
 

123etc  

 
ジュリア・ヴァーレは女流ベーシスト。僕は最初「女流」と聞いてビックリした。この盤を聴いたら判るのだが、ベースがゴリゴリ、ブンブン、思いっきり胴鳴りしている。鋼のしなりの様なベース弦の響きも生々しい。こんなベースを聴いて、これ「女流ベーシストやで」と言われたら、え〜っ、となりまっせ(笑)。ファンクネスが希薄なので、出身はどこかな、と調べたら、イタリアのサンレモでした。納得です。

マーク・アイザのドラミングはユニーク。ちょっとラフに構えたグルーヴ感は独特のスイング感と疾走感を与えてくれます。この人のドラミングにもファンクネスが希薄というか皆無。堅実で強烈なオフビートに裏打ちされたポリリズム。それでいて、しっかりリズム&ビートの筋が一本通っている。じっくり聴き耳立てていると、更にその素晴らしさが判る、そんな職人芸的な玄人好みのドラミング。出身はバルセロナとのこと。これも納得ですね。

この盤の選曲については、セロニアス・モンク、マッコイ・タイナー、クレア、フィッシャー、スティービー・ワンダーなどの作品を取り上げていて、ジェイソン・リンドナーのピアノの個性の源を感じさせてくれます。エレピも弾いていて、変に難しくせず、シンプルで良好。いや〜、この『1,2,3, Etc.』、なかなか聴き応えのあるピアノ・トリオ盤です。ジャケットもジャズらしからぬ可愛いイラスト。これも良し(笑)。

 
 
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2019年3月13日 (水曜日)

あの頃の「愛のテーマ」に再会

なかなかリイシューされない盤もまだまだ沢山ある。逆に、ネットを彷徨っていて、今までなかなかリイシューされなかった昔の好盤がいきなり、ダウンロード・サイトにアップされているのを見つけたりすると、思わず「やった〜」と思う。そして、じっくりとゆったりと聴いて、在りし日のあの頃へ短い間の「心の旅」。

Barry White & The Love Unlimited Orchestra『Rhapsody In White』(写真)。そんなアルバムに久し振りに出会った。1974年のリリース。この盤は高校時代、FMでエアチェックして、ロックの合間の耳休めのよく聴いていた。音の傾向は、電気楽器を導入してロックの音要素を取り込み、ビートを効かせたソウル・ミュージックの要素を散りばめた、クロスオーバー基調としたイージーリスニング・ジャズである。

まず一番聴いていて感じ入ってしまうのが、ラストの「愛のテーマ」(Love's Theme)。爽やかな風が立ち上って行くような、飛翔感溢れる弦のユニゾン&ハーモニーのイントロから、ホーンが鳴り響き、そして、オーケストラの旋律のバックで鳴り響く「超単音弾き」な永遠に続くエレギのリフ。このエレギの単音リフに乗ったオーケストラの流麗な展開、これがバリー・ホワイトの十八番。
 

Rhapsody_in_white  

 
「愛のテーマ」と言えば、僕が高校時代から大学時代にかけて、キャセイパシフィック航空のCMで流れていたり、FMラジオ番組「ジェットストリーム」でよく流れたりで、かなり馴染みのある曲でした。特に「ジェットストリーム」はよく聴いていたからなあ。やはり、印象に残っているのが、「超単音弾き」な永遠に続くエレギのリフ。本当にシンプルながら官能的なリフで、このエレギ、誰あろう「デビッド・T・ウォーカー」の仕業だったんですね。

このアルバムには、バリー・ホワイトの魅力的な低音ヴォイスがかなり織り込まれていて、これがまだ良い効果を生んでいるんですね。どこかスピリチュアルで、ソフト&メロウなフュージョン・ミュージックの先取りの様などこかアーバンで落ち着いた夜の雰囲気。1974年のクロスオーバー・ジャズなので、ちょっと古いかなあ、と思いながら聴き返したのですが、どうして、アレンジが良いんでしょう、あまり古さは感じない。

全8曲中、バリー・ホワイトが関わった曲ばかりで、バリー・ホワイトのソング・ライティングの才についても再認識しました。バリー・ホワイトのインスト盤として、聴き応えのある好盤です。全編、金太郎飴の様に「エレギの単音リフに乗ったオーケストラの流麗な展開」がメインなんですが、これがバリー・ホワイトの個性。一度聴いたら病みつきになります。

 
 
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2019年3月12日 (火曜日)

クールで大人のテナーが清々しい

Mark Turner『Yam Yam』を聴いて、僕はこう書いた。マーク・ターナーのテナーは「クール・テナー」。芯のある浮遊感と繊細で知的なニュアンス。ブラッド・メルドーの弁を借りると「マーク・ターナーのホーンのサウンドは見紛いようがない。暖かく、深い優しさをたたえ、甘たるくなく、まさにこれぞ誘惑の味がする」。

それまでのジャズ・テナーの印象である「たくましい、豪快といった男性的なイメージ」を覆す、クール・スタイルのテナーが清々しい。スムース・ジャズのテナーをメインストリーム・ジャズにそのまま持って来た様なイメージ。それでいて、芯のしっかりある音で説得力がある。ユニークなスタイルのジャズ・テナーである。僕はすっかりファンになった。

Mark Turner『In This World』(写真左)。1998年6月の録音。ターナーのメジャー・レーベル第2弾。ちなみにパーソネルは、Mark Turner (ts), Brad Mehldau (ac-p, el-p), Kurt Rosenwinkel (g), Larry Grenadier (b), Brian Blade (ds), Jorge Rossy (ds)。今から見れば、なんと錚々たるメンバーではないか。現代ネオ・ハードバップの精鋭達が大集合である。
 

In_this_world_mark_turner  

 
メインは、ターナーのテナーをフロントに、メルドー=グラナディア=ブレイドのピアノ・トリオがリズム・セクションを担う。印象的で耽美的なギターはローゼンウィンケルで3曲に客演、ロッシーのドラムは2曲でブレイドとツインドラムを形成する。このワンホーン・カルテット+αの編成は、様々な曲調、曲想の演奏をいとも容易く、柔軟に展開する。素晴らしいポテンシャルである。

オーソドックスなネオ・ハードバップから、ショーターばりの捻れて思索的な展開、フリーな演奏から8ビートのジャズロック風の演奏まで、バラエティーの富んだ内容なんだが、不思議と統一感がある。その統一感を現出しているのが、マーク・ターナーのテナー。彼のクール・スタイルなテナーが一貫しているが故の「1本筋の通った統一感」が清々しい。

バックの演奏はいずれも素晴らしいが、特筆すべきはブレイドのドラミング。しっかりとバッキングに回りながら、鋭さと繊細さの相反した表現を融合した柔軟度の高いドラミングは当代随一のものだろう。クールで大人なネオ・ハードバップ。この盤、じっくり聴き進めていくと、ジワジワその良さが沁みてきます。

 
 
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2019年3月11日 (月曜日)

スピリチュアルなソウル・ジャズ

21世紀に入って、様々なジャンルのジャズCDが入手出来る様になった。ネットショップで外国盤が直接購入出来る様になったことが大きい。それまでは日本盤に頼るしか無く、日本盤は売れ筋しかCDリイシューしないので、なかなかソウル・ジャズはリイシューされない。日本では人気がイマイチだから仕方が無い。

1990年代までは、米国盤については、海外出張でNYやSFOに行った折に、大手CDショップを訪問して、しこたまジャズCDを購入して日本に持ち帰ったもんだ。大体1回の出張で20〜30枚は買って帰った。今から考えれば、一体、何をしにNYやSFOに出張していたのか。え、勿論仕事です(笑)。

Benny Bailey Sextett『Soul Eyes (Jazz Live at Domicile Munich)』(写真左)。最近聴いたソウル・ジャズ盤。初見だった。1968年1月11日、ドイツはミュンヘンの "Domicile"でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Benny Bailey (tp), Nathan Davis (ts), Mal Waldron (p), Jimmy Woode (b), Makaya Ntshoko (ds), Charly Campbell (congas)。
 

Soul_eyes  

 
メンバーを見渡すと、ハードバップ期から活躍している有名なメンバーはピアノのマルくらいかなあ。ソウル・ジャズのパーソネルの特徴は、それまでのビ・バップ〜ハードバップの流れとは異なる個性を持ったメンバーを選んでいること。これがハードバップを聴き込んできたジャズ者の方々からすると取っ付きが悪いのかなあ。

演奏は熱気ムンムン、コッテコテのソウル・ジャズ。聴いていて思わず体が動いて、とても楽しい気分になる。ベニー・ベイリーはトランペッター。彼の肉厚でファンキーなトランペットがソウルフルに鳴り響く。ゴリゴリなネイザン・デイヴィスのテナーも良い感じ。このフロント2管の、ソウル・ジャズながら、アーシーでスピリチュアルな響きが印象的です。

ファンクネスが滴るような数々の演奏。ソウル・ジャズは聴いているだけでハッピーな気分になります。気分転換にピッタリ。気分をガラリと変えたい時にはソウル・ジャズですね。1968年のリリースながら、ジャケットもタイポグラフィーがばっちり決まって、なかなか格好良いです。ソウル・ジャズの好盤としてお勧め。

 
 
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2019年3月10日 (日曜日)

峰厚介の約8年振りとなる新作

日本のジャズも歴史を積み重ねてきた。戦後まもなくから徐々に積み上げ、1956年には穐吉敏子が、1962年には渡辺貞夫が渡米し、バークリー音楽院に留学している。1960年代には日本のジャズは若干停滞するが、1960年代終盤以降はジャズマンの数も一気に増え、1970年代後半のフュージョン・ブームにも乗り、ジャズは日本の主要な音楽ジャンルとして確固たる地位を確保している。

1970年代以降、活躍し続け、現時点において、日本ジャズのレジェンドとなったジャズメンも多く存在する。頼もしいことこの上無し、である。21世紀に入っても、日本ジャズのレジェンド達は、誰かしらが毎年、好盤をリリースしている。ジャズの場合は年齢を重ねるに従って、演奏テクニックが変に落ちない限りは、充実の一途をたどる傾向があるので、好ましいことこの上無し、である。

峰厚介『Bamboo Grove』(写真左)。今年1月のリリース。2018年8月の録音。日本ジャスのテナーのレジェンド、峰厚介(みね・こうすけ)の最新作である。ちなみにパーソネルは、峰厚介 (ts, ss), 清水絵理子 (p), 須川崇志 (b), 竹村一哲 (ds)。峰のテナー1本フロントのオール日本人ジャズメンでのカルテット編成。現在の日本人ジャズの力量を推し量るに最適な盤である。
 

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前作から約8年振りとなる新作であるが、一言で言うと「良い内容」。峰のテナーは申し分無い。ヴァイタルでエモーショナル、音が艶やかで伸びが良い。テクニックも申し分無く、1944年2月生まれの75歳とは思えない「溌剌さ」である。資料によると、レコーディング・セッションはセパレートブースを使わず、ワンルームでの一発録り、とのこと。自分のテナーに自信が無いと出来ない録音環境なんだが、この一発録りによって、ライブ録音独特の適度なテンションと疾走感を得ているのだから立派だ。

加えて、収録曲は7曲全てが峰の「自作」。まったく意欲的な75歳である。自作曲は、当然当人にとって吹きやすいのだろう、バップ風にモーダルに自由自在、変幻自在にテナーを吹き上げていく。バックの清水のピアノを中心としたリズム・セクションも良好。柔軟度が高く、硬軟自在、緩急自在なピアノ・トリオは結構、聴き応えがある。このピアノ・トリオだけを切り取って、特別にトリオ演奏を聴いてみたい。そんな気にさせる堅実で爽快なバッキング。

岡本太郎記念館の館長である平野暁臣をプロデューサーに迎え、 タワーレコードがスタートしたジャズレーベル「Days of Delight (デイズ・オブ・ディライト)」。なかなかの好盤をリリースしてきたなあ。今後のリリースが楽しみになってきた。

 
 
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2019年3月 9日 (土曜日)

ソウル・ジャズの基本盤の一枚

僕がジャズを聴き始めたのは、今から40年前。1978年から本格的にジャズ盤を集集し始めた訳だが、その頃、ジャズについては、フュージョン・ジャズの大ブームの真っ只中。加えて、ハービー・ハンコックの「V.S.O.P」クインテットが切っ掛けとなって、純ジャズが見直され始めていた。

逆に、ジャズの中でもポップな方向に発展した「ソウル・ジャズ」や「ジャズ・ファンク」は忘れ去られていった。特に我が国では、「ソウル・ジャズ」や「ジャズ・ファンク」は俗っぽさの象徴として、硬派なジャズ者の方々から毛嫌いされた。しかも、である。当時の我が国はこの「硬派なジャズ者の方々」が多いことから、この「ソウル・ジャズ」や「ジャズ・ファンク」のアルバムはレコード屋の店頭に並ぶことは無かった。

しかし、もともとR&Bやソウル・ミュージックが好きな僕は、この「ソウル・ジャズ」や「ジャズ・ファンク」がお気に入りのジャズ・スタイルの1つ。この「ソウル・ジャズ」や「ジャズ・ファンク」のCD復刻がなったのは、1990年代半ば以降と記憶している。そして、21世紀に入って、この10年でやっと、「ソウル・ジャズ」や「ジャズ・ファンク」の基本盤はあらかたCDリイシューされた。
 

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Valerie Capers『Portrait In Soul』(写真左)。1966年のリリース。盲目の黒人女流ピアニスト、ヴァレリー・ケイパースのリーダー作である。ちなみにパーソネルは、Valerie Capers (p), Vincent McEwen (tp), Robin Kenyatta (as), Frank Perowsky (ts), John Daley (b), Richy Landrum (conga, ds), Chrly Hawkins (ds)。アルバムの基本的な雰囲気は「ソウル・ジャズ」。

冒頭の「Little David Swing」などは、ゴスペル調の雰囲気が漂う、高速テンポのソウル・ジャズだが、例えば、5曲目の「Odyssey」などは疾走感溢れるモード・ジャズである。ケイバースのピアノは切れ味が良く真摯なタッチ。決して安易にポップに傾かず、過度なファンクネスを戒めている。アルバム全体を覆うストイックさが故、この盤には俗っぽさよりもどこかアーティスティックな雰囲気が漂う。

僕はこの盤を21世紀になってから知りました。この盤はソウル・ジャズの要素とジャズ・ファンクの要素をモード・ジャズに融合した様な雰囲気で実にユニーク。ソウル・ジャズの基本盤の一枚として、是非聴いて頂きたいアルバムです。ブラック・ミュージックな雰囲気が濃厚で、これもジャズやなあ、と改めて感心してしまいます。

 
 
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2019年3月 8日 (金曜日)

アレンジ能力を加えて総合力勝負

Christian Sands(クリスチャン・サンズ)。1989年5月の生まれ、というから今年30歳、若き中堅である。デビューは弱冠12歳。2007年2月にはグラミー賞受賞式でも演奏したという早熟の天才。米国の若きピアニストの注目株であったが、そんなサンズも今年で30歳。個性もしっかり確立し、ジャズ・ピアニストの中堅として、しっかりとそのポジションを確保している。

そんなサンズの最新作。Christian Sands『Facing Dragons』(写真左)。2018年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Christian Sands (p), Yasushi Nakamura (b), Jerome Jennings (ds) のトリオをベースに、Caio Afiune (g), Keyon Harrold (tp), Marcus Strickland (sax), Roberto Quintero, Cristian Rivera (perc) がゲストで参加している。 

この新盤は、サンズのピアニストとしての面よりは、サンズのアレンジ能力や演奏全体のプロデュース能力にスポットを当てている様である。ネオ・ハードバップをベースとした、底にそこはかとなくファンクネスを漂わせた、モーダルでスムースなメインストリーム・ジャズにしっかりとまとめているところにサンズの非凡さを感じる。
 

Facing_dragons_sands

 
ピアニストとしてのサンズについては申し分無い。サンズの音の「間」と「響き」を活かした、音に「ため」と「余裕」のあるピアノ。音の響き(ユニゾン&ハーモニー)に仄かにゴスペル調な雰囲気が漂うところがサンズのピアノの個性である。そのゴスペル調の雰囲気が色濃く出ている演奏が、3曲目「Yesterday」で良く判る。「Yesterday」はレノン=マッカートニーの名曲で、ビートルズの楽曲として完成されている。
 
これをジャズでカヴァーしている。レノン=マッカートニーの楽曲はその個性が強すぎるので、なかなかジャズにならない。サンドはこのジャズ化の難曲「Yesterday」をゴスペル調を添加した、ファンクネスが希薄な4ビート曲にすることで「ジャズ化」に成功している。見事なアレンジ能力である。サンズはこの盤で、ピアノの他に、Fender Rhodes や Hammond B3 にも手を染めて、それぞれの楽器でも良い成果を残している。
 
5曲目の「Sunday Morning」では、ハモンドとローズ、ピアノを一曲の中で使い分け、敬虔な祈りの雰囲気を醸し出している。しかも、そこに「レゲエ・ビート」が絡んで、そのユニークさは今後の楽しみになっている。アレンジ能力を含めた総合力で勝負できるピアニストに成長したクリスチャン・サンズ。もう今の段階で次作が楽しみである。 

 
 
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2019年3月 7日 (木曜日)

ジョー・ハイダーのピアノを知る

リーダーの出身国は「ドイツ」。しかも1936年生まれの今年83歳。大ベテランである。僕はつい最近まで全く知らなかった。そして、タイトルは「フランス語」。明らかにこの盤は欧州ジャズのアルバムだということが良く判る。こういうピアノ・トリオ盤に出会うと、ジャズって裾野の広い音楽ジャンルだな、って改めて思う。今になって出会えた幸運に感謝する。

Joe Haider Trio『Cafè des Pyrènnèes』(写真左)。1973年の作品。ちなみにパーソネルは、Joe Haider (p,elp), Isla Eckinger (b), Allen Blairman (ds)。Joe Haider=ジョー・ハイダーというピアニストの名前をこの盤で初めて知った。活動拠点は欧州、1960年代半ばにデビューして以来、メインストリーム・ジャズをメインに第一線で活躍してきた、とのこと。知らなんだ。ジャズの裾野は広い。辿り来て未だ山麓。

さて、このジョー・ハイダーのピアノが実に魅力的。知的で端正でクール。欧州ジャズのピアニストらしく、ファンクネスは皆無。それでいて明確なオフビート感が否が応にもジャジーな雰囲気を増幅させる。タッチはどこか「マッコイ・タイナー」を彷彿とさせる、鍵盤をガーンゴーンと叩く様なハンマー奏法だが、決して力ずくではなく、品格漂うハンマー奏法なところが好感度大。
 

Cafe_des_pyrennees_joe_haider

 
冒頭の「Tante Nelly」が格好良い。アレン・ブレアマンのシンバルの高速リズムに乗って、イスラ・エッキンガーの重量級ベースがしなりを伴って絡む。そこに知的で端正でクールなジョー・ハイダーのピアノが入ってくる。弾き回すフレーズでファンクネスを醸し出しつつ、流麗なハンマー奏法で、明快で力感あふれるモーダルなアドリブ・フレーズが耳に飛び込んでくる。

2曲目の「Cafè des Pyrènnèes」のソロ・ピアノを聴けば、そんなハイダーのピアノの個性が良く判る。ハンマー奏法でありながら、印象的で耽美的なフレーズ。知的に響くところが欧州ジャズらしい。良い音、良いフレーズ。聴いていて、頭の中に爽やかな風が吹き抜けるようだ。聴き進めて行くと、ハイダーのピアノは知的で端正でクールだけでは無い。時にダイナミックにパッションに、時にフリーにも傾く、幅広な弾き回し。

実はハイダーはエレピも弾いていて、これも個性的。ハンマー打法のエレピで、エレピながら雰囲気に流されることなく、フレーズが思いっきり明快。このエレピの存在がECMレーベルの音を彷彿とさせて、ああこの盤って、やっぱり「欧州ジャズな盤」なんやなあ、と改めて納得する。いやはや、こんなピアニスト、ピアノ・トリオの演奏があったとは。ほんと、ジャズって裾野の広い音楽ジャンルである。

 
 
東日本大震災から7年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2019年3月 6日 (水曜日)

お気に入りフュージョン・エレギ

僕はこの人のギターがずっと好きである。Steve Khan(スティーブ・カーン)。1947年4月、LA生まれ。今年で72歳になる。もはやレジェンドの域に達したカーンであるが、この人のフュージョン・ギターは、1981年の『Eyewitness』を聴いて以来、ずっとお気に入り。カーンのギターはデビュー当時から、ずっとフュージョン・ジャズ系のエレギの音であり、それまでの純ジャズ系のギタリストのスタイルとはちょっと異なる音色とアプローチが個性。

我が国では、フュージョン・ジャズ系のエレギといえば、まずは「リー・リトナー」、次に「ラリー・カールトン」と「ジョージ・ベンソン」。このビッグ・スリーが人気で、それ以外のギタリストについては「知る人ぞ知る」存在であった。僕もその例外に漏れず、スティーブ・カーンと出会えたのは、大学時代に密かに通った「秘密の喫茶店」のママさんからの紹介のお陰であった。

Steve Khan『Tightrope』(写真左)。1979年の録音。そんなスティーブ・カーンのデビュー盤である。聴けば判るが、アレンジについて、どこか聴いた響きが気になる。誰のアレンジか、誰のプロデュースか。なんと「ボブ・ジェームス」である。と言う訳で、ボブ・ジェームスのアレンジも僕の代のお気に入りなので、この盤のカーンのちょっとくすんだような心地良くノイジーな音と品の良いサスティーンとボブ・ジェームスのアレンジがピッタリとフィットしていて、聴いていて、とても心地良い。
 

Tightrope_steve_khan  

 
このデビュー盤、バック・メンバーが実に豪華。主だったところを挙げれば、Jeff Mironov (g), Don Grolnick (key), Will Lee (b), Steve Gadd (ds), Eroll "Crucher" Bennett (per), David Sanborn (as), Randy Brecker (tp), Michael Brecker (ts, ss), Rob Mounsey (synth), Rick Marotta (ds)。ボブ・ジェームスの人脈をフル活用し、カーンが在籍していたバンドからの友情参加と言ったところかな。デビュー盤にしては、よくこれだけの「フュージョン・ジャズのキーマン」達を集めたなあ、と感心する。

当然、出てくる音は典型的なフュージョン・ジャズ。ただしソフト&メロウな音世界では無い。どちらかと言えば、クロスオーバー・ジャズ寄りの結構硬派で爽快感を追求したインプロビゼーションの展開に仕上がっている。派手に立ち回るエレギでは無く、味わいのある響きと小粋なアドリブ展開が個性です。これが僕には堪らない。といって、職人芸の様に小難しいところは全く無くて、シンプルで判り易く聴き易いところが実にグッド。

そして「ちょっとくすんだような心地良くノイジーな音」が他のギタリストと一線を画するところで、これが決め手ですね。テクニックも確かで、速い曲のアドリブ・フレーズも安心して聴くことが出来るし、捻れの無い分、ながら聴きもOK。耳触りで無い、落ち着いた品の良い音色はグッド。ジャケットのイラストも個性的でグッド。フュージョン・ギタリストとして、なかなかの力量は次作への期待感を増幅させます。

 
 
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2019年3月 5日 (火曜日)

カールスルーエのペトルチアーニ

ペトが亡くなって、20年が経った。ペトとは「Michel Petrucciani(ミシェル・ペトルチアーニ)」。先天性疾患による障害を克服したフランス最高のジャズ・ピアニストである。1999年1月、36歳の若さで亡くなった。彼のピアノは超絶技巧、ダイナミックで耽美的。「タッチを切れ味良く明確にして、バリバリ弾くビル・エバンス」と僕は形容している。

ペトは僕のお気に入りピアニストの一人で、彼の正式盤はほとんど所有している。今でも時々、チョイスしては聴き流している。聴いた後、スカッとする素晴らしい弾きっぷりで、そのテクニックの確かさは清々しさすら感じる。そんなペトではあるが、亡くなって20年、まさか新盤がリリースされるとは思わなかった。

Michel Petrucciani『One Night in Karlsruhe』(写真左・右はbootleg)。1988年7月7日、ドイツのカールスルーエでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Michel Petrucciani (p), Gary Peacock (b), Roy Haynes (ds)。ペトのピアノがメインの鉄壁のトリオ構成。資料を確認すると、このライブ盤、もともとはbootlegだったものをリマスター仕直し、音質を向上させて正式盤として発売したものらしい。
 

One_night_in_karlsruhe  

 
ペトのピアノがまず素晴らしい。絶好調とまではいかないまでも、かなりの好調さを維持している。切れ味の良い明快なタッチで、疾走感溢れるアドリブ・フレーズ。とにかくペトらしく、バリバリに弾きまくる。これが実に良い。バラードはダイナミズム溢れる明快なイメージ。スケールの大きい展開が聴いていてとても心地良い。

このライブ盤の面白味はベースとドラム。ベースがゲイリー・ピーコック。ドラムがロイ・ヘインズ。ペトのキャリアの中でも珍しい組合せではないか。ゲイリー・ピーコックはキース・ジャレットとのトリオ「スタンダーズ」のベーシストであるが、ペトとの共演では全く違ったベースを聴かせてくれる。骨太で鋼の様なしなやかなウォーキング・ベース。ロイ・ヘインズの硬軟自在なドラミングについては、ペトとの相性が実に良いようだ。

3者一体となったインタープレイはダイナミックでしなやかで明快。ペトは生き生きとしてプレイしている様子が頼もしい。こういうライブ盤が、今年の1月になってリリースされるとは驚きです。しかも、内容も確かな、音質も良好なライブ音源。ペトのダイナミックなピアノを聴いていて、ペトのアルバムを聴き直してみたくなりました。

 
 
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2019年3月 4日 (月曜日)

ヴィーナス・レコードの粋ジャケ

日本発のジャズ・レーベルに「ヴィーナス・レコード」がある。日本人好みのジャズの雰囲気を一手に引き受けている日本発のジャズ・レーベルで、個人が経営する独立系ジャズ・レーベルとしては現在、日本最大級の規模となっている。演出過剰なほどに、スインギーでマイナー調で、耽美的でメロディアス。録音は優秀、演奏のテクニックも優秀。音の傾向は「スムース・ジャズ志向の純ジャズ」。

硬派なジャズ者の方々は、このヴィーナス・レコードからリリースされるアルバムのジャケットを揶揄される。殆どのジャケットが「セミヌードか下着姿の女性」があしらわれている。これがすこぶる評判が悪い。確かにちょっと品に欠けるところがある。この「セミヌード」ジャケットがLPサイズだったとして、平然とレコード屋のカウンターに持ち込めるか。否、である(笑)。

しかし、そんなヴィーナス・レコードのアルバムの中にも、小粋なジャケットで、小粋な内容な「隠れ好盤」が何枚かある。例えば、この盤などその一枚。Bill Crow Quartet『Jazz Anecdotes』(写真左)。1996年11月19 & 20日、New JerseyのVan Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Bill Crow (b), Carmen Leggio (ts), Joe Cohn (g), David Jones (ds)。
 

Jazz_anecdotes_bill_crow  

 
リーダーのビル・クロウのベースが効いている。ビル・クロウはリーダー作の当アルバムともう一枚『From Birdland to Broadway』の2枚だけがヴィーナス・レコードからリリースされているだけだが、サイドマンとしてのキャリアは折り紙付き。ジェリー・マリガンとの共演が一番多く、スタン・ゲッツ、ズート・シムズ等々との共演が多数ある。

アルバム・タイトルの「ジャズ・アネクドーツ」 とは、ビル・クロウが書いたジャズ・マン達に知られざる逸話を集めたジャズ・ブックの名前。タイトルの由来からして「粋」。このアルバムの内容も、しっかりとしたハードバップな演奏で、音の作りは決してレトロでは無く現代的。演奏される曲はスタンダード曲がメイン。味のあるアレンジが施されていて飽きない。

ジャケットも「粋」。タイポグラフィーも良好、あしらわれている写真も良い雰囲気。このジャケットだけを見たら「ヴィーナス・レコード」からのリリースだとは思わないだろう。これなら、硬派なジャズ者の皆さんもヴィーナス・レコードを少しは見直してくれるかも、である。

 
 
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2019年3月 3日 (日曜日)

コンセルトヘボウのジャズオケ

現代のジャズ・オーケストラについては、まず浮かぶ名前が、Jazz at Lincoln Center(略称JALC)の常設オーケストラである、ウィントン・マルサリスが率いる、ジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラ(Jazz at Lincoln Center Orchestra = JLCO)。世界の常設ジャズ・オーケストラのトップに君臨している。そして、そのJLCOに匹敵するジャズ・オーケストラがもう一つある。

「オランダの最もスインギーなビッグバンド」と称されるジャズ・オーケストラ・オブ・ザ・コンセルトヘボウ(Jazz Orchestra of the Concertgebouw = JOC)である。このJOCも常設のジャズ・オーケストラとして活躍している。1996年の設立、1999年、オランダのアムステルダムにあるコンサートホール、コンセルトヘボウの計らいで「ジャズ・オーケストラ・オブ・ザ・コンセルトヘボウ」を名乗ることになる。

NYのJLCOがジャズの歴史的な演奏をしっかり抑えた、伝統的なジャズオケだとすると、オランダのJOCは先進的なチャレンジを得意とするコンテンポラリーなジャズオケだと言える。どちらも持ち味が違うので単純な比較は出来ない。ということで、このJLCOとJOCが現代のジャズ・オーケストラの双璧と言えるだろう。
 

I_didnt_know_what_time_it_was_joc  

 
JOCについて、最近聴いた盤がこれ。Jazz Orchestra of the Concertgebouw『I Didn't Know What Time It Was』(写真左)。2018年10月のリリース。 february 25th, 2010年2月25日、アムステルダムのBimhuisでのライブ演奏で、ラジオ放送の音源からのアルバム化。ジャズ・オルガンの生けるレジェンド、ドクター・ロニー・スミスをフィーチャーした演奏集である。

JOCのダイナミズム溢れるジャズオケならではのゴージャスなユニゾン&ハーモニーに、アーシーでソウルフル、ファンクネス溢れつつエッジの立った切れ味の良いオルガンのドラマティックなフレーズが効果的に絡む。オルガンに引き摺られてファンキーな雰囲気に偏ること無く、ジャジーなオルガンをジャズオケの重要な構成要素として取り込んだイメージのソウルフルなジャズオケの演奏が思いっきりダイナミックに展開される。

これが伝統的なハードバップに似た響きを振り撒いていて、ジャズオケにオルガンというユニークな組合せながら、正統なネオ・ハードバップなジャズ・オーケストラとして成立しているのだから面白い。決して懐古趣味では無い、現代のネオ・ハードバップな響きが先進性を強烈にアピールする。演奏自体は自然体で変に捻れたり、ギミックを感じたりすることは全く無い。現代のジャズ・オーケストラの良き演奏がこの盤に詰まっている。

 
 
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2019年3月 2日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・76

1996年、キースは慢性疲労症候群と診断され、同年の秋以降の活動予定を全てキャンセルして自宅での療養を余儀なくされる。2年の闘病の後、1998年に復活。スタンダーズの活動を再開させる。復活後は相応の調子を取り戻すのに少し時間がかかったが、1999年7月5日、パリでのライブ録音である『Whisper Not』を聴いて判る様に、この時点でほぼ復調なったと感じている。

Keith Jarrett『Yesterdays』(写真左)。2001年4月24日と30日、東京文化会館とオーチャードホールでのライブ録音。パーソネルは、当然、Keith Jarrett (p), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds)。お馴染みの「スタンダーズ」トリオ。所要時間約75分でCD1枚仕様。2001年の録音であるが、しばらくお蔵入りになった後、2009年にリリースされている。

何か問題があって「お蔵入り」になった訳では無いことは、このライブ盤を聴けば判る。この盤では、慢性疲労症候群から完全復調なったキースのほぼ従来と同じレベルの好パフォーマンスを聴くことが出来る。恐らく、さすがにスタンダーズの演奏もここまでくるとマンネリ感は拭えず、スタンダード曲がメインの演奏は避けたのではないか。2001年には同じ日本でのライブ録音とはいえ、オリジナル曲オンリーのライブ盤をリリースしている。
 

Yesterdays_keith_jarrett  

 
このライブ盤でのスタンダーズは「ノリが良い」。三位一体となったインタープレイが素晴らしい。ベストに近いスタンダーズの演奏がこのライブ盤で聴ける。2001年録音は現在では4枚のアルバムがリリースされている。キースが慢性疲労症候群を克服し、完全復調なった時期がこの2001年だったのだろう。完全復調なったキースは、同時にあの「唸り声」も完全復活している。賛否両論の「唸り声」であれば、これがキースの「元気な印」であるのなら、これはこれで我慢、である。

しかし、復調なったキースのスタンダーズは演奏内容に大きな変化が感じられる。病気リタイアまでは、基本的にキースがメイン。キースが前へ前へ出てピアノを弾きまくるところに、ぴったりと寄り添うようなデジョネットとピーコックであったが、キースの復調後は、キース、デジョネット、ピーコックのパフォーマンスが均等になっている感じなのだ。これが良い方向に作用していて、三位一体となったインタープレイをより印象的なものにしている。

まだまだ知られていないスタンダード曲を発掘し、手垢の付いた有名なスタンダード曲を見直し、類い希なピアノ・トリオで斬新なアレンジを施し再構築する。このキースのスタンダーズの手法についてはやはり「マンネリ感」は否めない。しかし、このライブ盤でのパフォーマンスの見事さは、そんな「マンネリ感」を吹き飛ばして余りあるもの。意外とスタンダーズの理想形がこのライブ盤に記録されているのかも知れない。

 
 
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2019年3月 1日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・110

先週、ハンク・ジョーンズの『The Talented Touch』という素敵なトリオ盤をご紹介した。ハンクのピアノは端正でタッチが明確で流麗。テクニックは確かで、仄かにファンクネスが漂うフレーズ。1970年代後半、若きトニー&ロンと組んだGJTでの「マッチョ」でダイナミックなハンクも良いが、典雅で小粋なハンクは更に良い。

Hank Jones『The Trio』(写真左)。1955年8月4日の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Jones (p), Wendell Marshall (b), Kenny Clarke (ds)。録音はニュージャージーはハッケンサックの    Van Gelder Studio。玄人好みのレーベル、サヴォイからのリリース。どうりで音が良い訳だ。LPの初盤で聴いてみたかったなあ。

ハンクは1918年生まれ。このトリオ盤を録音した時点で37歳。それにしては「枯れた味わい」が素敵なピアノである。派手な立ち回りとは全く無縁。しっとり落ち着いた大人の雰囲気。しかし、タッチはしっかり明確。フレーズは流麗。バラードは典雅。これが37歳の、まだまだ若いピアニストが奏でる音なのか、と感心する。1970年代後半、GJTでの60歳を迎えたハンクのほうが、明らかに「やんちゃ」である。
 

Hank_jones_the_trio

 
この「若年寄」の如き、流麗で典雅なピアノをしっかり支えるバックが、これまた「玄人好み」。骨太なウォーキング・ベースが好印象のウェンデル・マーシャル。ブンブン胴鳴りするアコベは魅力満載。シンプルにビートを刻むが、フロントのピアノに合わせて陰影をつける粋なドラミングはケニー・クラーク。この二人のリズム隊はハンクのピアノにピッタリ。

そして、この盤の面白味は、スタンダード曲を弾かせたら天下一品のハンクが、自作曲をこれまた典雅に流麗に弾き回していること。1曲目の「We're All Together」続く「Odd Number」など良い出来です。スタンダード曲は相変わらず良い出来。「There's a Small Hotel」や、おなじみの「"My Funny Valentine」は絶品です。

実はこのトリオ盤、つい最近まで知りませんでした。とあるジャズ盤紹介本で知った次第。サヴォイ・レーベルからのリリースで、サヴォイらしくなくジャケットが地味なんで、紹介本で知識を付けていなかったら、店頭に並んでいても手に取らなかったでしょうね。今回はジャズ盤紹介本に感謝です。

 
 
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