ハイラムのフュージョン・ジャズ
クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズについては、フロント楽器はエレギだった。それまでのジャズについては、フロント楽器はサックスやトランペットの金管楽器。電気楽器の発達によって、加えて、ロックの影響だろう、フロント楽器について、エレギの台頭は目覚ましいものがあった。
ハイラム・ブロックもそんなギタリストの一人。ブロックは日本の堺市生まれの米国のフュージョン・ギタリスト。1955年生まれ、2008年7月、惜しくも52歳で早逝した。主に使用していたギターは、有名な改造ストラトキャスター。これが骨太で切れ味の良い、グルーヴ感溢れる個性的な音を出すのだ。
Hiram Bullock『Late Night Talk』(写真左)。1996年12月9日・13日、NYのR.P.M.Studio での録音。Venus Recordsからのリリース。ちなみにパーソネルは、Hiram Bullock (g, vo), Dr.Lonnie Smith (org), Joe Locke (vib), Ed Howard (b), Idris Muhammad (ds)。イケイケ・ロック系のハイラムのギターについて、歪みを一切使わず、クリーントーンで通した、ジャズ・フォーマットものである。エレギの音がクリアでアーバンでジャジーなのが強く印象に残る。
端正でグルーヴ感溢れるエレギが先導するジャズ・ファンク。それもコッテコテのファンクネスを伴うものでは無く、ライトでアーバンなファンクネスを纏った、流麗なジャズ・ファンク。ポジティヴで開放的で骨太なハイラムのエレギがそんなファンクネスを増幅する。音から感じる時間帯は「夜」。ベテランでアコースティックなリズム&ビートが想起させるのは「アーバン」な雰囲気。
ロニー・スミスのオルガンが良い雰囲気を出している。ベテラン、ジョー・ロックのヴァイブが明快で良いアクセントになっている。Stevie Wonderの名曲のカヴァー「Creepin'」、Stanley Turrentineの名曲のカヴァー『Sugar』が黒くて渋い。オーソドックスなフュージョン・ジャズ的展開がかえって新しく響くから面白い。
アルバムのタイトルが「Late Night Talk(深夜の会話)」。なるほど言い得て妙である。これほどまでにタイトルがアルバムの内容を的確に表現しているアルバムも珍しい。逆にそういうアルバムには好盤が多い。数あるハイラムのリーダー作の中で一番ジャジーで整った内容のアルバムはこれだろう。イケイケ・ロック系エレギのハイラムが正装して臨んだフュージョン・ジャズ。好盤です。
東日本大震災から7年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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