ボス・テナーのオールスター演奏
以前、我が国ではジャズ・ミュージシャンの扱いが偏っていた。おおよその評論家の方々は米国東海岸ジャズが絶対で、同じ米国でも西海岸ジャズは「白人が中心で、アレンジされたジャズ」ということで、東海岸ジャズから一段低く見られた。ましてや、欧州ジャズなど以ての外で、黒人がやらないジャズはジャズじゃない、という極論まであった。
米国東海岸ジャズの中でも扱いに偏りがあって、結構良い音を出しているのに、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌のアルバム紹介には、滅多にその名が挙がらないジャズ・ミュージシャンがいた。例えば、ジーン・アモンズ(Gene Ammons)など、その最たる例だろう。米国では「テナー・サックス界のボス(The Boss)」や「ジャグ(Jug)」の愛称で人気があったのだが、我が国ではサッパリだった。
僕がジーン・アモンズの名を知ったのは、プレスティッジ・レーベルのカタログを入手し、アルバムの蒐集を始めた時。最初は全くその名を知らなかった。今ではネットでググれば直ぐに情報が得られるが、当時はまだネットは無い。外盤の裏の英語の評論文を自分で訳したりして、ジーン・アモンズが何者かを知った。ジーン・アモンズのリーダー作を聴きたくて、まだ日本盤ではCDとしてリイシューされておらず、外盤を探し回った。
Gene Ammons『All Star Sessions』(写真左)。ジーン・アモンズが当時の第一線の様々なジャズメンと共演した音源を集めたリーダー作である。プレスティッジ・レーベルからのリリースで、4つのセッション(1950年の2つ、1951年と1955年それぞれ1つ)からの寄せ集め盤である。プレスティッジ・レーベルお得意の寄せ集めであるが、ジーン・アモンズのテナーは全く変わらない。
共演相手によって演奏内容が変わることも無く、セッション時期が異なるからといって、その演奏がぶれることは無い。骨太でファンクネス溢れるオールド・スタイルなテナー。テクニックは確かで速い旋律も難なくこなす。バラードでは歌心溢れるブロウで魅了する。1950年、1951年、1955年と3つの異なる時代でのセッションだが、オリジナルの収録曲については、いずれも良質なハードバップな演奏である。
CDリイシュー時に没テイクも収録されているが、この没テイクを聴くと、ジャズは「即興演奏の賜」ということが良く理解できる。譜面があって練習に練習を重ねて、良い演奏が出来る様になって最後に録音、というマナーはジャズには無い。一発勝負の即興演奏。その即興演奏には失敗もある。没テイクの収録には賛否両論あろうが、この盤の没テイクはジャズ演奏のドキュメント的位置づけの音源として楽しめる、と僕は解釈している。
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