ジャズ・ピアノの父のトリオ盤
このピアノ・トリオ盤、ジャズ喫茶で初めて聴かせて貰ったのって、何時だったかなあ。ジャズを聴き始めて15年経った位の頃だったか、神保町の「響」だったような思い出がある。この盤、廃盤になって久しく、当時はまだLPの中古屋って、あんまり無かったから、この盤を入手したくても、まず店先で見たことが無い。で、ジャズ喫茶に行って、リクエストと相成った訳である。
Earl Hines『Fatha』(写真左)。1965年、Columbiaレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Earl Hines (p, vo), Ahmed Abdul-Malik (b), Oliver Jackson (ds)。ピアノ・トリオ構成。このリーダー作がリリースされた年で62歳。ジャズメンとして油の乗り切った年齢。聴けば判るが、リーダーのアール・ハインズのピアノのスタイルは、当時のメインのスタイルであった「ハードバップ」では無い。それでも、とても渋くて格好良いモダンなピアノに耳を奪われる。
冒頭の「Frankie And Johnnie」を聴いていると、右手はハードバップなんだが、左手がハードバップでは無い。左手が聴いていると「これはスイングかブギウギではないのか」と思う。2曲目の「The Girl From Ipanema」は当時流行のボサノバの名曲。これは当時の流行曲なので、ハードバップっぽく弾いている。でも3曲目の「Believe It Beloved」で、やっぱり「これはスイングの左手や」と確信する。
Earl Hines(アール・ハインズ)。ハインズはジャズピアノの開発途上で最も影響力のある人物の一人だったとされる(Wikipediaより)。よって、ハインズは「ジャズ・ピアノの父」と呼ばれる。ホーンライクな力強い右手のシングル・トーン、複雑でより開放されたリズムを取り入れた躍動感溢れる左手のベース・パート。このハインズのピアノの奏法が、スイング期に一世風靡した。
そんな「ジャズ・ピアノの父」のトランペット・スタイルと称される奏法がこのアルバムで堪能出来る。渋い渋い硬派な「モダン・ピアノ」である。「St. James Infirmary Blues」と「Trav'lin All Alone」の2曲では渋くて素敵なボーカルも披露している。まるで、ルイ・アームストロング(愛称サッチモ)の様だ。と思ったら、ハインズとサッチモって「スイング期の盟友」なんですね。楽器を弾いて唄も唄う。スイング期のジャズメンの嗜みです。
ハインズは1903年生まれ。同じ頃に生まれたジャズメンを調べてみたら、ジェリー・ロール・モートン1890年、デューク・エリントン1899年、ルイ・アームストロング1901年、カウント・ベイシー1904年、ファッツ・ウォーラー1904年。これらのメンバー達と一緒に、同じジャズの時代を生きていた。確かに「ジャズ・ピアノの父」である。
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