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2019年3月 2日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・76

1996年、キースは慢性疲労症候群と診断され、同年の秋以降の活動予定を全てキャンセルして自宅での療養を余儀なくされる。2年の闘病の後、1998年に復活。スタンダーズの活動を再開させる。復活後は相応の調子を取り戻すのに少し時間がかかったが、1999年7月5日、パリでのライブ録音である『Whisper Not』を聴いて判る様に、この時点でほぼ復調なったと感じている。

Keith Jarrett『Yesterdays』(写真左)。2001年4月24日と30日、東京文化会館とオーチャードホールでのライブ録音。パーソネルは、当然、Keith Jarrett (p), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds)。お馴染みの「スタンダーズ」トリオ。所要時間約75分でCD1枚仕様。2001年の録音であるが、しばらくお蔵入りになった後、2009年にリリースされている。

何か問題があって「お蔵入り」になった訳では無いことは、このライブ盤を聴けば判る。この盤では、慢性疲労症候群から完全復調なったキースのほぼ従来と同じレベルの好パフォーマンスを聴くことが出来る。恐らく、さすがにスタンダーズの演奏もここまでくるとマンネリ感は拭えず、スタンダード曲がメインの演奏は避けたのではないか。2001年には同じ日本でのライブ録音とはいえ、オリジナル曲オンリーのライブ盤をリリースしている。
 

Yesterdays_keith_jarrett

 
このライブ盤でのスタンダーズは「ノリが良い」。三位一体となったインタープレイが素晴らしい。ベストに近いスタンダーズの演奏がこのライブ盤で聴ける。2001年録音は現在では4枚のアルバムがリリースされている。キースが慢性疲労症候群を克服し、完全復調なった時期がこの2001年だったのだろう。完全復調なったキースは、同時にあの「唸り声」も完全復活している。賛否両論の「唸り声」であれば、これがキースの「元気な印」であるのなら、これはこれで我慢、である。

しかし、復調なったキースのスタンダーズは演奏内容に大きな変化が感じられる。病気リタイアまでは、基本的にキースがメイン。キースが前へ前へ出てピアノを弾きまくるところに、ぴったりと寄り添うようなデジョネットとピーコックであったが、キースの復調後は、キース、デジョネット、ピーコックのパフォーマンスが均等になっている感じなのだ。これが良い方向に作用していて、三位一体となったインタープレイをより印象的なものにしている。

まだまだ知られていないスタンダード曲を発掘し、手垢の付いた有名なスタンダード曲を見直し、類い希なピアノ・トリオで斬新なアレンジを施し再構築する。このキースのスタンダーズの手法についてはやはり「マンネリ感」は否めない。しかし、このライブ盤でのパフォーマンスの見事さは、そんな「マンネリ感」を吹き飛ばして余りあるもの。意外とスタンダーズの理想形がこのライブ盤に記録されているのかも知れない。
 
 
 
★東日本大震災から7年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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